解離性同一性障害は治るのか|治療法と治すために大切なこと




先生、解離性同一性障害は治りますか?一生このままなのではないかと不安です

浅田先生
浅田先生

解離性同一性障害は根気よく治療を続ければ治る病気だよ。

記事の中で解説していくね。

解離性同一性障害の治療は難しく、いまだ治療法は確立されていません

そのため、患者さんの中には「どうせ治らない」と治療へのモチベーションが低下してしまったり、「交代人格に自分が乗っ取られるのではないか」と不安を感じたりしている方もいるでしょう。

しかし、治療法がないわけではありません

今回は、解離性同一性障害の治療法治すために大切なことについて解説します。

解離性同一性障害の治療が受けられる場所についても解説しているので、ぜひ最後まで目を通してくださいね。

ときに、解離性同一性障害は思い込みと思われることがあります。そう思われる理由について気になる方は下記の記事もご覧ください。

解離性同一性障害は治りうる病気

解離性同一性障害は治療を続ければ症状が落ち着く病気です。

しかし、治療が難しく治療法が確立されていないことも事実です。

症状が劇的に改善される病気ではなく少しずつ症状が落ち着く病気のため、長い目で見て治療を続ける必要があるでしょう。

解離性同一性障害では、希死念慮が強く自己破壊的な行動をとる人格が生まれることがあります。

事故につながるような危険な行動を急にとる可能性があるため、早めに治療を受け症状を安定させましょう。

こころちゃん
こころちゃん

治療は難しいですが、治りうる病気です

解離性同一性障害の治療法

解離性同一性障害は、薬物療法心理療法が行われます。

以下で詳しく解説します。[1]

薬物療法

解離性同一性障害に対する薬物療法は、心理療法の補助として行われます。

薬物療法は解離性同一性障害に直接的な効果は少ないと考えられているため、治療の主軸にはなりません。

しかし、解離性同一性障害に伴う抑うつ状態や不安感は、十分な改善効果が期待できます。

抑うつ感や不安感を取り除き本人の苦痛を軽減することは、治療の土台を整えることにつながります。その結果、治療へのモチベーションや心理療法の効果を高めることができるのです。

心理療法

心理療法では、外傷体験や交代人格の真偽よりも、まずは本人が抱えている苦痛に共感し、信頼関係を築きます。

解離性同一性障害の方は、自身の体験を信じてもらえず、苦痛をひとりで抱え込んでいる傾向があります。

そのため、心理療法により人にサポートされる体験や受け入れられる体験をして、孤立の解消を図るのです。

そのうえで、現実との相違点や思い込みの可能性についても一緒に考えていきましょう。

このように苦痛や葛藤を吐き出して「区切る」作業をしていくのです。

解離性同一性障害の方は、苦痛を「切り離す」方法を選択しますが、心理療法では葛藤を区切り、抱えられるようになることが目標です。[2]

交代人格に対しては、辛い記憶を抱えてそれぞれの人格が生まれたことを理解してもらいましょう。

こころちゃん
こころちゃん

交代人格も受けとめてあげましょう

「生まれる必要があったからこそ生まれた」

「みんな平和共存。いらない人格などない。消える必要もない」

ということを説明し安心感を築きます。[3]

解離性同一性障害を治すために大切なこと

解離性同一性障害の治療には、下記の2つが大切です。

以下で詳しく解説します。

安心できる環境を整える

解離性同一性障害は、周囲の反応に苦しみやすい疾患です。

「多重人格なんて思い込み。嘘だ」

「病気のせいにしたいだけ。注目されたいだけ」

このように周囲の理解を得られず、自分の苦しみが甘えなのではないかと考える方も多いでしょう。

しかし交代人格が生まれたのは、本人の防衛機制(苦痛から逃れる工夫)の働きによるものです。

交代人格を否定することは、本人が生み出した生きるための工夫を奪うことになり、大きなストレスとなります。

そのため交代人格の真偽に注目せず、本人が感じる苦痛をそのまま受け入れてくれる環境が必要です。

こころちゃん
こころちゃん

安心できる守られた環境で過ごすことが大切です

安心できる環境で過ごせるようになると交代人格が出現する必要がなくなるため、自然と病状が落ち着きます。

反対にどれだけ治療を頑張っても、環境が改善しなければ治療の効果は限定されてしまうでしょう。

職場や学校など、自分にとって強いストレスや刺激がある場所は避けるようにしてください。

家庭環境が不安定などの理由で安心できる環境が確保できない場合には、入院治療を検討する場合もあります。

治療を続ける

解離性同一性障害の治療には時間がかかりますが、根気よく通院を続けることが大切です。

長い治療期間の中で「本当に治るのかな」と不安になったり、周囲から「いつまで通っているの?」と言われたりするかもしれません。

しかし、通院を続ける中で少しずつ症状が変化し、「意外と自分も頑張れるんだ」「助けてくれる人もいるんだ」という気付きが芽生えるはずです。

これらの気付きは、その後の人生によい変化を与えるものとなるでしょう。

「なかなか症状がよくならない」という不安を抱いたときは、ありのままを治療者に伝えてください。

信頼できる治療者のもとで、自分を信じながら根気よく治療を続けることが大切です。

解離性同一性障害を治療できる場所

ここまで記事を読んでくださった方の中には「解離性同一性障害の治療はどこで受けられるんだろう?」と疑問をお持ちの方もいるかもしれません。

結論として、解離性同一性障害の治療は精神科で受けられます

ただし、解離性同一性障害の治療は難しいため、解離性同一性障害の治療に対応できる精神科を探すのがよいでしょう。

どこに受診したらよいかわからない方は、お住まいの地域の保健所に相談してください。[4]

保健所の管轄については、こちら(保健所管轄区案内)を参考にしてくださいね。

まとめ

解離性同一性障害は、治らない病気ではありません。

治療法が難しい病気とされていますが、薬物療法や心理療法などで症状を落ち着かせることは可能です。

劇的な回復を見せず少しずつ症状が落ち着いていく病気のため、治療期間は長くなることが多いでしょう。

信頼できる治療者のもとで、自分を信じて諦めず治療を続けることが大切です。

治療を受けられる場所をお探しの方は、お住まいの地域の保健所に相談してください。

あなたを助けてくれる場所は必ず存在するので、苦しみをひとりで抱え込まないでくださいね。

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参考文献

[1][2] 解離性障害がよくわかる本|講談社 柴山雅俊監修

[3] 自我状態療法―多重人格のための精神療法|2.自我状態療法の概要https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjh/73/1/73_62/_pdf/-char/ja

[4] 日本精神神経学会
https://www.jspn.or.jp/modules/forpublic/index.php?content_id=2

この記事の執筆者
とだ ゆず
メンタルヘルスの記事を中心に執筆する看護師・保健師ライター。 精神科勤務での患者さんとの関わりや自身のうつ病経験から「人の心についてもっと知りたい」と思い、上級心理カウンセラーの資格を取得。 エビデンスに基づいた読者の心に寄り添う記事を心がけている。
執筆者:浅田 愼太郎

監修者:浅田 愼太郎

新宿にあるおおかみこころのクリニックの診療部長です。心の悩みを気軽に相談できる環境を提供し、早期対応を重視しています。また、夜間診療にも力を入れており、患者の日常生活が快適になるようサポートしています。




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