ブランケット症候群とは、お気に入りの毛布やぬいぐるみがないと、不安になってしまう状態のことです。子どもだけでなく、大人もストレスが原因でなりますが、ブランケット症候群は病気ではありません。
ブランケット症候群の原因は、子どもが母親から離れる際に感じる不安に対して、安心感を得るためです。自然に治っていきますが、治し方には無理に離そうとせずに見守ることが挙げられます。
この記事では、ブランケット症候群の症状、セルフチェックなどについても解説します。子どもが毛布やぬいぐるみに依存し続けないように、原因や治し方を知って対策していきましょう。
ブランケット症候群の特徴
ブランケット症候群とは、お気に入りの毛布やぬいぐるみを手放すと、不安になってしまう状態のことです。毛布やぬいぐるみだけでなく、「タオル」「人形」なども対象物となります。これらの対象物は、精神科医であるWinnicottによって「移行対象」と提唱されました。移行対象は子どもが成長する過程で、母親から離れる不安に対しての防衛手段となります。[1]
移行対象は、アジア圏よりも欧米圏の方が出現率が高いとされています。[2]アジア圏、欧米圏の出現率を調査した研究では、以下のような結果になりました。
国 | 出現率 |
ニュージーランド都市部 | 90.1% |
イギリス | 79% |
スウェーデン | 74.8% |
韓国 | 18% |
中国 | 16.5% |
欧米圏の出現率が高い理由として、母親から早く離れて、自立しなければならない環境に置かれるためと考えられています。一方でアジア圏では、母親との接触が多いため、移行対象の出現率が低いとされています。
ブランケット症候群の症状
ブランケット症候群の症状には、以下のようなものがあります。
- 手放すと不安になる
- 就寝時にないと寝られない
- 手触りや匂いで安心する
- 洗濯するのを嫌がる
ブランケット症候群では、気に入った毛布やぬいぐるみがないと不安になってしまうのが特徴です。就寝時にないと寝られなかったり、洗濯するのを嫌がったりしてしまいます。また、毛布やぬいぐるみの触り心地や匂いから、安心感を得ようとすることも。
毛布やぬいぐるみなどの移行対象は、1歳前後に集中する「1次的移行対象」と2歳前後に集中する「2次的移行対象」に分類されます。[3]1次的移行対象は1歳までに出現し、1年間以上気に入る傾向があるもので、2次的移行対象は1~2歳の間に現れる柔らかいおもちゃなどです。
ブランケット症候群の原因
ブランケット症候群になる原因は、子どもが母親から離れる際に感じる「分離不安」に対して、安心感を得るためです。[1]
毛布やぬいぐるみなどの移行対象の特徴には、「柔らかい」「肌触りがいい」「暖かい」「匂いがする」などがあります。これらの特徴は母親に抱かれた状態と似ているため、移行対象は子どもに一体感を与える母親の代わりと考えられています。[1]
Winnicottによれば、移行対象の土台には子どもと母親の 「ほぼ良い関係」が必要とされています。 ほぼ良い関係とは、最初は母親が子どもの欲求に応えますが、徐々に欲求に応える機会を減らしていく状態のことです。ほぼ良い関係は決して特別なものではなく、子どもは徐々に自立できるようになるとされています。[4]
ブランケット症候群になるのは、子どもの発達に必要な過程のひとつです。母親の愛情が足りないからといってなるわけではないので、安心してください。
成長するための過程なんですね!
ブランケット症候群のセルフチェック
子どもがブランケット症候群にあてはまるか、セルフチェックをしてみましょう。
▢ お気に入りの毛布やぬいぐるみなどがある
▢ 肌身離さず持っている
▢ 手放すと不安になる
▢ 就寝時にないと眠れなくなる
▢ 匂いをかぐと安心する
▢ 洗濯するのを嫌がる
▢ 子どもの年齢が1~3歳である
あてはまる項目が多いほど、ブランケット症候群の可能性があります。
ただし、ブランケット症候群は病気ではなく、成長するにつれて自然に治っていくものです。毛布やぬいぐるみなどの移行対象は、子どもの発達過程に必要なものとなります。[5]
ブランケット症候群は親から自立するための一歩となるので、暖かく見守っていきましょう。
成長と共に離れる時間が増えていきます。
ブランケット症候群の治し方
ブランケット症候群は自然に治るものですが、早く治したい人は以下の3つの方法を参考にしてみてください。
それぞれ見ていきましょう。
無理に離そうとしない
ブランケット症候群を早く治したいと思っても、子どもから無理に離そうとするのはやめましょう。
子どもは母親から離れる不安に対して自分を守るために、毛布やぬいぐるみなどを手放さなくなります。無理に離そうとすると、さらに不安が増加する可能性があるのです。
ブランケット症候群は、成長とともに改善されていきます。子どもが執着して持っていると、早くやめさせたいと考える人がいるかもしれません、しかし、子どもにとって必要な過程なので、自然に手放すまで見守っていてください。
サイズを小さくする
お気に入りのものを外に持って行けないときは、サイズを小さくしてみましょう。
幼稚園や保育園などでは、毛布やぬいぐるみを持って行くことを許可していないところもあります。その際には、毛布をタオルやハンカチの大きさに切ったり、ぬいぐるみをミニチュアサイズにしたりしてみましょう。毛布を気に入っている子どもには、前もってサイズを小さくするために切ってもいいかを確認してくださいね。
手触りや匂いが同じであれば、安心感を与えられます。旅行などで持って行けないときにも、サイズを小さくしたものを持って行くといいでしょう。
手放す時間を徐々につくる
毛布やぬいぐるみにあまりにも執着してしまうときは、手放す時間を徐々につくりましょう。少しずつ離れる時間をつくることで、毛布やぬいぐるみがない時間に慣れていくのです。
たとえば「幼稚園にいるときだけ」「寝るときだけ」など手放すと不安になりやすい状況に限定して、お気に入りのものを渡してあげてください。引っ越しや転園などのストレスがかかりやすい時期には、無理に離さないようにしましょう。
幼稚園や保育園に相談をして、持って行ってもいいか確認してみてください。アドバイスを得たり、サポートしてもらうこともあるでしょう。家族だけでは対策が難しいときには、検討してみてください。
幼稚園や保育園などの身近な先生に相談すると、
なにかいいアイディアがあるかもしれませんね♪
まとめ
ブランケット症候群は、毛布やぬいぐるみを手放すと不安になる状態ですが、子どもの発達には必要な過程です。病気ではないため、自然に改善されるまで優しく見守ってください。
ブランケット症候群を早く治したいときは、子どもから無理に毛布やぬいぐるみを引き離そうとせず、徐々に手放す時間をつくってみましょう。無理に離すと、子どもの不安を増加させてしまう可能性があるため、子どものペースに合わせていきましょう。
ブランケット症候群は一生続くものではないため、心配しすぎないようにしてください。子どもの成長には欠かせないので、焦らずゆっくり見守っていきましょう。
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【参考文献】
[1]双生児における「移行対象」の特徴について
https://core.ac.uk/download/pdf/233937214.pdf
[2]青年期以降の移行対象―アニミズム的思考と対人様式との関連から―https://www.tiu.ac.jp/about/research_promotion/kiyou/pdf/14_clinicalpsychology_1.pdf
[3]移行対象の発達的意味(7)一移行対象と気質一https://www.jstage.jst.go.jp/article/pamjaep/33/0/33_197/_pdf/-char/ja
[4]移行対象の出現・消失に関する社会心理学的規定因の検討:生育環境と夫婦間ストレスの視点からhttps://www.jstage.jst.go.jp/article/jssp/19/3/19_KJ00003724913/_pdf/-char/ja
[5]移行対象・移行現象からみる大学生における分離不安に関する研究
https://hijiyama-u.repo.nii.ac.jp/record/980/files/Sinri_2008_Nobuta.pdf