境界性人格障害とは、他人から見捨てられることを恐れて、感情が不安定になりがちです。感情の波も激しくなるので、自分の感情をコントロールできずに周囲に迷惑をかけてしまうこともあるでしょう。
ですが、境界性人格障害には治るきっかけがあり、行動次第では良くなることが多いです。
そこで今回は境界性人格障害の治るきっかけとなる考え方・行動について解説していきます。治るきっかけを理解し少しずつ行動が変わっていくことで、境界性人格障害に悩まされない生活を送れる手助けになれば幸いです。
境界性人格障害が治るきっかけとなる3つの考え方や行動
境界性人格障害の治るきっかけとなる考え方や行動には、以下の3つがあります。
境界性人格障害から良くなるには、自分の考え方を改める必要があります。
自分がどう思うかだけでなく、まわりがどう感じるかを考えてみましょう。
それぞれ解説していきます。
自分の行動の違和感に気づく
自分の行動がおかしいことに気づけるかどうかで、境界性人格障害が治るきっかけになることがあります。
境界性人格障害の方は、行動や考えが極端になりやすい傾向があります。自分からすると正しいことをしているため、基本的に違和感に気づける可能性は少ないでしょう。[1]
ただ「周囲から人が離れていくとき」や「大切な人の様子がおかしくなったとき」など、ふとしたタイミングで違和感に気づくことがあります。
他にも、自分の行動を振り返ってみるのも大切です。自分の感情のままに行動するのではなく、一度立ち止まって「この行動は正しいのか」を考えてみるといいでしょう。
大切な相手が傷ついていることを認識する
大切な相手が傷ついていることを認識できると、境界性人格障害の症状が良くなるかもしれません。
もし、自分の感情のままに行動すれば、イライラがおさまってすっきりするでしょう。ですが相手は激しく非難されたり、ひどい場合は暴力を振るわれることもあります。
そうすると、相手は心を痛めてしまい、傷ついた経験からあなたと関わるのをやめようとする可能性もあるでしょう。
自分が大切にしている人が離れていくと「どうして自分と関わってくれないのか」と考えるようになります。そこで相手の気持ちを考えられるようになると、自分の行動を変えるチャンスです。
年齢が解決してくれることを知る
境界性人格障害は20代でもっとも多く、30代半ばごろから改善が見られて自然な経過をたどるとされています。[1]
症状がありながらも、問題や困難にぶつかって生きることで、行動や考えの偏りが修正されて適応力が高まります。[2]
今は辛いかもしれませんが、年齢が経つにつれて良くなるケースもあるため、根気よく治療を続けてみてください。
境界性人格障害が治るきっかけを経て回復していく過程
境界性人格障害では「適切な治療を続けていると良くなった」という例が報告されており、継続的な治療で良くなる可能性が高いでしょう。
「治療から2年間がたったときに、99%の人が境界性人格障害と診断されなくなった」
「60%の人が中等度以上の全般的な機能が発揮できるほど回復した」と言われています。[1]
また「自分を傷つける行為」や「薬物を多用する」などの行動を経験していると、早く症状が良くなりやすい傾向にあります。
一方で、自分や周囲に対して感情が否定的になる、孤独に弱くて不安や怒りを感じやすいと、なかなか回復しづらいです。[1]
家族や病院に感情をぶつけてしまうこともありますが、味方であることを理解しながら治療することが大切です。
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境界性人格障害の人が治るきっかけを自覚してからするべき3つの行動【治療法も紹介】
境界性人格障害の人が治るきっかけを自覚してからするべき3つの行動、治療法を合わせて紹介します。
境界性人格障害を治すためには、自分の意志が必要です。
良くなるためには周囲の協力は欠かせません。ですが、自分の「治したい」という気持ちが強くなければ、まわりも協力が無駄になってしまうことがあるでしょう。
ひとつずつ解説します♪
自分の感情を認識する
自分が今どんな感情なのかをしっかり把握しましょう。
境界性人格障害では、行動や考えが極端になりやすい「白黒思考」を持ちやすいです。たとえば、挨拶をしたけど返されなかったときに「無視されたから嫌われている」と考えてしまいます。
ノートなどの紙に書き出す方法は、自分の感情を客観的に見ることができます。やり方は以下の通りです。
- 嫌な気持ちになった出来事を具体的に書き出す
→挨拶を無視された - 出来事があったときに「どんな気分になったか」を書き出す
→「悲しい」「嫌われている」「無視するなんてひどいやつだ」 - 気分のレベルを0〜100にあてはめる
→「悲しい(60%)」「嫌われている(30%)」 - 頭に浮かんだ考えをいくつか書き出して、一番当てはまるものに丸をつける
・なんで無視するんだろう
・挨拶もないなんて嫌われているのかな→○
この方法はコラム法といって、認知行動療法で使われる方法です。[3]
出来事に対して「どんな感情になったか」「どう考えたか」を書き出して、他の考え方はないかを探すことができます。
継続的にカウンセリングを受ける
境界性人格障害を治すためには、継続的にカウンセリングを受けることが大切です。
カウンセリングのメリットには、以下の点が挙げられます。
- 話を聞いてもらえる
- 話すことでを整理できる
- 気持ちが少しだけ軽くなる
境界性人格障害では、良いか悪いかで物事を考えてしまったり、見捨てられないように相手へと強く当たったりしやすいです。
カウンセリングでは自分の話をしっかり聞いてくれて、自分でも気づいていない感情に気づかせてくれることもあります。話をすることで、悩んでいる問題を自分の中で整理できるようになるでしょう。
治療は自分次第という意識をもつ
治療は自分次第で進むときもあれば、遅れるときもあるという意識をもちましょう。
境界性人格障害の方は、人に対して強い思い込みがあり「相手から見捨てられる不安」と「相手に近づきすぎることへの不安」が交替して出現します。
治療していく中で、改善しない原因を病院や家族のせいにしてしまうと、克服するのは難しいかもしれません。自分の問題であると認識して、治療に励んでいきましょう。
うまくいかなくて苦しいときは、まわりに辛い気持ちを吐き出してくださいね。
治療法1:薬物療法
境界性人格障害には、まだ有効な薬は見つかっていません。
したがって、それぞれの症状に合わせた以下の薬が処方される場合があります。
- 抗うつ薬
- 気分調整薬
- 非定型抗精神病薬
抑うつ気分の症状がある方は、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)や三環系抗うつ薬などの抗うつ薬を使用します。[1]
- 抑うつ薬
→抑うつ症状の改善、衝動性や激しい怒りを抑える - 気分調整薬
→躁状態の改善、感情の不安定や激しい怒りの抑える - 非定型抗精神病薬
→衝動性や攻撃性、逸脱行動を改善する
薬を飲む際は、医師の処方にしたがって効果や副作用をしっかり認識したうえで、正しく利用してください。
治療法2:精神療法
境界性人格障害でおこなう精神療法には、以下のものがあります。
- 認知行動療法
- 弁証法的行動療法
認知行動療法とは、認知に働きかけて気持ちを軽くする方法です。考え方の偏りをなくしてストレスに上手に対応できる状態をつくります。[4]
先ほど紹介したコラム法も、認知行動療法の一つとして使われています。
弁証法的行動療法とは、自傷行為や自殺未遂のある患者に改善効果があると示されている精神療法です。週1回の面接、週2回のスキル・トレーニングを約1年間かけておこないます。[1]
自分の感情をコントロールすることを目的としており、自分の行動を見つめなおせるため境界性人格障害の治療に用いられます。
まとめ
今回は境界性人格障害の治るきっかけとなる考え方・行動などについて解説しました。
「自分の行動の違和感に気づく」「大切な相手が傷ついていることを認識する」などの考え方は、治るきっかけにつながるでしょう。
これらの考え方ができたら「自分の感情を認識する」「治療は自分次第という意識をもつ」などを、実践してみてください。
治療を進めていくと、うまくいかずに不安になることもあるかもしれません。
おおかみこころのクリニックでは、24時間いつでも予約を受け付けています。悩んでいることがあれば、お気軽に相談に来てくださいね。
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参考文献
[1]よくわかる境界性パーソナリティ障害 こころのクスリBOOKS
https://amzn.asia/d/7LPsBBe
[2]パーソナリティ障害 いかに接し、どう克服するか
https://amzn.asia/d/5jdQTE2
[3]うつ病の認知療法・認知行動療法(患者さんのための資料)
https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/kokoro/dl/04.pdf
[4]認知行動療法とは|認知行動療法センター
https://cbt.ncnp.go.jp/contents/about.php