普通の会話ができない病気10個!会話が成立しないパターンや対処法




家族や身近な人が普通に会話ができなくなったと感じ、病気ではないかと心配になっていませんか。

普通の会話ができない原因はさまざまです。その原因の中には、うつ病や双極性障害をはじめとする心の病気が隠れている恐れがあります。

この記事では、普通の会話ができなくなる病気その対処法を解説します。コミュニケーションの場面で、家族とうまくやり取りできず困惑しているあなたの助けになれれば幸いです。

普通の会話が成立しなくなる5つのパターン

まずは、普通の会話が成立しなくなるパターンを紹介します。

それぞれを詳しくみていきましょう

会話の反応がない

会話の反応がないことは、普通の会話が成立しなくなる要因のひとつです。

たとえば、問いかけに返答がなかったり、相手が話を聞いているのかどうかわからない曖昧な反応だったりします。

このような状況が続くと、次第に会話をすることがストレスとなりコミュニケーションがますます難しくなるでしょう。

一方的に話し続ける

一方的に話し続けることは、会話が成立しなくなる典型的なパターンです。

たとえば、緊張や不安を感じると、相手の反応を待たずに話し続けることで、自分の気持ちを落ち着かせようとすることがあります。

ただし、会話が一方的になることでお互いを知るきっかけがなくなったり、相手が不快に感じたりするため、関係性が悪化する恐れがあります。

批判的な態度が強い

批判的な態度が強いことは、会話が成立しなくなる原因です。

ほかの人の意見を批判することで、自分の立場を守ろうとする心理が働いたり、相手の意見や感情を尊重する余裕がなくなったりすることがあります。

具体的には、家族が作った料理を「おいしくない」と批判したり、仕事において新しいプロジェクトの提案を頭ごなしに否定したりすることが挙げられます。

批判ばかりしていると、感情的な摩擦が生じやすくなり、家族や友人との信頼関係が崩れてしまうでしょう。

感情的になり過ぎている

怒りや悲しみ、ストレスなどの感情が表に出ると、普通の会話が難しくなります。

感情が高ぶると、冷静な判断ができなくなり、相手の意見を受け入れる余裕がなくなるためです。

たとえば、家族に反対されて「どうして私のことを分かってくれないの」と悲しんで涙を流すこともあります。また、上司からのフィードバックに急に声を荒げて、過剰に反応することもあるでしょう。

このような状況が続くと、次第に職場での人間関係が悪化して、仕事を続けられない恐れがあります。

会話に集中できていない

注意力散漫となり、相手の話を聞けなくなります。

ストレスや疲れがあったり、話の内容に興味が持てなかったりするため、会話に集中できなくなるからです。

たとえば、会話中に別のことを考えていたり、テレビを見ながら相槌を打ったりします。スマートフォンをいじりながら話を聞くこともあるでしょう。

会話に集中できていないことに気づかれると、人間関係が疎遠になる可能性があります。

普通の会話ができない病気10個

次に、普通の会話ができない病気を解説します。

それぞれの病気を知って、早めに対処しましょう。

うつ病

うつ病になると、普通の会話ができなくなります。

これは、うつ病によって集中力の低下や注意力の散漫、疲労の蓄積などの症状があらわれるからです。[1]

たとえば、言葉を選ぶのに時間がかかったり、話すこと自体を面倒に感じたりするため、スムーズなコミュニケーションが難しくなります。

さらに、話す内容に自信がなくなることで対話を避けるようになるため、うつ病の方は孤立であると感じやすいです。

双極性障害

双極性障害を発症すると、普通に会話をすることが難しくなります。

双極性障害は、ハイテンションで活動的になる「躁状態」と憂うつな気分になる「うつ病状態」を繰り返す病気であり、気持ちが安定しないからです。[2]

とくに、躁状態になると、次々にアイディアが浮かび根拠のない自信に満ち溢れます。人の話に耳を貸さず、自分の考えをすべて伝えようとします。話に一貫性が欠けるため、相手にとって理解しにくいです。

一方で、うつ状態では気分が沈み、話す内容に自信が持てず対話を避けるようになります。

結果として、どちらの状態でも相手とうまくコミュニケーションがとれないでしょう。

統合失調症

統合失調症になると心や考えがまとまらなくなるため、会話がぎこちなくなります。

統合失調症の主な症状は、健康なときにはなかった症状があらわれる「陽性症状」と、今まであったものがなくなる「陰性症状」です。[3]

・陽性症状:幻覚・妄想・思考障害など
・陰性症状:意欲の欠如・引きこもり・感情の鈍麻(表情が乏しくなること)など

たとえば、幻覚があらわれているとき、本人にははっきりと見えているため現実のように感じられます。ただし、同僚や友人からは「そんなことはない」と否定されるケースもあります。

このように統合失調症の方は、現実なのか分からなくなるため通常の会話が難しくなるでしょう。

強迫性障害

強迫性障害になると、特定の考えによる不安や恐怖を打ち消すために行動を繰り返すため、会話がままならくなります。[4]

たとえば、強迫性障害は以下の症状があらわれます。

・きれいにならないから何度も手を洗う
・ガスを消し忘れたと思い何度も家に戻る
・ドアのカギを閉め忘れたと感じ何度も家に帰る

さまざまなことに不安を感じ、それを解消しようと試みることは誰にでもあるでしょう。

ただし、強迫性障害ではそれらの心配や行為が過剰になるため、普通の会話ができなくなります。

パニック障害

パニック障害になると、普通の会話ができなくなることがあります。

これは、突然の強い不安や恐怖によるパニック発作が原因です。発作時には、心拍数の増加や息切れ、めまいなどの症状があらわれ集中力が低下します。[5]

たとえば、会話中に突然息が詰まる感覚が起こり、言葉を選ぶ余裕がなくなることがあります。パニック障害の症状が重いと、会話どころではなくなるでしょう。

また、日常的な対話でも、このような症状への恐怖から緊張が高まり、自然なコミュニケーションが難しくなることもあります。

場面緘黙(かんもく)症

場面緘黙症は、学校や職場など特定の場所で話せなくなる緘黙症状(黙ること)が出る病気です。[6]

家庭では普通に話せる一方で、学校や職場など特定の場所では話すことができなくなります。

これは強い不安や恐怖が原因で、緊張が高まり言葉が出なくなるからです。場面緘黙症の人は、言葉を発することができないため、普通の会話ができず社会生活に支障をきたすことがあります。

場面緘黙症について、さらに詳しく知りたい方は下記の記事を参照してくださいね。

トゥレット症

トゥレット症は突発的で反復的な運動や発声のチックが特徴の病気です。[7]これが会話中にあらわれることがあります。

(運動チック)
・顔をしかめる
・急に頭をふる
・まばたきをする

(音声チック)
・咳払いをする
・奇声を発する
・急に声を出す

チックは、突然の動きや発声でありコントロールが難しく、話の流れを妨げることがあります。これにより、スムーズな会話ができず、会話が途切れがちです。

さらに、チックに対する周りの人の反応や視線が、トゥレット症の方にとってはストレスです。このような環境では、自信を失うきっかけとなるため、日常的な会話が困難になります。

アルコール依存症

アルコール依存症は、長期間に多量に飲酒した結果、脳の機能に深刻な影響を与え思考力や判断力が低下する病気です。[8]

これにより、正しい言葉の選択が難しくなり、会話が途切れることが多いです。さらに、酩酊状態では発言がはっきりとせず、話の筋が通らないこともあります。

そのため、アルコール依存症の症状が進むと、会話ができなくなることもあります。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)

PTSDは、過去のトラウマティックな出来事により引き起こされる強い不安や恐怖、フラッシュバックなどが特徴の心の病気です。[9]

これらの症状により思考が乱れやすくなるため、会話中に言葉が詰まったり話の筋が通らなくなったります。

さらに、トラウマを連想させる話題が出るとストレスを強く感じ、普段の会話を避ける傾向もみられます。

コミュニケーション症群/コミュニケーション障害群

コミュニケーション症群/コミュニケーション障害群は医学的に診断されており、いわゆる「コミュ障」とは異なります。

アメリカ精神医学会による診断基準で以下のように分類されています。

分類特徴
言語症言葉の使用や書くことが難しい状態
語音症思いをうまく話すことが難しい状態
小児期発症流暢症・言葉を流暢に発することが難しい状態・吃音で言葉を繰り返したり、途中で止まったりする
社会的コミュニケーション症・社会生活でのコミュニケーションが難しい状態・表情や姿勢、声色などの使い分けができない
特定不能のコミュニケーション症上記4つに該当しないものの、コミュニケーション症群の症状がある
出典元:DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引|医学書院

それぞれの症状によって、通常の会話が円滑に進まない場合があります。

普通の会話ができない障害や症状

普通の会話ができない原因に、障害があるケースもあります。

それぞれを詳しく解説しますね。

ASD(自閉スペクトラム症・アスペルガー症候群)

ASDは、持って生まれた特性であり、対人関係が苦手や強いこだわりといった特徴をもつ発達障害です。[10]

話の流れを理解できないため、会話が思うように進まないことがあります。ほかにも、ASDには以下の症状がみられます。

・視線が合わない
・表情が乏しい
・ひとりごとを言う
・人が言ったことをオウム返しする

これらの症状により、うまくコミュニケーションがとれないこともあります。

ADHD(注意欠陥多動症)

ADHDは集中力の欠如や衝動性などの症状によって、普通の会話ができなくなる発達障害です。[11]

たとえば、ADHDの方は話題を急に変えたり、話し過ぎたりします。また、相手の話を遮ることや聞き取る情報を逃すことがあるかもしれせん。

人の話をじっくり聞けず、よく考えずに話したりするため、コミュニケーションに問題が出る場合があります。

LD・SLD(限局性学習障害)

LD・SLDは「読む」「書く」「聞く」「話す」などの能力のうち、特定の能力に難しさがみられる発達障害です。[12]

これらの能力に困難さがあらわれることで、順序立てて話せなかったり、話が飛んだりします。さらに、聞く能力は相手の話を理解するために必要です。

これらの能力に障害が出るため、普通の会話ができなくなる恐れがあります。

普通の会話ができないときの対処法

ここでは、普通の会話ができないときの対処法を詳しく解説します。

これらの対処法をもとに、実際の生活で役立ててくださいね。

無理をしない

普通の会話ができないと感じるときは、無理をしないことが重要です。

会話を無理に続けようとすると、気を遣い過ぎて疲れたり、ストレスや不安が増したりして症状が悪化する可能性があるからです。

また、家族や友人に自分の状態を理解してもらうことも大切です。信頼できる人に自分のことを説明しサポートを求めることで、安心して会話ができます。

話すことにストレスを感じるときは、聞き役に回って負担を減らしてくださいね。

コミュニケーション支援ツールを活用する

普通の会話が難しいと感じるときは、コミュニケーション支援ツールを活用して工夫することが効果的です。

・音声認識アプリ
・メール機能のあるツール
・コミュニケーション支援ボード[13]

これらを使うと、コミュニケーションのストレスを軽減し、会話がスムーズになるでしょう。

会話するときの声のトーンや姿勢を意識する

普通の会話ができないときは、声のトーンや話す姿勢を意識してみてください。

たとえば、明るく穏やかなトーンの話し方をしたり、背筋を伸ばして目を見て話したりしましょう。

会話がスムーズにいかなくても、このような振る舞いができると相手に好印象を与えられますよ。

居住地の支援機関を利用する

発達障害が理由で普通の会話ができない場合は、居住地の支援機関の利用を検討してみてください。

・発達障害支援センター
・精神保健福祉センター
・地域障害者職業センター

障害者手帳がなくても利用できます。専門的な発達障害の知識があるスタッフに相談できるため、適切な対処方法が分かるでしょう。また、病気が疑われるときは病院やクリニックを紹介してもらえるため、早めに対処できますよ。

専門家に相談する

普通の会話ができず、その症状を解決できない場合は心療内科や精神科などの診療科目がある医療機関に相談してみましょう。

病気や障害を発見し適切な治療をおこなうと、症状が改善する可能性があります。そのため、会話することに悩んだりするときは、まずは相談してみてくださいね。

まとめ

会話の反応がなかったり、一方的に話し続けたりすることで普通に会話ができない場合があります。

その原因にはうつ病や双極性障害など心の病気やASDやADHDなどの発達障害が隠れている恐れがあります。

うまく対処できないときは、病院を受診してみてください。

おおかみこころのクリニックでは、早期対応を重視しています。ひとりで抱え込まず、まずはお気軽にご相談くださいね。

参考サイト・文献

[1]うつ病 こころの情報サイト|厚生労働省
https://kokoro.ncnp.go.jp/disease.php?@uid=9D2BdBaF8nGgVLbL

[2]双極性障害 こころの情報サイト|厚生労働省
https://kokoro.ncnp.go.jp/disease.php?@uid=RM3UirqngPV6bFW0

[3]統合失調症 こころの情報サイト|厚生労働省
https://kokoro.ncnp.go.jp/disease.php?@uid=tQtLd1xVUp1wHJMQ

[4]強迫性障害|こころの情報サイト 厚生労働省
https://kokoro.ncnp.go.jp/disease.php?@uid=MiyHEH6ZUZDxDeYX

[5]パニック症/パニック障害
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-050.html

[6]場面緘黙症の実態把握と支援のための調査研究|厚生労働省
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/report_pdf/202018006A-buntan4.pdf

[7]チック症・トゥレット症|国立精神・神経医療研究センター
https://www.ncnp.go.jp/hospital/patient/disease16.html

[8]アルコール依存症 e-ヘルスネット|厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/alcohol/ya-016.html

[9]PTSD こころの情報サイト|心的外傷後ストレス障害
https://kokoro.ncnp.go.jp/disease.php?@uid=iGkwv4PNzgWhQ9xI

[10]ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)について|e-ヘルスネット 厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-03-005.html

[11]ADHD(注意欠如・多動症)の診断と治療|e-ヘルスネット 厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-04-003.html

[12]学習障害(限局性学習症)|e-ヘルスネット 厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-03-004.html
[13]コミュニケーション支援ボード|内閣府https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/jirei/cases/case_0027.html

この記事の編集者
西川正太
看護師、保健師、保育士。 2009年大学を卒業後、大学病院や総合病院で勤務経験あり。現在はフリーライターとして医療を中心に執筆中。
執筆者:浅田 愼太郎

監修者:浅田 愼太郎

新宿にあるおおかみこころのクリニックの診療部長です。心の悩みを気軽に相談できる環境を提供し、早期対応を重視しています。また、夜間診療にも力を入れており、患者の日常生活が快適になるようサポートしています。




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