発達障害で偏食があるこどもの対応に悩んだことはありませんか。
こどもの偏食は成長とともに改善しますが、なかには思春期以降も決まったものしか食べられない子もいます。しかし、発達障害のこどもが偏食になる原因を知り、具体的な治し方を試すことで、極端な偏食がやわらぐ可能性があります。
この記事では、発達障害で偏食があるこどもへの対応や向き合い方を詳しく解説していきます。こどもの偏食でこれ以上悩まないためにも、ぜひご覧ください。
こどもの偏食がいつから始まるのか、それは発達障害が原因なのかなど気になる方は下記の記事もご覧ください。
発達障害のこどもはなぜ偏食になるのか
発達障害があるこどもが偏食になる理由は、おもに3つあります。
それぞれの原因がお子さんに当てはまらないかチェックすることで、解決の糸口が見えてきます。
さっそく確認していきましょう!
特定の味や食感が苦手
発達障害による感覚過敏から「特定の味」「匂い」「食感」が苦手で偏食になることがあります。
たとえば、味覚過敏の場合、野菜の苦味を強く感じたり、甘いものばかりを食べたりすることがあるでしょう。また、触覚過敏の場合は、パサパサしたものやドロドロしたものが食べられないこともあります。ほかにも、次のように訴えるお子さんもいます。[1]
- 味覚過敏:苦いものや辛いものなど、刺激のあるものが苦手
- 触覚過敏:金属製の食器から伝わる音や感触が苦手
- 嗅覚過敏:食べ物同士の匂いが混ざり合って気持ち悪く、弁当を食べられない
こうした感覚過敏を単なる好き嫌いとして片付けてしまってはいけません。
こどもに負担を強いてしまいます。無理やり食べさせても必ず食べれるようになるわけではありません。お子さんの様子を見ながら、慎重に対応する必要があるでしょう。
食事に関するこだわりがある
発達障害の特性である「強いこだわり」が偏食の原因になる子もいます。
「同じ食品なのに特定のメーカーの商品しか食べない」「使用する食器や食卓で座る場所が同じじゃないと食べられない」など、こどもによってこだわりはさまざま。
こうした食事のこだわりは、努力して改善できるものではありません。こどものこだわりを否定すると、食事が苦痛になる可能性があります。こだわりは尊重しつつ、偏った食生活で体調や栄養状態に変化はないか、注意深く見ていきましょう。
食事自体がストレスにならないようにしましょう
感じ方に特異性がある
発達障害の特性によって、食べ物に特異的な印象を抱くこどももいます。
たとえば「緑色の食材を嫌がる」「食べ物の色が混じりあった料理が苦手」「初めてみる料理が苦手」など、色や見た目に過剰に反応し、そればかり食べたり逆に受け付けなかったりするケースが考えられます。[3]
こうした食への特異性は周囲に理解されにくく、わがままや親のしつけの問題だと責められることも。周りに理解してもらうために、本人だけの感性があると伝える必要があるでしょう。
発達障害のあるこどもの偏食を治す5つのアプローチ
こどもの偏食に気づいても、好き嫌いの問題として片付けてはいけません。感覚が研ぎ澄まされているがゆえに起こる偏食もあるのです。無理に食べさせようとすると負担を感じ、ますます偏食が酷くなる可能性があります。
発達障害があるこどもの偏食を治すためには、一人ひとりに合わせた方法が必要。その上で、根気強く付き合っていくことが大切です。親子で一緒に食事を楽しむためにも、以下の方法で偏食が改善できるか試しましょう。
具体的な治し方について、さっそく見ていきましょう。
食べられない原因を確認する
まずはこどもがなぜ食べられないのか原因を確認しましょう。
発達障害があるこどもは「感覚の過敏さ」や「食事に関するこだわり」が偏食に関係しています。こどもに寄り添って話を聞き、理解を示すことが大切です。
具体的な方法として、以下の項目ごとに苦手なものがあるかを聞くとよいでしょう。
- 味
- 食感
- 臭い
- 色や見た目
- はじめての食べ物
- 食事の環境
もし、こどもが話し合いに応じなくても、無理に干渉しなくて大丈夫です。これまでの偏食傾向をもとに調理方法や味付けを変えて、こどもの反応をうかがってみましょう。
調理方法や味付けを変えてみる
苦手な原因がわかったら、調理方法や味付けを工夫します。下記の方法を試すと、苦手な味や食感が軽減できるかもしれませんよ。
- 味への工夫:好きな食材と組み合わせる。調味料を変える
- 食感への工夫:刻む・揚げる・煮るなどの調理法を変える
- 匂いへの工夫:匂いを感じにくい冷たいレシピを試す
- 見た目への工夫:食材の皮を剥く。カットの仕方や盛り付けを変える
こうした工夫により、苦手な食材を食べれるようになることがあります。調理方法や味付けの変化を楽しみながら取り組みましょう。
一口からチャレンジする
初めての料理を嫌がる場合は「一口だけ食べてみてはどうか」と提案してみましょう。
「食べなさい」と強要するのではなく、「食べてみない?」と提案することで、無理なく偏食改善に取り組めます。
もしこどもに提案を断られた場合は、それ以上無理に勧めないようにしてください。まずは食事を楽しむことを目標に、少しずつチャレンジを重ねていきましょう。
一口食べれたら褒めましょう
買い物や料理を一緒にやってみる
買い物や料理を一緒にすることで、食材に興味をもつことができます。偏食改善のきっかけが掴めるかもしれませんよ。
「色が混ざり合った食べ物が苦手というこどもにクッキング体験をしてもらうことで、苦手意識が薄れて食べられるようになる」という報告があります。[3]また、一緒に買い物をすることで食への興味が高まり、食事を楽しめるようになるでしょう。
買い物や料理などの経験は、将来自立して生活するときの練習にもなります。親子の思い出作りにもつながるため、ぜひ試してみてください。
別の方法で栄養補給できないか考える
ここまで紹介した方法で偏食が治らない場合は、別の方法での栄養補給を考えるのも一つです。
偏った食生活が続くと、低栄養や貧血などの体調不良を起こす可能性があります。お子さんの体調を整え、成長発達をサポートするために、苦手な食べ物の代替食材や栄養を補う食品の使用を検討しましょう。
なお、どの栄養がどのくらい不足しているかは、詳しく検査してみないとわかりません。自己判断で市販品を購入する前に、かかりつけ医を受診して、お子さんに合った栄養の摂り方を相談してみてください。
偏食は必ずしも治す必要はないため、さまざまな方向からアプローチし、栄養状態の改善を目指しましょう。
偏食は無くすよりも付き合っていくものと考える
偏食は、無くすべきものではなく、付き合っていくものと考えましょう。偏食を無くすこと自体をゴールにすると、親も子もストレスを感じてしまいます。
親も子もストレスなく食事を楽しむことも大切です
とくに反抗期を迎えたこどもは親の意見を素直に聞けないことが多く、うまくいかないこともあります。こうした状況で偏食改善に取り組んでも、期待どおりの結果は得られないでしょう。
親の手から離れつつあるこどもにできることは限られています。たとえ偏食が治らなくても、健康管理ができていれば問題ありません。食べられない苦悩を理解し、こどものペースに合わせて関わりましょう。
まとめ
発達障害のあるこどもは、感覚過敏やこだわりの強さなどの特性により、偏食になりやすいといわれています。いくら親が「栄養バランスよく食べてほしい」と思っても、うまくいかないこともあるでしょう。
偏食の治し方や対応方法には、こどもの数だけ答えがあります。まずは話を聞き、食べられない原因に合わせた対策を実践してみましょう。
こどもの偏食に悩み、イライラや強い落ち込みを感じる場合は、ご自身の心のケアを優先させることも大切です。悩んだときは私たち心の専門家にご相談ください。
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【参考文献】
[1]発達障害プロジェクト 困りごとのトリセツ(取扱説明書)|NHK
https://www1.nhk.or.jp/asaichi/hattatsu/torisetsu/cat_taste-smell.html
[2]自閉症児の食嗜好の実態と偏食への対応に関する調査研究|立山清美,宮嶋愛弓,清水寿代
https://www.urakamizaidan.or.jp/research/jisseki/2010/vol20urakamif-16tateyama.pdf
[3]発達障害のあるこどもの食支援〜偏食改善に向けた取り組み|武富和美,松田佐智子,尾道香奈恵,西岡征子
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- この記事の編集者
- 小林おすし
正看護師。大学病院やクリニック、小学校などで勤務。小児科勤務や子育ての経験を活かし、看護師ライターとして執筆中。