うつ病での休職で活用できる手当7つ!傷病手当金をもらえないケースも




うつ病は15人に1人くらいの割合で発症するといわれており、誰もがなる可能性のある病気のひとつです。[1]

うつ病の症状がつらく、仕事を続けられないくらい気分が沈んだり悲しい気持ちになったりしていませんか?

この記事では、うつ病で休職するときに活用できる手当を紹介します。

「家族に迷惑がかかるから、うつ病がきつくても仕事を休めない」と悩むあなたが、この記事を読むことで不安を解決できる助けになれると幸いです。

うつ病での休職で活用できる手当7つ

ここでは、うつ病で休職した際に活用できる手当について解説します。手当が活用できることを知り、安心して休職しましょう。

1.傷病手当金

うつ病で休職した場合、条件を満たすと傷病手当金がもらえます

傷病手当金とは「病気やケガを理由に休業した際に、被保険者と家族の生活を保障するために設けられた制度」のことです。[2]

傷病手当を受給するための主な条件は以下のとおりです。

  • 仕事以外で発生した病気やケガであること
  • 医師による診断書で仕事ができないことを証明できること
  • 休職中に給与が支払われないこと
  • 連続する3日間を含む4日上仕事ができないこと

参照元: 病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会

傷病手当をもらえると経済的な不安が軽くなるため、安心して休職できるでしょう。

こころちゃん
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安心できる状況で休むことが回復への近道です。

2.自立支援医療制度

自立支援医療制度とは「医療費の自己負担を軽減する制度」のことであり、うつ病で休職した方が対象です。[3]

たとえば、うつ病で薬を処方してもらうときや精神科や心療内科のデイケアに通うときの費用が軽減できます。

うつ病を治すためには、治療を継続することが重要であるため治療費がかさみます。医療費の一部を支援してもらえるため気が楽になるでしょう。

3.労働者災害補償保険

労働者災害補償保険とは「勤務中や通勤時の事故によって起こった病気やケガに対して給付金が支払われる制度」のことであり、一般的に労災と呼ばれます。[4]

ただし、うつ病は労災の補償の対象に認められにくいため注意してください。

というのも、仕事がうつ病の原因であると判断しにくく、うつ病は家庭や友人関係などさまざまな要因により発症する恐れがあるためです。

「私は労災の対象になるの?」と疑問を感じるうつ病の方は、労働基準監督署に相談してみましょう。

4.障害年金

障害年金とは「病気やケガで仕事や生活を送るのが困難になった方に支給される」ものであり、うつ病も対象です。障害年金の種類は以下の2つです。

対象給付の条件
障害基礎年金国民年金の加入者・病院を初めて受診した日の月の前々月までの機関で、年金に加入している3分の2以上の期間において、保険料を適切に納付もしくは免除されていること・病院を初めて受診した日において65歳未満である場合、直近1年間で保険料の未納がないこと
障害厚生年金・障害手当金厚生年金の加入者

参照元:障害年金|日本年金機構

障害基礎年金は自営業やフリーランス、障害厚生年金・障害手当金は会社員を対象にしています

これらの手当を受ける方は国民健康保険料が免除されます。休職中はお金の不安がつきものです。少しでも負担を軽くするためにお住いの地域の市区役所や町村役場に相談してください。

5.精神障害者保健福祉手帳

精神障害者保健福祉手帳とは「精神障害のため、長期間、仕事や生活に支障をきたしている方を対象とした」制度で、等級には1級~3級まであります。[5]

精神障害者保健福祉手帳を持つと、次のサービスを受けられます。

  • 所得税や住民税の控除
  • 生活福祉資金の貸付
  • 公共料金の割引

さらには、お住まいの地域やサービスを提供する事業者によっては、電車やバス料金の割引、上下水道料金の割引、公営住宅への入居などのサービスを受けられる可能性があります。

市区町村の窓口が申請や相談に対応しています。これらのサービスを活用しお金や生活への不安をなくして、うつ病の治療を続けましょう。

こころちゃん
こころちゃん

使える制度がないか、病院や役所で相談してみましょう!

6.失業手当

失業手当とは「定年や倒産などにより仕事がなくなり、失業中の生活を心配しないで再就職を支援するために支給される」ものです。[6]

退職した方を対象としており、うつ病で休職しているケースではこの手当の受給は難しいです。

ですが、万が一うつ病の症状が長引いて退職を考えるときに失業手当を知っておくと、無理して仕事を続けなくて済むでしょう。

7.特別障害者手当

特別障害者手当とは「精神または身体に重度の障害を有し、日常生活において介護の負担を軽減する」制度のことです。[7]

うつ病の回復が思わしくなく介護が必要になった際に受給できます。うつ病の治療に専念できるように制度をうまく活用しましょう。

うつ病で休職するときの傷病手当金のもらい方

ここでは、うつ病で休職するときの傷病手当金のもらい方を解説します。

  1. 加入している健康保険の事務所に申請
  2. 「支給申請書」の本人欄を記載
  3. 勤務先と医師に「支給申請書」の記入を依頼
  4. 書類を全国健康保険協会もしくは、会社の健康保険組合に提出

傷病手当金の審査期間はおよそ2週間です。[8]

ただし、初回の審査は厳しく時間がかかる場合もあります。

書類の書き方を間違えたり、複数月の分をまとめて申請したりするときは、手続きが遅れ傷病手当金をスムーズにもらえない可能性があります。なかには、傷病手当金の支給の開始までに2ヵ月かかることもあるのです。

さらに、通院するクリニックによっては書類の作成に時間がかかるケースがあるため、主治医に早めに相談しましょう。

こころちゃん
こころちゃん

会社の経理の方が詳しいこともあります。
相談してみるのも良いでしょう。

うつ病での休職で傷病手当金をもらえないケース

うつ病で休職したにもかかわらず傷病手当金をもらえないことがあります。ここでは、具体的なケースを紹介します。

うつ病の原因が仕事である

うつ病の原因が仕事である場合は労災での支払いとなるため、障害手当金がもらえない場合があります。[2]

ですが、労災保険からの給付を受けられるため通院費の負担が軽くなり、休業の保障を受けられるため経済的に安定するでしょう。

さらに、労働基準法では、うつ病の療養のために休職する期間とその後の30日間はクビにすることを制限しています。一定の期間は会社をクビにならないため、安心してうつ病の治療を続けられます。[9]

待機期間が発生していない

うつ病で休んだ期間のうち、最初の3日をのぞき4日目から傷病手当金がもらえます。[2]

たとえば、2日間だけ休んで仕事に復帰したり、1日おきに仕事を休んだりした場合は傷病手当金がもらえません。

3日連続して休んだ4日目からしか傷病手当金の対象とはならないため、注意してください。

休職中も給与をもらっている

うつ病で休んだ期間に給与をもらっている場合は、傷病手当金はもらえません。[2]

というのも、給与をもらうと仕事ができると判断されるためです。

ただし、休んだ期間に給与をもらっても、その給与の日額が傷病手当金の日額よりも少ない場合は差額が支給される場合があります。

こころちゃん
こころちゃん

お給料で生活できる思われるんですね💦

障害厚生年金や障害手当金をもらっている

障害厚生年金とは「厚生年金に加入している方が障害基礎年金の1級または、2級になったときに上乗せして支給される手当」のことであり、現役の世代でも受け取れる年金です。[9]

また、障害厚生年金がもらえる状態ではないものの、軽い障害があるときに障害手当金を一時金としてもらえます。[10]

ただし、障害厚生年金や障害手当金をもらっている場合は、傷病手当金はもらえません[2]

これらの手当をもらうと、傷病手当金の支給の対象とならないためです。障害厚生年金の360分の1が傷病手当金よりも少ない場合は、その差額が支給されます。

手当の対象であるのか、いくらもらえるのかなどわからないことがあれば、お近くの年金事務所や年金相談センターに相談してみましょう。

出産手当金をもらっている

出産手当金をもらっている場合は、受給条件に当てはまらないため傷病手当金をもらえない恐れがあります。[2]

出産手当金とは女性が出産するために会社を休み、給料がもらえないときに支給される手当のことです。

出産手当金と傷病手当金がもらえる期間が同じときは、傷病手当金はもらえず出産手当金が優先されます。

ですが、傷病手当金が出産手当金よりも多ければ差額をもらえる可能性があります。そのため、うつ病で年度内に出産した方は一度会社の相談窓口で確認しましょう。

こころちゃん
こころちゃん

分からなかったら役所か職場に確認してみましょう!

国民健康保険に加入している

国民健康保険に加入している方は、傷病手当金の対象ではありません。[2]

国民健康保険には、傷病手当金の支払いの義務がないためです。

ただし、新型コロナウイルスの影響で国民健康保険に加入している自営業者やフリーランスが傷病手当金をもらえたケースがありました。[11]

状況によっては、国民健康保険の加入者も傷病手当金をもらえる可能性があるでしょう。

うつ病の方の復職を支援

仕事を休んで治療に専念してもうつ病の症状が良くならず、休職が続いたり、結果として退職したりするケースもあります。ここでは、復職するための支援について解説します。

リワーク

リワークとは「こころの病気が原因で休職している会社員に対して、仕事の復帰に向けたリハビリテーションをおこなうプログラム」のことです。[12]

復職支援プログラムと呼ばれ、復職するために以下のような訓練をおこないます。

  • 仕事内容に近い軽作業
  • うつ病を再発しないための認知行動療法
  • うつ病を理解するための疾病教育
  • 集団生活に慣れるためのレクリエーション

リワークは医療機関のほかに、会社や地域障害者センターでおこなわれているため、一度主治医に相談してみてください。

ハローワーク(公共職業安定所)

ハローワークとは、公共職業安定所と呼ばれており「仕事を探している方に対して、就業の相談や求人の紹介をおこないサポートするところ」です。[13]

専門知識をもったスタッフが支援するハローワークもあります。

うつ病で症状が回復せずに、結果として退職した方は次の職場で長く働くためにハローワークのサポートを活用しましょう

こころちゃん
こころちゃん

うつ病を理由で退職したことを伝えると、配慮した次の職場を紹介してくれるでしょう。

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所とは「一般企業への就職を希望する方が、仕事に必要な訓練や就職するためのサポートなどを受けられる障害福祉サービス」のことです。[14]

学校のように通うことで、以下のサポートを受けられます。

  • パソコンや事務に関する研修を受ける
  • 履歴書の添削を受ける
  • 面接の訓練を受ける

さらには、就労移行支援事業所のスタッフが利用者それぞれに適した仕事を紹介できるため、うつ病の方にあった仕事を見つけられるでしょう。

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターとは「障害のある方が働きながら、安定した生活が送れるようにサポートするところ」です。[15]

具体的には、就労前にハローワークと連携して仕事探しを支援したり、面接の準備を手伝ったりします。ほかにも、働き始めてから体調を崩したり「働きにくい」と感じたりするケースでは、障害者就業・生活支援センターのスタッフが職場を訪問しサポートします。

働き続けられるように環境を整えてくれるため、うつ病の方は安心して働けるでしょう。

まとめ

うつ病は誰もがなる可能性のある病気です。

うつ病により休職を検討するときには、経済的な不安や焦りを感じている方も多いでしょう。

今回紹介した手当を活用することで経済的な心配が軽くなり、うつ病の治療に専念できます

当院では傷病手当金や自立支援医療制度への支援もおこなっています。うつ病の症状に悩み仕事を休みたいと考えている方は、ひとりで悩まずまずは相談してみてください。

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参考サイト・文献
[1]こころもメンテしよう|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/stress/know/know_01.html

[2]傷病手当金|全国健康保険協会
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat320/sb3170/sbb31710/1950-271/

[3]自立支援医療|厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/jiritsu/index.htm

[4]労災保障|厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/rousai/index.html

[5]障害者手帳・障害年金|こころの情報サイト
https://kokoro.ncnp.go.jp/support_certificate.php

[6]基本手当とは|ハローワークhttps://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_basicbenefit.html

[7]特別障害者手当|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/jidou/tokubetsu.html

[8]宮城支部によくお電話いただく内容を解決!|全国健康保険協会https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/miyagi/20150302-27/20170913001/2023052401.pdf

[9]業務上傷病者等の解雇制限|厚生労働省
https://kokoro.mhlw.go.jp/glossaries/word-1725/

[10]障害年金|日本年金機構
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/shougainenkin/jukyu-yoken/20150401-01.html

[11]全国商工新聞|全国商工団体連合会
https://www.zenshoren.or.jp/2020/06/01/post-3738

[12]リワークプログラム|一般社団法人 日本うつ病リワーク協会

[13]ハローワーク|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/hellowork.html

[14]就労支援事業所|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/shingikai01/pdf/5-2i.pdf

[15]障害者就業・生活支援センター
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_18012.html

この記事の編集者
西川正太
看護師、保健師、保育士。 2009年大学を卒業後、大学病院や総合病院で勤務経験あり。現在はフリーライターとして医療を中心に執筆中。
執筆者:浅田 愼太郎

監修者:浅田 愼太郎

新宿にあるおおかみこころのクリニックの診療部長です。心の悩みを気軽に相談できる環境を提供し、早期対応を重視しています。また、夜間診療にも力を入れており、患者の日常生活が快適になるようサポートしています。




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