突然声が出せなくなってしまい、仕事や家庭に影響してしまった経験はありませんか。もしかしたら、ストレスが原因で声が出せなくなったのかもしれません。
声が出ないままでは、まわりとコミュニケーションがとれず、仕事をやりづらいと感じる方もいるでしょう。
そこで今回はストレスで声が出ないのは病気なのか、声が出せなくなる仕組みについて解説します。対処法についても解説するので、声が出ないときに実践して症状を改善していきましょう。
とっさに言葉が出てこないことで悩んでいる場合は、下記に記事も合せてご覧ください。
ストレスで声が出ない仕組み
ストレスで声が出ない場合、喉を動かす筋肉に原因があると考えられています。
声を出すためには喉を動かす筋肉が必要で、自分の意志で動かせる「体性神経系」と常に働きつづける「自律神経系」の一つである「迷走神経」が関係しているのです。
自律神経は、体を活動的にさせる「交感神経」とリラックスさせる「副交感神経」に分けられ、迷走神経は副交感神経に分類されます。
ストレスを受けると交感神経が優位になり、体性神経系や副交感神経と連携する働きが弱くなってしまうのです。そのため、喉を動かす筋肉がうまく働かなくなり、声が出なくなると考えられるでしょう。
ストレスが神経系に影響して、喉を動かす筋肉が動きにくくなるんですね
ストレスで声が出ない病気3つ
ストレスで声が出ないときに、考えられる病気は以下の3つです。
それぞれ見ていきましょう。
心因性失声症
心因性失声症とは、ストレスが原因でうまく声を出せなくなる病気です。
息がもれて声がかすれたり、ささやき声のようになってしまいます。咳をしたり、食べ物を飲み込んだりする場合は、声帯の動きに問題ありません。
「人間関係」「孤独感」などがストレスの要因となり、特に20~30代の女性が発症しやすいとされています。
心因性失声症の治療法は、精神療法と音声治療の2種類です。[1]
ですが、心因性失声症の診断には、他の音声疾患(けいれん性発声障害など)と併発する例もあります。その場合は併発している他の音声疾患の治療と並行して、治療をおこなう姿勢が必要です。
社交不安障害
社交不安障害とは、人に注目されるのが怖くなり「人と話す」「電車に乗る」などの行動に強い苦痛を感じてしまう病気です。[2]
原因はまだ分かっていませんが、遺伝と環境が複合的に影響しているとされています。
社交不安障害には、以下のような不安・恐怖があります。[3]
- 対人不安
- 赤面恐怖
- スピーチ恐怖
- 電話恐怖
- 会食恐怖
- 視線恐怖
- 発汗恐怖
上記のような不安・恐怖を感じると「体が震える」「顔が赤くなる」などの症状も現れるのが特徴です。治療法は、薬物療法と認知行動療法が有効であると考えられています。[3]
人前で恥ずかしくて声が出なくなるケースもあります
けいれん性発声障害
けいれん性発声障害では、声帯のまわりにある「内喉頭筋」がけいれんして、発声に異常をきたしてしまいます。[4]
発話が途絶えてしまうのが繰り返し見られることが、症状の特徴です。
けいれん性発声障害では、以下の3種類に分けられます。[4]
- 内転型
- 外転型
- 混合型
内転型では、声帯のすき間である「声門」が閉じてしまい、声が途切れたり、声のトーンが変化するのが特徴です。
外転型では、声門が開きすぎてしまい、ささやき声でしか話せなくなってしまいます。
混合型とは、内転型と外転型が合わさったタイプです。
発症率は、内転型が 90~95%、外転型が約 5%、混合型は極めて稀とされています。[4]
ストレスで声が出ないときの対処法3つ
ストレスで声が出ない時の対処法は、3つあります。
声が出せないと、仕事や家庭でコミュニケーションが取れず困ってしまいます。なるべく早めに対処をするようにしましょう。
喉や声帯の検査をする
声が出なくなってしまったら、喉や声帯の検査をするようにしましょう。
ストレスだけでなく「声帯ポリープ」「悪性腫瘍」など喉頭の組織異常が原因で、声が出せなくなる場合もあります。[1]
声が出ないと思ったら、ストレスのせいと決めつけずに、医療機関で受診をしてみてください。なるべく早めに対処しないと慢性化してしまい、症状が落ち着いても再発する可能性があるので注意しましょう。
ストレスを減らす
原因がストレスだと分かったら、ストレスを減らすことを優先してみてください。
何がストレスなのか分からない方は、生活習慣を改善してみましょう。
- 睡眠をしっかりとる
- 栄養バランスの良い食事をする
- 適度に運動をする
睡眠をしっかりとることで「感情をうまくコントロールする」「記憶力を保つ」など、こころの調子を整える働きに影響するとされています。[5]
栄養バランスの良い食事をしたり、適度に運動をしたりすることは、ストレスと上手く付き合うために大切です。自分の趣味やリフレッシュする方法がある方は、それらを実践してみるのもいいでしょう。
ストレスの少ない生活や、ストレスを発散する方法を考えましょう
治療を受ける
ストレスで声が出ない場合の治療は、おもに2種類あります。
- 薬物治療
- 音声治療
けいれん性発声障害には、ボツリヌストキシンを注入する方法が有効であると報告されています。[1]また、心因性発声障害など心理的な要因で発症した病気には、抗不安薬が使用されます。
音声治療とは、誤った発声習慣や発声に関わる不適切な行動を直接的、間接的に治療する方法です。
直接訓練と間接訓練の2種類あり、直接訓練では声の高さや強さなどの音声の病態に注目して、異常の原因となる発声行動を直接的に改善します。一方、環境要因に配慮したり、ストレスマネジメントしたり間接的にアプローチするのが、間接訓練です。[2]
ストレスで声が出ないときは何科を受診すべきか
声が出ないときは、まずは耳鼻咽喉科を受診しましょう。
喉や声帯の検査をしてもらい、異常がないかを確かめてください。検査では、声帯や喉にポリープ、炎症、腫瘍などがないかを見てもらいます。
1番目、耳鼻科
2番目、精神科や心療内科
に行きましょう!
もし異常がなければ、ストレスが原因の可能性があるため、精神科や心療内科を受診してみるのもよいでしょう。
声を全く出せない場合でも筆談で診察をおこなうため、心配ありません。
声が出ないままでは、日常生活に影響をきたしてしまいます。症状を悪化させないためにも、なるべく早めに医療機関で受診するようにしてください。
まとめ
ストレスが原因で声が出ない場合、心因性失声症や社交不安障害が考えられます。
もし声が出なくなってしまったら、まずは医療機関で喉や声帯の検査を受けましょう。異常が見つからず、ストレスが原因と分かったら、ストレスを減らしていくことが大切です。
声を出せずつらいと感じたら、お気軽におおかみこころのクリニックに相談しに来てください。
24時間予約受付中
【参考文献】
[1]音声障害診療ガイドライン 2018年版|日本音声言語医学会,日本喉頭科学界
https://www.jslp.org/gl/clin.pdf
[2]不安障害|こころの病気について知る|ストレスとこころ|こころもメンテしよう ~若者を支えるメンタルヘルスサイト~|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/stress/know/know_02.html
[3]自分で治す「社交不安症」
https://amzn.asia/d/9VeFvPi
[4]痙攣性発声障害 診断基準および重症度分類|日本音声言語医学会https://www.jslp.org/pdf/SD_20180105.pdf
[5]こころの健康を保つためには|こころの健康|とうきょう健康ステーションhttps://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/kensui/kokoro/tamotsu.html