ADHDの薬で性格が変わる?その理由と向き合い方










「なんだか落ち着いたね」
「最近、性格が変わったんじゃない?」

自分でも落ち着いてきた実感はあるものの「これが本当のわたしなのかな」と違和感を覚えていませんか。

ADHDの薬により症状がやわらぎ、今までと感情の出し方や人とのかかわり方が変わったのかもしれません。
そのため、以前の自分とのギャップに戸惑うこともあるでしょう。

この記事では、ADHDの薬を飲んで性格が変わったように感じる理由や、周囲からの反応に戸惑う気持ちとの向き合い方について解説します。

あなたの不安がやわらぎ「薬を飲んでも自分らしくいられる」と思えるきっかけになれば幸いです。

ADHDの薬を飲むと性格が変わるのか

「ADHDの薬を飲むと性格が変わる」と言われる理由は、薬によって行動や人とのかかわり方が変わるためです。

これは、あなたの性格そのものが変わったわけではありません。

ADHDの薬により症状がやわらぎ、周囲への反応や感情表現が穏やかになることで、周りの人からの印象が変わるのです。

ある調査では、子どものころにADHDと診断された方の40~60%は、大人になってもADHDの症状が続いているという報告があります。[1]

つまり、子どものころから20~30年ものあいだ、ADHDの症状と付き合っているのです。

そのため、以下のようなADHDの症状も「自分らしさ」だと思い生活していることがあるでしょう。

  • 物をよくなくす
  • 細かなミスが多い
  • 注意力が続かない
  • タスク管理が苦手
  • 話を最後まで聞くのが難しい

このようなADHDの症状を「性格の一部」だと思って過ごしていると、薬を飲み始めたときに「性格が変わった」と感じるのも不思議ではありません。

また、周りの人からも「なんだか落ち着いたね」「性格が変わった?」と言われ、あなた自身も「前の自分じゃない気がする」と感じてしまうでしょう。

「ADHDの薬がよくないのかな」と不安なときは、下記の記事をあわせてご覧ください。

「性格が変わった」と言われて戸惑う気持ちとの向き合い方

周りの人から「性格変わった?」と言われて違和感を覚えるのは、あなたが自分らしさを大切に思っているからです。

ADHDの治療薬は、不注意や衝動性、多動性のような日常生活で困る症状をやわらげるサポートをします。[2]

そのため、周りの人から以下のように言われることも少なくありません。

  • 「雰囲気が変わったね」
  • 「なんだか落ち着いた?」
  • 「今までと反応がちがうね」

このように言われると、自分が抑えつけられているような気がしたり周りに合わせるために演じているように感じたりすることもあるでしょう。

たとえば、今までは思ったことをすぐに言葉にしていたのが、薬を飲み始めてからは落ち着いて話すようになったと気づいたとき、自分らしさを失っているのではと感じるのです。

けれど、これはあなたの性格が変わったのではなく、あなた自身がもっていた落ち着きが目立ってきただけかもしれません。

ADHDの薬物治療は、学習や生活の中でくり返される困りごとに対して用いられます。
行動が落ち着いたり集中しやすくなったりすることで、やる気や集中力を高め自信につながるケースもあるのです[2]

そのため「落ち着いた」と言われて違和感を覚えたときは、その違和感を否定せずに「どこの症状がととのったのかな」とあなた自身に優しく問いかけてみてください。

少しずつ「ととのった今の自分」と付き合っていくことで、あなたにとってムリのない生活につながっていくでしょう。

こころちゃん
こころちゃん

今のあなたと向き合うことが大切です

「ADHDの薬で性格が変わったのかも」と不安なときに考える3つのポイント

ADHDの薬を飲んで「性格が変わった」ように感じると、薬を飲み続けるか迷うこともあるでしょう。

薬を飲み続けるかは、今の生活での困りごとや状況により異なります。

あなた自身と向き合うためにも、以下の3つを考えてみてください。

それぞれ詳しく解説します。

自分らしさについて考える

「性格が変わった」と感じたら、まずは自分らしさについて考えてみてください。

長い間ADHDの症状と共に生きてきたからこそ、薬を飲むことで「前の自分じゃない」と感じることがあるでしょう。

たとえば、落ち着いて相手の話をゆっくり聞けるようになったなら、それもあなたの中にあった性格の一部が引き出されたのかもしれません。

ただ、ADHDの症状こそが自分らしさだと感じることもあります。

大切なのは今のあなたが心地よく過ごせているかどうかです。

「今の自分にしっくりこないのは、今までの自分とどこが違うからだろう?」と考えることで、違和感の正体やあなたにとって本当に心地よい状態が見えてくるでしょう。

こころちゃん
こころちゃん

今の状態で日常生活で困りごとがあるか考えてみてください

治療の方向性について主治医に相談する

不安や違和感をひとりで抱え込まずに、主治医に正直に伝えることも大切です。

薬の効果や副作用は一人ひとり異なります。

そのため、以下のように思いのままを伝えてみてください。

  • このまま薬を飲み続けてよいのか不安です
  • 薬を飲んで性格が変わった気がして怖いです
  • 性格が変わったと言われるのは薬のせいでしょうか?

「薬を続けるべきか迷っている」とそのまま相談することで、薬の種類や量、他の治療法について主治医と一緒に考えるきっかけになります。

気になることを抱え込んだまま治療を続けるのではなく、あなたが「これなら自分らしくいられる」と感じられるような状態を見つけることが大切です。

薬が効いているのか気になるときも、主治医に相談しましょう。

コンサータが効かないと感じるときは、下記の記事もあわせてご覧ください。

薬を飲む前と今で困りごとがどのように変化したかを振り返る

薬を飲む前と今で、どのように困りごとが変化したかを振り返りましょう。

例として以下のようなことが挙げられます。

  • 忘れ物が減った
  • 会話の途中で口を挟まなくなった
  • 家族や職場とのトラブルが減った

ほかにも、家族や職場とのやりとりがスムーズになったり、先延ばしが減りやりたいことに取り組めるようになったりすることもあります。

ポイントは、性格が変わったかどうかではなく「前と比べてどのようにラクになったのか」という視点です。

薬で性格が変わったと不安なときは、今のあなたがラクに過ごせているかを振り返ってみてください。

まとめ|性格が変わったではなく「今の生活が心地よいか」を考えよう

ADHDの薬を飲んで「性格が変わった」と感じるのは、症状がやわらいだことで今までの自分との違いに気づいたからかもしれません。

ただし、これはあなた自身が変わってしまったわけではありません。

ADHDの症状が落ち着き、もともと持っていた落ち着きや柔らかさが引き出されたとも考えられます。

大切なのは、今のあなたが心地よく過ごせているかどうかです。

違和感を覚えたときには、ムリにポジティブにとらえようとせず、どんな状態が自然体だと感じられるかを考えてみましょう。

薬との付き合い方や治療の方向性に迷ったときは、ひとりで抱え込まずに主治医や信頼できる人に相談することも選択肢のひとつです。

おおかみこころのクリニックへお気軽にご相談ください。

おおかみこころのクリニック

【参考文献】

[1]大人の注意欠如多動症の認知行動療法p1|中島 美鈴
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjghp/36/3/36_200/_pdf/-char/ja

[2]注意欠如多動症(ADD,ADHD)|MSDマニュアルプロフェッショナル版

この記事の執筆者
柚木ハル
作業療法士として精神科で17年の臨床経験を積み、現在は訪問リハビリに従事。経験を生かしメンタルヘルスを中心に、やさしく寄り添う文章を心がけて執筆しています。
執筆者:浅田 愼太郎

監修者:浅田 愼太郎

新宿にあるおおかみこころのクリニックの診療部長です。心の悩みを気軽に相談できる環境を提供し、早期対応を重視しています。また、夜間診療にも力を入れており、患者の日常生活が快適になるようサポートしています。




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