「診断書なしで休職はできるのか」
「会社にはどう伝えればよいのか」
体調が優れず休職を考えているものの、病院に行けず診断書を用意できないために悩んでいませんか。
ムリして仕事を続けるのは、心身に負担をかけます。
「診断書がないから休職はできない」と諦めてしまう前に、会社に相談したり他の書類を用意したりする方法もあります。安心して休職するために、できることを試していきましょう。
この記事では、休職時に会社が診断書を求める理由、診断書なしで休職するときの注意点を解説します。休職につながる一歩を後押しできれば幸いです。
診断書なしで休職できるケースもある
原則として休職には診断書が必要ですが、会社のルールや状況によっては例外的に認めてもらえるケースがあります。
たとえば、就業規則で条件によっては診断書を不要としていたり、診断書に関する明確な規定がなかったりするケースです。このようなときは、人事担当者や上司に事前に相談しましょう。
また、長期休職ではなく短期の休養であれば、有給休暇の活用も選択肢のひとつです。
有給休暇は取得理由を問われないため、1~2日ほどであれば上司の判断で診断書の提出が免除されることもあります。
ただし、有給休暇は根本的な療養には限界があることを理解しておきましょう。
「診断書なしでは休職できない」と諦める前に、まずは自社の就業規則を確認し上司に相談することから始めてください。

会社独自のルールがないか確認してみましょう
会社が診断書を求める理由
休職時に会社が診断書を求める理由には、次の3つがあります。
それぞれについて見ていきましょう。
健康状態を把握する
休職時に会社が診断書の提出を求める理由は、休職を希望する社員の健康状態を把握するためです。
診断書は、あなたの病気の状態を伝えるための書類です。診断書には、次の内容が記載されています。
- 病名
- 症状の程度
- 療養に必要な期間
会社は社員が本当に労働できない状態なのか、どの程度の期間休養が必要なのかを客観的に判断できます。
口頭での自己申告だけでは、症状の重さや回復の見込みを正確に伝えるのは難しく、誤解が生じる可能性もあるのです。
医師からの診断書があれば、会社は社員の健康状態を正しく理解し、職場復帰を支援する計画を立てやすくなります。社員の体調を把握するために、診断書は欠かせない書類です。
休職の対応を進める
休職時に会社が診断書の提出を求める理由は、正式な休職手続きを進めるためです。
休職制度は社員が療養に専念し、再び健康な状態で業務に戻れるようにするための仕組みです。しかし、適切な運用には一定のルールが必要になります。
診断書は、医師が療養の必要性を認めている客観的な書類です。診断書があると、個人的な都合による長期欠勤ではなく正当な休職であると判断できます。
さらに、診断書に基づいて休職期間の設定や社会保険の手続きなど、具体的な対応も進められます。診断書がないと休職の判断基準が曖昧になり、制度の運用が困難になる可能性があるのです。
そのため、多くの会社では休職を認めるための重要な判断材料として、診断書の提出を規則で定めているのです。

休職手続きに必要な書類になっている会社もあります
職場の業務を調整する
休職時に会社が診断書を重視する理由は、社員に適した職場環境や業務内容を調整する必要があるためです。
診断書には病状やケガの状態だけでなく、日常生活や業務への影響、復職にあたって配慮すべき事項などが記載されています。
たとえば、精神的な不調で休職していた社員が復職するとき、診断書に「徐々に業務に慣らす期間が必要」といった医師の意見が記されているケースがあります。その際に、会社は配置転換を検討したり、業務の軽い仕事を担当させたりといった配慮を行うのです。
診断書に記載された情報は、ムリなく働き続けられるための具体的な対策をするために欠かせません。社員は療養や治療に専念でき、スムーズな職場復帰や就業継続が期待できます。
診断書なしで休職するときの注意点
会社の就業規則で診断書の提出が義務付けられているにもかかわらず、提出せずに休んでしまうと不利な扱いを受けることがあります。
就業規則に反した際に無断欠勤とみなされ、減給や懲戒解雇などの処分を受ける可能性があることです。自己判断で欠勤を続けるのは避けましょう。
また、働いていない期間については原則として給料は支払われません。働かなければ賃金は発生しないという「ノーワーク・ノーペイの原則」に基づいているからです。[1]
さらに、給付金や傷病手当金なども、医師の診断書がないと受け取れないのが一般的です。
これらのリスクを避けるためにも、事前に会社へ相談することが大切です。
会社に診断書を出せと言われたときの対策
診断書の提出が難しい事情を人事担当者や上司へ具体的に説明しましょう。
たとえば、次のような事情で提出が難しいケースもあります。
- 初診の予約が取りづらい
- 検査の結果を待っている
- 病院に行く時間を作れない
診断書が発行されるまでのつなぎとして、まずは医師に「療養証明書」や「診療情報提供書」など、診断書に代わる医師からの証明書類を作成できないか相談してみましょう。
あわせて、会社にもそのような代替書類で対応できるかどうかを確認してみてください。
大切なのは説明をしないまま休むのではなく、早めに連絡を取り誠実に対応しようとする姿勢を示すことです。そうすれば、会社側も事情を理解し柔軟な対応を検討してくれるでしょう。
適応障害で休職する際の正しい伝え方を知りたい方は、下記の記事もあわせてご覧ください。
休職以外に診断書が必要なケース
診断書は、休職の手続き以外にもさまざまな場面で提出が求められます。具体的には、次のようなケースがあります。
・給付金の申請
民間の医療保険で入院・手術の給付金を請求するとき、保険会社によって定められた診断書が必要です。
・障害年金の申請
病気で生活や仕事に支障が出た際に申請する障害年金では、障害の種類や程度を記した診断書が審査の書類となります。[2]
・傷病手当金の申請
健康保険の傷病手当金を申請する際、申請書に医師が労務不能期間などを証明する欄があるため診断書が必要です。病気やケガのために会社を休み、会社から十分な報酬が受けられないときに支給されます。[3]
給付金や障害年金などの制度を利用する可能性も考慮し、診断書の重要性を理解しておきましょう。
下記の記事では適応障害で傷病手当金がもらえない理由を解説しているので、あわせてご覧ください。
まとめ
診断書なしで休職することは、会社の就業規則や状況によっては不可能ではありません。
ただし、多くの会社では休職の際に診断書の提出を規則で定められています。診断書は社員の健康状態を把握し、休職の手続きや復職の支援をするために必要です。
もし診断書をすぐに提出できないときは、正直に会社に相談しましょう。診断書なしで休職できるかどうかにかかわらず、体調に不安を感じたら早めに医療機関を受診してください。
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【参考文献】
[1]賃金に関する基本問題~最新の法改正や新型コロナウイルス感染症への対応を交えて~|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/churoi/roushi/dl/R021012-2.pdf
[2]障害年金|日本年金機構
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/jukyu-yoken/20150401-01.html
[3]病気やケガで会社を休んだとき|全国健康保険協会
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/sb3040/r139