「適応障害でも元気に見える人がいるけど、休職するほどの病気なの?」
「ストレスなんて誰にでもあるものでしょ?」
と適応障害に対して、このように思ったことはないでしょうか。
適応障害は特定のストレスに対して耐えきれず、心や身体に不調が現れる病気です。
しかし、その日の状況によっては普通に日常生活を送ることができます。
しかし、症状の程度によっては命を絶つ人がいるのも事実です。
この記事では、適応障害とうつ病の違いや、適応障害になりやすい人の特徴について解説します。
適応障害の人への接し方も紹介していますので、どんな態度で接したらいいか困ったときには参考にしてくださいね。
適応障害とうつ病との違い【比較表あり】
適応障害は苦手なことや変化に対して適応できないとき、うつ病は過剰に適応しようとキャパオーバー状態になったときに発症しやすいといわれています。
適応障害は発症した原因がはっきりしているため、原因となった特定のストレスから離れると、不安や憂うつな気分がなくなります。
原因から離れたときは、症状が落ち着くので元気に見えるのですね
たとえば会社がストレスの原因である場合、仕事中は憂うつな気分で口数が少なかったとしても、休日は元気に過ごすことができるのです。
その一方で、うつ病はもともとの性格や脳内物質の減少、ストレスや遺伝性などの要因が重なりあって発症するといわれています。
そのため、自分でも気づかないうちにうつ病を発症している場合が多く、ストレスを取り除いても憂うつな気分は消えません。[1]
下記の表は、適応障害とうつ病の違いをまとめたものです。
適応障害 | うつ病 | |
---|---|---|
原因 | ・明らかなストレス | ・遺伝的な要因 ・もともとの性格 ・ストレス ・脳内物質の減少など要因が重なり合って起こる |
症状 | ・不安や憂うつときに不眠や動悸、息苦しさなどの症状が現れる ・好きなことは楽しめる | ・不安、憂うつ、気分の落ち込み不眠や食欲不振、体重減少(または増加)など ・好きなことに興味が湧かない |
治療 | ・休養と精神療法(カウンセリング)が中心場合によっては薬を併用することも | ・休養や薬物療法、精神療法が中心 |
適応障害なのに元気に見える3つの理由
適応障害は発症の引き金になる原因がはっきりしています。
適応障害なのに元気に見える理由は以下の3つです。
順番に解説しますね。
ストレスの原因となる人や環境から離れたから
適応障害は原因となるストレスから離れると、不安や憂うつ、不眠、動悸や息切れなどの症状も消失するため、普段通りの生活を送れます。
仕事の人間関係が原因で休職した場合、休職後は人間関係のストレスから一気に解放されるため元気を取り戻すのです。
しかし、根本の問題は解決していないため、復職が近づくと不安が大きくなり、休職が長引いたり退職したりする人もいます。
適応障害だと周囲に知られたくないから
適応障害を発症した人すべてが休職するわけではありません。
収入面の不安や、本人の希望によっては適応障害でも仕事を続けたいと思う人もいるでしょう。
職場や周囲に適応障害だと知られたくない、知られたところで仕事がしにくくなると思う方もいます。
「つらいけど明るく振る舞ってさえいれば周囲に気を使われなくていい」と思い、自分の感情を押し殺している人もいるのです。
無理して頑張ってるの…内心ツラいでしょうね💦
明るく振る舞うことで不安から気をそらしているから
適応障害の人は不安な気持ちから気をそらせるために、テンションをあげて明るく振る舞っている場合があります。
無理して明るく振る舞うことで、自分のマイナスな感情を見ないようにしているのです。
ときに適応障害は、ストレスからくるネガティブな感情に支配され、感情が高ぶったり、普段なら考えられないような行動を起こしたりすることがあります。
そのため、周囲からは「本当に適応障害なの?」「嘘をついているのでは?」と誤解されることも少なくありません。[2]
適応障害になりやすい人の特徴
人によっては、つらい出来事だけでなく、結婚や昇進などのよい出来事もストレスに感じる人がいます。
ストレス社会の現代は、いつ誰が適応障害になってもおかしくないといえるでしょう。
ここでは適応障害になりやすい3つの特徴を解説します。
大切なものを失う経験をした
親しい人との死別や重い病気だと診断された場合、大きな衝撃を受け、悲しみや怒りがこみ上げてくるでしょう。[4]
特に不慮の事故や突然の死は、精神的な準備ができていないため、簡単に受け入れることが
できません。
多くの場合、悲しみを受け入れられずに呆然とした日々を過ごしていても、時間の経過とともに受け入れることができるようになります。
しかし、時間が経過してもショックから立ち直れず、日常生活に支障をきたす場合は注意が必要です。
日常生活に支障が出てきたら早めに受診しましょう
ストレスへの耐性が弱い
一人一人性格が違うように、ストレスの感じかたやストレスに耐える力には個人差があります。[4]
同じようなストレスにさらされても、適応障害になる人とならない人がいるのはそのためです。
しかし、ストレスに耐える力が弱い=人間的に弱いというわけではありません。[3]
今までに体験したことや、ストレスに対する感じ方や対処法が違うからです。
適応障害はストレスとなる原因や自分自身を見つめ直し、新たな対応方法を身に付けていくことが何よりも大切なのです。
他人に気を使いすぎてしまう
適応障害は他人の言葉に傷つきやすかったり、気を遣いすぎたりする傾向があります。
そのため、嫌なことに対しても断れず、ストレスを抱えてしまうこともあるでしょう。
また、上司から仕事上のミスを注意されただけなのに「人格まで否定された」「顔を見るのも苦痛だ」と過敏になってしまうこともあります。
- 適応障害になりやすい気質[4]
- ・自律神経のバランスが乱れやすい
・喜怒哀楽が激しい
・物事を白か黒かの二択で判断しようとする
・他人の評価が気になる
適応障害がうつ病を併発する可能性
適応障害の症状はうつ病に似ていますが、原因となるストレスから離れると元気になるため、軽症だと思われがちです。
原因となるストレスが取り除かれない状態が続くと、不安や気持ちの落ち込みがひどくなり、うつ病を併発してしまうこともあります。
適応障害は、周囲の人から見ると大した病気だとは思えないかもしれません。
しかし、適応障害が原因で命を絶つ人がいることを忘れないでください。
心の病気は目に見えないため、安易に軽く見ないほうがいいでしょう
適応障害で元気に見える人との接し方
適応障害の人に接するとき、気を付ける点は以下の3つです。[5]
順番に解説していきますね。
じっくりと話を聞き共感する
周囲の人から適応障害であると打ち明けられたときには、じっくりと話を聞いてあげましょう。
あなたのことを信頼しているからこそ、病気になったことを打ち明けてくれたのです。
適応障害は不安が強くなると取り乱したり、涙を流したりすることもあります。
そんなときには「つらかったね」「大変だったね」と優しく話を聞き、味方になってあげてください。
話を聞いてもらうことで、気持ちが落ち着き、心が少し楽になったと感じるのです。
悩んでるときに、じっくり話を聞いてもらえると安心しますよね
責めたり批判したりしない
適応障害だと診断されたら、まずは心の休養が必要です。
やむを得ず、仕事を休職せざるを得ない人もいるでしょう。
表面上は元気に見えるからと言って「甘えている」や「メンタルが弱い」などの言葉は相手を傷つけます。
他にも適応障害の人にかけてはいけない言葉を知りたい方は、以下の記事も参考にしてくださいね。
受容的にサポートする
適応障害はストレスの原因に向き合うことや「よくなりたい、病気を克服したい」という気持ちが大切です。
それと同時に「あなたのことが大切だよ」「いつでも相談に乗るよ」という周囲の受容的なサポートが欠かせません。
安心できる場所がある、いつでも受け入れてくれる人がいる、というだけでも大きな心の支えになるのです。
まとめ
適応障害で元気に見える人は「元気に見えているだけ」という人がほとんどです。
ストレスの感じ方や対処法は、人によって大きく異なります。
「こんなの大したことない」とあなたが思っても「大問題だ」と捉えている人もいるのです。
適応障害は病気の原因に向き合うことや、周囲のサポートが欠かせません。
適応障害の人から病気を打ち明けられたときには、優しく話を聞き、温かい態度で接するようにしましょう。
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(参考リンク)
〔1〕うつ病|こころもメンテしよう~若者を支えるメンタルヘルスサイト~|厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/stress/know/know_01.html
〔2〕精神力動的な抑うつの理解|池田 政俊
https://appsv.main.teikyo-u.ac.jp/tosho/mikeda13.pdf
〔3〕適応障害の診断と治療|平島 奈津子(国際医療福祉大学三田病院精神科)https://journal.jspn.or.jp/jspn/openpdf/1200060514.pdf
日本における「適応障害」患者数の増加 メンバーシップ型雇用からの考察|池田 朝彦https://www.jstage.jst.go.jp/article/spls/12/2/12_101/_pdf
(参考文献)
〔4〕新版 適応障害のことがよくわかる本|貝谷久宜|講談社
〔5〕「適応障害」ってどんな病気?正しい理解と治療法|浅井逸郎|大和出版
- この記事の執筆者
- 小久保有希
医療ライター。看護師経験15年。4年間精神科に勤務し、病棟・訪問看護に携わる。相手の気持ちに寄り添う記事が得意。