適応障害で傷病手当金がもらえない5つの理由|受給条件や申請方法を詳しく解説










「適応障害で休職したいけど傷病手当金がもらえないケースはあるのかな?」
「傷病手当金がもらえなかったら生活が困る…どうしよう…」

適応障害の治療に専念したくても、お金のことが気になりこころが休まらないことはありませんか?

傷病手当金とは、病気やケガで休職したときに会社で加入している健康保険で本人と家族の生活を保障するための制度です。

休職中は受給条件や他の制度との兼ね合いにより、傷病手当金が支給されないケースがあります。

お金に関する制度は知っておくことが大切です。

この記事では、適応障害で傷病手当金がもらえないケース申請方法について解説します。

あなたが安心して休職できるきっかけになりますと幸いです。

適応障害で休職するときに役立つ制度については、下記の記事で詳しく解説しています。合わせてご覧ください。

適応障害で傷病手当を受給できる条件

傷病手当金を受給するには以下4つの条件をすべて満たさなければなりません。[1]

  • 業務外の理由による病気やケガの休養である
  • 仕事に就くことができない
  • 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかった
  • 休業した期間についての給与の支払いがない

仕事中や通勤中の病気やケガと認められた場合は、健康保険の傷病手当金ではなく労災保険による休業補償給付の対象になります。

他にも、1日休んで翌日は出社してを繰り返すと連続する3日間の待機期間が完成しないため、傷病手当金は支給されません。傷病手当金は、3日連続で会社を休んだ後の4日目から受給対象となります。[1]

このように休職中に傷病手当金を受給するには、さまざまな条件をクリアする必要があるのです。

では、受給条件をクリアしても傷病手当金をもらえないケースには、どのような理由があるのか次で解説します。

こころちゃん
こころちゃん

会社の担当部署や健康保険会社に聞いてみるのもよいでしょう!

適応障害の休職で傷病手当がもらえない理由5つ

適応障害で傷病手当金がもらえない、おもなケースは以下のとおりです。[][]

他にも、出産手当金や老齢退職年金を受給している場合は、傷病手当金の支給額調整がおこなわれます。休業中に複数の制度を利用しているときは、傷病手当金がいくらもらえるのか加入している健康保険に確認しましょう。

給料をもらっている

適応障害の休職期間中に会社から給料の支払いがあると、傷病手当金はもらえません。

傷病手当金の受給条件に「休業した期間について給与の支払いがないこと」とあり、支給の対象外になるのです。[1]

しかし、給与が傷病手当金の支給額よりも少ない場合は、差額分が支給されるケースもあります。

支給期間が過ぎている

傷病手当金には同じ疾患での支給期間が設けられています。支給期間は1年6か月です。[1]

全国健康保険協会の傷病手当金も、令和4年1月1日から支給を開始した日から休職した期間の通算が1年6か月になりました。

たとえば、令和6年10月1日から1か月間休職します。その後、2か月間復帰して仕事を頑張り、再び適応障害の症状が悪化し次は2か月間休職しました。この時点での休職期間は3か月間になります。

このように、同じ疾患で休職をした期間の合計が1年6か月までは傷病手当金が支給されるのです。1年6か月の期間を過ぎると傷病手当金はもらえなくなります。

しかし、適応障害が治癒した場合は1年6か月のカウントがリセットされ、次に休職する場合は別の疾患として再び0からカウントされます。

治癒の判断は個人でするのではなく、医師の診察や会社で治癒したと認められた場合に限ります。[2]

休業補償給付を受けている

休業補償給付は、業務中や通勤中の出来事が原因で病気やケガをした場合に労災保険から支払われます。

たとえば、上司のパワハラや過剰な業務、労働基準をはるかに上回る残業などが適応障害の原因とされるときは労災認定される可能性があります。

適応障害ではない別のケガや病気で休業補償給付を受けている場合でも、傷病手当金は支給されません。[1]

もし、休業補償給付が傷病手当金よりも少ないときは、その差額分が支給されます。

支給金額は以下のとおりです。[3][4]

  • 休業補償給付:給付基礎日額の80%
  • 傷病手当金:給料のおよそ3分の2

どのくらい支給されるのか具体的に知りたいときは、担当部署か加入している健康保険に確認してくださいね。

こころちゃん
こころちゃん

他の制度との兼ね合いがあるので休職する前に確認しましょう。

国民健康保険に加入している

国民健康保険は、都道府県及び市区町村が運営する健康保険で傷病手当金の制度がありません。[5]

傷病手当金は、全国健康保険協会や健康保険組合に加入している方が、病気やケガにより仕事ができないときに支給されます。

個人事業主やフリーランスで国民健康保険に加入している方は、原則として傷病手当金を受給できないのです。[6]

特例として新型コロナウイルスにかかった場合は、国民健康保険に加入している方も傷病手当金を受給できることがあります。しかし、適応障害の休職では受給は難しいでしょう。

障害厚生年金か障害手当金を受給している

適応障害は、原則として障害年金の受給対象ではありませんが、何か理由があり障害年金を受給できたときは傷病手当金はもらえなくなります。

障害年金の認定条件に「神経症にあっては、その症状が長期間持続し、一見重症なものであっても、原則として、認定の対象とならない。」とあり、適応障害はICD-10 (国際疾病分類)で神経症に分類されています。[7][8]

そのため、適応障害は原則として障害厚生年金や障害手当金の受給対象ではありませんが、もし受給できた場合は傷病手当金がもらえなくなるのです。

適応障害で傷病手当を申請する方法

傷病手当金の申請を会社がするのか個人でするのかは、会社によって異なります。

傷病手当金を申請するには以下3つの書類が必要です。[9]

  • 「傷病手当金支給申請書」に必要事項を記入する
  • 主治医に仕事に就くことができないことを証明する書類を書いてもらう
  • 事業主の証明(申請期間について労務と給与に関する証明)を用意する

会社が申請してくれる場合は、どの書類をあなたが用意し記入するのかを担当部署に確認しましょう。

個人で申請する場合は、必要書類を用意し給与計算の締め日以降に、加入している健康保険に提出します。給与計算の締め日は会社で確認してください。

全国健康保険協会の傷病手当金支給申請書はこちらからも印刷できます。[10]

まとめ

傷病手当金は、会社の健康保険に加入している方が休職中の生活に困らないように保障する制度です。

適応障害の休職中に傷病手当金がもらえない理由は以下の5つです。

  • 給料をもらっている
  • 支給期間が過ぎている
  • 休業補償給付を受けている
  • 国民健康保険に加入している
  • 障害厚生年金か障害手当金を受給している

安心して治療に専念するためには、お金の心配を解消することも大切です。

おおかみこころのクリニックでは、あなたのどんな不安を話しても大丈夫です。オンライン診療も行っていますので、こころがモヤモヤしたら気軽に相談にきてくださいね。

【参考文献】
[1]病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/sb3040/r139/

[2]傷病手当金p5|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000688661.pdf

[3]労災保険 休業(補償)等給付 傷病(補償)等年金の請求手続き|厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001233426.pdf

[4]傷病手当金について(制度説明)|全国保険協会 岩手支部
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/iwate/20130830010/R4kamikikensyukai_syobyoteatekin1.pdf

[5]国民健康保険制度|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/koukikourei/index_00002.html

[6]国民健康保険傷病手当金 Q&A|沖縄市
https://www.city.okinawa.okinawa.jp/documents/298/syoubyouqa.pdf

[7]第8節/精神の障害|日本年金機構
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/shougainenkin/ninteikijun/20140604.files/3-1-8.pdf

[8]ICD-10 第5章
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000011ncr-att/2r98520000011nq2.pdf

[9]傷病手当金の申請|全国健康保険協会 秋田支部
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/akita/02/p2/syo20141009.pdf

[10]健康保険傷病手当金支給申請書|全国健康保険協会
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g2/cat230/r124

この記事の執筆者
柚木ハル
作業療法士。精神科16年の臨床経験を生かして執筆を担当。現在は訪問リハビリに従事しながら幅広いジャンルにて執筆中。
執筆者:浅田 愼太郎

監修者:浅田 愼太郎

新宿にあるおおかみこころのクリニックの診療部長です。心の悩みを気軽に相談できる環境を提供し、早期対応を重視しています。また、夜間診療にも力を入れており、患者の日常生活が快適になるようサポートしています。




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