不安型愛着障害との向き合い方【人間関係に疲れたあなたへ】




「パートナーの顔色ばかり気にして疲れる…」

そんな風に感じたことはありませんか?

相手の顔色や機嫌に敏感」なのは、不安型愛着障害の特徴のひとつです。

不安が強くなり相手に依存してしまうことによって、大切な人との関係が壊れてしまうこともあるかもしれません。

自分のことをよく知って過去と向き合ったり、夢中になれる何かを見つけたりすることにより、不安型愛着障害の克服を目指すことができます。

この記事では、不安型愛着障害の特徴対処法について解説します。記事を読むことで、自分自身やパートナーを理解し、不安にとらわれない自由な生活を手に入れる方法を見つけられれば幸いです。

不安型愛着障害とは

愛着障害とは「5歳までの間に親または親の代わりになる人とうまく絆が形成されず、人間関係に難しさを感じている状態」のことです。[1]

また不安型愛着障害(以下不安型)は、愛着障害の4つのパターンの中のひとつです。[2]

不安型の大人には、以下のような特徴があります。

ひとつずつ順番に見ていきましょう。

承認欲求が強い

承認欲求が強いのが不安型の特徴です。

「愛されたい」「認められたい」という欲求が非常に強く、拒絶されたり見捨てられたりすることに敏感です。

たとえば、以下のような状況が多くみられます。

・褒められたくて何度もアピールする
・SNSでの「いいね」やコメントが気になる
・上司や親しい人に褒められないと落ち込む

認められたいと思うと同時に、嫌われたくない思いも強いために、相手に逆らえなくなることもあります。[3]

相手の顔色や機嫌に敏感

 不安型の方は、相手の言動に過剰に反応してしまいがち。態度や声色が少しでも違うと「嫌われているのではないか」と不安を感じることも。[3]

たとえば、以下のようなシチュエーションが考えられます。

・パートナーのいつもと違う様子に不安になる
・上司が機嫌が悪いと自分が原因かもしれないと感じる
・友達からの返信が遅れると「嫌われたかもしれない」と心配になる

このような状態が続くと、不安やストレスからメンタルが不安定となり、日常生活にも支障をきたすことがあります。[4]

パートナーに依存しやすい

パートナーに依存しやすいのも不安型の特徴のひとつです。[3]

相手からの愛情を確認するために、以下のような行動を取ることがあります。

・一緒にいないと不安で頻繁に連絡をする
・自分の予定を犠牲にしてでも、パートナーの予定に合わせる
・パートナーの意見に逆らわず、自分の意見や希望を抑える

また、自分が尽くした分だけの愛情が返ってこなかったときは、別人のように怒りを爆発させてしまうことも。

愛されているか何度も確認をしないと気が済まないのです。

こころちゃん
こころちゃん

大好きなのにつらい状況ですね。

不安型愛着障害の原因

不安型が生じるのは「子どものころに親からどんな接し方をされたか」が深く関わっています。

親の態度に一貫性がない

親の態度に一貫性がないことは、不安型の原因のひとつです。

親のメンタルや育児方針がコロコロ変わるため、子どもは安心感を得られなくなります。

とくに親の気分や状況により接し方が変わると、子どもはどう対処すればよいか分からなくなり、不安を感じやすくなるのです。[3]

途中から愛情を受けられなくなった

親の離婚や死別など、何らかの理由で「成長途中に親の愛情を受けられなくなったこと」が不安型の原因になることもあります。

幼いころはかわいがられていた子が突然親の愛情を受けられなくなると、愛された経験があるが故に「もっと一緒にいてほしい」「もっと自分を見てほしい」と親を強く求めることに。

その思いが強まり、精神的に不安定になったり他の人へ依存したりすることにつながるのです。

これが不安型の原因のひとつなのではないかと考えられています。

一方、生まれて間もなく親の愛情を受けられなかった子では、欲求が満たされる経験をしていないため次第に親を求めることもなくなります。これが「回避型愛着障害」です。

回避型愛着障害については、こちらの記事で詳しく解説しているので合わせてご覧ください。

育ての親が愛着障害である

親自身が愛着障害を抱えていると、その子どもにも同じ傾向があらわれることがあります。

親の子育てが愛着関係に深く関わることは、数多くの研究によって明らかにされています。[3]

不安型の特徴は、親になったからといって突然変わるわけではありません。

自己愛が強くメンタルが不安定な親に育てられると、子どもは親の顔色をうかがいながら生活するようになります。

結果、愛情不足や関心不足を感じることになり、子どもも似たような特徴をもって大人になると考えられています。

不安型愛着障害の対処法

不安型愛着障害を克服するためには、過去と向き合い、自分を大切にすることが大切です。

以下に、具体的な対処法を紹介します。

幼いころの望みを叶える

子どものころに満たされなかった気持ちや願いを思い出し、それを今の自分に与えていく方法があります。

たとえば「思い切り甘えたい」「抱っこしてほしい」「わがままを聞いてほしい」といった望みを、少しずつ叶えていくのです。恋人や信頼できるパートナーが助けてくれることもあります。教師や医師、カウンセラーなど、さまざまな立場の人がその役割を果たしてくれることもあるでしょう。

[3]

過去の欲求をひとつずつ叶えていくことが、不安型の克服には必要なのです。

なんでも話せる人をもつ

何でも話せる人をもつことは、不安型の対処法のひとつです。[3]

友達やカウンセラーなど、安心して話せる相手がいることで心が軽くなり、不安もやわらぎます。

一方、信頼できる相手が身近にいない場合は、ゲームやネットの世界に居場所を見つけているケースもあります。

ただ、顔や名前など現実の情報がないなかで取るコミュニケーションでは、傷つけられたり犯罪に巻き込まれたりする可能性もあるため注意が必要。

オンラインのつながりであれば自分を素直に表現できるという人にとって、バーチャルの世界は大切な場です。

不安以外に意識を向ける

不安以外のことに意識を向けることも対処法のひとつです。[3]

「本当に愛されているんだろうか」

「嫌われてしまったのではないか」

このような不安で心がいっぱいになってしまうことがあります。

この不安を相手にぶつけてしまうと、関係が悪化してしまうことも。

不安な気持ちを感じている時間を減らし、他のことに意識を向ける時間を増やしていきましょう。

たとえば、以下のような方法があります。

・体を動かす
・趣味に没頭する
・資格の取得を目指す

「不安を感じたら外に出てランニングをする」と決めておくのも心の安定に役立つでしょう。

不安型愛着障害の人との接し方

ここからは、不安型愛着障害の人との接し方について解説していきます。

不安型の人と関わる際には、以下のようなポイントを押さえておくとよいでしょう。

まずは自分の心を安定させる

不安型の人を支えるためには、まず自分自身が心の安定を保つことが重要です。[3]

支える方のメンタルも不安定だと、頼られ過ぎたときに共倒れしてしまうことも考えられます。

その点、自分が安定していれば相手を支えることができるのです。励ましたり適度な距離を取ったり、状況に応じて冷静な対応ができるでしょう。

とにかく共感する

「とにかく共感する」ことは、不安定型の人と接するときに大切なポイントです。

不安定型の人は「愛されたい」「認められたい」という思いをもっています。その気持ちに寄り添い、共感していくことが相手から信頼される方法のひとつです。

信頼されることにより、その後のコミュニケーションもうまくいきやすくなるでしょう。

定期的にポジティブな言葉をかける

ポジティブな言葉をかけることも意識していきたいことのひとつです。

「人に受け入れられるかどうか」という不安を抱えがちな不安型愛着障害。[3]

一度不安になると、相手の言動に過剰反応をしたり何度も相手に確認をしたりする特徴があります。

そのため「大丈夫だよ」「よく頑張っているね」といったポジティブな声かけを積極的に行うことが、メンタルの安定へとつながると考えられます。

まとめ

不安型愛着障害は承認欲求が強く、相手の顔色や機嫌に敏感です。

愛されたいという思いが強く、心が不安定になりやすいという面もみられます。

その原因は、子どもの頃の家庭環境や親の関わり方にあると考えられています。

この記事で紹介した方法を実践することで、自由で安心感のある生活を手に入れましょう。うまくいかないときはひとりで抱え込まず、医療機関の受診も検討してください。

参考文献・サイト

[1]虐待と子どもの心理|文部科学省
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2012/09/28/1280766_3.pdf

[2]<論文>アタッチメント理論に基づいた発達性トラウマ障害に関する研究|厚生労働科学研究費補助金 (成育疾患克服等次世代育成総合研究事業)分担研究報告書
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2019/192011/201907005A_upload/201907005A0011.pdf

[3]<書籍>岡田尊司,愛着障害 子ども時代を引きずる人々,光文社新書,2011年

[4]<論文>親子の愛着関係と青年期における気分状態・心身状態との関連性,澤村 貫太,HEP Vol.40, No.2, 2013
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jhep/40/2/40_253/_pdf

この記事の編集者
宮川 しおり
メンタル心理カウンセラー・看護師・養護教諭。公立病院や学校での勤務経験あり。現在は医療・健康分野のフリーライターとして活動中。
執筆者:浅田 愼太郎

監修者:浅田 愼太郎

新宿にあるおおかみこころのクリニックの診療部長です。心の悩みを気軽に相談できる環境を提供し、早期対応を重視しています。また、夜間診療にも力を入れており、患者の日常生活が快適になるようサポートしています。




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