なぜ生きづらい?ASD大人女性の特徴|仕事や恋愛の傾向、対策と相談先




仕事もプライベートもなんとなくうまくいかなくて、生きづらい感じがするんです。もしかしてASDかも?と思うのですが、大人女性のASDにはどんな特徴がありますか?

浅田先生
浅田先生

女性では一般的なASDの特徴とは違った症状がみられるよ。記事の中で解説するね

ASD(自閉スペクトラム症)は、以下3つの特性を持つ発達障害です。[1]

  • 社会的なやりとりが苦手である
  • 想像力が乏しく、こだわりがある
  • コミュニケーションがうまくとれない

女性はASDの症状に気づかれにくいため、大人になってから問題が表面化することも少なくありません。

今回は、ASDを持つ大人女性の特徴生きづらさを感じる場面について解説します。

自分でできる対策相談先についても解説しているので、あなたらしくラクに生きられる方法を見つけてくださいね。

ASDを持つ大人女性の特徴

女性のASDでは、以下3つの側面に特徴があらわれます。[2]

それぞれ解説します。

大人の発達障害について詳しく知りたい方は、こちらの記事をあわせてご覧ください。

想像力

ASDの特徴として、想像力が乏しく予定の変更にパニックを起こしたり、決まった順序にこだわったりすることが挙げられます。

ただ、ASDの女性は男性に比べて他人の観察やマネが得意とされるため、自分の気持ちよりも周囲が望む行動を優先し、症状が目立たない傾向があるのです。

そのため、男性のように派手な症状や暴言・暴力などの問題行動はあまり見られません。

空想の世界に入りやすいことも、ASDを持つ女性の特徴です。

たとえば、現実世界から逃避するためにイマジナリフレンド(空想上の友人)を作り、自分の世界に閉じこもることがあります。

周囲からは「変わった人」と思われ、友人や同僚の間で孤立することも少なくありません。

対人関係

対人関係における特徴は、受け身な態度をとりやすいことです。

周囲からは「シャイな人」「おとなしい人」として認識されやすく、大人数で賑やかに過ごすよりも、少数の親しい友人と一緒に過ごすことを好みます。

受け身な性格や自分の世界にひきこもりやすいという特徴から、いじめの対象になることもあるでしょう。

周囲に助けを求める方法がわからずひとりで苦しんだり、不登校になったりした経験がある方も多いとされています。

子ども時代に受けたいじめがトラウマとなり、対人関係に恐怖感を持ちやすいのも特徴です。

こころちゃん
こころちゃん

あくまで特徴のひとつと考えてくださいね

こだわり

女性のASDは社会生活に支障をきたすほどのこだわりや、常道行動(同じ行動を繰り返すこと)は少ないとされています。

男性のASDは電車や飛行機などの乗り物にこだわりを見せやすいですが、女性のASDでは人や物(ポップミュージックや馬、文学など)にこだわりやすいのが特徴です。

また、物事を「0か100か」にこだわって白黒思考になりやすい傾向もあり、感情のコントロールを苦手とする方も多くいます。

白黒思考について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。

大人女性がASDに気づくきっかけ

ASDを持つ大人の女性は、成長とともに自分への違和感を自覚するケースが多いとされています。

女性のASDに多いのは、受身型(自分から人と接触せず、誘われれば付き合うタイプ)や孤立型(他人と関わるのが苦痛でひとりでいることを好むタイプ)です。

「大声を出す」「暴力を振るう」などの問題行動は少ないため、幼少期から「おとなしい子」と言われ大きなトラブルなく成長した方も多いでしょう。

ただ、成長するにつれて複雑になる対人関係や恋愛、仕事での柔軟な対応の難しさから生きづらさを自覚し始めます。

その結果、ストレスで体調不良やうつ状態になって精神科を受診し、発達障害であることに気づくケースがあるのです。

こころちゃん
こころちゃん

女性の世界はいろいろ複雑になってきますよね💦

【セルフチェック】ASDの大人女性が生きづらいと感じる場面

ASDを持つ大人の女性が生きづらさを感じる場面として、以下3つが挙げられます。[1]

心当たりがあるかチェックしながら読み進めてくださいね。

対人関係編

対人関係では「会話が続かない」「悪気はないのに人を怒らせてしまう」という傾向がみられます。

女性は、話題をコロコロ変えながら話したり暗黙の了解で秘密を共有したりするなど、ASDが苦手とするコミュニケーションをとりやすいため、以下のような場面に遭遇しやすくなるのです。

会話が続かない
・興味のない話に加われない
・周りがなぜ笑っているのか理解できない
・話しの流れを理解できず唐突な話をしてしまう
悪気はないのに人を怒らせてしまう
・内緒話ができない
・「余計なひと言」が多い
・暗黙のルールが理解できない

対人関係に恐怖心や苦手意識を感じ、対人恐怖や抑うつ状態になるケースもあるため注意が必要です。

仕事編

仕事では「仕事が長続きしない」「次にやることがわからない」といった場面に遭遇しやすくなります。

仕事上のコミュニケーションでは、相手が求めていることを理解したり周囲の状況を確認したりする力が求められるため、ASDにとっては難しく感じることが多いのです。

仕事が長続きしない
・社交辞令が理解できない
・始業時間に遅刻してしまう
・自分なりのやり方を通して怒られてしまう
次にやることがわからない
・「自分で考えろ」と言われても困る
・上司の指示がわからず何度も聞いてしまう
・自分の仕事が終わったら何をすればいいかわからない

ASDに向いている仕事や働きやすくなる工夫が知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。

恋愛編

ASDの恋愛では「異性との接し方がわからない」「だまされやすい」という特徴があります。

恋愛では暗黙のルールや「なんとなくいい雰囲気」など、相手の気持ちやお互いの関係性をとらえる力が必要なため、つまずきを感じる方も多いのです。

異性との接し方がわからない
・友だちと恋人の違いがわからない
・長いメールを毎日送って相手に嫌われた
・声をかけられるのがうれしくて複数の男性と付き合った
だまされやすい
・「お金を貸して」と言われると断れない
・「ちょっと休もう」とホテルに連れ込まれた
・「好きだよ」と言われるとすぐに肉体関係を持ってしまう

恋愛につまずいて深く傷つき、対人関係が怖くなる方もいます。「早く対処法が知りたい」という方は、こちらからご覧ください。

ASDの大人女性ができる対策

ASDを持つ大人の女性ができる対策として、以下の場面について解説します。[1]

それぞれ見ていきましょう。

対人関係編

友人関係に強いストレスを感じるときは、付き合う人を見直す必要があります

以下に当てはまる人であれば、ムリのない付き合いがしやすいでしょう。

  • 趣味の合う人
  • ASDの特性を理解してくれる人
  • ムリに合わせなくても気楽に過ごせる人

とくにASDでは、自分を理解してくれる数人と信頼関係を築けると、付き合いの浅い友人が多くいるときよりも心強さを感じられます。

恋愛やファッションなどのガールズトークに苦手意識のある方は「ムリして雑談に参加しなくてもいい」と割り切ることも必要です。

自分の得意な話題のときだけ参加して、苦手な話題のときは「今はちょっと休憩タイム」ととらえてムリに参加せず自分を休ませてあげてください。

必要なときに必要なだけ関われて、お互いに気持ちのよい関係を築ける人と付き合いましょう。

こころちゃん
こころちゃん

ムリなく安心して過ごせる関係が良いですね

仕事編

仕事のストレスが大きいようであれば、特性に合った業務を担当するよう調整が必要です。

ASDに向いている仕事内容として、以下が挙げられます。

  • パソコンを操作する
  • 単純な繰り返し作業をする
  • マニュアルのある作業をする
  • 難しい漢字や文章を読み書きする
  • 細かな部品や書類を管理・整理する

苦手とする仕事内容としては、以下のようなものです。

  • 周囲の空気を読む
  • 話のウラを見抜く
  • スムーズな会話をする
  • 急な予定変更に対応する
  • お世辞やジョークを言う

職場に自分の特性を伝え、ムリなくできそうな仕事を任せてもらえるように相談しましょう。

恋愛編

ASDを持つ女性の恋愛は以下のような特徴がみられるため、ブレーキ役になってくれる存在が必要です。

  • 自分の中だけで恋人関係を作ってしまう
  • 押しの強い男性を好きになり相手に依存してしまう
  • 自分に親切な人や興味を持ってくれる人を好きになる

恋愛にのめりこんで相手とトラブルになったり深く傷ついたりするのを避けるため、家族や信頼できる友人に「ブレーキ役」をお願いしましょう。

自分と相手の状況を相談し「自分はこう思うんだけど、あなたはどう思う?」と意見を聞くよう心がけると安心です。

ASDの大人女性が相談できる場所

ASDを持つ大人の女性が相談できる場所として挙げられるのは、精神科や心療内科です。

女性はストレスで身体に症状が出やすいため、内科や婦人科を受診する方も多くいます。

ただ、発達障害の専門でない病院では正しい診断を受けることができません。

必ず発達障害の診療経験のある精神科や心療内科を受診しましょう。

精神科と心療内科の違いについて知りたい方は、こちらの記事をご相談ください。

おおかみこころのクリニックでは、発達障害を持つ女性の相談もお待ちしております。お気軽にご相談ください。

「病院に行く前に誰かに相談したい」という方は、全国の発達障害者支援センターに相談するのもよいでしょう。

発達障害者支援センターは、医療や福祉、労働などと連携し、発達障害を持つ人の日常生活や仕事、人間関係などの相談に応じている機関です。[3]

こちらからお住まいの地域の発達障害者支援センターにお気軽にお問い合わせください。

まとめ

大人のASD女性には、以下の特徴がみられます。

  • 空想の世界に入り込みやすい
  • 対人関係が苦手で受け身である
  • 白黒思考になりやすく感情コントロールが苦手である

女性のASDは症状がはっきりと現れないため、気づかれないまま大人になっているケースが少なくありません。

成長につれて複雑になる対人関係や恋愛、仕事での柔軟な対応ができず、自分に違和感を覚えて発達障害を自覚する方が多くいます。

生きづらさを放置すると対人恐怖やうつ病などの二次障害につながってしまうため、自分に合った対策をしましょう。

おおかみこころのクリニックでは、発達障害を持つ女性の相談をお待ちしております。お気軽にご相談ください。

【参考資料】
[1]女性の発達障害|宮尾益知 河出書房新社

[2]女性の自閉スペクトラム症の臨床的特徴と治療・支援のあり方|女性の ASD の臨床的な特徴
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jasmjournal/1/1/1_14/_pdf/-char/ja

[3]政府広報オンライン
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202302/1.html#thirdSection

この記事の執筆者
とだ ゆず
メンタルヘルスの記事を中心に執筆する看護師・保健師ライター。 精神科勤務での患者さんとの関わりや自身のうつ病経験から「人の心についてもっと知りたい」と思い、上級心理カウンセラーの資格を取得。 エビデンスに基づいた読者の心に寄り添う記事を心がけている。
執筆者:浅田 愼太郎

監修者:浅田 愼太郎

新宿にあるおおかみこころのクリニックの診療部長です。心の悩みを気軽に相談できる環境を提供し、早期対応を重視しています。また、夜間診療にも力を入れており、患者の日常生活が快適になるようサポートしています。




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