ぬいぐるみ好きは愛着障害?大人の特徴と対処法




「ぬいぐるみを大切にしていること」について、不安に思ったことはありませんか?

子どものころから愛用しているぬいぐるみを手放せないのは、愛着障害が関係しているのではないかと心配になることもあるでしょう。

しかしぬいぐるみと離れられないのは、愛着障害が原因とは限りません。

この記事では、ぬいぐるみ好きと愛着障害の関係性大人がぬいぐるみを手放せない理由、その対処法について解説します。

記事を読むことで、ぬいぐるみとの適切な距離感を保ちながら、自分らしいメンタルの安定を目指す方法を見つけられるでしょう。

愛着障害とは

愛着とは「人と人との間に形成される感情的な絆」のことです。

そして愛着障害とは「5歳までの間に親または親の代わりになる人とうまく絆が形成されず、人間関係に難しさを感じている状態」のこと。[2]

まだひとりでは生きていけない乳幼児は、大人に守られながら成長し、その過程で他者との絆を深めていきます。

「泣いたらお母さんが抱っこしてくれる」

「転んだらお父さんが手当てをしてくれる」

そういったやり取りを通して「人を信頼してもいいんだ」という価値観を得ることができるのです。 

一方、愛着障害は親との信頼関係が得られないまま成長したことが原因です。

幼少期に「身体的・心理的・性的虐待」「ネグレクト」「養育者が繰り返し変わること」などがあったことが要因として考えられています。

愛着障害の人が大人になったとき、以下のような特徴があらわれることがあります。[3]

・メンタルが不安定
・対人関係がうまくいかない
・アイデンティティの確立が難しい

アイデンティティとは「自分はどんな人なのか」という認識のことです。愛着障害を抱えると社会における自分の役割を見失ったり、人間関係に難しさを感じたりするのです。

ぬいぐるみ好きと愛着障害の関係性

ぬいぐるみに依存しているからといって愛着障害とは限りません。

それにもかかわらず「ぬいぐるみ依存=愛着障害」と思う人が多いのは、以下のような理由が考えられます。

・子どものように見える
・寂しさを紛らわせているように見える
・何か問題があるのでは、という偏見がある

幼少期において、ぬいぐるみや毛布などとくに大切にする存在は「自立する過程で重要な役割がある」と位置付けられています。そしてさらに「親からたくさん愛されることでぬいぐるみを大切にでき、結果的には自分自身を大切にすることにつながる」と考えられています。[1]

つまり愛情不足だからぬいぐるみに頼るのではなく、愛されているからこそぬいぐるみを大切にできるのです。

大人のぬいぐるみ好きについては、加えて「ぬいぐるみ集めが趣味」や「ふわふわしたものに癒しを感じる」といった好みの問題も関係してくるでしょう。

愛着障害や大人のぬいぐるみ好きについて、以下に詳しく解説していきます。

こころちゃん
こころちゃん

ぬいぐるみを大切にすることは、自然なことなんですね。

大人がぬいぐるみを好きな理由【なぜ依存してしまうのか】

愛着障害が理由ではないのなら、なぜ「ぬいぐるみに依存する大人」がいるのでしょうか。

以下に挙げた3つの理由について解説します。

安心感を得られるため

ぬいぐるみには、心を落ち着かせる効果があります。

とくに恐怖や不安を感じる場面でその効果を発揮するという報告も。[4]ふわふわとしたぬいぐるみや、自分の匂いがついたぬいぐるみを抱きしめるとホッとする、という経験をしたことがある人は多いはず。

ぬいぐるみを手放せない大人は、そういった安心感を求めているのかもしれません。

ストレス発散になるため

ストレスを感じている状態において、ぬいぐるみは心の支えになります。

ぬいぐるみは基本的に「動かない」「話さない」存在です。

そのため、自分の思った通りの役割を与えることができます。たとえば「なぐさめてくれる家族」や「愚痴をなんでも聞いてくれる友達」など、さまざまな役目を果たしてくれるでしょう。[4]

成長するにつれて自分の思い通りにならないことが増え、ストレスがたまることが多くなります。そんなとき、ぬいぐるみがストレス解消アイテムとなる人もいるのです。

唯一無二の存在になっているため

ぬいぐるみが特別な存在になっているケースもあります。

例えば以下の背景があるとしたら、ぬいぐるみが「無くてはならない存在」になっていてもおかしくありません。 [4]

・素敵な思い出がある
・友達とおそろいで買った
・幼少期から持ち続けている
・大切な人に買ってもらった

ぬいぐるみと大切な思い出を共有することで、次第に「唯一無二の存在」となっていきます。その結果、ぬいぐるみが手放せない大人が生まれてしまうのです。 

大人のぬいぐるみ好きの特徴

ぬいぐるみ好きな大人には特徴があります。

必要なときだけ使う

大切なものから片時も離れない子どものころとは違い、大人になると「必要なときだけ使う」という特徴も出てきます。

普段は飾ってあるだけですが、落ち込んだりストレスがたまったりすると抱きかかえて癒しを求めることがあります。[4]

物を擬人化する傾向がある

また大人のぬいぐるみ好きは、そうでない人に比べて物を擬人化する傾向が強いことがわかっています。[5]

生き物ではないぬいぐるみに対し、意識や命があると考えるのです。その結果ぬいぐるみに愛着がわき、持ち続けているのでしょう。

趣味としてぬいぐるみが好き

趣味としてぬいぐるみが大好きな人もいます。

このような人はクレーンゲームでたくさんぬいぐるみを取ったり、好きなアニメキャラクターのぬいぐるみをたくさん集めたりします。

ぬいぐるみを肯定してくれる家族がいる

そして「ぬいぐるみを肯定してくれる家族がいる」という側面も。[5]

小さいときから使っていて汚れてボロボロになってしまっても、親が洗濯や修復をしてくれたからこそ、ずっと持ち続けていられたという人もいるのではないでしょうか。ぬいぐるみを好きなあなたを受け入れてくれた家族がいるからぬいぐるみが好きでいられる、というケースもあるのです。

大人のぬいぐるみ好きの対処法

ぬいぐるみ好きを無理に治す必要はありませんが、どうしてもぬいぐるみと離れたいのであれば、以下の3つの方法を参考にしてみてください。

無理に離れようとはしない

無理にぬいぐるみを手放す必要はありません。

無理矢理離れると不安が大きくなるため、少しずつ距離を置く方法がよいでしょう。

具体的には以下のような方法があります。

・ぬいぐるみの数を減らす
・ふだん見えないところに置く
・定期的に第三者に預かってもらう

心の負担が大きくならないよう、心身ともに健康なときに行ってください。

ぬいぐるみ好きの自分を受け入れる

ぬいぐるみ好きの自分を受け入れることも大切です。

ぬいぐるみから離れようとすると、その気持ちが強くなることがあります。

「シロクマの実験」をご存知でしょうか。海外で行われた心理学の実験で「シロクマのことを考えないでください」と言われると逆にそのことを考えてしまう、という内容です。[6]

つまり「ぬいぐるみから離れなくてはいけない」と考えると、よりぬいぐるみへの思いが強くなってしまう可能性があるのです。

「ぬいぐるみを好きでもいいんだ」とまずは自分を受け入れるようにしましょう。

他の気持ちを落ち着かせる方法を見つける

ぬいぐるみがストレス発散やリラックスアイテムとなっているあなたは、他の方法を見つけてみるのもよいでしょう。

「体を動かす」「音楽を聴く」「映画を観る」「本を読む」など、手軽にできることにチャレンジしてみてください。[7]

新たなストレス発散法やリラックス法を見つけることで、ぬいぐるみに頼らずに気持ちを落ち着けることができます。

まとめ

愛着障害とは「子どものころに親との信頼関係が築けず、生きづらさを感じている状態」のこと。

ぬいぐるみ好きにはさまざまな理由が考えられるため、必ずしも愛着障害に関係しているとは言い切れないのです。

ぬいぐるみを無理に手放す必要はありません。

この記事で説明したように「ぬいぐるみが好き」という自分を受け入れることもひとつの方法です。ぬいぐるみとの適切な距離感を保ちながら、自分らしいメンタルの安定を目指しましょう。

参考文献・サイト

[1]<論文>移行対象・移行現象からみる大学生における分離不安に関する研究,信田 敦,心理相談センタ一年報第 4号,2008
https://hijiyama-u.repo.nii.ac.jp/record/980/files/Sinri_2008_Nobuta.pdf

[2]虐待と子どもの心理|文部科学省
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2012/09/28/1280766_3.pdf

[3]愛着(アタッチメント)|厚生労働省 令和4年度子ども・子育て支援推進調査研究事業

一時保護所職員に対して効果的な研修を行うための調査研究
https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/pdf/column/opinion/detail/202304_mhlwkodomo_another21.pdf

[4]<論文>青年期女性の語りにみる移行対象の心理的役割の変遷─手放されない移行対象に焦点をあてて,質的心理学研究 第20号/2021/No.20/133–148
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaqp/20/1/20_133/_pdf/-char/ja

[5]<論文>青年期以降の移行対象―アニミズム的思考と対人様式との関連から―,王怡今,臨床心理学研究 東京国際大学大学院臨床心理学研究科 第14 号 抜刷2016年(平成 28 年)3月31日
https://www.tiu.ac.jp/about/research_promotion/kiyou/pdf/14_clinicalpsychology_1.pdf

[6]発達支援センター通信|野洲市発達支援センター
https://www.city.yasu.lg.jp/ikkrwebBrowse/material/files/group/34/202309.pdf

[7]こころと体のセルフケア|ストレスとこころ|こころもメンテしよう ~若者を支えるメンタルヘルスサイト~|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/stress/self/index.html

この記事の編集者
宮川 しおり
メンタル心理カウンセラー・看護師・養護教諭。公立病院や学校での勤務経験あり。現在は医療・健康分野のフリーライターとして活動中。
執筆者:浅田 愼太郎

監修者:浅田 愼太郎

新宿にあるおおかみこころのクリニックの診療部長です。心の悩みを気軽に相談できる環境を提供し、早期対応を重視しています。また、夜間診療にも力を入れており、患者の日常生活が快適になるようサポートしています。




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