休職を決意し会社に診断書を提出したにも関わらず、上司から「診断書について病院に確認する」と言われると不安を感じるでしょう。
心身の調子が優れない中で会社からの疑いの言葉は、さらに気持ちを追い詰めます。
実は、会社が病院に診断書の内容を確認するには、必ずあなたの同意が必要です。適切な対応方法を知れば、冷静に状況を解決できます。
この記事では、会社から「診断書について病院に確認する」と言われたときの対応について解説します。あなたの権利を守り、安心して療養に専念できる環境をととのえる助けになれば幸いです。
診断書の確認には本人の同意が必要
原則として、会社が病院に対して診断書の内容を確認する際には、本人の同意が必要です。[1]
診断書に記載された内容以上の情報を会社が病院から得ることは、病院が他人にあなたの医療情報を渡すことにあたります。[1]
会社は情報を取得する目的をあらかじめ本人に説明し、承諾を得る必要があります。その上で、あなたから情報を提供してもらうのが望ましいです。
会社が一方的に病院へ問い合わせ、診断書の内容を得ようとするのは違法行為にあたる可能性があります。
会社が病院に診断書の内容を確認する動きがあったとしても、本人の同意が必要となる点を理解しておきましょう。同意が必要だと把握しておくだけでも、今後の対応を冷静に考えられます。

病院は勝手に個人情報を開示できません
会社が診断書を求める理由
会社が診断書を求める理由には、おもに2つあります。
- 社員の健康状態を知る
- 休職期間の目安を把握する
会社が診断書の提出を求める理由は、社員の健康状態を正確に知るためです。社員の健康回復を優先に考え、適切なサポート体制をととのえるために、診断書が必要になります。
また、会社は診断書をもとに休職する期間の目安を把握します。人員の配置や業務の引き継ぎなどの計画を立てるのに役立つのです。
下記の記事では診断書がなくても休職できるかを解説しているので、あわせてご覧ください。
会社から「診断書について病院に確認する」と言われたときの対応
会社から「診断書について病院に確認する」と言われたときの対応を3つ紹介します。
一方的な確認は問題があるため、落ち着いてあなたの権利と状況を整理することが大切です。
病院に相談する
まずは、診断書を発行した病院や主治医に相談しましょう。
会社側が診断書の内容に疑問を持っていたり、追加情報が必要だと考えていたりすると、病院への確認を打診するケースがあります。
事前に医師に「会社が診断書の内容を確認しようとしている」と伝えておきましょう。また、会社が求める情報が診断書だけでは不足していると判断されれば、診断書の追記や再発行などの対応をしてくれます。
医師は医療の専門家であると同時に、患者のプライバシーを守る立場にあります。事前に相談しておくことで、不必要な情報の開示を防げるのです。

医師に電話がつながらなければ、電話口の人に「どうしたらよいですか?」と相談してみましょう
同意書がいると伝える
会社側から「病院に確認する」と言われたら、本人の同意なしに勝手に取得できないと伝えましょう。
会社の一方的な行動を防ぎ、話し合いの時間を確保できるようになります。
「診療情報の提供に関する指針」によれば、診療記録の開示を求められるのは原則として患者本人だけです。患者の同意がないにもかかわらず第三者へ診療の記録を開示することは、医師の守秘義務に反します。[2]
「本人の同意がないと病院から情報の開示はされない」と丁寧に会社へ伝えることで、会社側も慎重な対応をとるでしょう。
情報の流出を防ぎつつ、落ち着いて話し合いができる環境をととのえられます。
どんな情報が必要かを聞く
会社側にどのような情報を病院に確認したいと考えているのか、直接聞いてみるのも対応策のひとつです。
会社が懸念している点や足りないと感じている情報が明確になれば、必ずしも病院へ直接確認する必要はありません。会社に情報を提供したり、医師に相談して診断書に追記してもらったりすることで解決できるでしょう。
また、確認が必要な理由を尋ねれば、会社側の意図を正確に把握できます。その上で本当に必要な情報か、病院への確認という手段が適切かを判断し、より穏便な解決策を探れます。
会社が何を知りたいのかを冷静に聞き出す姿勢が、問題を解決へ導くポイントです。
会社が病院に診断書を確認したときの対処法
勝手に会社が診断書の内容を病院に確認してしまったら、不安な気持ちになるでしょう。もし実際にそうなったときには、次の3つの対処法があります。
事実関係を正確に把握し、適切な対応を取りましょう。
病院に確認する
会社が病院へ問い合わせたら、病院に事実確認をしましょう。病院の受付や担当窓口に連絡を取り、次の点を聞いてみてください。
- 会社の担当者
- 問い合わせ日時
- 問い合わせ内容
- 病院が伝えた内容
正確な情報を得ることで、状況を客観的に判断できます。
病院には守秘義務があるため、あなたの同意なく情報を開示することは原則ありません。しかし、万が一の可能性も考慮し、丁寧に事実を確かめる姿勢が大切です。

「会社から連絡ありませんでしたか?」と尋ねてみてください
会社に説明を求める
会社に対して経緯や意図について説明を求めましょう。
本人の同意を得ずに医療情報を収集することは、プライバシーの侵害にあたる可能性があります。会社がしたことが本当に問題なかったのか、あなたのプライバシーや立場を守るために、きちんと説明を求めることが大切です。
具体的にはどのような目的で何を聞いたのか、どんな情報を得たのかを質問しましょう。説明を求めるときは、感情的にならず冷静に話を聞いてください。可能であれば、話し合いの内容を記録に残しておきましょう。
会社からの説明に納得できるか、誠実な対応が見られるかを確認してください。
公的機関に相談する
会社の説明に納得できない、または不誠実な対応だと感じたら、公的機関への相談も有効な手段です。
公的な第三者機関は、労働問題や個人情報保護に関する専門知識があります。そのため、客観的なアドバイスや必要なサポートを受けることが期待できます。
具体的な相談窓口のひとつは、総合労働相談コーナーです。労働に関するさまざまな問題について無料で相談できます。
また、個人情報の取り扱いが問題となるときは、個人情報保護委員会も相談先のひとつです。個人情報の適正な取り扱いを監視しており、事業者に対する指導や助言などをします。
公的機関に相談することであなたの状況を客観的に把握し、今後の対応について具体的なアドバイスを得られます。
まとめ
会社に診断書を提出した際に「病院に確認する」と言われると不安になるかもしれません。ただし、会社が診断書の内容を超える情報を病院に確認するには、本人の同意が必要です。
もし会社から診断書について病院に確認すると言われたら、まず病院に相談し、会社には同意が必要である旨を伝えましょう。万が一、同意なく会社が病院に確認したときは、会社に説明を求めてください。
場合によっては総合労働相談コーナーといった公的機関に相談することも検討しましょう。
あなたの権利を守り、安心して療養に専念できる環境をととのえるために、冷静かつ適切な対応を心がけましょう。
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おおかみこころのクリニック
【参考文献】
[1]第5回 診断書等の個人情報の取扱いに関する注意点は?:社会保険労務士に聞いてみよう-メンタルヘルスQ&A-|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト
https://kokoro.mhlw.go.jp/mental-health-qa/mh-qa005
[2]診療情報の提供に関する指針[第2版]|日本医師会
https://www.med.or.jp/doctor/rinri/i_rinri/000318.html