「学校に行かない子どもが、だんだん昼夜逆転してきた」
「このままでは普通の生活に戻れなくなるのでは……」
このような不安を抱えていませんか。
文部科学省の調査によると、不登校児童の保護者の約40%、中学生の保護者の55%が「不登校になって昼夜逆転していた」と答えています。[1]
不登校になった子どもの昼夜逆転は、実は珍しくありません。
昼夜逆転する背景には、さまざまな要因があります。
病気や障害、もしくは学校に行けない辛さから、あえて夜に活動している可能性もあるでしょう。
この記事では、昼夜逆転の治し方や子どもとの関わり方について解説しています。お子さんが健やかな暮らしを送れるようお手伝いできれば幸いです。
昼夜逆転が続くと起こること
成長期の子どもが昼夜逆転の生活を続けていると以下のような影響が出ます。
- 勉強が遅れる
- 体調が悪くなる
- 人と関わる機会が減る
- もとの生活リズムに戻るのが難しくなる
不登校で昼夜逆転が続くと、学習の遅れが出やすくなります。また、不規則な生活で体調を崩しやすくなる可能性もあります。
また、昼夜逆転の状態では人との交流が減るため、孤立感を感じるでしょう。
こうした影響を受けると、復学は難しくなります。仮に復学したとしても、元の生活リズムを取り戻すのは難しいかもしれません。
復学を目指して昼夜逆転を治していきましょう
不登校中に昼夜逆転になる理由と対策
不登校の子どもが昼夜逆転になる主な原因は以下の通りです。
1つずつ見ていきましょう。
夜更かしをしている
夜はゲームやスマホ、インターネットに没頭する子どもがたくさんいます。
遅い時間であれば家族も眠っているため、親の目を気にせず自由に過ごせるためです。
昼夜逆転がつづくと生活リズムを元に戻しにくいため、不登校が続いてしまいます。早めの対策が必要です。
夜更かしの対処法は以下の通りです。
- 就寝時間を決める
- ゲームやスマホの使用時間を決める
- 寝る1時間前にはスマホやゲームをしない
いきなり「スマホもゲームもダメ!」と言わず、徐々に使う時間を短くしましょう。
大切なのは子どもが自分で納得してルールを守れるようになることです。
焦りや不安から眠れなくなる
不登校になって一番焦っているのは本人です。
「明日こそ学校に行かなければ」と考えると、緊張や不安、焦りから目が冴えてしまいます。
結果、夜しっかり眠れず、午後になって起きる生活リズムがが出来上がるのです。
主な対策は以下の3つです。
- 日記を書く
- 寝る前にリラックスする時間を作る
- カウンセリングを受ける
日記は感情の整理に有効です。頭の中のモヤモヤを紙に書き出すと、客観的に自分の心をとらえることができます。自分の悩みやつらさがわかり、対処しやすくなります。
また、寝る前に家族とゆっくり過ごしたり温かい飲み物を飲んだりして、ほっとする時間を設けるのもおすすめです。
もしそれでも子どもがつらそうな様子であれば、専門家のカウンセリングを受けてみましょう。
ときには専門家をたよることも大切です
日中に起きているのがつらい
午前中に起きると、皆が通学しているのがわかり「自分はどうして学校に行けないんだろう」とつらくなります。
夜は静かで、周りの動きを感じることが少ないため気持ちが落ち着きます。そのため、昼夜逆転していく子どももいます。
対策は以下の3つです。
- 家の手伝いをしてもらう
- 趣味を楽しむように伝える
- 買い物や食事など外に連れ出す
日中にあえて用事を作り、誘ってみましょう。好きなことがあるなら、昼間に思い切り楽しむ時間を設けてあげてください。
学校のことには触れず「あなたと一緒に過ごしたい」「あなたに楽しく過ごしてほしい」と伝え続けることが大切です。
こうした親の言葉は、子どもにとってとても心強いものです。
病気が隠れている[2][3][4]
病気や障害のために、昼夜逆転になっている可能性もあります。ここで、考えられる主な病気や障害の特徴について見てみましょう。
うつ病 | 眠れない、もしくは眠り過ぎる |
起立性調節障害 | 午前中に動きづらく、夜になると元気になる |
睡眠相(そう)後退症候群 | 日中の眠気や倦怠感が強い寝ようと思っても早くに寝付けない |
上記の症状がみられるなら、まず心療内科に相談しましょう。診断内容と家庭での対応の方法を教えてくれます。
家庭では、規則正しい生活リズムに切り替えていく意識が大切です。根気よく対応していきましょう。
生活リズムを整える方法として、カーテンを完全に光を遮らないものに変えてみてください。朝に自然光を取り入れることで体内時計がリセットされます。
夜に自然と眠くなり、朝はスムーズに目覚められるようになるため昼夜逆転の改善が期待できます。
昼夜逆転の子どもとの向き合い方3選
子どもの昼夜逆転をなんとかしたいのは親として当たり前のことです。
ここでは、昼夜逆転にどうアプローチするかを解説します。
1つずつ解説します。
親子で小さな目標を決める
まず、親子で簡単なルールや目標を決めましょう。
始めは難なく達成できるものがおすすめです。
以下を参考にしてみてください。
- いつもより30分早く起きる
- 寝る時間だけを決める
- 寝る1時間前はスマホを見ない
ここで大切なのは、掲げた目標を達成するよりも「達成しようとする姿勢」を見てあげることです。
たとえ決めたことができなかったとしても、マイナスにとらえるのではなく、取り組もうとした意欲を褒めてあげましょう。
子どもの自己肯定感が高まり、不登校への焦りや申し訳なさが和らいできます。
子どものペースに寄り添う
心配だからといって、いつも「早く寝なさい」「朝だから起きなさい」と口うるさく言わないようにしましょう。
正しい生活リズムに戻したい気持ちが先走るかもしれませんが、以下のように関わってみてください。
- 子どもの行動を見守る意識をもつ
- 気になる振る舞いがあっても責めない
- 子どもが話しやすい空気を作る
子どもは今「不登校」という不安定な状態です。皆と同じように学校に行けないという気持ちが焦りや不安になっています。
過度に口出しせず、見守る姿勢をもってみてください。
言いたい気持ちをこらえて、子どものペースに寄り添ってみましょう
親自身のストレスを和らげる
子どもの不登校に対して「自分が対処しないと」と考えるのは自然なことです。しかし、子どもは親が自分のことで苦しんでいる姿を見ると罪悪感をもつかもしれません。
たとえば、以下のような過ごし方を試してみてください。
- 親しい友達と話す
- 趣味の時間を作る
- お茶を飲んでゆっくりする
優先すべきは、子どもの心が安定した状態を保つことです。そのためには親自身が落ち着いた状態でいなければなりません。
短い時間でもいいので、ゆっくりお茶を飲んだり友人と話したりする時間を作りましょう。
まとめ
昼夜逆転が続くと、心身への影響があるだけでなく不登校が続く原因にもなります。
子どもが夜を起きて過ごすのは、不登校への引け目や「自分は周りと違う」というつらさを抱えているからかもしれません。
まずは子どもと一緒に、寝る時間や起きる時間を決めるところから始めてみてください。
あくまでも子どものペースを大切にして、目標をクリアできたらたくさん誉めてあげましょう。
もちろん、あなた自身のストレスケアも忘れずにおこなってください。
焦らず、子どもに寄り添いながら、健康的な生活リズムを作りましょう。
【参考文献】
[1]文部科学省「令和2年度不登校児童生徒の実態調査」
https://www.mext.go.jp/content/20211006-mxt_jidou02-000018318-2.pdf#page=11
[2]厚生労働省 こころの情報サイト「うつ病」
https://kokoro.ncnp.go.jp/disease.php?@uid=9D2BdBaF8nGgVLbL
[3]一般社団法人 起立性調節障害改善協会
https://odod.or.jp/
[4]e-ヘルスネット「睡眠相後退(前進)症候群」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-028.html
[5]文部科学省「中高生を中心とした子供の生活習慣が心身へ与える影響等に関する検討委員会設置要綱」https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2014/08/26/1351212_01_2.pdf#page
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