復職後にまた体調を崩してしてしまうと「わたしは社会に向いていないのかも」「もう戻れないのでは」と感じる方も少なくありません。
ただ、焦らずこころと身体をととのえていけば、また安心して働く日を迎えることは可能です。
うつ病の回復には波があります。悪化のきっかけを見直すことで、少しずつあなたらしいペースを取り戻せるでしょう。
この記事では、復職後すぐ休職してしまう背景と感じやすい不安、その後の過ごし方について解説します。
同じような不安を抱えている方が、少しでも安心できるきっかけになれば幸いです。
この記事の内容
復職後すぐ休職する人は少なくない
復職後すぐ休職することは決して珍しくありません。
以下のように、うつ病によって再休職する方は時間の経過とともに増加する傾向があります。[1]
- 1年後:28.3%
- 2年後:37.7%
- 5年後:47.1%
この数字は復職後すぐの休職だけを指すものではありませんが、復職から一定期間が経つと再び休職する方が多いことを示しています。
復職後すぐ休職するのは特別なことではなく、誰にでも起こり得るものです。
「また休んでしまった」と自分を責めるのではなく、回復の途中で再び休むことも治療の一環であると考えましょう。
下記の記事では休職したいと思うことは甘えなのかについて解説しています。あわせご覧ください。
復職後すぐに休職してしまう理由
復職後すぐに休職してしまう理由として以下が挙げられます。
それぞれ解説します。
職場のストレスが強い
復職後すぐに休職してしまう大きな理由のひとつは、職場の強いストレスです。
企業によっては、主治医と職場が連携を取り、回復の基準(例:1日中机に座っていられる、日中の眠気をコントロールできるなど)を設けているところもあります。[2]
ただ、多くの現場では十分に配慮されにくいのが実情です。
たとえば、実際の職場では復職直後にもかかわらず、以下のような状況になることが少なくありません。
- 残業が発生する
- 以前と同じ仕事量を求められる
- 異動で新しい人間関係に直面する
こうした職場のストレスは、復職後すぐ休職する大きな要因になります。
再休職を防ぐためには、段階的に業務に戻れるよう相談しながら調整することが大切です。
プレッシャーを感じる
プレッシャーを感じて頑張りすぎてしまうと、復職後の休職につながりやすくなります。
復職後は「早く周りに追いつかなければ」「もう迷惑をかけたくない」というプレッシャーを感じる場面は少なくありません。
ただ、復職して間もない段階でムリを重ねると、疲労やストレスが蓄積しすぐ休職するリスクが高まります。
とくに、責任感が強い方や完璧主義の傾向がある方ほど自分に厳しい傾向があるため、60%程度の力で動くよう意識しましょう。
「もっと頑張らなきゃ」と思うのは前向きな気持ちですが、うつ病の回復においては「頑張らないことを頑張る」ことも大切です。
焦らず少しずつペースを取り戻していくことが、長く働き続けるための近道になります。
回復していないまま復職する
回復していないまま復職すると、すぐ休職するリスクが高まります。
うつ病の回復期には、元気そうに見えてもこころと身体がまだととのっていないケースが多いものです。
以下にあげるうつ病の残遺症状(治療後に残る症状)に心当たりがあるときは、再発のリスクがあるため慎重な職場復帰を検討しましょう。[3]
- 不眠
- 疲労感
- 軽いうつ症状
焦りを感じて早く復職する方も少なくありませんが、うつ病の回復には時間が必要です。
あなた自身を責めず、主治医と相談しながら少しずつ進むことを大切にしてください。
復職後すぐ休職したときに知っておきたいこと
復職後すぐ休職したときは、以下のような不安を感じやすくなります。
- 「会社や同僚に迷惑をかけてしまった」という罪悪感
- 「周囲にどう思われているか気になる」という対人不安
- 「わたしは社会に向いていないのかも」という自己否定感
うつ病の回復期は感情が揺れやすく、自己評価が低下しやすい時期です。
そのため不調を努力不足と感じたり、周囲からの評価を気にしすぎたりするかもしれません。
ただ、うつ病は波がある病気であり、治療や回復の過程で立ち止まることも自然なことです。
ひとりで抱え込まず主治医や信頼できる人に気持ちを話し、復職後すぐの休職を防ぎましょう。
以下の記事では突然の休職は迷惑になるのかについて解説しています。あわせご覧ください。
復職後すぐの休職を繰り返さないための工夫
復職後すぐの休職を繰り返さないための工夫として、以下が挙げられます。
それぞれ解説します。
生活リズムを安定させる
生活リズムをととのえることは、再発や復職後すぐの休職を防ぐために大切です。
うつ病では、睡眠リズムの乱れが再発リスクと深く関係していることがわかっています。
とくに「眠りが浅い」「就寝・起床時間が一定しない」などの状態が続くと、自律神経のバランスが崩れ気分の波が大きくなるおそれがあるのです。[4]
たとえば、以下のような工夫が役立つでしょう。
- 休日の起床時間を2時間以上ずらさない
- 寝る前1時間はスマホを見ないようにする
- 眠れない日は横になるだけでもOKと考える
生活リズムを安定させる工夫は、復職後すぐ休職することを防ぐための有効な方法といえます。
「これならできそう」と思える工夫から始めることで心身のリズムがととのい、再休職の予防につながります。
ストレス対処力を高める
復職後すぐの休職を防ぐ工夫のひとつに、ストレス対処力を高めることが挙げられます。
復職後は、仕事の負荷や人間関係のストレスを受けやすい時期です。
ストレスをうまく調整できないと気分の落ち込みや不安が高まり、すぐ休職することにつながるおそれがあります。
たとえば、復職後も通院を続けて心理療法を受けたり、自宅で軽いストレッチをしたりするのもストレスの軽減が期待できます。
ストレスをなくすことは難しいため、ストレスとうまく付き合う力を身につけてください。
ストレス反応に気づき呼吸や意識の切り替えで対処できるようになると、再休職のリスクを減らす助けになるでしょう。
段階的に勤務時間を増やすよう調整する
復職後すぐの休職を防ぐには、焦らず段階的に復帰を調整することが大切です。
厚生労働省も再発防止のために、ゆとりある職場復帰を勧めています。[2]
以下のように、ムリのないペースで勤務時間を調整しましょう。
- 残業はしない
- 短時間勤務から始める
- 負担の少ない業務から再開する
ただ、勤務時間の調整はあなただけでできるものではありません。
必要に応じて主治医に意見書(勤務時間や業務内容に関する医師の意見)を書いてもらい、職場と調整しましょう。

あなたのペースでムリのない復職を目指しましょう!
復職後すぐ休職を繰り返すときに|rTMSという選択肢
復職後すぐの休職を繰り返してしまい、うつ病がスッキリ治らないときの選択肢としてrTMS(反復経頭蓋磁気刺激)という治療法があります。
rTMSは脳を磁気で刺激する治療法で、薬の効果が十分でないときや副作用のために服薬が難しい方にも選択肢となる方法です。
また、うつ病の再発の防止にもrTMSの効果が期待されることが報告されています。[5]
「薬や休養だけでは体調が安定しづらい」「すぐ休職するかもしれない」という不安が強いときは、rTMSにより再発のリスクを下げられる可能性があります。
ご興味のある方はおおかみこころのクリニックにご相談ください。
ご自宅からの相談をご希望されるときは、オンライン診療のご利用が便利です。
当日予約・自宅で薬の受け取り可能
治療と両立しながらあなたのペースで働こう
復職後すぐに休職を繰り返すことは、決して珍しいことではありません。
うつ病の回復は波があり、焦りや自己否定が再発のきっかけになることもあります。
大切なのは「またやり直せる」という視点を持ち、生活リズムの安定やストレス対処など、できる範囲からととのえていくことです。
薬や休養だけでは体調が安定しにくい場合は、rTMS(反復経頭蓋磁気刺激)により再発予防や回復のサポートを受けられる可能性があります。
ムリに頑張ろうとせず、治療を続けながら「自分のペースで働く力」を取り戻していきましょう。
オンライン診療では、全国どこからでもおおかみこころのクリニックにご相談いただけます。お気軽にお問い合わせください。
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【参考資料】
[1]うつ病休暇 半数再取得について 3881|公明党
[2]2 職場との連絡、相談等|こころの耳
https://kokoro.mhlw.go.jp/return/return-worker/rw002
[3]日本うつ病学会治療ガイドライン Ⅱ.うつ病(DSM-5)/ 大うつ病性障害 2016
https://www.secretariat.ne.jp/jsmd/iinkai/katsudou/data/20190724.pdf
[4]Hyong Jin Cho
Sleep Disturbance and Depression Recurrence in Community-Dwelling Older Adults: A Prospective Study
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2707854
[5]反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)による治療抵抗性うつ病への維持療法|鬼頭 伸輔
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsbpjjpp/33/2/33_67/_pdf/-char/ja
- この記事の執筆者
- とだ ゆず
精神科看護師としての経験を活かし、メンタルヘルスを中心とした記事を執筆。こころと身体のつながりを大切にしながら、そっと寄り添う文章を心がけています。
保有資格:看護師、保健師、上級心理カウンセラー、漢方養生指導士









