自己愛性人格障害とは、自分を過大評価する一方で他人を下げることや共感性の欠如が特徴的な疾患です。
人から認められたいという気持ちが強く、その振る舞いが周囲には自己中心的に映ってしまうこともあります。
自身の利益のためなら他人を使うことに遠慮がなく、ときにはごう慢な言動が見られるでしょう。
本記事では、自己愛性人格障害の特徴について解説します。自己愛性人格障害の治療をしないとどうなるのかもお伝えするのでぜひ最後までご覧ください。
また、同じ内容の動画も用意しています。動画の方が分かりやすい方は下記からご覧ください。
自己愛性人格障害の特徴
自己愛性人格障害の特徴は以下の2つです。
ほかにもたくさんありますが、特に多く見られる特徴を解説します。
特別な人物と思われたい
自己愛性人格障害は、自分を特別だと過大評価する傾向が強くあります。自尊心を傷つけられないようにしていることが多く、周囲を気にしすぎのです。また、職場や学校など集団の中では自分が不利な立場にならないか、気にしながら過ごしやすいでしょう。
たとえば、上司から注意を受けたときは屈辱的だと感じます。誰かからの指摘は自分自身が否定されたと捉えやすいため、深く苦しむでしょう。
自分を大きく見せながら弱い心を守ることで、精神的な安定を保っています。
他者を低く評価したい
自己愛性人格障害の方は、他者のことを見下しやすい傾向があります。自分を高く見せるだけでなく、他人を低く評価して相対的に良く見せようとするのです。
「資格試験に合格した」「昇進した」など誰かが成功したことに対して「ズルをした」といった言いがかりをつけることがあります。
職場では、自分の自信を保つために周囲を下に見るような態度をとってしまい、結果として周囲との関係が難しくなることがあるでしょう。上司が自己愛性人格障害のときは、あなたがいかに仕事をできない人物なのか言われ続けることもあります。
たとえば「なんでそんなこともできないの」「なにをやってもだめ」など、相手の気持ちを考えない発言も少なくありません。
自己愛性パーソナリティ障害をもつ方とのかかわり方について、下記の記事でより詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
自己愛性人格障害の原因
自己愛性人格障害の原因を明確にするのは難しいでしょう。しかし、幼少期の環境的要因や遺伝的要素が影響している可能性があります。
環境的要因は、幼少期に親から認めてもらえなかったり、過保護に扱われて自信をなくしてしまったりするケースが考えられます。自信をつけられないまま大人になると、他の人が気にしないような周囲の言動にも反応してしまい、集団から孤立しやすくなるのです。
ただし、遺伝的要因の可能性もあるため、すべての方に該当するわけではありません。そのため、自己愛性人格障害になりやすい人の特徴として考えておくとよいでしょう。
自己愛性人格障害の行動パターン
自己愛性人格障害の行動パターンは主に以下の2種類です。
順番に解説するので、ぜひ参考にしてください。
自分を中心に物事を進める
常に自分が中心にいると考えているため、気持ちを最優先にして行動します。
自己愛性人格障害の特性上、人からのマイナス意見は深く傷つくので恐れます。自分の意見を取り入れることができれば、周囲から認められたと思い安心して行動できるでしょう。
しかし、自分の意見が採用されないと周囲に反発的になり人間関係のトラブルを起こします。結果的に、集団で孤立したり嫌われたりしてコミュニケーションが難しくなるでしょう。
人のせいにする
弱みや不足していることを指摘されそうになったら、嘘をついたり人のせいにしたりして自分を守る傾向があります。
たとえば職場で「この資料もう少し見やすくしてほしい」と上司から言われたとき「〇〇の仕事が急に入って見直しができなかった。同僚のせいだ」と人のせいにします。
さらに、周囲に「同僚が仕事を邪魔した」と相手が悪いかのように伝えるので、職場内の雰囲気を壊しやすいです。そして、周囲と摩擦が生まれて人間関係が上手くいかなくなるでしょう。
自己愛性人格障害の行く末
自己愛性人格障害の人は、人生を長い目で見ると孤独になりやすい傾向があります。一時的にパートナーに恵まれて良好な関係を築ける時期もあるでしょう。
しかし「育児をしている自分を褒めて欲しい」のような、自分の行動を認めて欲しいケースが多く関係性の維持が難しいケースもあります。
たとえば、感謝や褒め言葉がないと怒鳴ったり暴力をふるうこともあり、家庭内暴力がきっかけで離婚につながることも少なくありません。
頭では「このままでは周囲とよい関係がくずれるかもしれない」とわかっていても、自分の不安定なこころを守るために自ら働きかけるのがむずかしくなることがあります。
そのような状態が長く続くと、年齢を重ねたときに孤立感を抱きやすくなるため、早い段階で適切なサポートとつながることが大切です。
人間関係がどのように自滅していくのかは、下記の記事で詳しく紹介しています。
自己愛性人格障害には治療方法がある
自己愛性人格障害の治療方法は以下の3つです。
順番に解説します。
精神分析療法
精神分析的心理療法とは、自分の気持ちを言葉にしながら考えに気づいていく治療法のことです。臨床心理士が中心となって治療を進めていきます。前提として本人が精神分析療法を希望していることが必要です。
「精神分析療法を行って自分のこころについて考えたい」と希望がある人に治療が役立ちます。すぐに成果は出ませんが、継続的に取り組むことでゆっくりと変化があらわれるでしょう。
認知行動療法
認知行動療法とは、認知に働きかけて気持ちを楽にする治療方法のひとつです。
認知とは、物事の受け取り方をさしています。認知行動療法では自分の思考パターンに気づいて、ストレスの少ない心を作ることを目指しています。
経験に基づいた考え方だけだと、他の選択肢が思い浮かびにくいため、認知行動療法を行い自分の考え以外のさまざまな思考を作るのです。
薬物療法
自己愛性人格障害そのものを治療する薬はありません。症状に合わせた薬物療法を行います。
たとえば、怒りやすい症状には気分調整薬の処方をしたり、不安な気持ちには抗うつ薬を使用したりします。投薬を行ったあとで、精神分析療法や認知行動療法の必要であれば実施も可能です。
いずれにせよ、薬物療法は依存を引き起こすので一時的な使用にとどめた方がよいでしょう。
いずれも専門家に相談しながら進めていく治療です。クリニックや専門機関で受けられるので、迷っている人は受診をおすすめします。
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まとめ
自己愛性人格障害は特別な人物と思われたいと考えたり、他人を低く評価したりする特徴があります。
他人より優れていると感じないと精神的に安定しないため、多くの人は関わりにくいと感じるでしょう。場合によっては人を使って、自分が優位に立とうするので注意が必要です。
治療方法は本人の状態に応じて変化させます。症状をおさえるために薬物療法を取り入れたり、本人が自分の心と向き合ったりしたいと言う希望があれば精神分析療法を行います。
気持ちを言葉にしていくことで、少しずつ変化していくでしょう。そのため、長期的に向き合っていくことが必要です。おおかみこころのクリニックはあなたが生きやすくなるお手伝いをします。お気軽に相談に来てくださいね。
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参考文献
- この記事の編集者
- 和田直人
作業療法士。薬機法管理者。障害者入所施設や就労支援施設を経験。現在は放課後等デイサービスで勤務しながら、フリーライターとして活動。医療・健康分野を中心に執筆中。









