「自分ではADHDだと思っていたけど、愛着障害ってのもあるらしい。
だけどよくわからない。」
このようなお悩みはありませんか?
愛着障害やADHDは似ている部分があり、混同されることがあります。
症状は似ていても対応方法は異なるため、注意が必要です。
もし誤った対応を続けてしまうと、悩みが改善しないばかりか症状の悪化も招きかねません。
この記事では、愛着障害とADHDの見分け方について詳しく解説します。
愛着障害とADHDが併発するケースについても載せているので、ぜひご覧ください。
愛着障害とADHDが混同される理由
愛着障害やADHDの人は、似たような行動がみられます。
そのため原因や対処法は異なるにもかかわらず、愛着障害とADHDは混同されやすいのが現状です。
以下が似ているといわれる特徴です。[1]
- 多動
- 片付けができない
- ルールが守れない
とくに「ADHD=注意欠如・多動性障害」という名称に引っ張られ、愛着障害による多動もADHDと誤解されがちです。
また「片付けが苦手」「ルールが守れない」という特徴も。
一見症状は同じものの原因が異なるため、それぞれに合った支援が必要です。
愛着障害とADHDの見分け方
愛着障害とADHDの見分け方を以下の表にまとめました。[1]
特徴 | 愛着障害 | ADHD | |
1 | 落ち着きがない | 多動のシチュエーションにムラがある | いつも多動 |
2 | 片付けが苦手 | 片付けた方がいい、片付けたら気持ちがいいという感情が育っていない | やろうとしても、計画通りに進めるのが難しい |
3 | ルールを守るのが苦手 | ルールを守ろうという意欲がない | ルールを守らなければという気持ちはあるが、衝動性を抑えられない |
4 | 不適切な行動に対する支援者の「意図的な無視」への反応 | 感情を逆なでされ、不適切な行動が増加 | 不適切な行動は軽減 |
5 | 場面による特徴のあらわれ方 | 違いがある集団がとくに苦手 | 違いがない |
6 | 両親について質問したときの反応 | 両親の話を避ける | 他の出来事と同じように話す |
7 | 過去のショッキングな出来事の影響 | 過去の出来事が原因 | 過去の出来事は関係なく、脳の機能が原因 |
その症状や行動の理由が異なるんですね。
落ち着きがない
愛着障害の多動は、変わりやすい感情の波が原因です。
気分によって多動であったりなかったり、ムラがあります。
ADHDでは気分や場所などに影響されることはなく、いつも多動の症状があらわれています。
片付けが苦手
愛着障害では「片付けた方がいい」という感情が育っていないことが多くみられます。
そのため、片付ける能力はあっても、やる気がなくてできないということになりやすいでしょう。
ADHDでは、片付けの技術や最後まで片付ける能力が育っていないケースが多くみられます。
ルールを守るのが苦手
愛着障害では「ルールを守ろう」という意欲が育っていないことがあります。
感情に左右されやすいのが特徴です。
一方、ADHDではルールを守った方がいいのはわかっているけれど、衝動性ゆえに守れないことがあります。
不適切な行動に対する支援者の「意図的な無視」への反応
子どもが不適切な行動をしたとき、それに対して支援者は反応せず「気にしない」「無視をする」という対応をすることがあります。
愛着障害では、無視をされると「自分を見てほしい」という感情を逆なですることになります。
「もっと自分に注目してほしい」という気持ちが強くなるため、注目されるために不適切な行動がさらに増えることも。
一方ADHDでは、この支援方法が効果的です。
不適切な行動が見られても反応をせずにいると、次第にその行動は減っていきます。
場面による特徴のあらわれ方
愛着障害では、集団か一対一かなど、場面によって特徴のあらわれ方が異なります。
とくに集団で過ごすときには「落ち着きがない」といった症状が出やすいのが特徴です。
ADHDでは、集団か一対一かなどの場面が変わっても、特徴の出方に変化はありません。
両親について質問したときの反応
愛着障害は、両親についての話題を避けがちです。
「お母さんは優しいです。」といったように、控え目で抽象的に答えます。
一方ADHDは「お母さんはいつも一緒におままごとで遊んでくれるから優しいです。」と具体的な表現を使いながら返答することが多く、表現力豊かに答える傾向があります。
過去のショッキングな出来事の影響
愛着障害は、過去のショッキングな出来事が影響していることがほとんどです。
たとえば、虐待や親との別れなど、つらい経験がきっかけになることも。
ADHDは、脳の機能が原因といわれています。
過去の出来事による影響で発症することは考えにくいとされています。
それぞれの対処法についてはこちらの記事をご覧ください。
愛着障害とADHDの併発について
愛着障害とADHDは併発することもあります。
併発する理由
愛着障害とADHDが併発する理由については、まだ研究の途中にあり明らかにされていません。
極端なネグレクトが発達障害を引き起こすという説や、発達障害が原因で愛着障害があらわれるという説もあります。
いわゆる「ニワトリが先か、タマゴが先か」の議論になっており、今後の研究が待たれるところです。
併発時の症状
愛着障害とADHDは症状が似ているうえに、併発するとそれぞれの症状が重なり診断が難しくなります。
そのため「併発している」という診断をすることも大変難しい状況です。
どのような症状が出るかは、個人の育った環境や現在の状況によって異なります。
愛着障害とADHD併発時の対処法
両者が併発しているケースでは、どちらか片方の支援だけではうまくいかないことも多いでしょう。
愛着障害とADHDの両方に対応するためには、以下のようなポイントをおさえる必要があります。[1]
感情を言葉にする
感情を意識的に言葉にすることが大切です。
悲しみや怒りなど、ネガティブな出来事へのストレスをやわらげることができます。[3]
もやもやした気持ちや怒りを感じたときなど、今の気持ちをノートに書いていきましょう。
その際、より詳しく表現すると効果があるといわれています。
「むかつく」を詳しく表現
・腹が立つ
・頭に血が上る
・怒りで体が震える
言葉で表現するのが難しければイラストや漫画でも構いません。
自分のありのままの気持ちを表現してみましょう。
自分を認めて褒める
愛着障害やADHDは、自分を認めるのが苦手。
幼いころから怒られたり、失敗したりする経験が多いことと関係があるとされています。
大切なのは「どんな自分でも認める」こと。
うまくいったときに自分も褒めるのはもちろんのこと、うまくいかなかったときでも自分を認めてあげましょう。
「ここまではできた」「全力を尽くせた」とありのままの自分を肯定することが大切です。
スモールステップで課題を乗り越える
スモールステップとは、少し頑張れば達成できる目標を設定することです。
仕事や勉強などで大きな目標を達成しようとするときは、課題を細かく分けてひとつずつクリアしていくとよいでしょう。[2]
片付けの課題のスモールステップ
・小さな引き出しを1段片づける
・棚全体を片づける
・部屋の一角を片づける
一気に片付けをしようとするのではなく、まずは「引き出し1段」から始めます。
スモールステップは、仕事や勉強などさまざまな場面に応用が可能です。
まとめ
愛着障害とADHDの違いを理解することは、適切な対処法を見つけるために必要です。
見分け方で大事なのは「なぜその行動をするのか」を探ることです。
同じような行動をしがちな両者ですが、行動の理由はそれぞれ異なります。
そこに焦点を当てると、自然と対処法も定まってくると考えられます。
また愛着障害とADHDは併発することも。
併発すると見分けることや対処が難しいケースが多々あります。
自分の症状と向き合い、少しずつ自分を認めていけるようなステップを踏むことが大切です。
専門の医療機関で相談するのもひとつの方法ですよ。
自分らしく、安心して過ごせる日々を手に入れましょう。
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参考文献・サイト
[1]<書籍>やさしくわかる! 愛着障害 理解を深め、支援の基本を押さえる,米澤好史,ほんの森出版,2018年
https://www.honnomori.co.jp/
[2]基本的な支援原則 | 国立障害者リハビリテーションセンター
http://www.rehab.go.jp/ddis/howto/study/principle/
[3]今の気持ちを書いてみる|こころと体のセルフケア|ストレスとこころ|こころもメンテしよう ~若者を支えるメンタルヘルスサイト~|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/stress/self/self_02.html#:~:text=%E3%82%82%E3%82%84%E3%82%82%E3%82%84%E3%81%97%E3%81%9F%E6%B0%97%E6%8C%81%E3%81%A1%E3%82%92%E6%8A%B1%E3%81%88,%E5%8B%95%E3%81%8B%E3%81%99%E3%80%8D%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%8C%E5%A4%A7%E5%88%87%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82
- この記事の編集者
- 宮川 しおり
メンタル心理カウンセラー・看護師・養護教諭。公立病院や学校での勤務経験あり。現在は医療・健康分野のフリーライターとして活動中。