パートナーからの連絡が少し遅れると「嫌われてしまったのかな?」と途端に不安になってしまうことはありませんか?
別れや嫌われることへの不安が常に強いのなら、それは「見捨てられ不安」かもしれません。
見捨てられることに対する強い恐れがあると、どんなに愛されていても激しい不安にとらわれてしまうことがあります。
この記事では、見捨てられ不安の原因とその対策について解説します。
不安をコントロールし、安心できる人間関係を目指していきましょう。
見捨てられ不安と愛着障害の関係
見捨てられ不安とは、家族や恋人など親しい人に見捨てられることを過剰に恐れる心理状態です。
相手のちょっとした言動の変化にも敏感に反応し激しく嫉妬したり厳しく監視したりしてしまうことも。[1]
見捨てられ不安は、幼いころの親との関係やトラウマなどと関係しているといわれています。
また、さまざまな精神疾患の症状のひとつでもあります。見捨てられ不安を抱きやすい精神疾患は以下の通りです。[2]
・摂食障害
・不安型愛着障害
・境界性パーソナリティ障害 など
愛着障害のうち、不安型愛着障害が見捨てられ不安の原因になることがあります。
不安型愛着障害については、以下の記事で詳しく解説しているのでぜひ参考にしてください。
見捨てられ不安の原因
見捨てられ不安の原因についてみていきましょう。
親との愛着形成が不十分
親との愛着形成がうまくできていないと、見捨てられ不安があらわれることがあります。
愛着とは、人との間にできる信頼や絆のことです。[1]
子どもの頃に親から十分な愛情や安心感が得られないと、愛着形成が不十分なまま大人になります。
「何があっても親に見捨てられることはない」という信念がないため、他の人に対しても不安を感じやすいのです。
その結果「いつかは捨てられてしまうのではないか」という思いが強くなり、信頼関係を築くのが難しくなります。[3]
遺伝や生まれつきの性格
見捨てられ不安は、遺伝や生まれつきの性格の影響も大きいとされています。
中でも、見捨てられ不安を生じやすい「境界性パーソナリティ障害」は、遺伝が関係しているという報告も。[2]
また、脳や神経の機能に問題がある場合も不安を感じやすいといわれており、見捨てられ不安は生まれつきの性質の影響も大きいといえるでしょう。[2]
生まれ持った性質というケースもあります。
愛着障害に関連した見捨てられ不安の特徴
ここからは、不安型愛着障害に関連した見捨てられ不安の特徴について解説します。[1]
拒否や否定に対する不安が強い
見捨てられ不安を持つ人は、相手のちょっとした態度や言葉に敏感に反応しやすい特徴があります。
少し冷たく感じただけで、拒否されたと感じてしまい、不安が大きくなるのです。
また「自分は嫌われているのではないか」と心配しすぎてしまうため、常に相手の反応をチェックするようになります。
相手に逆らえない
見捨てられる不安から、相手の要求に逆らえずに無理をしてしまうことがあります。
その結果相手に利用されることがあっても、それに気づかず、尽くし続けてしまうことも。
見捨てられたくないという強い気持ちが、自分の意志を押し殺し、相手に逆らえない原因となるのです。
ないがしろにされたときの怒りが激しい
見捨てられることへの恐怖から嫉妬心が強くなり、相手を必要以上に監視・攻撃してしまうことがあります。
相手を傷つけるようなきつい言葉をあえて投げかけてしまうことも。
とくに無視されたり気持ちを軽く扱われたりすると、怒りがとても強くなります。
たとえば、パートナーの浮気や裏切りを何年も繰り返し責め続けてしまうというケースがあります。
捨てられる恐怖が強すぎるために、自分の気持ちをないがしろにされたとき怒りが激しくなるのです。
見捨てられ不安の影響
見捨てられ不安が続くと、次第に日常生活に影響が出ることがあります。
見捨てられることへの不安から精神的に疲れやすくなり、心がさらに不安定になってしまうのです。
人間関係がうまくいかず孤独感を抱きやすくなり、職場や学校で孤立してしまうことも。そうなると、仕事や学業がスムーズに進まなくなり、さらに不安が増してしまいます。
このような状態が長く続くと、不安にとらわれて何もできない…という状態に陥ることも考えられます。
見捨てられ不安を放置すると社会生活が難しくなり、うつ病やその他の精神的な病気を引き起こすリスクが高まるといえるでしょう。
見捨てられ不安の対処法
見捨てられ不安の対処法3つを紹介します。克服に向けて、ぜひ参考にしてみてください。
安心できる存在を得る
見捨てられ不安を克服するためには、安心できる第三者の存在が大切です。[1]
親しい友人や家族など、信頼できる人と話をすることで、不安が軽減されます。
一方、そういった存在を作るのが難しいという人も多いはず。
そのようなときは、オンラインコミュニティやチャットなどネットの世界を利用するのもひとつの方法です。
いつでも気兼ねなく自分を表現でき、それに対して応答をもらえるため、心のよりどころとする人も多くいます。
ただ、顔が見えないために相手への配慮に欠け、対面でのやりとり以上に傷つけられてしまったり、思いもよらないトラブルに巻き込まれてしまったりする危険も抱えています。
また、身近な人に限らず医師やカウンセラーなど医療関係者にその役割を担ってもらうのもひとつの方法です。
おおかみこころのクリニックでは、大学病院や精神科病院などで勤務歴のある臨床経験豊富な医師が多数在籍しています。ひとりで悩まず、お早めにご相談ください。
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不安をセルフコントロールする
強すぎる不安をコントロールするためには、セルフケアは大切なポイントです。[1]
瞑想やリラクゼーションのテクニックを取り入れる、自分の気持ちを整理するといった時間を持つことで、心の安定を保つことができます。
以下のような”不安対策メニュー”を用意しておくことで、不安になったときにすぐに実践できます。
いくつか考えておくと、その日の気分に合わせてメニューを選ぶことができるので試してみてください。[4]
・音楽を聴く
・運動をする
・深呼吸をする
・今の気持ちを書く
自分に合った対策を見つけていきましょう。
専門家の治療・カウンセリングを受ける
自分で対処しきれない場合は、専門家に相談することもひとつの方法です。
身近な人だと頼りすぎてしまう、依存してしまう、という傾向が強ければ、病院を”気持ちを吐き出す場”とする方法もあります。
カウンセリングや治療を受けることで、見捨てられ不安の根本的な原因を探り、より安定した人間関係を築くためのサポートが得られるでしょう。
まとめ
見捨てられ不安は、愛着障害や過去の経験が原因で起こりやすい症状です。
「大切な人に見捨てられてしまうかもしれない」という強い不安が「相手に逆らえない」「強い怒りを感じる」といった行動を引き起こします。
見捨てられ不安の克服ポイントは「不安のコントロール」。
この記事で紹介したような対処法を実践し、必要に応じて専門的なサポートを受けることで、安心して信頼できる関係を築けるようになるでしょう。
まずは、自分の不安の原因を知り、心を安定させるための一歩を踏み出してみませんか。
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参考文献・サイト
[1]<書籍>『愛着障害 子ども時代を引きずる人々』岡田尊司,光文社新書,2011年
[2]境界性パーソナリティ障害(BPD) – 境界性パーソナリティ障害(BPD) – MSDマニュアル プロフェッショナル版
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/08-%E7%B2%BE%E7%A5%9E%E9%9A%9C%E5%AE%B3/%E3%83%91%E3%83%BC%E3%82%BD%E3%83%8A%E3%83%AA%E3%83%86%E3%82%A3%E9%9A%9C%E5%AE%B3/%E5%A2%83%E7%95%8C%E6%80%A7%E3%83%91%E3%83%BC%E3%82%BD%E3%83%8A%E3%83%AA%E3%83%86%E3%82%A3%E9%9A%9C%E5%AE%B3-bpd
[3]<論文>青年期における見捨てられ不安に関する要因とその構造,呉明月,日本青年心理学会第24回大会発表論文集
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsyapp/24/0/24_56/_pdf/-char/ja
[4]こころと体のセルフケア|ストレスとこころ|こころもメンテしよう ~若者を支えるメンタルヘルスサイト~|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/docs/book_P9-14.pdf
- この記事の編集者
- 宮川 しおり
メンタル心理カウンセラー・看護師・養護教諭。公立病院や学校での勤務経験あり。現在は医療・健康分野のフリーライターとして活動中。