身近に自己愛性パーソナリティー障害が疑わしい女性がいて、対応に困っているんです
患者本人よりも周囲が困りやすい病気だからね。
今回は自己愛性パーソナリティー障害の特徴について解説していくよ
症状に男女で違いはあるの?
有病率には性差があるよ。記事の中で具体的に解説していくね
自信満々の態度で大口をたたいたり、他者を見下したりして周囲を困らせる自己愛性パーソナリティー障害。周囲に自己愛性パーソナリティー障害の方がいると、関わり方が分からず悩んでしまう方も多いのではないのでしょうか。
今回は、自己愛性パーソナリティー障害を持つ女性の特徴や、発症要因などについて解説していきます。記事の最後では関わり方のポイントを解説しているので、今後のコミュニケーションの参考になれば幸いです。
また、同じ内容の動画も用意しています。動画の方が分かりやすい方は下記からご覧ください。
自己愛性パーソナリティ障害で人間関係に関する悩みをお持ちの方はこちら
この記事の内容
自己愛性パーソナリティー障害の女性の特徴
自己愛性パーソナリティー障害の特徴に男女の違いはありませんが、有病率は女性に比べ男性の方が高いと明らかになっています(DSM-Ⅳによると、自己愛性パーソナリティー障害患者の50~75%が男性)。
以下では自己愛性パーソナリティー障害の特徴について解説します。
ひとつずつ見ていきましょう。
等身大の自分のイメージがない
自己愛性パーソナリティー障害の方は「理想の自分」と「取り柄のない自分」という両極端なセルフイメージしかありません。
根底に自分への不信感や見捨てられる不安があるため、等身大の自分を認められないのです。
そのため、権力者とのつながりをアピールしたり能力を誇張したりして、理想の自分を作り上げます。
女性の場合は見た目の美しさに固執して、日常生活が破綻してしまうケースもあるでしょう。
本当の自分の実力に直面し、取り柄のない自分を認めざるを得なくなったとき、非常に落ち込みうつ状態になる可能性があります。
結果がすべてと考えるが努力はしない
結果を最重視する一方で、努力を軽視する傾向があります。
地道な努力を無意味と考えたり、努力は無能な人がするものと考えたりするためです。
自分の望む結果が得られないときは、他人のせいにするなどして現実と向き合えません。
そのため、周囲の人から反感を買ったり呆れられたりして、社会から孤立しやすい傾向があります。
他者からの評価に敏感で傷つきやすい
注目や称賛に存在価値を見出すため、他者からの評価を恐れる一面があります。
普段は自信満々な態度で自分を大きく見せているのに、指摘や叱責にうつ状態になるほど傷ついたり、手が付けられないほど激高したりするアンバランスさを持つのが特徴です。
日頃の態度が災いして社会から孤立し、周囲に助けてくれる人がいない状況に陥りやすいといえます。
自己愛性パーソナリティ障害の行動パターンについて、下記の記事でも詳しく解説していますので、気になる方は参考にしてくださいね。
自己愛性パーソナリティー障害のチェックリスト
精神疾患の診断基準「DSM-Ⅴ」をもとに、自己愛性パーソナリティー障害の症状を以下にまとめました。
あなたや周囲の人がどの程度当てはまるかチェックしてくださいね。
✔ 十分な実績がないにもかかわらず、自分が重要な人物であるという誇大な感覚がある
✔ 限りない成功や権力、美しさなどの理想にとらわれている
✔ 自分の特別さを理解できるのは、特別に地位の高い人たちだけだと信じている
✔ 過度な賞賛を求める
✔ 自分への特別な取り計らいや、相手は自分の期待通りに動くものという特権階級意識がある
✔ 自分の目的達成のために相手を利用する
✔ 共感力が欠如している
✔ 他者に嫉妬したり、他者が自分に嫉妬していると思い込んだりする
✔ 傲慢な態度や行動がある
出典:DSM‐5 精神疾患の診断・統計マニュアル
5つ以上当てはまった場合は、自己愛性パーソナリティー障害の可能性があります。
診断は精神科の医師によって確定されるため、気がかりな方は医療機関を受診しましょう。
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男女における「自己愛人格傾向」の違い
自己愛性パーソナリティー障害とも関連がある「自己愛人格傾向」は、男女で現れ方に違いがあります。
そもそも自己愛ってなんだろう…?
以下で説明していくよ
健全な自己愛とは、等身大の自分を受け入れられることです。
つまり、どんなことがあっても自分だけは自分の味方でいられる状態を指します。
これに対し病的な自己愛とは、過度の自惚れや強すぎる野心、称賛へのこだわりがあげられ、等身大の自分を受け入れられません。
自己愛人格傾向は、誰もがもつ心の特性ですが、その傾向が強すぎると自己愛性パーソナリティー障害などの問題を引き起こします。
自己愛人格傾向は、外交的でエネルギッシュ、強い自信を持ち、自己本位、攻撃的なのが特徴です。その一方で、共感性に乏しく、等身大の自分を受け入れられない不安定な自己像を持つとされています。[1]
また、自己愛人格傾向の現れ方は男女で異なります。
男性はより自己主張が強まったり権力を誇張したりするのに対し、女性は対人関係でより依存的・執着的になるとされています。[2]
自己愛性パーソナリティー障害になりやすい女性の特徴
自己愛性パーソナリティー障害は、生まれ持った特性と日々の経験の積み重ねにより発症します。
具体的には、次のような要因があげられます。
ひとつずつ解説していきます。
生まれ持った特性
先天的に脳に脆弱性があり、不安を感じやすく集団生活に馴染めないなどの性格傾向も発症の一因です。
発達障害を持ちながら適切な治療を受けなかった方や、親族に自己愛性パーソナリティー障害の人がいる方も発症しやすいとされています。
幼少期の愛着形成不足
母親やそれに代わる養育者との愛着関係が築けなかったことも原因のひとつです。
幼少期に愛着形成が不十分だと、感情コントロールや自己の確立が困難になり、人格形成に悪影響を及ぼします。
また、欠点ばかり指摘されて育った方や、親の顔色をうかがって過ごした方も、自己否定感が強まり幸せを感じづらく、発症しやすいとされています。
その結果、見捨てられる不安が強まり「他者よりも優れている自分」を作り出し、精神のバランスを保とうとするようになるのです。
トラウマ体験
学校生活で受けたいじめや、恋人からのDV、養育者からの虐待などのトラウマ体験も自己愛性パーソナリティー障害の原因です。
トラウマを抱えていても、適切な治療や支えてくれる人の存在があれば安定した日常生活を送ることは可能です。
しかし、トラウマを一人で抱えてしまうと、つらい記憶のフラッシュバックから自分を守るために理想の自分を作り出して心を守ろうとします。
この過程を繰り返すうちに等身大の自分が失われ、自己愛性パーソナリティー障害の一因となります。
自己愛性パーソナリティー障害の女性との接し方
周囲に自己愛性パーソナリティー障害の方がいる場合、自分の問題と相手の問題を分けて考える必要があります。
「相手に気に入られたい」「支えたい」という気持ちから、仕事を肩代わりしたり無理な要求をのんだりすると、相手のペースに巻き込まれ疲弊してしまいます。
特に女性の場合は、自己愛人格傾向が「対人関係においてより依存的・執着的になる」ため、対人関係において泥沼に陥りやすいといえるでしょう。
そのため「ここからはあなたの問題」とボーダーを引き、適切な距離を保ちながら自分の心身を守る意識が必要です。
自己愛性パーソナリティー障害の方との関わり方について、詳しくは下記の記事をご覧ください。
まとめ
自己愛性パーソナリティー障害の方は等身大の自分のイメージがありません。
そのため「相手を見下す」「権力者とのつながりをアピールする」などあらゆる手段を使って理想の自分を保とうとします。
しかし、心の奥底に見捨てられる不安や自分への強い否定感を持っているため、取り柄のない自分に直面すると崩れ落ちるように調子を崩してしまうのも特徴です。
身近に自己愛性パーソナリティー障害の方がいるときは、必要以上に介入しないことが大切です。
相手の問題と自分の問題に明確な境界線を引き、自分の心身を守りましょう。適切な距離を保ち患者本人が自分の問題を少しずつ自覚していくことが、何よりも患者のためになります。
すでに患者との関係が濃密になっており一人での対応が難しい時は、第三者の協力を得ながら関わり方を見直していきましょう。
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参考文献
[1] 自己愛人格傾向についての素因 – ストレスモデルによる検討|小西瑞穂ら
https://www.jstage.jst.go.jp/article/personality/17/1/17_1_29/_pdf/-char/ja
[2] 自己愛の表れ方の性差~理想化と誇大感~松並知子
https://www.jstage.jst.go.jp/article/pacjpa/75/0/75_1PM143/_pdf