「精神科デイケアに行ってみたいけれど疲れないか心配」
「人とかかわるのが不安」
精神科デイケア利用を考えて、このように感じていませんか。
新しいことを始めるときは、誰でも「失敗したらどうしよう」と不安に感じてしまうものです。
勇気を出して一歩踏み出せば、穏やかなこころで人とのつながりを築ける場所がきっと見つかります。
この記事では、精神科デイケアに向いている人やメリットとデメリット、自立訓練との違いを紹介します。
精神科デイケアについてのイメージが伝わり、新たな一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。
精神科デイケアについて、料金・プログラム内容・手続きの流れ等の概要を知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
精神科デイケアに向いている人
精神科デイケアには、以下のような人が向いています。
- 症状が安定している人
- 孤独を感じている人
- 家族の介護負担を軽減したい人
- 社会とのかかわりを持ちたい人
精神症状が安定して生活自体は落ち着いているけれど、自宅で過ごすことに孤独を感じてしまう人は、まずはデイケアへ出かけるとよいでしょう。
デイケアに行くと、スタッフやデイケアメンバーに会えるため、自然と人との関わりが生まれ「ひとりではない」と安心できます。
また、仕事復帰するのは不安があるけれど社会とのつながりを持ちたい人や、自宅で過ごす時間を減らして家族の負担を軽減したい人も精神科デイケアが向いています。

「誰かと話したいな」と思ったらデイケアを利用してみるとよいでしょう
精神科デイケアのメリット
精神科デイケアに通うメリットは以下のとおりです。
デイケアのイメージを膨らませ、検討する際の参考にしてください。
再発防止になる
精神科デイケアへ通うと再発防止につながります。
厚生労働省の調査によると、精神科デイケア等の利用後に再入院者数・平均再入院回数・平均再入院期間が減少しています。[1]
精神科デイケアでは自分の病気について学ぶ機会や、ストレスを軽減するプログラムなどがあり、自覚症状やストレスへの対処法が身に付けられるのです。
たとえば、勉強会で病気の特性や再発予防のための注意点を学んだり、SSTのロールプレイを通して感情をコントロールする方法を学んだりできます。
体調が悪いときにも、専門スタッフがすぐに気づき適切な対処をしてくれるため、症状の悪化を防げるでしょう。
社会復帰の準備ができる
精神科デイケアでは、社会復帰に向けての準備ができる点もメリットです。
精神科デイケアには、社会生活に必要なさまざまなスキルを身に着けられるプログラムが用意されています。
たとえば、パソコンスキルを獲得するプログラムや、就労に向けて面接練習やビジネスマナーの知識を学ぶプログラムもあります。
ほかにも、ヨガやストレッチ、太極拳、ウォーキングなどの動系プログラムを活用することで、楽しみながらムリなく体力をつけることができるでしょう。
デイケアでの経験が自信となり、社会復帰へのスムーズな移行ができるようになります。

デイケアを利用することで社会復帰の模擬練習のようなことができます
居場所や相談場所ができる
精神科デイケアは、安心して過ごせる居場所になります。
病気や症状を理解してくれているスタッフがいるため、「なにかあったらどうしよう」と不安を感じることなく過ごせるでしょう。
家でひとりで過ごしていると孤独を感じたり悪い方向に物事を考えたりするときは、自宅以外に安心できる居場所があると、こころ穏やかに過ごせるのです。
また、精神科デイケアには同じ悩みを持つ仲間が通うため、互いに励まし合い相談できる場所となります。
生活リズムをととのえられる
精神科デイケアデイケアへの通所は、日中の生活リズムをととのえるきっかけになります。
決まった時間に起き、身支度をととのえてデイケアに通うという日課ができると、自然と生活リズムがととのえられるでしょう。
日中デイケアでプログラムに参加し、適度な活動を実施することで夜間の睡眠の質も向上します。
通所先が昼食を提供するデイケアであれば、適切な時間にバランスの取れた食事がとれ健康的な生活ができます。
また、デイケアでは季節に応じたイベントが用意されることが多いので、自宅にいると曖昧になりがちな季節の移り変わりも感じながら過ごせるでしょう。
コミュニケーションスキルが身に着けられる
精神科デイケアでは、デイケア仲間やスタッフとの交流を通してコミュニケーションスキルが身につけられます。
活動プログラムの中には、SST(社会生活技能訓練)という人との接し方や自分の気持ちの伝え方などの社会的スキルを習得するためのトレーニングがあります。[2]
ロールプレイを通して、自己表現や相手の気持ちを理解し、対人関係での困りごとに対処するための具体的な方法を学びましょう。
精神科デイケアのデメリット
精神科デイケアに通うデメリットは、以下のとおりです。
以下では各デメリットの詳細を、対応策と共に紹介していきます。
料金がかかる
精神科デイケアは医療保険や自立支援医療制度の対象ですが、一般的には自己負担金が必要です。
1日の利用料金は施設や利用時間によって異なりますが、おおよそ以下のとおりです。[3]
通常保険適応(3割負担):2,300円~2,500円
自立支援医療(1割負担):750~850円
料金を負担に感じるなら、利用時間や通所回数で調整ができるためデイケアスタッフやケアマネージャーに相談してみてください。
集団行動が必要になる
精神科デイケアのプログラムは、集団で行うものもありストレスを感じることもあるでしょう。
なかには、人前で発言したり集団での活動に加わったりする機会があるため、心理的な負担を感じることがあるかもしれません。
負担を感じるときは、以下のような対策をしてください。
- 離れた場所で休憩する
- 集団行動を必要としないプログラムを選ぶ
このように、スタッフと相談しながらムリなく参加することが大切です。
デイケアに参加する前に、あなたが集団行動が苦手なことをスタッフに伝えておくとよいでしょう。
慣れるまでは疲れを感じる
新しい環境に慣れるまでは、誰でも少なからず疲れを感じます。
デイケアに慣れるまでは、以下のようなことを負担に感じるでしょう。
- デイケアの雰囲気に慣れること
- 他の利用者との関係を築くこと
- プログラムの内容に慣れること
まずは、通所回数を少なく設定したり短時間利用にしたり、運動量の少ないプログラムに参加するなど、あなたのペースに合わせて通所し少しづつ慣れていけるようにしましょう。
利用者間でトラブルが起きる
精神科デイケアにはさまざまな症状や背景を持つ方が集まるため、人間関係のトラブルが発生することがあります。
なかには、症状の特性から他者への配慮が難しい方や、感情コントロールの困難さからトラブルが生じやすい方もいるでしょう。
少しでもストレスに感じるできごとがあったら、スタッフやケアマネージャーに相談して、ひとりで抱え込まないようにしてください。

もちろん、やさしい方も多くいらっしゃいます。
クラスや職場にもいじわるな方がいるのと同じような感覚です。
デイケアまで移動時間がかかる
自宅からデイケアまでの移動には、時間と交通費がかかります。
体調が優れない日や悪天候の日には、通所自体が大きな負担となることがあるでしょう。
通所が不安なときは、家族に送迎を頼んだり送迎のあるデイケアを選んだりするのもひとつの手です。
デイケアを選ぶ際は、交通の利便さや移動手段も考えてみてください。
精神科デイケアと自立訓練との違い
精神科デイケアのほかに、社会復帰を目指すときに有用なサービスとして自立訓練があります。
精神科デイケアと自立訓練の違いは以下のとおりです。[4]
精神科デイケア | 自立訓練 | |
制度 | 医療保険 | 障害者総合支援法(障害福祉サービス) |
提供機関 | 医療機関 | 障害福祉サービス事業所 |
申請・相談先 | 主治医、通院している医療機関 | お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口、相談支援事業所など |
期間 | 主治医の判断により比較的長期間の利用も可能 | 原則2年以内 |
自立訓練とは、障害者総合支援法に基づく福祉サービスで、医療機関ではなく障害福祉サービス事業所にて提供される訓練です。
障害福祉サービス事業所は、地域の福祉法人やNPO法人、社会福祉協議会などが運営していることが多くあります。
事業所によって内容は異なりますが、精神科デイケアよりも自立に向けての実践的な訓練が多く用意されています。
たとえば、料理や洗濯、掃除などの家事を実際の道具を使って練習したり、自宅や銀行での金銭管理方法を学んだり、衣食住に関わる生活の動作を一つひとつ実践できるのです。
利用できる施設や申請方法は、お住まいの市町村の障害福祉担当窓口にお問い合わせください。
精神科デイケアか自立訓練の利用先を迷うときは、主治医や精神保健福祉士、相談支援専門員などの専門家に相談し、どちらのサービスがあなたに合っているか一緒に考えてもらいましょう。
まとめ
精神科デイケアは、以下のメリットがあります。
- 病気の再発防止
- 社会復帰の準備
- 居場所の確保
- 生活リズムの安定
- コミュニケーションスキルの向上
精神科デイケアでは集団活動が多いため、最初は疲れを感じることもあるかもしれません。大切なのは、あなたのペースでムリなく通うことです。
職業復帰に向けて、より実践的な訓練がしたいときは障害福祉サービスの自立訓練を利用することもできます。
デイケアに通ってみようかなと迷っているなら、まずは主治医に相談し、あなたに合ってそうなデイケアを聞いてみましょう。
そして、気になるところがあれば見学に行ってみてください。
あなたにとって居心地のよい場所を見つけ、新しい生活への一歩を踏み出してみましょう。
おおかみこころのクリニックでも、デイケアについての相談ができます。
まずは、お気軽にお問い合わせください。
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【参考文献】
[1]平成25年度障害者総合福祉推進事業 「精神科診療所における地域生活支援の実態に関する全国調査について」|厚生労働省
0000068289.pdf
[2]社会生活技能訓練 (SST) | 再発・入院の予防 | こころとくらし by 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 地域精神保健・法制度研究部
[3]精神科デイケア診療報酬の自己負担額|東京都
r6sinryohoshu
[4]自立訓練(機能訓練・生活訓練)に係る 報酬・基準について|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000670106.pdf