子どもがまだ思春期ではないのに「胸がふくらむ」「声変わりをする」などの症状があらわれ、不安を感じている方。
それが「思春期早発症」かもしれないと知り、治療が手遅れにならないか心配ですよね。
思春期早発症は治療が遅れると、大人になったときの身長が低くなったり周りより体の変化が早いことで戸惑ったりする可能性があります。
早めに治療に取り掛かれるよう、子どもの心身のサポートをしていきましょう。
この記事では、思春期早発症の治療が手遅れのときの問題点や日常生活での注意点について詳しく解説します。
この記事の内容
思春期早発症とは
思春期早発症は、性ホルモンが早い時期にたくさん出ることで、通常よりも早く大人の体に変化していく状態です。
具体的には、以下のような症状があらわれます。[1]
<男の子>
・9歳までに精巣が大きくなる
・10歳までに陰毛がはえる
・11歳までにわき毛やひげがはえる、あるいは声変わりする
<女の子>
・7歳6ヶ月までに乳房が大きくなり始める
・8歳までに陰毛やわき毛がはえる
・10歳6ヶ月までに月経が始まる
原因は脳や副腎などの腫瘍、家族が思春期早発症、不明なケースなどさまざまです。[1][2]
思春期早発症 治療が手遅れのときの問題点
思春期早発症が治療されないときの問題点について解説します。
身長の伸びが早く止まる
思春期早発症は、身長の伸びが早く止まることがあります。
早くに大人の体になり、骨の成長が止まってしまうためです。
一時的に身長が急激に伸びることがありますが、思春期が来るとそれ以上に成長することが難しくなります。
その結果、大人になったときの身長が低くなることがあるのです。[1]
最初はみんなより背が高いけど、最終的には背が低くなることがあります。
原因となる病気の発見が遅れる
思春期早発症の原因には、脳腫瘍や卵巣の異常など、重大な病気が隠れていることがあります。
これらの病気を早めに発見し、治療することが大切です。とくに男の子では、思春期早発症の原因として脳腫瘍が見つかることが多いため、注意が必要です。[1][2]
体の変化に戸惑いを感じることがある
周りの友達と比べて早い年齢で体の変化が起きると、子ども自身が戸惑いを感じることがあります。
また、周りの人から心ない言葉を投げかけられたり、からかわれたりすることがあります。これがストレスとなり、メンタルの不調を起こすことも。[1]
親も子どもと同様に戸惑いを感じるかと思いますが、子どもの不安や戸惑いに対してサポートをしていく必要があります。
思春期早発症の治療は何歳まで
「思春期が早く来ているかも」と思ったら、できるだけ早く受診し治療を開始する必要があります。
治療の開始年齢と効果
思春期早発症の治療は、早めに始めればその分効果が期待できます。
そのため「〇歳までに開始する必要がある」という明確な基準はなく「できるだけ早く始めるとよい」といえるでしょう。
気になる治療の効果ですが、女の子の治療と身長に関して以下のような調査が報告されています。[3]
・6歳以下で治療を開始すると、最終身長が9~10cm改善される
・6~8歳の女の子では、最終身長が4~7cm改善される
男の子の身長に関するデータはまだ十分でないのが現状ですが、9歳未満で治療する方がよいといわれています。
また、胸のふくらみや陰毛・わき毛などのその他の症状に関しては、治療を開始すると大人の体への変化がゆっくりに。
すでに生えている毛が抜けたり、声変わりが元に戻ったりすることはないといわれています。
治療の内容
思春期早発症になった原因ごとに治療内容は異なります。[4]
脳腫瘍や副腎腫瘍など思春期早発症の原因となる病気があるケースでは、その治療が優先です。
明らかな原因がないケースでは「ホルモンの分泌を抑える薬」を注射する治療を行います。
月に1回クリニックに通って注射を打つことになるため、薬の副作用に加えて通院や痛みなどの負担がかかることに。
そのため、治療の効果と目指すゴールをよく話し合って治療を決めていくことになるでしょう。
治療終了の目安
治療を終わりにする明確な基準は現在のところありません。
そのため、以下のような項目を目安に治療を終了します。[5]
・身長が伸びてきた
・体の発達に年齢が追い付いてきた
大切なのは「何を目的に治療をしているのか」ということ。身長への思いや体の変化への気持ちを家族でよく話し合うとよいでしょう。
思春期早発症 日常生活の注意点
思春期早発症の子どもが日常生活で注意することについて解説します。
子どものメンタルへの配慮
突然の体の変化に子どもは戸惑いや不安を感じます。
親がむやみに体の変化を指摘しないようにしましょう。
また「胸が目立つから水泳はやめようね」など、行動を制限するのもよくありません。
子どもが感じる不安やストレスに寄り添いながら、わかりやすく現状を説明することが大切です。
周囲への正しい知識の普及
友達や先生に、思春期早発症について正しい知識をもってもらうことが大切です。
子どもが心ない言葉をかけられたり、いじめられたりするのを防ぐ必要があります。
先生に病気について説明し、子どもが望めば先生からクラスの友達に説明してもらうのもよいでしょう。
子どもが安心して学校に通えるよう、周りの人への説明は必要です。
性教育の実施
思春期早発症の子どもには、症状に応じた性教育が必要です。
今起きている大人の体への変化について、わかりやすく説明します。
月経が始まっているときは、体調の変化や対処の仕方を教える必要があります。
また、妊娠のリスクについても適切に伝えることが重要です。子どもが症状について理解し、自分の体を守れるようサポートしましょう。
まとめ
思春期早発症は、早めに受診し適切な治療を行うことで、起こり得る問題を防ぐことができます。子どもの不安や戸惑いをやわらげるために、ていねいな説明や周りへの知識の普及をしていきましょう。この記事で紹介した方法を参考にしていただければ幸いです。
治療を開始するかどうかや、治療のゴールに正解はありません。家族でよく話し合い、子どもの心を守っていける道を探していきましょう。
24時間予約受付中
参考文献・サイト
[1]思春期早発症|一般の皆様へ|日本内分泌学会
https://www.j-endo.jp/modules/patient/index.php?content_id=86
[2]<論文>1.内分泌 b.思春期早発症の系統的診断法 日本産科婦人科学会雑誌 ACTA OBST GYNAEcJpNVol.54,No.8,pp.1186− 1199,2002(平成14,8月)
https://dl.ndl.go.jp/view/prepareDownload?itemId=info%3Andljp%2Fpid%2F10709588&contentNo=1
[3]<論文>Consensus statement on the use of gonadotropin-releasing hormone analogs in children,Pediatrics. 2009 Apr;123(4):e752-62. doi: 10.1542/peds.2008-1783. Epub 2009 Mar 30.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19332438/
[4]小児疾患(思春期早発症) | 大阪医療センター診療ナビ
https://osaka.hosp.go.jp/shinryo-navi/disease/r05.html
[5]思春期早発症の分類|厚生労働科学研究成果データベース
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2013/133151/201324013B/201324013B0023.pdf
- この記事の編集者
- 宮川 しおり
メンタル心理カウンセラー・看護師・養護教諭。公立病院や学校での勤務経験あり。現在は医療・健康分野のフリーライターとして活動中。