妊娠うつのセルフチェック「妊娠中に涙が止まらない」に気づいたら要注意!

妊娠中は、人生で最も変化が多い時期のひとつです。

新しい家族を迎える喜びもありますが、ホルモンバランスや体型、生活環境の変化が大きなストレスになることもあります。そんな中、うつ病のように気分が沈んだり、こころが不安定になったりする人も少なくありません。

この記事では、妊娠中に起こりがちなうつ病の原因や症状について解説します。「自分はうつ病かもしれない」と心配な方のために、セルフチェックリストも用意しました。

妊娠中のうつ病のサインを見逃さず、必要なときに適切なケアを受けられるようにしておきましょう。

妊娠中のうつ病とは

妊娠中から産後は、心身の変化が大きく、うつ病になりやすい時期です。妊娠中のうつ病は「妊娠うつ」とも呼ばれています。うつ病は誰にでも起こり得る病気ですが、とくに女性は、男性に比べて2倍、うつ病を発症しやすいといわれています。[1]

妊娠中から産後にかけてはそのリスクがさらに高まり、妊婦の約10%がうつ病を発症するというデータもあるのです。[2]

「産後うつ」は社会問題として認識されつつありますが、妊娠中のうつ病が産後うつにつながっているケースも少なくありません。

産後うつについて詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。

妊娠中からこころの健康を保つことは、妊娠期だけでなく、その後の生活を健康に過ごすためにも大切なのです。

妊娠うつの症状とセルフチェック

妊娠うつの症状は、気分の落ち込みや涙もろくなるといった、通常のうつ病の症状と似ています。ただし「将来の子育てに自信が持てない」といった妊娠中に特徴的な症状が表れることもあります。[1]

「うつ病なのでは…」と不安な方のために、セルフチェックリストを用意しました。

自分の症状に当てはまるものがないか、チェックしてみてください。

<妊娠うつセルフチェックリスト>[3][4]

✔ 気持ちが落ち込んだり、絶望的だと感じたりした

✔ 前まで楽しめていたことが楽しいと感じなくなった

✔ 疲れやすくなったと感じる

✔ はっきりとした理由もなく不安に襲われることがある

✔ 自分自身を責めてしまう

✔ 寝つきが悪くなる

✔ 自分自身を傷つけるという考えが浮かぶ

このリストに「はい」と答える項目がいくつかあるときは、専門の医療機関に相談してみましょう。また、これらの症状が日常生活にも支障をきたしている場合は、とくに注意が必要です。

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妊娠うつの原因

妊娠中に起こるうつ病の主な原因として、ホルモンバランスの変化があげられます。妊娠すると女性の身体は急激に変化します。とくにホルモンバランスの変化はストレス耐性を低下させるといわれており、うつ病を発症する原因となるのです。[1]

また、日本では「夫は外で働き、妻は家庭を守るべき」と考える人が多いといわれています。[5] 多くの家庭が子育ての役割は母親に依存しているのです。その結果、母親は周りからのサポートを十分に受けられず、ひとりで抱え込んでしまい、大きな負担を感じてしまうこともあるでしょう。

周囲のサポート不足とホルモンバランスの変化が重なると、脳の機能不全を起こし、物事を悪く考えてしまうようになります。[1] これが、うつ病を発症する原因なのです。

妊娠うつの原因はつわり(吐き気、嘔吐、特定の臭いに耐えられないなど)、体重の増加、体型の変化(お腹が大きくなる、浮腫みやすくなるなど)、乳房の変化(乳房が張る、乳首や乳輪の色変化)、肌荒れや色素沈着、疲労感の増大、睡眠障害といった「身体の変化」に対するストレスと、将来の育児への不安の増大、体型の変化による自己イメージとのギャップ、母親になることへのプレッシャー、パートナーや家族との関係変化、仕事に対する不安といった精神的ストレスがあります

妊娠による身体の変化に対するストレス

妊娠すると、出産に向けた準備として女性の身体は大きく変化します。この変化は、妊娠中の女性にとって、ストレスの元となることもあるのです。

ストレスになり得る、妊娠による身体の変化として、以下のようなものがあります。[6]

  • つわり(吐き気、嘔吐、特定の臭いに耐えられないなど)
  • 体重の増加
  • 体型の変化(お腹が大きくなる、浮腫みやすくなるなど)
  • 乳房の変化(乳房が張る、乳首や乳輪の色変化)
  • 肌荒れや色素沈着
  • 疲労感の増大
  • 睡眠障害

これらの変化は一時的なものであり、妊娠中のどの時期かによっても変わります。ただし、妊娠中の女性にとって身体の変化は、心理的にも肉体的にも大きなストレスになるのです。

妊娠によるこころのストレス

妊娠は身体の変化だけでなく、ホルモンバランスの変化によってこころの状態にも大きな影響を与えます。

妊娠によるこころのストレスとして、以下のようなものがあります。[7]

  • 将来の育児への不安の増大
  • 体型の変化による自己イメージとのギャップ
  • 母親になることへのプレッシャー
  • パートナーや家族との関係変化
  • 仕事に対する不安

こうした妊娠中のこころのストレスは、それぞれが妊娠中のうつ病を引き起こすリスクとなります。

妊娠うつによる胎児への影響

妊娠中のうつ病は、母親自身だけでなく、お腹の中の赤ちゃんにも影響を与えます。母親が妊娠中に感じる不安やストレスは、生まれてくる子どもの感情をコントロールする能力や行動パターン、発達に影響することが分かっているのです。[8]

妊娠中は、生まれてくる赤ちゃんの将来の健康のためにも、できるだけストレスを減らしましょう。

ひとりで抱え込まず、周囲からのサポートを受けることも大切です。

妊娠うつの治療法

妊娠中のうつ病に気付いたら、早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けましょう。

ただ、妊娠中は薬の服用を避けたいと思う方も多いですよね。妊娠中のうつ病の治療は、必ずしも薬が必要だとは限りません。

ここでは、薬を使った治療と使わない治療について解説します。

産後うつはいつ治るのか気になる方は、下記の記事もご覧くださいね。

薬を使った治療

うつ病の治療には、気分を安定させるために抗うつ薬が使われることがあります。抗うつ薬は、脳内物質のバランスを整えて、うつ病の症状を軽減する薬です。

妊娠中でも使える薬はありますが、種類は限られており、副作用もあるため慎重に服用する必要があります。

妊娠中の女性がうつ病の治療を受けるときには、赤ちゃんへの影響を最小限に抑えて、治療を選択しましょう。医師と十分に話し合い、本人が納得したうえで治療方針を決定する必要があります。(見出し全体[9])

薬を使わない治療

うつ病の治療法は、薬物療法だけではありません。薬を使わない、こころのケアを中心とした治療もあります。

薬を使わない治療として、以下のような治療法があります。

認知行動療法
自分自身のネガティブな考え方のパターンを理解し、よりポジティブな思考へと導くトレーニングをおこないます。
心理療法
1対1、またはグループでセラピストと話をしながら、自分の感情について深く理解し、ストレスや不安とうまく付き合うための方法を見つけます。
環境調整
家族や周りの人がどのようにサポートできるかを話し合い、本人の負担を軽減できるような環境をつくります。

これらの治療法は、主にカウンセリングを通じて行われます。即効性はありませんが、薬を使わないため、妊娠中の方にとっては安心な治療です。主治医や家族と相談しながら、自分にとってよい治療法を見つけましょう。(見出し全体[1][9])

妊娠うつで受診すべき診療科

「妊娠うつかもしれない」と感じた時、どの診療科に行けばいいのか迷ってしまう方もいるでしょう。妊娠中にこころの不調を感じたら、まずは身近な産婦人科で相談してみてください。

妊婦健診では、定期的に医師や看護師と会う機会があります。必要に応じて、心療内科や精神科を紹介してくれることもありますよ。

こころに関する専門的な治療が必要なときは、心療内科や精神科を受診しましょう。これらの診療科では、薬物療法やカウンセリングなど、専門的な治療を受けられます。[10]

妊娠中のこころの健康を保つことは、母親とお腹の赤ちゃんにとって非常に大切です。もし心配な症状があれば、遠慮せず医療機関で相談してみてください。

まとめ

妊娠は、女性の身体とこころに大きな変化をもたらします。この期間はとくに「妊娠うつ」を発症しやすい時期です。

妊娠中のうつ病は、母親だけでなく、生まれてくる子どもにも影響を与えることがあるため、早めに適切な治療を受けることが大切です。気分の落ち込みや不安定さが続くようであれば、まずは産婦人科で相談し、必要に応じて、心療内科や精神科を受診しましょう。

妊娠中に「うつ病かも…」と思ったら、早めに医療機関に相談して自分にあった治療を受けましょう。

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参考サイト

[1] 妊娠・出産に伴ううつ病の症状と治療|e-ヘルスネット

[2] 産後うつ病について教えてください|日本産婦人科医会

https://www.jaog.or.jp/qa/confinement/jyosei200311/

[3] 周産期メンタルヘルス コンセンサスガイド2017|日本周産期メンタルヘルス学会

P7、Wooleyの2項目質問票

http://pmhguideline.com/consensus_guide/cq01-20.pdf

[4] 周産期メンタルヘルス コンセンサスガイド2017|日本周産期メンタルヘルス学会

P12、エジンバラ産後うつ病質問票

http://pmhguideline.com/consensus_guide/cq01-20.pdf

[5] わが国における子育て意識の特徴|内閣府

https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/whitepaper/measures/w-2006/18webhonpen/html/i1512000.html

[6] 妊娠中の身体の変化|MSDマニュアル

https://www.msdmanuals.com/ja-jp/ホーム/22-女性の健康上の問題/正常な妊娠/妊娠中の体の変化

[7] 妊娠・出産から育児への過程を支えるためにー心理士の立場からー|日本周産期・新生児医学会雑誌 第56巻 第4号

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspnm/56/4/56_604/_pdf/-char/ja

[8] 11.妊産婦メンタルヘルスケアの重要性について、妊娠期からの関わりの重要性より|日本産婦人科医会

https://www.jaog.or.jp/lecture/11-妊産婦メンタルヘルスケアの重要性について/

[9] 妊産婦のうつ病・抑うつ状態、周産期うつ病の治療より|現代医学学 69 巻 2 号 令和 4 年 12 月(2022)

[10] 妊産婦メンタルヘルスケアマニュアル、P31|日本産婦人科医会

http://www.jaog.or.jp/wp/wp-content/uploads/2018/03/mentalhealth2907_L.pdf

この記事の執筆者
原田瑞季
臨床検査技師。保健学修士。在宅で医療検査の業務に関わりながら、フリーライターとして医療を中心に幅広いジャンルで執筆中。
執筆者:浅田 愼太郎

監修者:浅田 愼太郎

新宿にあるおおかみこころのクリニックの診療部長です。心の悩みを気軽に相談できる環境を提供し、早期対応を重視しています。また、夜間診療にも力を入れており、患者の日常生活が快適になるようサポートしています。

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