人間不信に陥ると、他人の言動一つひとつが気になったりどう思われているかが不安でコミュニケーションがうまくいかなくなったり…と、日常的に苦しい思いをし続けてしまいます。
一度人間不信の状態になってしまうと「もう誰のことも信用できない…」と考えてしまいがちですが、治す方法はあります。最初は戸惑ったり難しいと感じるかもしれません。ですが、人間不信の状態から抜け出すためには焦らず小さなステップを踏むことが大切です。
人間関係を上手に構築し、仕事やプライベートを楽しみながら生きるために、今日から少しずつ進んでみませんか。
人間不信の治し方7つ
人間不信を治すための方法は7つあります。
1つずつ解説しますね。
人を信じられなくなった原因について考えてみる
とても苦しいステップですが、まずは「なぜ人が信じられなくなったんだろう」と考えてみましょう。
いつ頃から人間不信だと感じ始めたのか、そのきっかけは何だったのか。過去に家族や友人との関係がうまくいかなかったり、誰かに裏切られたりした経験が原因かもしれません。
原因が明確になれば、解決策を見出すことができるでしょう。
自分を褒める癖をつけて自己肯定感を高める
どんな小さなことでも良いので、自分を褒める癖をつけてみましょう。自己肯定感が徐々に高まります。
自己肯定感が高まると自然とメンタルが安定し、他人との関係が築きやすくなります。日記に今日達成できたことを書き留めたり、何かを成し遂げたときに自分へのご褒美を用意したりして、毎日1個でいいので自分を「よくできた!」と褒めてあげてください。
人間関係が築けるようになれば、自分の価値観や考え方をさらに肯定的にとらえられるようになります。ちょっとした成功体験を積み重ねていきましょう。
自己肯定感については、下記の記事もご覧ください。
相手の言葉を深読みせず受け流すよう意識する
人間不信を克服するには、相手の言動を全て受け止めないことが必要です。
相手の言葉を深読みしてあれこれ考えてしまうと、よけいなストレスや不安が生じてしまい信頼関係を築くのが難しくなります。
自分が思うほど、相手は深く考えずに発言するケースは多いものです。想像や思い込みで相手の意図を判断せず、軽く受け流すように意識してみてください。
少しずつでも周りに心を開く努力をする
周囲の人々に対して、少しずつ心を開く意識も必要です。
人間関係の構築は信頼から始まり、信頼は心を開くことから生まれます。勇気を出して小さな一歩を踏み出してみましょう。
最初はほんのささやかなことでいいのです。笑顔で挨拶をしたり、相手の方を向いて相槌を打ちつつ話を聞いたりしてみましょう。
人間不信を治すための重要なポイントは、信頼できる人を増やしていくことです。毎日のちょっとしたふれあいの機会を大切にしていきましょう。
ドラマや漫画の中のなりたい人をマネしてみるのもアリですよ!
周りの人に期待しすぎない
他人に対して過度な期待を持たないようにしましょう。
相手に対する期待が大きいと、望んでいた対応が得られなかったとき「信じていたのに」と悲しくなりますよね。その気持ちが大きいほど、人間不信に繋がりやすくなります。
「周囲が自分の希望すべてに応えられるわけではない」と理解し、相手の行動に完璧を求めず受け入れるよう意識してみてください。思い通りの展開にならなかったとしても大きなストレスを抱えずに済み、相手への不信感も抑えられるでしょう。
職場や住居などの環境を変える
思い切って現在の環境から抜け出すのも、人間不信の克服に有効です。たとえば職場の人間関係が人間不信の原因だとしたら、配置換えや転職がきっかけで前向きな気持ちが戻ってくる可能性があります。
仕事以外にも、住む場所を変えたり新しい趣味を見つけたりしてもよいでしょう。
生活の中に新しい習慣や活動を取り入れるところから始めてみてください。環境の変化はポジティブな効果を生み、人間不信の状態から抜け出す可能性を高めてくれます。
カウンセラーに相談する
症状が深刻だと感じたら、精神科を受診してみましょう。投薬治療のほかに、必要があれば臨床心理士のカウンセリングが受けられます。
敷居が高いと感じるかもしれませんが、自分の思いを聞いてもらうだけでも思考の整理ができて人間不信の原因を見つけるきっかけになります。自分では気付かなかったことが見えてくるかもしれません。
選択肢のひとつとして、心に留めておいてください。
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人間不信になる原因
人間不信の原因として、以下の4つが考えられます。
順番に見ていきましょう。
いじめや虐待を受けた経験
子どもの頃にいじめや虐待を受けた経験は、人間不信の原因となる可能性があります。
幼い頃に傷つけられた経験は自己肯定感を低くします。他人を信じることに怖さを感じる人もいるでしょう。
親から否定的な言葉を浴びせられたり、同級生から暴言や暴力を受けたりすると、自尊心が損なわれます。さらに、自分の価値を見出せなくなる恐れもあります。自信がなくなり、他人との関わりを避けることにもなりかねません。
人に騙された経験
信頼していた人に裏切られる経験も、人間不信となる原因のひとつです。
深く信じていればいるほど、裏切りを知ったときのショックは大きく失望感も深くなります。
「恋人が他の人と関係を持っていた」「詐欺にあって財産を奪われた」など、騙されたときの絶望や怒り、悲しみが人間不信に繋がります。
トラウマにもなりますよね💦
人間関係のトラウマ
人間関係にまつわるトラウマも人間不信の原因となります。
友人や恋人と良好な関係を築けないと、他人だけでなく自分への信頼感も薄れてしまいます。自己否定を繰り返したり、新しい人間関係を築くのが怖いと感じたりするかもしれません。「友人から一方的に絶交された」「家族との関係がうまくいかない」など、人との関わりにおいてつまずいた経験が人間不信に陥る原因となり得ます。
精神疾患の影響
極度の人間不信であれば、精神疾患が影響している可能性があります。
精神疾患は同じ病名であっても、人によって症状の内容や度合いが異なります。
一例として、うつ病・適応障害・統合失調症・パーソナリティ障害についてまとめました。
もしこれらの状態に当てはまっていると思ったら、精神科や心療内科の受診を検討してみましょう。カウンセリングや投薬治療で改善する可能性があります。
病名 | 原因 | 症状の例 |
うつ病 | 心身のストレスによる脳機能の低下 | ・憂うつ感 ・自己否定感 ・気分の落ち込み ・不眠や食欲低下 |
適応障害 | 限定的なストレス | ・頭痛、不眠 ・憂うつな気分や不安感 |
統合失調症 | 原因は不明 | ・意欲が低下する ・幻覚や妄想が起こる ・感情表現が乏しくなる ・思考が乱れてまとまらなくなる |
パーソナリティ障害 | 性格の偏り | ・他人との距離感がつかみにくくなる ・衝動性が高まり感情のコントロールが難しくなる |
人間不信の特徴と傾向
人間不信の人には大きく分けて6つの特徴があります。
必ずしもすべてに当てはまるとは限りません。しかし、目安のひとつとして上記のような傾向が見られます。順番に見ていきましょう。
他人の言葉を疑ってしまう
人間不信の人は他人の言葉を疑ってかかる傾向にあります。過去のネガティブな経験が原因で「信用できない」という思いがあるためです。
たとえば、誰かに褒められても素直に受け取れず「皮肉や嫌味なのでは」ととらえがちです。親切にされても「裏があるのでは」と勘ぐってしまうケースもあります。
コミュニケーションを避ける
他人とのコミュニケーションを避けるのも人間不信の特徴です。
人を信じられなくなると、上手に関係を作るのが難しくなります。騙されるのが怖いと感じ、関わりを避けて自分を守ろうとするのです。
最低限の会話に留めたり、人が集まる場所を避けたりする傾向が見られます。
感情を表に出さない
人間不信の特徴として、感情表現の乏しさも挙げられます。「自分の気持ちは理解してもらえない」「他人に弱みを知られたくない」と考えるためです。
深く自分を知られることへの恐れと、他人を拒絶する気持ちが感情を隠す行為となって表れていると言えるでしょう。
自ら作った壁がジャマをしているケースですね。
相手を試すような行動をとる
人間不信の人は、自信のなさや人を疑う気持ちから、わざと相手の誠意を試す傾向にあります。
たとえ相手が好意的だったとしても「本当は嫌われているのでは」「騙されるかもしれない」と考えてしまうからです。
意地悪な態度をとったり、嘘をついたりして相手の反応を観察するなど、本当に信じても良いかを試す様子が見られます。
心配するあまり何度も確認をとる
人間不信の人には心配性の傾向があります。他人への不信感から、より確実な情報と安心感を求めるためです。
たとえば業務内容に関して頻繁に確認を取ったり、同じ質問を繰り返したりする行動が見られます。こうした人は自分の目を通さなければ気が済まないため、ひとりでたくさんの仕事を抱え込んでしまうかもしれません。
他の人よりも優位に立ちたがる
人を信用できないからこそ、誰よりも優位な立場にいたいと考える人もいます。見下されないように能力を過剰にアピールしたり、弱さを隠すために威圧的な態度をとったりします。
こうした行為は、自分のもろさや自信のなさを見せないための防衛行動と言えるでしょう。
ストレスが原因で人間不信に陥った体験談
ここで、ひとりの女性が人間不信になったときのお話をしたいと思います。
Aさんは中小企業の営業事務員として働いていました。
最初は順調でしたが、入社5年目を迎えたころから他人の言動が気になったり、同僚のミスが心配で何度も確認するようになりました。
そのことで同僚との信頼関係が崩れ、周囲とギクシャクするようになりまる。さらに他人への不信感がつのったAさんは会社のストレスチェックで高ストレスと診断されてしまいます。
産業医との面談で、Aさんは自分の人間不信の原因を見つけるようすすめられました。
これまでに辛かったことや怒りを感じたことを思い出していくうちに、上司や同僚とのいざこざがきっかけだと気付きました。
Aさんがミスをしたとき「お前の仕事なんか誰でもできる」と言われたり、同僚に責任をなすりつけられたことが原因だったのです。
Aさんは病院で投薬治療とカウンセリングを続ける内に段々快方に向かい、気力も戻ってきました。そのタイミングで転職活動を開始。今では少しずつ人との関わりを増やし、転職先で穏やかに過ごしています。
気づかないうちにストレスを抱えていたんですね💦
まとめ
人間不信を治すには、まずはなぜ他人を信じられなくなったのか、原因の見極めが重要です。そのうえで自分を褒めて自己肯定感を高め、徐々に他人への信頼感を育てていきましょう。
過去の経験で傷ついた心は、すぐには回復してくれません。そして、すぐに他人を信用できるわけでもありません。ですがそれだけ辛い思いをしたという証拠です。自分を否定せず、決して慌てず進んでいきましょう。
もしどうしても焦りや悲しみが消えないときは、いつでもご相談くださいね。
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参考文献
1)厚生労働省:精神・発達障害者しごとサポーター 養成講座「精神障害のある方と共に働く上でのポイントと障害特性」https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/shisaku/jigyounushi/e-learning/seishin/
2)東京都福祉保健局:ハートシティ東京「精神障害」
https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/tokyoheart/shougai/seishin.html
3)公益社団法人 日本精神神経学会「こころの病気について」
https://www.jspn.or.jp/modules/forpublic/index.php?content_id=32
4)e-ヘルスネット「統合失調症」
5)e-ヘルスネット「適応障害」
6)e-ヘルスネット「体の不調はうつ病でも現れます。かかりつけ医へ相談してみましょう」
7)e-ヘルスネット「PTSD / 心的外傷後ストレス障害」
8)厚生労働省「こころの耳」
https://kokoro.mhlw.go.jp/
9)国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所「こころの情報サイト」
https://kokoro.ncnp.go.jp/
- この記事の編集者
- 佐藤恵美
介護福祉士・社会福祉士保有。リハビリ病棟にて介護職を7年経験し、デイサービスや介護老人保健施設の相談職に従事。現在はフリーのWebライターとして活動中。