適応障害はストレスの多い環境変化に適応できず、さまざまな心身の不調があらわれる病気です。
本人も気付かないうちに症状が悪化することもあり、顔つきや言動の変化から周りの人が違和感を感じることもあるでしょう。
この記事では、適応障害での顔つきの変化について解説します。
適応障害の人への適切な対応方法を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
適応障害とは
適応障害とは、人生の大きな環境の変化や出来事によって引き起こされるストレス障害のひとつです。学校や職場での過度なストレスに対してうまく適応できず、頭痛や気分の落ち込みなどの心身の不調をきたします。適応障害は本人にとって大きな苦痛を伴い、自殺にもつながる深刻な状態です。[1]
精神医療を受ける人のなかでも適応障害の人の割合は5~20%程度いるとされ、近年20代を中心に患者数が急増しています。日本における適応障害は「職場に適応できない」ことが増加の理由と考えられており、職場環境が原因となっているケースが多いのです。[2]
ストレスは誰もが経験するものですが、適応障害の人はそうでない人に比べてストレスに過敏に反応してしまうことで症状があらわれるのです。
軽く考えずに「人によってストレスの感じ方は違う」ということを意識しましょう。
適応障害とうつ病との違い
適応障害とうつ病では症状が似ている部分はありますが、明確な違いがあります。
適応障害は明確なストレス要因が存在し、そのストレスがなくなれば症状が改善します。たとえば、職場でのストレスを感じている場合には、休日になると症状が和らぐことが特徴的です。
一方、うつ病はさまざまなストレス要因が重なって引き起こされる病気であり、長期的に抑うつ症状が続きます。[2]
このように「症状の持続性」が、適応障害とうつ病の大きな違いといえるでしょう。ただし、適応障害が長く続くとうつ病やその他の心の病気に移行し、判断が難しい側面もあります。とくに顔つきの変化は、症状が似ているため見分けがつきにくいですが、適応障害の場合は一時的な変化に留まるという特徴があります。
下記の記事では、適応障害とうつ病の違いを表でまとめています。違いについて詳しくは、下記の記事をご覧ください。
適応障害の顔つきの特徴
適応障害では、症状が顔つきにもあらわれて「顔つきが変わった」と周りの人が感じることがあります。
ここでは、適応障害に特徴的な顔つきの変化について見ていきましょう。
無気力な表情
適応障害では強いストレスによって気分の落ち込みを感じ、やる気のない状態になることがあります。その症状が、無気力な表情として周りに捉えられることがあるでしょう。
無気力な表情とは「喜怒哀楽の表情がない」「いつもぼんやりしている」「話しかけても反応が少ない」などがあります。
疲れた表情や目つき・顔色の悪さ
適応障害では、顔つきに疲れがあらわれます。症状によっては、不眠で目の下にクマができたり、目尻が下がり疲れた表情になったりとさまざまです。食欲がなくなり、げっそりとして顔色も悪くなってしまうこともあるでしょう。
急激な変化ではなくても「今までより表情が暗いな」と感じたら、適応障害のサインかもしれません。
作り笑い
適応障害では「なんとかその場に対応しよう」と、つらくても無理に笑って乗り切ろうとすることがあります。しかし、心の底から笑っているわけではないため、どこか不自然さを感じることもあるでしょう。普段と同じように笑っているように見えても、心の中では苦しい思いを感じていることもあるのです。
作り笑いの特徴は、目は笑っていないのに口だけ無理に笑顔を作っている状態です。また、笑い方が大げさなこともあります。[3]
適応障害の顔つき以外のチェックポイント
適応障害では、顔つき以外にもさまざまな症状があらわれます。
身体的な初期症状
適応障害では、以下のような身体的な初期症状があらわれることがあります。[4]
- 眠れなくなる
- 食欲不振によって体重が減る
- イライラしやすくなる
- 集中力が低下する
- 強い不安感や恐怖心にとらわれる
- めまいや頭痛がする
適応障害の症状は、本人にとって強いストレスがある場合に引き起こされます。本人は気分の落ち込みや身体的な不調を訴えることも少なくありません。これらの症状が続くと、顔つきにもあらわれてきます。
みんなストレスが溜まると余裕がなくなっちゃいますよね💦
行動パターン
適応障害になると、本人の行動パターンにも変化があらわれます。[5]
- 人付き合いを避ける
- 仕事に対して無気力になる
- 怒りっぽくなる
- いつもと違う言動が目立つ
- 無断欠勤が増える
- 行き過ぎた飲酒や暴食が目立つ
- 無謀な運転がみられる
適応障害では、普段の行動とはかけ離れた様子が見られるのが特徴です。本人は行動の変化に気づいていないことも多く、周りの人が「最近、様子がおかしい」と感じることもあります。
行動の変化は、ストレスによる不安感や気分の落ち込みを反映するものです。「人付き合いを避ける」「仕事に対して無気力になる」ことは、ストレスを回避するために無意識にしている可能性があります。
適応障害の原因
適応障害のきっかけとして「環境の変化」「重大な出来事の発生」「対人関係のトラブル」などがあります。転勤(部署異動)や就職、被災経験、いじめや虐待など、個人の対応能力を超えるような出来事によって過剰なストレスがかかると引き起こされるのです。
筋肉は、ストレスがかかると緊張して硬くこわばります。表情を作り出す表情筋もストレスを受けると硬くなってしまうのです。適応障害はストレスがおもな原因であるため、そのストレス状態が顔つきにあらわれやすいといえるでしょう。[6]
一過性のストレスであれば、環境が変わり落ち着けば自然に症状は改善されます。しかし、強いストレスが長期間続くと、ストレス耐性を失い、適応障害に移行してしまうのです。
気づいたら放置せずに早めにストレスとの向き合い方を考えましょう。
適応障害の人に対して周りの人ができること
適応障害は症状が深刻化すると自殺につながる可能性もあるため、早めに適切な治療を受けることが必要です。「この人は適応障害なのでは?」と感じたときは、積極的に精神科や心療内科の受診を勧めましょう。[7]
24時間予約受付中
周りの人が適応障害と診断された場合は、その人の気持ちに寄り添い、理解を示すことが何より大切です。治療に対しても協力的な姿勢を示すことで、本人も安心して治療を受けられます。
適応障害の人は他人には分からない苦しみを抱えている可能性があり、安易に励ましたり、症状を否定することは避けましょう。
周りの人が適応障害に対して適切な理解を示せば、一日も早く回復への道を歩めるはずです。ただし、過度に干渉したり、プレッシャーをかけるようなことはやめましょう。寄り添いながらも、本人のペースを尊重することが大切です。
まとめ
適応障害は、ストレスの多い環境に適応できなくなった状態です。
症状はさまざまで、気分の落ち込みや食欲の減少など、うつ病に似た症状があらわれます。このような症状は表情にもあらわれることがあり、表情筋がストレスによって硬くなることで表情の変化として認識されます。
適応障害の人に対して、周りの人は本人の気持ちに寄り添い、理解を示すことが大切です。
本人のペースを尊重しながら治療をサポートしていくことが、より早い症状の回復にもつながるでしょう。
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参考文献
[1]適応障害|e-ヘルスネット
[2]日本における「適応障害」患者数の増加|社会政策学会誌『社会政策』第12巻第2号https://www.jstage.jst.go.jp/article/spls/12/2/12_101/_pdf
[3]社会的笑いに関する心理学研究の動向|目白大学リポジトリhttps://mejiro.repo.nii.ac.jp/record/185/files/KJ00007064539.pdf
[4]適応障害の診断と治療|第113回日本精神神経学会学術総会https://journal.jspn.or.jp/jspn/openpdf/1200060514.pdf
[5]適応障害/統合失調症|厚生労働省
https://kenkoukyouikusidousyakousyuukai.com/img/file214.pdf
[6]心理的負荷における筋弾性と自律神経機能への影響|口病誌2005,72/3
https://www.jstage.jst.go.jp/article/koubyou1952/72/3/72_3_209/_pdf/-char/ja?fbclid=IwAR2eW-2XSGwJh9ijg53PjbbbvCneuLCgE6hOMX_DKbNWJre2qSbvac5VtVo
[7]職場における心の健康づくり|厚生労働省、独立行政法人労働者健康安全機構https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11300000-Roudoukijunkyokuanzeneiseibu/0000153859.pdf
- この記事の執筆者
- 原田瑞季
臨床検査技師。保健学修士。在宅で医療検査の業務に関わりながら、フリーライターとして医療を中心に幅広いジャンルで執筆中。