先生、発達障害の種類っていくつあるの?
だいたい7つに分けられてるよ。小児期には特徴的な症状が目立たなくて、学齢期や思春期、大人になって、学校や職場で問題が出てくることもあるよ。
「発達障害ってたくさんの種類があるみたいだね」「代表的なものってどれだろう?」「相談先や検査の方法を知りたいな」と考えている方もいるのではないでしょうか。
発達障害とは、脳機能の問題が関係して起きる疾患です。
物事の考え方や行動の仕方に違いがあるために、日常生活に支障が出てしまう状態です。発達障害には、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害(限局性学習症、LD)などが含まれます。
この記事では、「発達障害の種類と特徴について」「発達障害かなと思った場合の相談や検査の方法」「発達障害への薬物治療」「発達障害への支援や公的サポート」について、解説します。
この記事を読んでいただければ、あなたや大切な人についての悩みやもやもやは減るでしょう。
発達障害とは
発達障害とは、脳機能の発達に関係する障害です。
発達障害があると、他人とうまく関係を作ったり、コミュニケーションをとったりすることなどがとても苦手です。そのために、「自分勝手な人」とか「困った人」などと思われてしまうことも少なくありません。
歴史上の偉人にも発達障害だったのではとされている人もいます。そのアンバランスさのため、周囲からは理解されにくい障害です。
周りの人に理解されにくいのはツラいですね💦
発達障害は脳の機能の障害によるものなので、本人の性格や家族の育て方などが原因ではありません。
平成24年に文部科学省により実施された調査では、発達障害の可能性のある児童生徒は、6.5%でした。[1]この数値は、複数の教員により判断された回答に基づくもので、医師の診断によるものではありません。
発達障害の種類と特徴について
発達障害は以下の表のように、7つに分けられています。
【発達障害の種類】
種類 | 特性 |
---|---|
知的障害(知的能力障害) | ・知的機能の水準で日常生活への適応に困難がある状態・読み書きや社会的スキル、身辺自立などの困難さで、重症度を判断 |
自閉スペクトラム症(ASD) | ・言葉や視線、表情、身振りなどを用いたコミュニケーションが苦手・自分の気持ちを伝える、相手の気持ちを読み取ることが苦手・特定のことに強い関心をもつ・こだわりが強い・感覚が過敏 |
注意欠如・多動症(ADHD) | ・発達年齢から期待される水準と比べると、落ち着きがない、待てない、注意が持続しにくい |
学習障害(限局性学習症、LD) | ・全体的な知的発達には問題がない・特定の学習(読む、書く、計算するなど)のみに困難が認められる状態 |
発達性協調運動障害 | ・粗大運動および微細運動が不器用で、日常生活に支障が出ている状態 |
チック症 | ・思わず起こってしまう素早い身体の動きや発声・リラックス時に起こりやすい・さまざまな運動チックや音声チックが1年以上持続するのは、トゥレット症 |
吃音 | ・滑らかに話せない状態・体質的な要素が強い・就学前の吃音は数年の間に軽減することが多い一方、長期に持続する場合もある |
同じ障害名でも、子どもの個性や発達状況、年齢、環境などで多彩な症状を見せます。
また、自閉スペクトラム症と注意欠如・多動症が、あるいは注意欠如・多動症と学習障害が重なるなど、他の発達障害や場合によっては、精神疾患を併せ持つこともあるのが特徴です。
知的障害(知的能力障害)
知的障害とは精神遅滞ともいわれる、知的発達の障害です。
知的障害とは、発達期に発症し、以下の3つの基準に該当して、日常生活や社会生活上で困難さを感じて、支援を必要としている状態のことです。
- 知的能力(IQ)が70未満
- 日常生活や社会生活への適応能力が低い
- 発達期(18歳以下)に生じている
有病率は一般人口の約1%で、年齢によって変化し、男性がやや多いといわれています。[2]知的機能は知能検査で測られますが、知能指数の値だけで有無を判断することは避け、総合的に評価・判断されます。
自閉スペクトラム症(ASD)
自閉スペクトラム症とは、対人関係が苦手で、強いこだわりを持つのが特徴の発達障害です。特性がきわめて強い状態のみでなく、生活に支障があって、福祉的・医療的サポートが必要という状態まで幅広く含まれます。
最近では、1歳半検診や3歳児検診で指摘されることも多いようです。[3]知的能力障害(知的障害)を併発しておらず、言葉の発達が良好な場合は、小学校入学後やもしくは成人になってから診断される場合もあります。
注意欠如・多動症(ADHD)
注意欠如・多動症とは、年齢に合わず注意が持続しない、順序立てて行動できない、落ち着きがない、行動が抑制できないなどといった特徴が持続的に認められ、日常生活に支障が出てきている状態です。
学童期の子どもの3〜7%に見られ、男子の方が女子より3~5倍多いといわれています。成人での割合は2.5%ですが、男女比は半々に近くなっています。[4]
学習障害(限局性学習症、LD)
学習障害とは、読み書きや計算力などに関する、特異的な発達障害のことです。学習障害には、文字を読むことに障害を持つタイプ、文字を書くことに障害を持つタイプ、数についての障害を持つタイプの3つがあります。
学習障害は的確な診断や検査が必要で、一人ひとりの特性に合った対応が求められます。自閉スペクトラム症や注意欠如・多動症などを併発している場合には、それを考慮した配慮や学習支援が欠かせず、家庭や学校、医療関係者の連携が必要です。[5]
その方に合った安心できる環境や対応が大切ですね。
発達性協調運動障害
発達性協調運動障害とは、脳の連携機能の発達に問題があるために、運動や動作がぎこちなかったり、姿勢に乱れが生じたりして、日常生活に支障が出てしまう状態です。
発達性協調運動障害があると、体育やスポーツだけでなく、「箸を使う」「字を書く」「はさみや定規などの文具を使用する」「縦笛などの楽器を操作する」「正確さが必要な理科実験を行う」など、日常生活や学校生活のいろいろな場面で、不器用さが生きづらさになって現れてきます。[6]
チック症
チック症とは、思わず起こる素早い身体の動きや発声です。多くの子どもで運動チック(まばたきや咳払いなど)や音声チック(咳払いや鼻すすりなど)が一時的に現れることはありますが、たいていはそのまま軽快します。
トゥレット症とは、多彩な運動チックや音声チックが1年以上にわたり持続し、日常生活に支障がある場合のことです。トゥレット症は通常4〜6歳で出現し、10〜12歳ぐらいに最も強くなり、成人になると改善するという経過です。しかし、成人期になっても症状が持続していたり、成人期の方が悪化していたりする場合もあります。[7]
トゥレット症の症状に影響を与えるのは、そのときの緊張度です。人口1,000人当たり3〜8人に現れ、男性の方が女性より2〜4倍多く発現するといわれています。[7]
生活しづらいと感じたら、気軽に相談にきてくださいね
吃音
吃音(きつおん、どもり)とは、話し言葉がスムーズに出ないために起こる発話障害のことです。吃音に特徴的な症状は、以下の3つです。[8]
- 音のくりかえし(連発):例「か、か、からす」
- 引き伸ばし(伸発):例「かーーらす」
- 最初のことばを発せずに間があいてしまう(難発、ブロック):例「…からす」
発話の流暢性を乱す話し方が吃音です。
発達障害かなと思った場合の相談や検査の方法
「発達障害かな?」と思うことが重なった場合は、なるべく早く専門機関に相談することをおすすめします。
相談することで、専門家のアドバイスや行政による支援を受けられます。発達障害の特性があっても早めに気づき、工夫をしたり、周囲に伝えて支援を受けたりすると気持ちが楽になり、スムーズに暮らせるかもしれません。
発達障害の相談先
発達障害の相談先を2つ紹介します。
役立つサイトも紹介していきますね
自治体の福祉課
市区町村の福祉課などで相談は受け付けています。担当する課の名称は自治体により異なります。
自治体ホームページなどで、事前に調べてから行きましょう。
発達障害者支援センター
専門的な相談が必要な場合は、発達障害者支援センターもあります。国の事業で、都道府県もしくは指定都市が運営しているので、相談費用は無料です。
発達障害と診断されていなくても相談できますし、家族や会社の同僚などの相談受付も可能です。必要に応じて医療機関や事業所などの紹介もしています。
全国の発達障害者支援センターの一覧は下記のパンフレットにあります。
発達障害の検査
発達障害の診断は、精神科や心療内科などの専門医師がします。市町村などの相談窓口や支援センターなどでは相談はできても、診断してもらうことはできません。
また、セルフチェックも自分自身を理解するためのツールであると理解しましょう。
「発達障害の可能性あり」と出ても、あくまでも参考で、「発達障害」と診断されたわけではありません。セルフチェックの結果を根拠に「自分は発達障害がある」などと、職場に伝えるのも避けましょう。
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発達障害への薬物治療
発達障害の子どもへ薬物療法をするのは、環境整備をしてもまだ、家庭や学校などで著しい適応障害がある場合、自己や他者に身体的危険が及ぶ可能性が高い場合などです。親や教師などの要望に応えるためにするわけではないことに注意してください。[9]
発達障害の子どもはその特性上、常に不安な状態にあったり、イライラ感を持ちやすかったりします。また、状況判断の間違いやコミュニケーションがうまくいかないことで、被害感を持ちやすく、攻撃行動や不注意が見られることもしばしばあります。
発達障害の薬物療法で使われる薬剤は、以下の通りです。
【発達障害に用いる薬剤】[10]
薬剤名 | 作用 | |
中枢神経刺激薬 | メチルフェニデート徐放剤、アトモキセチンなど | 注意欠陥多動性障害の多動性・衝動性や不注意 |
抗精神病薬 | ハロペリドール、クロルプロマジン、ピモジドなど | 多動・衝動性や反抗挑戦性障害、チック、こだわり行動など |
非定型抗精神病薬 | リスペリドン、オランザピン、アリピプラゾールなど | 自閉症スペクトラム、攻撃性、興奮、自傷およびチック*保険適応外使用 |
抗うつ薬 | SSRI(フルボキサミン、パロキセチン)、SNRI(ミルナシプラン)、三環系抗うつ薬(イミプラミン、クロミプラミン) | こだわり行動、うつ、不安障害など*三環系抗うつ薬は最近は少ない |
抗不安薬、SSRI、ベンゾジアゼピン系薬 | ジアゼパム、クロキサゾラム、ロラゼパム、クロナゼパムなど | 不安、心身症、抑うつ、睡眠障害、緊張、PTSD |
抗てんかん薬 | カルバマゼピン、バルプロ酸、クロナゼパム | 気分変調、躁うつ、イライラなど |
抗ヒスタミン薬 | ヒドロキシジン、ジプロヘプタン | 不安、睡眠障害 |
循環器用薬 | クロニジン、プロプラノロール、グアンファシン | 興奮、不安、攻撃性、自傷、チック、PTSD、多動・衝動性など |
コリンエステラーゼ阻害薬 | ドネペジル | 認知障害、実行機能を補助 |
抗そう薬 | リチウム | 攻撃性、自傷、うつ、イライラ |
薬をきちんと服用するためには、本人の納得が大切です。安心して飲めるように、医師・薬剤師の助けも借りて、説明してあげましょう。
発達障害への支援や公的サポート
ここでは、発達障害への支援や公的サポートを紹介します。
療育(発達支援)
療育(治療教育)がサポートの基本で、主に人との関わり方を学びます。発達障害があると周囲の人間とコミュニケーションがうまく取れないので、不安障害などの二次障害を起こしやすくなります。日常生活での支障を少なくし、二次障害を防ぐためには、適切なサポートが必要です。
療育は少人数グループで、遊びや作業などを通して、人づきあいのルールを学んだり、コミュニケーション能力を身につけたりします。発達支援センターや民間施設、医療機関併設の施設で行われています。
適切なサポートと周囲の理解があれば、生活上の支障も感じにくく、自己肯定感も高まるのでしょう。
公的サポート
ここでは、発達障害のある子どもへの公的なサポートについて、3つ説明します。
居住地の役所の窓口で相談してみましょう
障害者手帳
発達障害のある方が対象となる手帳は「精神障害者保健福祉手帳」であり、発達障害と知的障害がある場合は「療育手帳」もその対象です。
精神障害者保健福祉手帳は、一定程度の精神障害の状態にあることを認定するもので、精神疾患の状態と能力障害の状態の総合的に判断され、1級から3級までの等級があります。申請は、市町村の担当窓口を経由し、都道府県知事または指定都市市長に行います。詳しくは、居住地の市町村担当窓口までお問い合わせください。[11]
療育手帳は、児童相談所または知的障害者更生相談所で、知的障害があると判定された方に交付される手帳です。療育手帳制度は、各自治体で判定基準などの運用方法を定めて実施されています。具体的な手続き方法などは、居住地の市町村担当窓口までお問い合わせください。
障害福祉サービス
発達障害の子どもへのサービスにあるのは、都道府県の「障害児入所支援」と市町村の「障害児通所支援」です。
障害児通所支援を利用する場合は、サービスなど利用計画を経て、支給決定を受けた後、施設と契約を結び、障害児入所支援を利用する場合は、児童相談所に申請します。[12]
また、障害者総合支援に基づくサービスも一部、利用可能です。
合理的配慮
合理的配慮とは、障害のある方々の人権が保障され、教育や就業、その他社会生活に平等に参加できるように、障害特性や困りごとに合わせて対処される配慮のことです。
「障害者差別解消法 (障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)」により、この合理的配慮を可能な限り提供することが、行政や学校、企業などの事業者に求められるようになりました。
合理的配慮の例を以下に挙げます。[13]
- 書籍やノートなどの読み書きに困難がある場合は、タブレットなどの補助具を使えるようにする
- 感覚過敏があるときは、例えば聴覚過敏に耳栓使用するなどそれを和らげるために対処できるようにする
- 作業手順や道具配置などにこだわりがある場合は、一定のものに定位置を決めておくようにする
事業者の合理的配慮は努力義務でしたが、令和6年4月1日からは義務化されます。
発達障害の種類と特性一覧!【相談・検査・治療・支援も解説】|まとめ
この記事では、「発達障害の種類と特徴について」「発達障害かなと思った場合の相談や検査の方法」「発達障害への薬物治療」「発達障害への支援や公的サポート」について、解説してきました。
発達障害とは、脳機能の問題が関係して起きる疾患で、物事の考え方や行動の仕方に違いがあり、日常生活に支障が出てしまう状態です。
発達障害は、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害(限局性学習症、LD)など7種類に分けられています。
「発達障害かな?」と思うことが重なった場合は、なるべく早く専門機関に相談しましょう。
相談することで、専門家のアドバイスや行政による支援を受けられます。発達障害の特性があっても、早めに気づき工夫をしたり、周囲に伝えて支援を受けたりすると、気持ちが楽になり、スムーズに暮らせるでしょう。
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参考文献
[1]文部科学省|5.発達障害について
[2]e-ヘルスネット|知的障害(精神遅滞)
[3]国立精神・神経医療センター|自閉スペクトラム症(ASD)
[4]国立精神・神経医療研究センター|ADHD(注意欠如・多動症)
[5]e-ヘルスネット|学習障害(限局性学習症)
[6]NHK|発達性協調運動障害(DCD)(1)“不器用”なのには理由がある ~見えているのに理解されにくい発達障害
[7]国立精神・神経医療研究センター|チック症・トゥレット症
[8]国立障害者リハビリテーション研究所:吃音について
[9]西宮市|第27回「発達障害に対する薬物治療について」(令和2年9月)
[10]日本小児神経学会|Q73:発達障害の子どもにはどういう薬が用いられるのでしょうか?
[11]厚生労働省|障害者手帳
[12]全国社会福祉協議会|障害福祉サービスの利用について
[13]内閣府|合理的配慮の提供の例
- この記事の執筆者
- 藤野紗衣
薬剤師。精神科病院に勤務経験あり。現在は薬剤師ライターとして執筆活動中。