感情の波が激しく、対人関係が不安定になってしまう、境界性人格障害。
見捨てられ不安から、相手に執着したり感情をぶつけたりしてしまう傾向があります。
感情をコントロールできるようになって「周囲に迷惑をかけずに生きたい」と考える方もいるでしょう。
そこで今回は境界性人格障害のおもな症状、原因や治療法について解説します。
境界性人格障害の方との接し方についても解説するので、身近にいる境界性人格障害の方をサポートできる手助けになれば幸いです。
先にチェックリストを試したい方はこちらから試してみてください。
境界性人格障害とは
境界性人格障害は、感情や行動などのパーソナリティに関わる部分がうまく働かない「パーソナリティ障害」の一つです。
感情や行動が不安定になってしまい、対人関係がうまくいかないことが特徴です。[1]
1900年代初めに、精神分裂病(現在の統合失調症)と神経症(現在の不安障害)のどちらにも当てはまらないが、似ている症状を持つ人たちを「境界例」と呼んでいました。
1970年代以降になると研究が進み、境界例と診断された人たちは「境界性人格障害」と位置づけられるようになりました。[1]
境界性人格障害の方は、生涯でうつ病を経験する割合が90%で、パニック障害やPTSDなどの不安障害とも合併する確率が高いとされています。[1]
境界性人格障害を発症する原因
境界性人格障害が発症する原因は、まだ明確に分かっていません。
ただし一つの要因だけでなく、以下の要因が関係して発症すると考えられています。[1]
・生物学的要因
→脳の働き、ストレスに対応するための機能など
・家庭の養育環境
→ネグレクト、虐待など
・社会・文化的環境
→価値観の多様化、社会情勢の変化など
パーソナリティは幼少期のさまざまな出来事や、周囲の人たちからの影響を受けています。
もともと感情の波が激しくストレスに弱い子どもが、親から虐待を受けてしまうと、後にパーソナリティの形成に影響を残す可能性もあるため、注意しなければなりません。[1]
境界性人格障害のおもな5つの症状
境界性人格障害のおもな症状を5つ紹介します。
それぞれ見ていきましょう♪
感情が不安定になる
境界性人格障害では、感情が不安定になりやすいです。[1]
急に怒りを爆発させたり、暴言を吐いたりして、周囲を動揺させてしまいます。また、自傷行為をして自分を傷つけてしまう場合もあるため、行動には気をつけなければなりません。
自分の感情をコントロールできないことにも苦しんでいます。コントロールできないつらさから、自分を傷つけたり、薬を乱用したりする問題行動をおこしてしまうのです。[1]
境界性人格障害の女性の特徴にも、感情が不安定になることが挙げられます。
見捨てられ不安がある
境界性人格障害の方は、見捨てられることに不安を抱えています。そのため、人と適切な距離を保ちながら接することができません。[1]
相手から見放されて孤独になるのが嫌で、耐えられず相手にしがみついたり、怒ったりしてしまうのです。
見捨てられ不安を抱える背景としては「自分がどんな人間か分からない」という感覚になりやすいことが考えられます。[1]
幼い頃は母親との一体感を持っていますが、成長するにつれて反抗期や親離れを経て、自分なりの価値観を持って人とつき合うようになります。
成長の過程で価値観の形成がうまくいかなかった方は、特定の人に執着したり、巻き込まれたりしてしまうのです。
境界性人格障害の方からターゲットにされやすい人について気になる方は、こちらの記事もご覧くだい。
衝動的に行動する
衝動的に行動することは、境界性人格障害の症状の一つです。[1]
境界性人格障害の方は、感情のコントロールが苦手なので、感情のままに動いてしまいます。たとえば、怒りが爆発すると立場や状況を考えず、暴力や暴言などいきなり行動してしまうのです。
衝動的な行動には、以下のものがあります。[1]
自分に向けた行動
・大量の飲酒
・無謀な運転
・性行為
・自傷行為
・大量の薬物摂取
周囲に向けた行動
・暴言を吐く
・物を壊す
・暴力を振るう
大量の飲酒や薬物摂取は、命を危険にさらしてしまいます。回復を妨げる行動なので、心当たりがある方は医療機関に相談してみてください。
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極端に考える
境界性人格障害の症状には、極端に考えることがあります。[1]
物事を「善か悪か」で、人を「敵か味方か」で判断してしまうため、物事に対して柔軟な対応ができなくなってしまうでしょう。
極端に考えると、人間関係にも影響を与えてしまいます。[1]
人間関係で問題を起こしやすくなり、味方だと思っていた人が素っ気ない態度をとると、急に相手を悪く言うようになってしまいます。
自分に対しては「チャレンジすればできる」と自信を持てるときもあれば、「自分には価値がない」と落ち込んでしまうときもあるのです。
虚しさを感じる
境界性人格障害の方は、虚しさを感じやすいです。[1]
「生きていても虚しい」「自分は無力だ」と感じると、虚しさを埋めるために過剰に相手と接するようになります。
相手と関われないとわかると、反動で激しい怒りや抑うつ感が起きてしまいます。周囲にきつくあたることで、さらに人間関係が不安定になる悪循環へと陥ってしまうのです。
中には「自分の居場所がない」「落ち着く場所がない」と感じる人もいます。自分の居場所を見つけられないと、不安になりやすいため本人が安心できる場をつくることが大切です。
境界性人格障害のチェックリスト
DSM-5における境界性人格障害の診断基準をもとに、チェックリストを作成しました。
自分にあてはまる項目はないか確認してみましょう。
・現実や想像の中で、見捨てられないようになりふり構わず努力をする
・対人関係が不安定である
・自分がどんな人か分からなくなる
・浪費、性行為、無謀な運転など自分を傷つける可能性のある衝動的な行動をしてしまう
・自殺のそぶりや脅し、自傷行為を繰り返す
・感情の不安定さが顕著に現れる
・空虚感を慢性的に感じる
・激しく怒ってしまい、コントロールすることが難しい
・一過性のストレスが関係した妄想様観念、解離症状が出ている
上記のうち5つ以上あてはまる方は、境界性人格障害の可能性があるでしょう。
つらい症状が見られる場合は、なるべく早めに医療機関を受診してみてください。
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境界性人格障害の治療法
境界性人格障害の治療法には、以下の2つがあります。
境界性人格障害は時間はかかりますが、治療をすれば回復する病気とされています。
ひとつずつ解説します♪
精神療法
境界性人格障害の治療でおこなわれる精神療法には、以下のものがあります。[1]
・認知療法
→認知のゆがみや偏りを明らかにして検討することで、問題行動の改善を目指す
・対人関係療法
→本人にとって大切な人との関係に焦点を当てて、対人関係の改善を図る
・弁証法的行動療法
→マインドフルネスの状態を達成することを重視する
・メンタライゼーション療法
→自分や他人の心の働きを理解する能力を高める
とくに「弁証法的行動療法」「メンタライゼーション療法」は、境界性人格障害に効果的であると言われています。[2]
境界性人格障害が治るきっかけについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
薬物療法
境界性人格障害には、まだ有効な薬が見つかっていません。
対症療法としてそれぞれの症状に合わせた、以下の薬が処方される場合があります。[1]
・抗うつ薬
→抑うつ症状の改善、衝動性や激しい怒りを抑える
・気分調整薬
→躁状態の改善、感情の不安定や激しい怒りの抑える
・非定型抗精神病薬
→衝動性や攻撃性、逸脱行動を改善する
薬物療法では、作用と副作用を理解しておくことが大切です。「どんな作用が期待できるか」「副作用が起きるとどうなるか」などの説明を病院から受けるので、納得したうえで薬を飲みましょう。
もし副作用が出たときは、すみやかに病院へと相談してみてください。
薬を飲む際は決められた方法を守り、飲むことを途中で止めないようにしましょう。
境界性人格障害の方への接し方や関わり方
まわりに境界性人格障害の方がいたら、適切な距離を保って接するようにしましょう。[1]
距離が近すぎてしまうと、周囲の人が「境界性人格障害は自分の責任なのでは?」と考えてしまい、本人が病気と向き合うのを妨げてしまいます。
対して距離が遠すぎてしまうと、自分とは無関係と考えてしまい、批判的な態度をとってしまうかもしれません。
相手を避けるような態度は、本人が「自分は無価値である」という考えを募らせてしまいます。その考えから、周囲に対する怒りや不満を抱える可能性もあるでしょう。
境界性人格障害の方に対しては、一定の態度で接することが大切です。[3]
本人の調子が良い時も悪い時も、変わらずに接することが相手へと安心感を与えてくれるでしょう。
まとめ
今回は境界性人格障害のおもな症状、原因や治療法などについて解説しました。
境界性人格障害の症状には「感情が不安定になる」「見捨てられ不安がある」などがあります。
これらの症状を改善するためには、精神療法や薬物療法を使用していきます。
まわりに境界性人格障害の方がいたら、適切な距離を保ちながら変わらない態度で接するようにしてみてください。
おおかみこころのクリニックでは、ひとりひとりに寄り添ったサポートを実施しています。辛いなと感じたら抱え込まずに、一度ご相談にきてくださいね。
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【参考文献】
[1]よくわかる境界性パーソナリティ障害 こころのクスリBOOKS
https://amzn.asia/d/7LPsBBe
[2]境界性パーソナリティ障害とその関連疾患
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspog/26/3/26_333/_pdf/-char/ja
[3]パーソナリティ障害 いかに接し、どう克服するか
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