パーソナリティ障害とは、偏った思考や行動のため、生活に支障をきたしている状態です。以前は人格障害と呼ばれていましたが、表現が差別的であるためパーソナリティ障害と訳されるようになりました。
パーソナリティ障害をもつ人は自分に強いこだわりがあり、臨機応変に対応することができません。また、とても傷つきやすいので、冗談を真に受けて悪意を感じてしまうこともあります。
パーソナリティ障害は大きく、A群、B群、C群の3つのグループに分かれています。さらにそこから、A群は3種類、B群は4種類、C群は3種類あり、全部で10種類です。
パーソナリティ障害の3タイプ
それぞれのパーソナリティ障害について解説していきます。
A群パーソナリティ障害とは【妄想性・シゾイド・統合失調型】
A群パーソナリティ障害は奇妙で変わった行動・考え方をもち、統合失調症と似た症状が見られるのが特徴です。
本人に問題意識がない場合が多いので、治療を受けることが少ないグループです。
妄想性、シゾイド、統合失調型の3種類のタイプが含まれています。
妄想性パーソナリティ障害
妄想性パーソナリティ障害の方は、常に裏切られるのではないかと思っているため他人を心から信用できません。
根拠もないのに他人が自分を利用してだますのではないかと強く疑ったり、悪意のない言葉でも自分がけなされていると思ってしまうことがあります。
妄想性パーソナリティ障害に有効な治療法は見つかっていないものの、症状によっては「認知行動療法」が有効な症例もあるでしょう。
シゾイドパーソナリティ障害
シゾイドパーソナリティ障害は、他人との関わりを求めずに孤独を好むことが特徴です。
友人や恋人などと親密な関係をつくりたいと思わないので、喜びを感じられる活動が全くありません。
シゾイドパーソナリティ障害に有効な治療法はまだありません。ただ、「認知行動療法」には社会的技能を身につける目的があるので、有効ではないかと考えられています。
統合失調型パーソナリティ障害
統合失調型パーソナリティ障害は奇妙で風変わりな思考によって、行動や生活に影響を及ぼします。
一方、常識的な考えにとらわれないので、学者や研究者として画期的な業績を残す人も多いです。
迷信や第六感を信じてしまうことから行動に影響してしまい、周囲から孤立し他人と関わりをもとうとしません。幻聴や錯覚などがおこることもあります。
統合失調型パーソナリティ障害の治療法は「薬物療法」です。おもに、抗精神病薬や抗うつ薬を使用して不安を軽減します。
B群パーソナリティ障害とは【境界性・演技性・自己愛性・反社会性】
B群パーソナリティ障害をもつ方は感情的で突飛な行動をするため、他者を巻き込む問題が起こりやすいです。
境界性、演技性、自己愛性、反社会性の4種類のタイプが含まれています。
境界性パーソナリティ障害
境界性パーソナリティ障害の特徴は、他人から見捨てられることを恐れ、気分が両極端になりやすいことです。
見捨てられたくないという心理から自傷行為や自殺企図をくり返した結果、周囲は心理的にコントロールされてしまいます。怒りの感情を制御できないので、かんしゃくを起こしやすいのです。
おもな治療は精神療法で「弁証法的行動療法」や「スキーマ療法」などがあります。自傷行為を減らして抑うつを和らげ、日常生活を良好に送ることを目的としています。
演技性パーソナリティ障害
演技性パーソナリティ障害の特徴は、他人を魅了して注意を引きつけることが、自分の存在を保つために重要と考えることです。
注意を引くために過度な露出をするなどをして自分の外見を利用します。一方、自分が注目の的になっていない状況では楽しめません。
有効な治療法はまだありませんが、「精神療法」を行いながら症状に合わせて「薬物療法」をしていきます。
自己愛性パーソナリティ障害
自己愛性パーソナリティ障害は自分を特別な存在と思っていて、他人から特別扱いされるのを当然と思う傾向があります。
「自分は特別」と、地位の高い人たちと関係をもつべきと信じていて、過度な称賛を求めます。また共感性が欠如しているので、他人の気持ちをわかろうとしません。
治療法としては、自己愛の根底にある葛藤に焦点をあてた「精神療法」が有効な場合があります。
反社会性パーソナリティ障害
反社会性パーソナリティ障害は他人への共感性が欠けており、利益や快楽のためなら平気で他人を攻撃してしまいます。
症状として逮捕の原因になる行為をくり返します。たとえば、偽名を使うなどして人をだます、身体的な暴力、などです。
ちなみに、両親や兄弟が反社会性パーソナリティ障害の場合は発症リスクが増加するとされています。
このタイプは治療が難しく、特定の治療法が効果的であるというエビデンスはありません。
思考や行動の偏りを改善させて社会に適応するために「精神療法」などが使われる場合があります。
C群パーソナリティ障害とは【回避性・依存性・強迫性】
C群パーソナリティ障害は恐怖心や不安が強いので、他者よりも自分自身を責めてしまうのが特徴です。
日本文化との親和性が比較的高いグループとして考えられています。
回避性パーソナリティ障害
回避性パーソナリティ障害では失敗や傷つくことを極度に恐れ、失敗するくらいなら最初からやらない方がいいと思ってしまいます。
批判や拒絶を恐れて人と関わるのを避け、好かれていると確信で着ない限り他人と関係を持ちません。また自分には長所がないために、他人より劣っていると思ってしまう傾向があります。
治療には「力動的精神療法」や「認知行動療法」が役立つ場合があります。
依存性パーソナリティ障害
依存性パーソナリティ障害ではささいなことでも他人から助言をもらわないと、自分で決められません。
自分で決めることが苦手なので、何から何まで家族やパートナーに頼ってしまいます。さらに自分が支持されない恐れから、他人の意見に同調してしまって本心を伝えられません。
治療法としては「認知行動療法」や「力動的精神療法」が使われる場合があります。
強迫性パーソナリティ障害
強迫性パーソナリティ障害の人は責任と義務を大事にできる一方で、自分だけでなく周囲にも度が過ぎたこだわりを求めてしまいます。
自分に過度な基準を設けてしまい、一つの計画を完成させることができません。不要なものを捨てられず、取っておいてしまう傾向もあります。
おもな治療法としては「力動的精神療法」「認知行動療法」「薬物療法」などが挙げられます。
しかし患者の柔軟性のなさ、頑固さ、自分の思い通りにしたい欲求などが治療の妨げになる場合もあります。
まとめ
今回はパーソナリティ障害の10種類を紹介し、種類ごとの症状や治療法について解説してきました。
ほとんどのパーソナリティ障害をもつ方に共通して言えるのは「強いこだわりをもっていること」「傷つきやすいこと」などがあてはまります。
それに加えて、思考や行動が他人に向くのか、自分自身に向くのかによって10種類のタイプに細かく分かれていきます。
日常生活に支障が出ている場合は、医療機関を受診するようにしましょう。早い段階で適切な治療を受けれるほど、症状は改善しやすくなります。
まずはお近くの専門クリニックで医師に相談してみることをおすすめします。
- この記事の編集者
- カルロス山本
診療放射線技師として臨床経験11年。医療に特化したWebライターとして、5施設のメディアで執筆・編集を担当。