なぜ産後うつは9ヶ月で増える?産後うつになりやすい時期を解説

なぜ産後うつは9ヶ月で増える?産後うつになりやすい時期を解説

産後うつは、出産後に誰もが発症する可能性のある病気です。産後3ヶ月以内に発症することが多いとされているものの、産後9ヶ月の時期にも増えるという指摘もあります。

この記事では、産後うつが9ヶ月で増える理由、その予防や対策についてくわしく解説します。

こころちゃん
こころちゃん

産後うつは深刻な問題だよね……

浅田先生
浅田先生

悩めるママさんたちを救います!

産後うつはいつから始まる?なりやすい時期とは

産後うつの多くは、産後3ヶ月以内に発症するといわれています。ただし、その時期を過ぎてから症状があらわれる人もおり、発症するタイミングには個人差があります。

また最新の研究では、産後1年以内はとくに産後うつへの注意が必要であることも報告されました。

産後の母親は、肉体的にも精神的にも大きな負担を感じています。

産後うつは、体力の低下や生活環境の変化、ホルモンバランスの乱れ、そして慣れない育児への不安が重なっておこるのです。

子どもが成長するにつれて、生活リズムや、育児の悩み、職場環境や交友関係も変わります。

こうした変化によって、お母さんはストレスを感じやすく、時期に関わらず産後1年ほどは産後うつに注意が必要なのです。

いつ頃がピーク?産後うつが9ヶ月に増える理由

産後うつを発症するピークは、産後2週間~1ヶ月といわれています。

しかし、産後9ヶ月ごろになると、再び産後うつの症状で悩む人が増えるのです。

こころちゃん
こころちゃん

へぇ~、なんでだろう?

産後9ヶ月の母親の身体に対する悩み

女性にとって、産後9ヶ月頃は身体に対する悩みも多い時期です。たとえば、産後の体型の変化は、女性にとって気になる問題のひとつでしょう。

産後ダイエットに取り組んでいる方も多いのではないでしょうか。でも、育児に追われながらのダイエットは大変ですよね。

「なかなか妊娠前の体重に戻らない」というのも、女性にとって大きなストレスとなります。

また、産後9ヶ月には月経が再開している人も多いでしょう。個人差がありますが、月経は産後6ヶ月以内に再開する人が多いといわれています。

月経による体調の変化は、女性にとって身体的な負担となります。一時的とはいえ、腹痛や腰痛の痛みに耐えながらの育児は、産後の母親にとってストレスとなるのです。

さらに、月経前はPMS(月経前症候群)により、精神的にも不安定になりやすい時期です。

原因は解明されていませんが、出産後のPMSは、妊娠前に比べて精神的な症状が重くなる人が多いといわれています。

こうした月経によるホルモンバランスの変化は、産後うつといったメンタルヘルスの不調をきたす原因となります。

産後9ヶ月の母親は、出産後の身体的な変化にともない、精神面でも不安定になりやすいのです。

産後9ヶ月の育児の悩み

産後9ヶ月は、育児の悩みも増える時期です。

浅田先生
浅田先生

赤ちゃんは
この時期に一気に成長します。

  • 自我の芽生え
  • 赤ちゃんの活発な動き(はいはい、つかまり立ち)
  • 常に親を追いかける行動(後追い)
  • 離乳食後期のはじまり(2回食から3回食への移行)

このような成長は親にとって喜ばしい一方で、その成長にともなう育児の負担や心配事が増えるのも事実です。

たとえば、生後9ヶ月の赤ちゃんは前より活発に動くようになるため目が離せません。後追いをするようになり、母親はひとりでトイレに行くといった日常的な行動ですら難しく感じるでしょう。さらに、離乳食後期に入り食事回数が増えると、調理や洗い物など、物理的な家事の負担が大きくなるのです。

このように産後9ヶ月は、育児や家事の負担が増える時期です。母親自身が休息する時間が取りにくくなるため、ストレスが蓄積しやすくなるでしょう。

結果として、産後うつのリスクを高めてしまうのです。

産後9ヶ月のこころの悩み

産後9ヶ月の母親は、心理的な負担も増えます。

この時期は、急速に成長する赤ちゃんの発達の悩みと、母親自身の今後に対する不安が出てくる時期なのです。

赤ちゃんの発達には個人差があるのにも関わらず、「他の子にはできるのに、うちの子はまだ…」と他の子どもと比べてしまい、悩むことが増える時期でもあります。

また、育児休暇中の母親が職場復帰を考えはじめるのもこのタイミングです

このように、産後9ヶ月の母親は、子どもの成長にともなう悩みや、職場復帰や保育園入園などの生活変化でストレスを受けやすい状態になっています。

そして、ストレスを受け続けた結果、産後うつのリスクが高まってしまうのです

出産後の自殺が最も多いのは産後9ヶ月

「産後1年以内の女性の死亡原因の1位は自殺」という衝撃的なデータが、国立成育医療研究センターによって発表されました。

さらにこの研究では、この期間内で自殺率が最も高い時期が産後9ヶ月であることも示しています。

自殺の主な原因は、産後うつといった、メンタルヘルスの問題と考えられています。

研究からもわかるように、産後うつは重症化すると自殺にさえつながる疾患なのです。

「産後うつかも?」と思ったら、早めに家族や専門機関に相談し、適切な治療を受けることがとても重要です。

産後9ヶ月で起こる産後うつ症状への予防と対策

産後うつの重症化を予防するためにも、どのような対策をすべきか知っておくとよいでしょう。

産後9ヶ月ごろの産後うつへの対策を、以下にまとめました。ぜひ参考にしてくださいね。

  • 家族や周りにサポートを求める
  • ベビーフードを活用して家事の負担を軽減する
  • 必要な場合は専門家に相談する
  • 保育所の一時預かりや地域の子育て支援サービスを利用する

産後うつを乗り越えるには、家族や周りのサポートが必要不可欠です。育児や家事の負担を、誰かひとりが抱える必要はありません。母親が自分の時間を確保できるよう、家族で協力しましょう。

また、保育所の一時預かりや地域の子育て支援サービスを利用することも検討しましょう。一時預かりを利用すれば、産後うつの母親が少しの間でも育児から離れてリフレッシュできます。

地域の子育て支援センターでは、子どもを遊ばせながら、支援員や同じ世代の母親たちと交流する機会も提供しています。子育てに関する悩みを相談したり、ただ話を聞いてもらったりするだけでも、産後の母親にとってよい息抜きになるでしょう。

そして、なにより大切なのは、産後うつの症状を感じたら、専門家に相談することです。産後うつは病気であり、適切に治療すれば克服できます。

早めに専門家に相談し、産後うつを重症化させないことが大切なのです。

まとめ

この記事では、産後9ヶ月の時期に産後うつが増える理由や、その対策について解説しました。

産後うつは産後3ヶ月以内が発症ピークとされていますが、他の時期におこることもあります。

産後9ヶ月で産後うつが増える理由はさまざまです。ただ、育児の悩みが増え、身体的にも精神的にも母親の負担が大きくなることがおもな要因といえるでしょう。

産後うつを重症化させないよう、早めに対策することが何よりも大切です。

産後うつは誰にでも起こりうる病気ですが、適切なサポートを受ければ乗り越えられます。

産後の母親自身のこころの健康を保つことが、健やかな子育てへの第一歩です。

参考

1)産後うつ病について教えてください|日本産婦人科医会

2)産後うつは産後1年経過しても出現する ~長期的なスクリーニングやケアの体制構築の必要性~|東北大学

3)産後の月経(生理)はいつから再開?様子は変わる?|たまひよ

4)赤ちゃんの育児 生後9ヶ月|たまひよ

5)妊産婦メンタルヘルスケアマニュアル|日本産婦人科医会

この記事の執筆者
原田瑞季
臨床検査技師。保健学修士。在宅で医療検査の業務に関わりながら、フリーライターとして医療を中心に幅広いジャンルで執筆中。
執筆者:浅田 愼太郎

監修者:浅田 愼太郎

新宿にあるおおかみこころのクリニックの診療部長です。心の悩みを気軽に相談できる環境を提供し、早期対応を重視しています。また、夜間診療にも力を入れており、患者の日常生活が快適になるようサポートしています。

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