「今のままで、社会でやっていけるのかな」
「リワークって調べたら、意味ないって出てきたけど…どうしよう」
こころの調子を崩して休職中に、このような不安を抱えている方は少なくありません。
体調が安定してくると、復職に向けて動きたい思いと「またつらくなったらどうしよう」という怖さとの間で気持ちが揺れやすくなります。
リワークは、復職に向けてこころと身体をととのえる通所型の支援プログラムです。
専門スタッフのサポートのもと、生活リズムや対人スキル、自己理解などを深めながら社会復帰の準備ができる場所です。
この記事では、リワークの内容や費用、メリット・デメリット、リワークなしで復職はできるのかについて解説します。
リワークについて正しく理解し、今の自分に必要なのかを考えるきっかけになりますと幸いです。
リワークとは
リワークとは、メンタルの不調で休職されている方が職場復帰の準備をするための通所型リハビリ支援プログラムです。[1]
リワークの本人への支援目的には、以下のようなものが挙げられます。[2]
- 生活リズムを立て直す
- 基礎体力を向上させる
- 対人スキルを習得する
- ストレスの対処法を学ぶ
- 集中力や持続力を身につける
- 体調や気分の自己管理ができるようになる
たとえば、毎朝決まった時間に通所することで自然と生活リズムがととのったり、軽い運動や作業を通じて少しずつ体力をつけたりします。
また、グループ活動やロールプレイでは、人とのかかわり方や自分の気持ちの伝え方を練習することもできるのです。
リワークプログラムを通して「働くこと」に必要な心身の準備を行います。

リワークは、安心して職場復帰をするための支援です
対象者
リワークの対象者は以下のとおりです。[3][4][5]
- 休職中で復職を希望している方
- 雇用保険加入の事業所に雇用されている方
- 精神科やメンタルクリニックを受診して、精神疾患と診断されている方
リワークは休職中の方を対象としているため、離職予定の方や離職されている方は利用できません。
リワークは、雇用事業主側も利用できるのです。休職中の方が職場復帰する際に、業務内容の見直しや上司や同僚はどのようなことに気をつけるとよいのかなど、休職者の復職を受け入れる支援を行います。
種類・費用・目的
リワークプログラムには以下の3種類があります。
- 医療リワーク
- 職リハリワーク
- 職場リワーク
どのリワークを利用するのかは、主治医とよく相談してください。
それぞれの費用やおもな目的、違いについては以下のとおりです。[1]
- 医療リワーク
- 費用:健康保険適応
(通常3割負担:2,400円程度、自立支援医療は1割負担:800円程度)
目的:再休職を予防する
精神科デイケアやショートケア、精神科作業療法などの中でリハビリテーションの一部として行われています。
- 職リハリワーク
- 費用:無料
(公務員は利用できない)
目的:本人と雇用主に対して、職場への適応を支援する
都道府県に1ヵ所以上設置されている地域障害者職業センターで実施しています。
- 職場リワーク
- 費用:企業負担
目的:労働してもよいかを見極める
職場内で休職から職場復帰までを支援します。
医療リワークは精神科デイケアで行われています。精神科デイケアについては以下の記事をご覧ください。
通所期間
リワークの標準的な支援期間は12~16週間です。[4]しかし、通所頻度や期間は各施設や個人によって異なり、以下のようなパターンもあります。
- 利用説明~リワーク支援終了まで4~6か月間[3]
- 3週間の体験コースから始まり、3か月間のリワーク支援[6]
ほかにも、リワークデイケアとして精神科治療と組み合わせて行っている医療機関もあります。
あなたの目的や状況などに応じて、主治医やコーディネーターと相談しながら通所することが大切です。
リワークを利用するメリットとデメリット
「リワーク」と検索すると「意味がない」と出てくることがあります。
リワークは本当に意味がないのか、ここではメリットとデメリットについて見ていきましょう。
メリット
リワークを利用するメリットは以下のとおりです。[2]
- 段階的に復職準備ができる
- 同じ悩みを抱える仲間と出会える
- 専門職によるサポートが受けられる
たとえば、リワークプログラムのグループワークでは「自分だけじゃなかったんだ」と感じ、同じ経験をした人との出会いが力になることもあります。
また、不安や戸惑いがあるときも、医師や心理士、作業療法士などの専門職が近くにいて相談できるため、ひとりで抱え込まずに復職に向けた準備ができるのです。
もし、リワークを利用せずに職場復帰をすると、再びストレスを溜めて体調を崩し休職を繰り返すこともあるでしょう。
しかし、リワークを通してストレス対処法や対人スキルを学ぶことで、職場でのストレスをうまく回避できるようになり再休職予防にもつながるのです。
デメリット
リワークを利用するデメリットは以下のとおりです。[2]
- 費用がかかることもある
- 通所がしんどい日もある
- 人によっては職場との調整が難しい場合もある
リワーク通所は、ある程度の期間が必要です。そのため、気分や体調がすぐれないときは通うことがしんどい日もあるでしょう。
また、リワークの内容によっては、費用の自己負担が生じる場合もあり、経済的な面で不安を感じる方もいるかもしれません。
職場によってはリワークを知らないこともあります。そのため、利用者が職場にリワークを紹介したり復職時期の調整や連携に戸惑ったりすることもあるでしょう。[2]

最初はきついかもしれませんが、少しずつ頑張りましょう
リワークで行うプログラム
リワークで行われるプログラムは、各施設によって異なります。プログラムの例は、以下のとおりです。[2]
- ヨガ
- 卓球
- 事務課題
- 心理教育
- バドミントン
- ストレス対処講座
- グループミーティング
- コミュニケーションの練習
決められた時間に通所することも、リワークプログラムの一環となります。日課としてリワークに通所すると生活リズムを立て直すことができるのです。
また、リワークプログラムを通して、考え方のクセや、どのような状況でストレスを感じやすいのかなど、自分自身を客観的に捉えられるようになっていきます。
リワークなしでの復職は可能なのか
リワークは必須ではないため、リワークなしで復職をすることもできます。
しかし、リワークは再休職予防のための大切な選択肢です。
実際にリワークを利用して復職した方の声を見ていきましょう。
〈Aさん〉
リワーク支援に通っている方々と休職の原因や苦手なことなどを共有することにより自分の考え方の癖や他の考え方について気づけたことも役に立ちました。
〈Bさん〉
初めのうちは辛い時期もありましたが、リワーク支援の規則的なスケジュールは、自分の生活のリズムを立て直す上でとても効果がありました。
〈Cさん〉
全てのプログラムが自分にとって有用だったのですが、特に「認知行動療法」の理論をもとにしたストレス対処講習を通して自分の行動を振り返ることは、大きな気づきもあり、現在も仕事や日常の中で大いに役立っています。
〈Dさん〉
自分自身の今の感情や身体状況等を客観的にみることができるようになり、ストレスを感じることが少なくなりました。そのため、体調不良で突発的に休むことがほとんどなくなりました。
引用文献:うつ病などで休職しており、職場復帰をお考えの方に対する職場復帰支援(リワーク支援)職場復帰支援(リワーク支援)- ご利用者の声 -|高齢・障害・求職者雇用支援機構
リワークを利用せずに復職もできますが、利用された方は自分自身と向き合うきっかけになり、復職がスムーズにいっている方が多いようです。
まとめ|リワークは「頑張る」より「安心する」ための選択肢
復職前は「復職して大丈夫かな?」「また同じことにならないかな」と不安に思うことが多くあります。
リワークは、復職への不安を安心に変えるための準備を行える場所です。
常に前に進むのではなく、こころと身体をととのえてから復職すると「ムリなく仕事を続けられる」という勇気につながります。
ムリに頑張る必要はありません。いま感じている不安も戸惑いも、リワークを通して少しずつ整理していきましょう。
迷っているあなたが少しでも安心して次の一歩を踏み出せるように、おおかみこころのクリニックは、いつでも相談にのります。お気軽にお問い合わせください。
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【参考文献】
[1]リワークプログラムとは|日本うつ病リワーク協会
[2]うつ病などで休職しており、職場復帰をお考えの方に対する職場復帰支援(リワーク支援) 職場復帰支援(リワーク支援)- ご利用者の声 -|高齢・障害・求職者雇用支援機構https://www.jeed.go.jp/location/chiiki/hokkaido/q2k4vk0000025tjv-att/q2k4vk000003vrne.pdf
[3]リワーク支援の利用に関するQ&A|高齢・障害・求職者雇用支援機構
https://www.jeed.go.jp/location/chiiki/tokyo/q2k4vk000003ymue-att/q2k4vk000003yn4q.pdf
[4]地域障害者職業センターの精神障害者職場復帰支援(リワーク支援)について|那須 利久
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000022whe-att/2r98520000022wkf.pdf
[5]休職者の職場復帰をサポートする職場復帰(リワーク)支援のご案内|高齢・障害・求職者雇用支援機構
https://www.jeed.go.jp/location/chiiki/tokyo/q2k4vk000003ymue-att/q2k4vk000003ymyt.pdf
[6]休職者からリワーク施設の利用希望がありました|菅野由喜子
https://www.johas.go.jp/Portals/0/data0/sanpo/shokubafukki/download/kyushokusha_rework_kibou_7.pdf
- この記事の執筆者
- 柚木ハル
作業療法士。精神科16年の臨床経験を生かして執筆を担当。現在は訪問リハビリに従事しながら幅広いジャンルにて執筆中。