怒られても響かないのは病気?発達障害の可能性と子どもと大人の対処法




子どもが注意されてもヘラヘラ笑っていたり、職場の部下が同じミスを繰り返したりすると「なぜ怒られても響かないのだろう」と悩むことはありませんか?

何かの病気ではないかと不安になることもあるでしょう。

「怒られても響かない」という特徴は、心の病気が原因の可能性があります。ただ、さまざまな要因が考えられるため一概に病気が原因とは言い切れません。

この記事では、怒られても響かない理由対策について詳しく説明していきます。「何度注意しても直らない」と悩んでいるあなたの参考になれば幸いです。

この記事の内容

怒られても響かない5つの理由
怒られても響かない原因になる発達障害
怒られても響かない子どもへの対処法3選
怒られても響かない大人への対処法3選

怒られても響かない5つの理由

怒られても響かない理由を5つ紹介します。

楽観的な性格

楽観的な性格の人は、怒られても響かないことがあります。

「楽観的」とは、物事をよい方に考えて心配しないことをあらわす言葉です。

人にはさまざまな性格があり、怒られても気にせず「次に活かそう」と前向きに考える人もいます。

こうした楽観的な性格の人は注意されてもあまり落ち込まず、すぐに気持ちを切り替えることができるのです。

集中力の欠如

怒られているときに他のことが気になって集中できない人もいます。

指摘されている内容が頭に入らず、結果的に同じミスを繰り返すことになります。[1]とくに周囲の状況や音に敏感な人は、集中できない状況になりやすいです。

理解力の不足

怒られている理由を理解できていない場合もあります。

とくに子どもに多くみられるのは、理解力が足りていないケース。「何が悪かったのか」「どうすればよかったのか」がわからないため、同じことを繰り返してしまうのです。

怒られることへの慣れ

いつも怒られていると怒られることに慣れてしまい、気にしなくなってしまうこともあります。

毎日何度も怒られていたら「また始まった…」「早く終わらないかな~」と思うかもしれません。そうなると指摘されてもその内容は心に響かなくなるのです。

心の病気

心の病気が原因のこともあります。

統合失調症ストレス状態が続いている人は、感情の表現が乏しくなることがあります。[2][3]これにより、怒られても反応が薄くなり、「響いていない」と感じられることがあるのです。

また、発達障害も関係しているといわれています。

発達障害の特性により、怒られると頭が真っ白になったり、どうしたらいいかわからなくなったりすることがあるのです。

発達障害については、次の章で詳しく解説いたします。

怒られても響かない原因になる発達障害

発達障害は、生まれつきの脳の働きの違いによるものです。[1]

代表的なものに、ADHD(注意欠如・多動症)、ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)、LD(学習障害)などがあります。それぞれ特性を持ち、複数の障害が重なってあらわれることもあります。

以下の2つは、とくに「怒られても響かない」ことの原因になると考えられる発達障害です。

ADHD(注意欠如・多動症)

ADHDの人には、以下の特徴があります。[4]

・集中できない
・考えるよりも先に動く
・じっとしていられない

そのため、怒られていても指示や注意に集中できずしっかりと聞くことが困難です。結果的に何を注意されたのかわからず、何度も同じミスをしてしまうこともあります。

また注意を聞けていたとしても「ケアレスミスが多い」「忘れやすい」などの特徴があるため、繰り返し怒られてしまうことにもなりがちです。

ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)

ASDの人は以下の特徴があります。[5]

・相手の感情を理解するのが苦手
・特定のことに強い興味や関心がある

そのため、怒られたときに「相手が怒っている」ということを十分に理解できず、心に響いていないように見えることがあります。

相手と会話がかみ合わないことも多く、悪気はないのに怒らせるような言動をしてしまうこともあるのです。

こころちゃん
こころちゃん

注意する方もされる方も疲れてしまいますよね。

怒られても響かない子どもへの対処法3選

子どもが怒られても響かないからといって、何度も怒ったり強く怒鳴ったりするのはお互いにとってよくありません。

ここでは、怒られても響かない子どもへの対処法を3つ紹介します。

できないことを叱らない

子どもができないことを叱るのではなく、できることを褒めてあげることが大切です。

できないことを叱られ続けると、できないことを他人のせいにしたり攻撃的・批判的になったりすることがあります。[4]

「今日は遅刻せずに学校に行けたね」といった”できていること”に注目した声かけを行うとよいでしょう。

子どもは自信が持てるようになり、前向きな気持ちになります。

短い文で具体的に指示する

注意したり怒ったりするときは、子どもが理解しやすいように「短い文で具体的に」指示を出すことが効果的です。[4]

たとえば「宿題をしなさい」ではなく、「今から30分間、数学の宿題をしなさい」と具体的に伝えるとよいでしょう。子どもは「何をすればいいかわからない」ということがなくなり大人は「怒ったのに何も変わらない」という状況を避けることができます。

世の中のルールをはっきり伝える

「なぜ怒られているのかわからない」という子には、世の中のルールをはっきり伝えることも大切です。[4]

「それくらい普通わかるでしょ」と言いたくなるような”暗黙の了解”や社会のルールがわからないケースがあるからです。

たとえば、「静かにして」と伝えるだけではなく、「電車やバスではたくさんの人が乗っているから、大声を出したら周りの人が嫌な気持ちになるよ。だから静かにしようね。」とルールをはっきりていねいに伝えるとよいでしょう。

怒られても響かない大人への対処法3選

次に、怒られても響かない大人への対処法を紹介します。

頭ごなしに怒らない

発達障害を持つ人にはとくに配慮が必要です。

ストレス状態が続くと、抑うつ状態やパニック状態になるなどの症状が出現するおそれがあるためです。[1]

できないことや苦手なことを指摘され、頭ごなしに怒られていてはストレスがたまります。

頭ごなしに怒るのではなく、具体的な改善策を伝えることが大切です。「次からはこうしてみよう」といった建設的なアドバイスをするとよいでしょう。これにより、本人も次の行動に移しやすくなります。

特性にあった方法で指示する

その人の特性に合った方法で指示をすることも大切です。

たとえば図やイラストを使って説明する、短くシンプルな言葉を見えるところに掲示する、などの工夫をするとよいでしょう。[1]

その結果、指示への理解が深まり「どうして怒られているかわからない」「同じミスを繰り返す」ことを減らせる可能性があります。

専門の医療機関や家族に相談する

専門の医療機関や家族に相談することで、適切な対処法を見つけることができます。

たとえば、カウンセラーや精神科の医師に相談するとよいでしょう。特性に合わせたきめ細やかなサポートが可能になります。

職場の同僚や部下との関わりでお悩みの方は、まずは職場内の指導・管理担当者などに相談してみてください。

まとめ

「怒られても響かない」状況は、楽観的な性格や集中力の欠如などに加え、ADHDやASDなどの発達障害が関係していると考えられます。

特性を理解し、この記事で紹介したサポートの工夫をすることで、お互いの負担を減らすことができるでしょう。

それでも難しいときは専門の医療機関に相談し、適切な診断を受けるという方法もあります。ひとりで悩まずに、相談してみてください。

参考文献・サイト

[1]大人になって気づく発達障害 ひとりで悩まず専門相談窓口に相談を! | 政府広報オンライン
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202302/1.html#c1

[2]感情鈍磨:用語解説|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト
https://kokoro.mhlw.go.jp/glossaries/word-1533/

[3]第2章 心のケア 各論:文部科学省
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/clarinet/002/003/010/003.htm

[4]発達障害って、なんだろう? | 政府広報オンライン
https://www.gov-online.go.jp/featured/201104/

[5]自閉スペクトラム症(ASD) | NCNP病院 国立精神・神経医療研究センター
https://www.ncnp.go.jp/hospital/patient/disease06.html

この記事の編集者
宮川 しおり
メンタル心理カウンセラー・看護師・養護教諭。公立病院や学校での勤務経験あり。現在は医療・健康分野のフリーライターとして活動中。
執筆者:浅田 愼太郎

監修者:浅田 愼太郎

新宿にあるおおかみこころのクリニックの診療部長です。心の悩みを気軽に相談できる環境を提供し、早期対応を重視しています。また、夜間診療にも力を入れており、患者の日常生活が快適になるようサポートしています。




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