境界性パーソナリティ障害を抱えていることが原因で、恋愛をうまくできず苦しいと感じることはありませんか。
恋人を「完璧な人」だと理想化したかと思えば、些細なことで「最低な人」に感じてしまう。感情の振れ幅に疲れ、自信を責めてしまうこともあるでしょう。
ただし、境界性パーソナリティ障害の特性を正しく理解すれば、苦しい恋愛のループから抜け出すことは可能です。
この記事では、境界性パーソナリティ障害の恋愛の特徴や恋人と良好な関係を築く方法を解説します。「自分は幸せな恋愛ができないのかもしれない」と悩む気持ちが、少しでも軽くなるきっかけになれば幸いです。
境界性パーソナリティ障害は恋愛できないといわれる理由
境界性パーソナリティ障害が恋愛できないといわれる理由には、次の2つがあります。
- 感情が不安定である
- 衝動的になりやすい
些細なきっかけで感情が不安定になり、恋人を極端に理想化したり逆に激しく批判したりする傾向がみられます。[1]
たとえば、恋人からの連絡が少し遅れただけで「見捨てられた」という不安や怒りに襲われるのです。
また、感情の高ぶりをうまくコントロールできず、衝動的な行動に出てしまうのも特徴のひとつです。自らを傷つけたり、危険をかえりみない行動をとったりします。[1]
衝動性は恋人に不安や混乱を与え、安定した関係を築くうえで高い壁となります。
このような特性から「境界性パーソナリティ障害は恋愛ができない」といわれるのです。
下記の記事では境界性パーソナリティ障害の人が幸せになる方法を解説しているので、あわせてご覧ください。
境界性パーソナリティ障害の恋愛の特徴5選
境界性パーソナリティ障害の恋愛には、次の5つの特徴があります。
あなたの経験と照らし合わせながら、恋愛の傾向を見つめなおすきっかけにしてみてください。
恋人に依存する
恋人に依存することは、境界性パーソナリティ障害の恋愛の特徴です。
こころの安定を保つのが難しく、常に誰かに支えてもらうことで不安を埋めようとします。
出会った相手を急速に理想化し「この人こそが自分を救ってくれる存在だ」と思い込み、依存を深めていくのです。[2]
その結果、恋人の時間をすべて独占しようとしたり、常に連絡を取りたがったりと、過度な要求をします。
相手が期待に応えられないと怒りや失望を感じ、関係が不安定になるというサイクルを繰り返しやすいのです。
恋愛に自信がない
境界性パーソナリティ障害の人は、過去の経験から恋愛に自信を持てない傾向があります。
大切な人に見捨てられた経験がこころの傷となり「自分は愛される価値のない人間だ」と思い込んでしまいます。
そのため、好意を寄せられても素直に受け取れず「どうせいつかはいなくなる」と疑うのです。
たとえば、恋人から愛情表現をされても不安が消えません。むしろ「こんな自分を好きになるなんておかしい」と相手を遠ざけるような言動をとることもあるでしょう。
恋愛に自信がないと恋人からの愛情を素直に受け取れず、幸せな恋愛関係を自ら壊してしまう悪循環になりやすいのです。
自分や恋人を傷つける
境界性パーソナリティ障害の人は、衝動的に自分や相手を傷つけることがあります。
見捨てられることへの不安や自分を責める気持ちが限界に達すると、感情が不安定になり、自分でも行動をコントロールできなくなるのです。[3]
具体的にはリストカットのような自傷行為や、大量の薬を一度に飲んだりするような危険な行動をとるケースです。[1][2]
また、怒りの矛先が恋人に向かうこともあります。
激しい言葉で恋人を罵倒したり物を投げつけたりして、相手のこころを深く傷つけてしまうでしょう。
衝動的な行動は、恋人との関係を悪化させる原因となります。

あなたも恋人も大切にしてください
感情をコントロールできない
感情をコントロールできなくなることは、境界性パーソナリティ障害の恋愛でみられる特徴です。
恋人の何気ない一言や行動によって、幸福感から絶望感へと感情が揺れることがあるのです。[1]
たとえば、楽しみにしていたデートの予定が急に変更になっただけで、激しい怒りや悲しみに襲われ恋人を責めます。
感情の波は自身でもコントロールが難しいため、こころが休まりません。また、恋人も混乱させてしまうため、感情の波は安定した恋愛関係を保つうえで壁となるのです。
見捨てられることに不安を感じる
境界性パーソナリティ障害の恋愛では、常に見捨てられることへの不安が存在します。
恋人からの愛情を常に疑い、相手を失うことを極端に恐れます。
そのため、恋人の気持ちをつなぎとめようと必死になってしまうのです。[1][2]
たとえば、わざとムリな要求をしたり他の異性の存在をほのめかしたりして「それでも自分のことを見捨てないか」を確認しようとします。
恋人を試すような行動は、相手の気持ちが離れる原因になりえます。恋人の愛を繋ぎ止めようとすればするほど、その絆を自ら断ち切ってしまうのです。
恋人とよい関係を保つ方法
恋人と良い関係を保つ方法には、次の3つがあります。
境界性パーソナリティ障害を抱えていると、恋愛でつらい思いをしやすいかもしれません。しかし、適切な方法を意識すれば、恋人とよりよい関係を築いていくことは可能です。
柔軟な考え方を持つ
恋人とよい関係を築くためには、柔軟な考え方を意識しましょう。
境界性パーソナリティ障害の人は、物事を「白か黒か」といった両極端で判断しがちです。
しかし、現実の人間関係や物事は、そう単純に割り切れるものではありません。
まずは、白と黒だけでなく中間の「グレーゾーン」を認める練習から始めてみましょう。[2]
「完璧な人間はいないし、自分も相手も間違うことがある」と考えると、恋人への過度な期待や失望がやわらぎます。
曖昧さを受け入れることが、恋人との安定した関係につながります。

「そんなこともあるよね!」とゆるやかに考えることも大切です
恋人のせいにしない
うまくいかない原因を恋人のせいにせず、あなたの感情や行動に目を向けましょう。[2]
気持ちが落ち込んだり恋人と喧嘩したりしたとき「あなたがあんなことを言ったから、私は傷ついた」と恋人を責めてしまうかもしれません。
しかし、恋人を責める言葉は根本的な問題の解決にはならず、ただお互いを傷つけるだけです。
たとえば「あなたの言葉を聞いて、私は『見捨てられた』と感じて悲しくなった」というように、あなた自身の感情として伝える練習をしましょう。
恋人のせいにするのをやめ、あなたの感情を伝えることが、2人の関係をよりよくするステップです。
友人や家族と過ごす時間を作る
友人や家族と過ごす時間を作ることは、恋人とよい関係を保つ方法です。
境界性パーソナリティ障害の恋愛では、恋人に支えを求めてしまう傾向があります。
しかし、ひとりにすべての期待を背負わせるのは、恋人にとって重い負担です。
そこで、恋人以外にも安心できる人間関係を複数持っておきましょう。たとえば、昔からの友人と定期的にお茶をしたり、趣味のサークルに参加して新しい仲間を作ったりするのもよいでしょう。
恋人以外にも頼れる人や場所があると、こころに余裕が生まれます。結果的に、恋人との適度な距離感を生み、良好な関係を長続きさせることにつながるのです。
境界性パーソナリティ障害の方が恋愛をするときの注意点
境界性パーソナリティ障害を抱えながら恋愛をするとき、次の3つに注意を払いましょう。
- 衝動的に行動をしない
- 恋人を試すような行動をとらない
- 境界性パーソナリティ障害のことを伝える
まず、衝動的に行動しないよう心がけてください。
怒りや不安で爆発しそうになったら、深呼吸をしたり冷たい水で顔を洗ったりするなど、落ち着ける方法を探しましょう。
次に、恋人の愛情を確かめるような試す行動は避けるべきです。遠回しな態度や駆け引きは誤解を生み、関係をこじらせます。
そして、信頼できる恋人にパーソナリティ障害のことを話してみるのもひとつの選択肢です。
理解を求める姿勢で伝えることが、2人の絆を深めるきっかけになるでしょう。
まとめ
境界性パーソナリティ障害では感情の不安定さや見捨てられ不安から、恋愛でつらい思いをしやすい傾向があります。しかし、幸せな恋愛ができないわけではありません。
あなたの思考や行動パターンを客観的に理解し、柔軟な考え方や感情のコントロール方法を身につけていくことで、恋人と安定した関係を築くことは可能です。
友人や家族など、恋人以外にもこころの支えとなる存在を見つけるのも助けになります。
もし、日常生活に支障が出ているときは、ひとりで抱え込まずに病院へ相談することも検討しましょう。
おおかみこころのクリニックでは、夜22時まで診察を受け付けています。仕事終わりでも通いやすいため、お気軽にお問い合わせください。
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【参考文献】
[1]林直樹先生に「パーソナリティ障害」を訊く|公益社団法人 日本精神神経学会
https://www.jspn.or.jp/modules/forpublic/index.php?content_id=41
[2]パーソナリティ障害 いかに接し、どう克服するか,岡田 尊司,PHP研究所
https://amzn.asia/d/5jdQTE2
[3]新版 よくわかる境界性パーソナリティ障害,林直樹,主婦の友社
https://amzn.asia/d/8eHcypU