対人恐怖症の診断基準とは?診断テストや4つの対処法も紹介

人前で話すときや初対面の人に会うときには、誰もが不安を感じたり恐れたりするものです。

対人恐怖症の方は、その不安や恐れが強くあらわれるため、社会生活に支障をきたす可能性があります。

この記事では、対人恐怖症の診断基準対処法を解説しています。対人恐怖症ではないかと不安を感じているあなたが、自分の傾向を知り悩みを解決できるきっかけとなれると幸いです。

対人恐怖症の診断基準とは 

対人恐怖症は、社交不安症のひとつとされており、両者は似たような病気です。[1]人と接する場面で「赤面」「発汗」「声の震え」「動悸」「めまい」などの症状があらわれる場合があります。[2]

対人恐怖症の診断基準には、アメリカの精神医学会が発行しているDSM-5が用いられるのが一般的です。[3]以下に、一例を紹介します。

  • 注目を浴びる社交場面(雑談する、人前で食べる、人前で字を書く)に対する不安がある
  • 恐怖や不安、社会的な場面を避けることで社会生活に支障をきたしている
  • 恐怖や不安、社会的な場面を避けることが6ヵ月以上続いている
  • 恐怖や不安、社会的な場面を避ける理由がほかの精神疾患ではうまく説明できない

出典元:DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル|医学書院

これらの診断基準や症状を参考にして、医師が総合的に対人恐怖症と診断します。

こころちゃん
こころちゃん

気になることを抱えたままにしておくのもストレスなので、病院で相談してみて下さいね。

対人恐怖症の診断テスト

対人恐怖症を疑ったとき、いきなり病院に行くことをためらう方もいるでしょう。まずは、対人恐怖症の診断テストで、自分の状況をチェックしてみてくださいね。

1人見知りが激しい
2人前でとても緊張する
3人前で顔がこわばる
4人と向かい合いになるのが怖い
5人と視線を合わせるのが怖い
6人前で顔が赤くなるのが怖い
7人前でどもるのが怖い
8人前で声がかすれたり、出にくくなったりするのが怖い
9人前でバカなことをいってしまわないか怖い
10人の視線がとても気になる
参考元:実践・森田療法|北西憲二

当てはまる項目が多いほど、対人恐怖症の可能性が高いとされています。ただし、この診断テストはあくまでも目安であり、詳しくは専門の医師に相談してみましょう。

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対人恐怖症の対処法

ここでは、対人恐怖症の対処法を具体的に紹介します。

それぞれの対処法が分かると、対人恐怖症の症状にうまく対応できるでしょう。

徐々に慣らしていく

対人恐怖症に対処するためには、人前に出て徐々に慣らしていくことが大切です。

たとえば、雑談をしたり誰かと一緒に食事をしたりして、人前で緊張し過ぎないようにします。

ただし、緊張や震えといった対人恐怖症の症状を急いで治そうとすると、その症状が悪化する恐れがあります。[4]

そのため、まずはあなたが対人恐怖症であると知っている家族と出かけたり、リラックスできる友人と食事をしたりして、人前に出る機会を増やしてください。

この機会を楽しめるようになったら、少しずつ時間を伸ばしたり、より多くの人が集まるところに出かけたりなど慣らしていくと不安を減らせますよ。

こころちゃん
こころちゃん

少しずつで大丈夫です。

一歩進んで二歩さがる♪ぐらいです!

思い込みを修正する

対人恐怖症の方は、自分の症状について間違って思い込んでいる可能性があります。[4]

たとえば「症状を克服して人前で話せるようにならないといけない」「自信満々に立ち居振る舞わなければならない」と感じているかもしれません。また余計なプレッシャーを感じて、自分にコンプレックスを抱くこともあるでしょう。

これらの思い込みで、対人恐怖症の症状が悪くなる恐れがあるため、人前だと緊張することもあると割り切って考えてみてくださいね。

人付き合いで緊張するのを克服したいなら、下記の記事もご覧ください。

相手に注意を向ける

対人恐怖症の方は、自分に注意を向け過ぎていることがあります。

そのため、相手から自分がどう思われているかを気にしてしまうのです。次のように相手に注意を向けることで、自分への注意をそらすことができます。

  • どのような服装をしているか
  • どのような話し方をしているか
  • どのような気持ちなのか

相手に注目したり、観察したりすると自分への注意をそらせて、不安を感じにくくなります。

ストレッチしてリラックスする

対人恐怖症の症状を改善するためには、心身をリラックスさせることが重要です。

というのも、症状があらわれるときは、活動するときに働く交感神経が優位となっているからです。リラックスするときに働く副交感神経を優位にすることで、対人恐怖症の症状の改善に期待できます。[5]

とくに、リラックスするためにはストレッチが有効です。[6]ストレッチをすると、筋肉の緊張がゆるみ、血の巡りが良くなるため心身ともにリラックスできるでしょう。[7]具体的には、以下のような手順です。

1.椅子に座ってはずみをつけずにゆっくりバンザイする
2.10~30秒間伸ばし続ける
3.伸ばしている部位に意識を向ける
4.元に戻す

出典元:ストレスに気づこう|厚生労働省

息は止めずにゆっくりストレッチをしてみてくださいね。深い呼吸を意識して、気持ちを落ち着かせましょう。

こころちゃん
こころちゃん

まずは、やってみましょう!

対人恐怖症の治療法

対人恐怖症の治療はおもに以下の2つです。

それぞれの治療法を知って、対人恐怖症の克服を目指しましょう。

薬物療法

対人恐怖症を含む社会不安障害には、以下の2つの薬が使われます。[8]

  • 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)
  • ベンゾジアゼピン系抗不安薬

選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は、社交不安障害に効果があるとされています。ベンゾジアゼピン系抗不安薬は、脳神経の興奮を抑え、不安や緊張を和らげる効果が期待できます。[8]

さらに、対人恐怖症の治療にβ遮断薬を使うケースもあるでしょう。この薬は、交感神経を興奮させるノルアドレナリンに作用して興奮を抑えるのです。

薬物療法では、薬の副作用があらわれることもあります。そのため、医師や薬剤師の説明をしっかりと聞いて、決められた用法や容量は守ってくださいね。副作用がつらいときは、すぐにクリニックに相談しましょう。

こころちゃん
こころちゃん

気になることがあったら、気軽に先生に相談して大丈夫ですよ。

精神療法

対人恐怖症で行われるおもな精神療法は認知行動療法です。[8]

認知行動療法では、医師やカウンセラーと1回30分以上の面談を16〜20回実施します。その中で、ものごとの捉え方を改善したり、考え方の癖をなくしたりします。

認知行動療法について、さらに詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてくださいね。

Q:対人恐怖症はどの科で診てもらえますか?

対人恐怖症は、精神科もしくは、心療内科で診てもらえます。

ただし、それらの診療科のなかには、対人恐怖症の診察に対応していないところもあります。そのため、ホームページで確認したり電話で問い合わせたりしてみてくださいね。

Q:対人恐怖症は何人に1人くらいですか?

どのくらいの割合で対人恐怖症を発症するのか、具体的なデータはありません。

対人恐怖症を含む社交不安症の場合は、13%(7人に1人くらい)が発症するといわれています。[7]

誰もが発症する可能性があります。そのため、人前で話したり食事をしたりするときの動悸や発汗などの症状に悩んでいる方は、すぐに心療内科や精神科で相談してくださいね。

まとめ

対人恐怖症の診断は、アメリカの精神医学会が発行しているDSM-5をもとに、医師が総合的に判断します。

対人恐怖症を克服するためには、人前に出ることに徐々に慣らしていったり思い込みを修正したりしましょう。まずは、あなたが対人恐怖症の症状に悩んでいることを知っている家族と出かけてみてください。

おおかみこころのクリニックでは、つらいときすぐに受診できるように休日や夜間も診療を行っています。ひとりで悩まずに、早めにご相談くださいね。

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【参考サイト・文献】
[1]2 社交不安症 | 朝倉聡 診断と治療 2024年増刊号
https://gyazo.com/4909f94e565a1dbec958c10ed76adbbf

[2]2 社交不安症 | 朝倉聡 診断と治療 2024年増刊号
https://gyazo.com/a5f5b7e3b6ed9ff73b36fbb423612968

[3]DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル|医学書院
https://www.igaku-shoin.co.jp/book/detail/86264

[4]社交不安障害 対人恐怖症の治し方|Sorato
https://amzn.asia/d/5Igf40k

[5]東京都生涯学習情報|東京都教育庁地域教育支援部生涯学習課
https://www.syougai.metro.tokyo.lg.jp/sesaku/advice/list/oshiete028.html

[6]e-ヘルスネット ストレッチングの効果 | 厚生労働省

[7]ストレスに気づこう|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/101004-6_0003.pdf

[8]社交不安障害診療ガイドライン|日本神経精神薬理学会
https://www.jsnp-org.jp/news/img/20210510.pdf

この記事の編集者
西川正太
看護師、保健師、保育士。 2009年大学を卒業後、大学病院や総合病院で勤務経験あり。現在はフリーライターとして医療を中心に執筆中。
執筆者:浅田 愼太郎

監修者:浅田 愼太郎

新宿にあるおおかみこころのクリニックの診療部長です。心の悩みを気軽に相談できる環境を提供し、早期対応を重視しています。また、夜間診療にも力を入れており、患者の日常生活が快適になるようサポートしています。

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