精神科の診察は何を話すのか|話しちゃダメなことや伝えるべきこと







精神科の診察って何を話せばいいんでしょう?「どうですか?」と聞かれても、何を答えればいいかわからなくて困っています。

浅田先生
浅田先生

精神科の診察で話すことは初診(はじめての診察)か再診(2回目以降の診察)かでも違ってくるよ。記事の中で解説するね!

精神科の診察で「あなたの困っていることや話したいことを自由に話していいですよ」と言われても、何を話せばいいかわかりづらいですよね。

今回の記事では精神科の診察で話すことを初診と再診にわけて解説します。

話してはいけないこととくに伝えたほうがよいこと診察までに準備するメモについても解説するので、あなたが精神科を受診するときの参考にしてください。

記事の最後にはよくある質問にも答えているので、この記事を読んで精神科受診への不安を解消し、あなたが安心して診察を受ける手助けができれば幸いです。

「精神科か心療内科、どっちを受診しよう?」と悩んでいるときは、こちらの記事をご覧ください。

精神科の診察で何を話すのか

精神科の診察で話すことは初診(初めての診察)再診(2回目以降の診察)で異なります。それぞれ解説します。

初診

初めての診察である「初診」は、これまでの出来事や仕事、学校、日常生活の様子などについての質問に答える形で話します。

30~50分程度の時間がかかるため、診察の前に心理士や看護師と面談し、情報をまとめてから医師が診察する病院も多いのが特徴です。

具体的には以下のような質問をされるため、ひとつずつ答えましょう。[1]

■主訴(病院を受診した理由)
・いま一番困っていることはなにか
・受診は自分の希望か、誰かに勧められて来たのか

■現在の症状
・身体の調子(頭痛、肩こりなどの痛み、だるさ、吐き気、めまい)
・こころの調子(不安、落ち込み、焦り、死にたいと感じるか)
・いつからストレスを感じ始めたか
・どのくらい続いているのか
・どの程度の症状か

■生活の様子
・生活習慣(起床・就寝時間、寝つき、中途覚醒の回数、日中の活動内容)
・食事(食事回数、食事内容、味はするか、おいしいと感じるか)
・仕事をしているか

■発達の様子
子どものころに発達の問題を指摘されたことはあるか
(発達障害について相談したいときは、母子手帳や学校の成績表など幼少期の様子が具体的にわかるものを用意すると診察に役立ちます)

■教育歴
通っていた学校や両親の教育態度など

■家族歴
家族に精神疾患を持つ人はいるか

■既往歴
今までに精神疾患にかかったことや精神科を受診したことがあるか

このように質問を通して症状や悩みについて話しながら、病状や今後の治療方針などを考えます。

「こんなこと言ったら怒られるかも」「伝わらないかも」と本音を隠す必要はありません。

日頃言えない素直な気持ちを話してくださいね。

再診

2回目以降の診察である「再診」では、前回の受診からの変化を答えます。

困ったことや相談がある場合は、以下のポイントをまとめておきましょう。

  • いつから、どのような症状に困っているのか
  • 症状のきっかけとなった出来事はあるか

以下のような例を参考にしてください。

困ったことの相談例
「職場の人から連絡がきてから、悪夢を見たり金縛りにあったりして困っています。思ったよりも仕事がストレスになっているんだなと感じて、復帰できるか心配になってしまいました。」

精神科は具合の悪いところを伝えるイメージがあるかもしれませんが、よくなったことを伝えるのも大切です。

例として以下が挙げられます。

よくなったことの伝え方例
「調子を崩してから読書ができなかったのですが、久しぶりに本を読みたくなって20分ほど集中して読めました」

「次の診察でなにか話さなきゃ!」と具合の悪いこと探しに集中するのではなく、調子のよい部分やできていることにも目を向けてくださいね。

精神科の診察で話してはいけないこと

精神科で話してはいけないことは、とくにありません。

ただ、精神科の医師は1日50~80人の診察をするため、ひとり5~7分程度の診察時間しかとれないのが現状です。[2]

前回の診察からの出来事をまとまりなく話すと、本当に伝えたいことが伝わらない可能性があります。的確なアドバイスや治療を受けるために、簡潔にまとめてから伝えましょう。

以下の例を参考にしてください。

「今日は相談したいことが2つあって…。1つ目は、薬を変えてから仕事中も眠くて困っているんです。2つ目は、体調が悪いときの上司への相談方法がわからないので、一緒に考えてほしいと思っています」

わかりやすく伝えられる量としては、A4用紙1枚にまとまるくらいの程度が理想的です。[2]

何枚にもわたって書くとすべてに目を通せないため、困っている症状やよい変化など、伝えたいことに優先順位をつけて3つくらいに絞っておきましょう。

「メモにまとめた方が話しやすい」「メモの書き方を先に知りたい」というときは、こちらをご覧ください。

こころちゃん
こころちゃん

何を話しても大丈夫ですよ!

精神科の診察でとくに伝えたほうがよいこと

精神科の診察でとくに伝えたほうがよいこととして、以下が挙げられます。

それぞれ解説します。

治療の目標

「自分はこうなりたい」という目標ができたら医師に伝えましょう。

治療を進めるうちに医師と患者で目指すゴールがズレてしまうことがあります。

たとえば「医師は復職前提で話を進めるけど、自分は転職したい(退職して休養に専念したい)と思っている」というような形です。

目標がズレたままだと医師への不信感につながり、治療のモチベーションが低下したり治療自体がストレスになったりします。

あなたが安心できる未来に向けて治療を進めるために、目標ができたときや目標が変わったときは医師に伝えてください。

医師に伝えにくい場合は、看護師や臨床心理士などに伝えてくださいね。

希望する治療方法

希望する治療方法がある場合は、医師に伝えましょう。

以下のような例が挙げられます。

  • なるべく薬を飲みたくない
  • 同じ病気を持つ人とつながりたい
  • 考え方を変えるためにカウンセリングを受けたい

受診先で希望する治療が受けられないときは、状態に応じて実施できる医療機関を紹介してもらえます。[2]

「こうなりたい」「やってみたい」というあなたの思いは、治療する上でとても大切なものです。

遠慮せず医療者に伝えてくださいね。

精神科の診察までにメモを準備する

診察室で話せる自信がない人は、事前にメモを用意するのがおすすめです。

A4用紙1枚にまとまる程度に、伝えたいことを箇条書きで書きましょう。

簡単にまとめることで診察時に医師が目を通しやすく、自分でもメモを見て話すことを理解しやすくなります。

「何をメモしたらよいかわからない」という方は、以下を参考にしてください。

  • 身体の調子(頭痛、肩こりなどの痛み、だるさ、吐き気、めまい)
  • こころの調子(不安、落ち込み、焦り、死にたいと感じるか)
  • 症状が現れ始めた時期や程度
  • 困っていること
  • よかった出来事
  • 医師への質問

メモを見ながら自分で話しても、メモをそのまま医師に渡しても構いません。

渡すタイミングがわからない人は、受付のときにスタッフに渡してもOKです。

あなたが安心して話せる方法を試してください。

こころちゃん
こころちゃん

批判されることはないので、あなたが話しやすい方法で大丈夫ですよ♪

Q:医師に言いたいことを言えないときはどうすればいよい?

医師に言いたいことを言えないときは、以下の方法を参考にしてください。

■診察室で何を話せばよいかわからないとき
事前に症状や質問などをまとめたメモを準備しましょう。
メモを準備することで「何を話そう?」という不安や緊張感が和らぎ、リラックスして診察を受けられます。
メモのまとめ方についてはこちらをご覧ください。

■「なんとなく主治医に話しづらい」と感じるとき
看護師や臨床心理士などのスタッフに相談しましょう。
受付のときに「先生には言いづらいことがあるので、他の方に話したいのですが…」と相談してください。
看護師や臨床心理士があなたの話をまとめて医師と共有したり、伝えやすい方法を一緒に考えたりします。
「これは先生に言ってほしくない」という希望があるときは、勝手に医師に伝えることはないので安心して相談してくださいね。

こころちゃん
こころちゃん

相談しやすい人に話すことから始めてみましょう!

Q:診察で話したいことがないときはどうすればよい?

話したいことがないときは、ムリに話題作りをしなくてもよいでしょう。

「今日はとくに相談したいことはありません」というときがあってもOKです。

いつも話したいことが思い浮かばない人は、セルフモニタリング(自分の状態を観察すること)がおすすめです。

ノートやアプリに睡眠や食事の様子、今日の出来事、気分などを簡単にメモしておきましょう。

診察のときに「今週はこのような感じでした」と医師に見せれば、セルフモニタリングをもとに医師が様子を把握したり質問したりします。

セルフモニタリングのアプリについて詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

Q:「こんなこと言ったら○○と思われるのではないか」と不安…

医師が診察中に考えているのは以下のようなことです。[2]

  • 原因は何だろう?
  • 薬は効いたかな?
  • 治療方針はどうしよう?
  • 症状は安定しているかな?
  • どんな言葉なら伝わりやすいかな?

医師はあなたの症状を少しでもラクにするために話を聞いています。

なにを言っても「この人は○○だ」とレッテルを張るようなことはありません。

「眠れましたか?」「ご飯は食べてますか?」などの質問をするのは、合格や不合格を決めているわけではなく、あなたの状態を少しでも正確に知るためです。

「こんなこと言ったら…」とつらい気持ちをひとりで抱え込まず、安心して調子の悪いあなたを見せてくださいね。

まとめ

精神科の診察で話すことは、初診か再診かによって異なります。

初診で話すのは、これまでの出来事や仕事、学校、日常生活の様子や現在の悩みです。

再診では前回からの変化(困ったことはあったか、よい出来事はあったか)について話します。

診察室に入ると何を話せばよいかわからなくなる方は、事前にメモを用意しておきましょう。

メモを読み上げてもよいですし、医師や受付のスタッフに渡しても構いません。

医療者はあなたがどんなことを話しても「○○な人だ」とレッテルを貼ることはなく、あなたが少しでも安心して治療に臨めるように協力します。

普段言えないことや他の人には見せられない調子の悪い部分を、安心して吐き出してくださいね。

おおかみこころのクリニックでは、あなたのご相談をお待ちしております。自宅からの受診が安心な方はオンライン診療のご利用がおすすめです。ぜひお気軽にご相談ください。

【参考文献】
[1]精神科医療における医師-患者関係(1)――精神科医療の契約法・序説
http://repository.seikei.ac.jp/dspace/bitstream/10928/1307/1/hougaku-92_29-71.pdf

[2]精神科の受診や特徴までがわかる発達障害・メンタル不調などに気づいたときに読む本|浜内彩乃 ソシム

この記事の執筆者
とだ ゆず
メンタルヘルスの記事を中心に執筆する看護師・保健師ライター。 精神科勤務での患者さんとの関わりや自身のうつ病経験から「人の心についてもっと知りたい」と思い、上級心理カウンセラーの資格を取得。 エビデンスに基づいた読者の心に寄り添う記事を心がけている。
執筆者:浅田 愼太郎

監修者:浅田 愼太郎

新宿にあるおおかみこころのクリニックの診療部長です。心の悩みを気軽に相談できる環境を提供し、早期対応を重視しています。また、夜間診療にも力を入れており、患者の日常生活が快適になるようサポートしています。




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