相手を困らせたいわけではないのに、気遣うあまり「怒ってる?」と聞きすぎたり、謝りすぎたりする。
その行動が「めんどくさい」と思われているかもしれないと気づいたとき、胸が締め付けられるような思いになるでしょう。
ただし、これはあなたの性格の問題ではありません。
自信がないときに自分を守ろうとする気持ちが、少し強くなっているからです。
この記事では、自信がない人が「めんどくさい」と思われてしまう理由と、関係をよくするための対処法を紹介します。
あなたがムリに自信をつけなくても、楽に人と付き合えるようになるための参考になりますと幸いです。
自分に自信がない人が「めんどくさい」と思われる言動
自分に自信がないとき、知らず知らずのうちに周りの人に負担をかけてしまう言動があります。
周りの人に「めんどくさい」という印象を与えやすいのは、おもに以下の3つのパターンです。
相手が疲れてしまう理由をみていきましょう。
「大丈夫?」と何度も確認する
「ムリしてない?」「本当に怒ってない?」など、不安になると何度も相手に聞いてしまう言動です。
自分に自信がなく「見捨てられるのではないか」という不安が強い人ほど何度も繰り返し確認してしまうとされています。[1]
一度「大丈夫だよ」と言われても安心できず、何度も聞くことで自分の不安を消そうとするため生じるのです。
ただ、何度も同じことを聞かれた相手は「信用されていないのかな」「何度も同じことを言わせないでほしい」と次第に負担を感じるようになります。
また、「確認して一時的に安心するけれど、相手から距離を取られてしまい、さらに不安になる」というパターンを繰り返すこともあります。
これは、一時的な安心感で不安な気持ちを軽くしようとする「依存症」と似ており、あなた自身の不安をより強くさせてしまう可能性があります。
人への依存に関しては、以下の記事もご覧ください。
「どちらでもいい」と判断を相手に任せる
なにかを決めるときに「どっちでもいいよ」「〇〇さんの好きな方でいいよ」と、考えをすべて相手に任せてしまう言動です。
相手を大切にしているつもりでも、実は相手に「なにがいいか考える苦労」や「決めたことへの責任」を負わせてしまう行動でもあります。
このように相手に判断を任せてしまうのは「うまく選べないかも」という自信のなさが関係しています。
とくに、判断する力に自信をなくしている人は、以下のような行動を取りやすいことがわかっています。[2]
- 調べるのをやめてしまう:「自分にはよいものを選べない」と思い込み、選ぶために必要な情報を集める努力を避けてしまう
- 選択肢が多いとあきらめてしまう:選ぶものがたくさんあると、自分で選ぼうとしなくなる
「自分にはよい選択ができない」「選んだものが間違っていたらどうしよう」と思い、相手に判断を任せてしまうのです。ただ、人任せが続くと、相手は負担に感じてしまう可能性があります。
相手に合わせることが、結果的に相手の自由を奪ってしまうおそれがあるのです。

気づいたときから伝え方をかえたら大丈夫です!
自分を下げたりほめ言葉を否定したりする
「どうせわたしなんて」と自分を悪く言ったり、ほめられても「全然そんなことないです」と強く否定したりすることです。
自分を下げる発言は、相手に「そんなことないよ」となぐさめやフォローをさせてしまいがちです。
徐々に相手はあなたと話すことに疲れて、離れたくなるおそれがあります。
また、ほめ言葉を否定することは、あなたのことを「素敵だ」と思った相手のセンスや考えを否定することにもつながります。
そのため「扱いにくい人」だと思われる原因にもなるでしょう。
相手の言葉を素直に受け取ることが、結果的に相手を思いやる行動につながります。
自分に自信が持てない3つの原因
なぜ、周りから「めんどくさい」と思われるような行動をとってしまうほど、自信が持てないのでしょうか。
以下の3つの原因が考えられます。
自信をなくしてしまう背景にある理由を理解して、あなたの今の状態を見つめる手がかりにしましょう。
見捨てられるのが怖い
「いつか人は離れていく」「わたしはひとりぼっちになるかもしれない」という不安が、自信のなさと関係していることがあります。これは「見捨てられ不安」と呼ばれるものです。
家庭環境や過去に誰かと離れてしまった経験などが理由で「相手の機嫌をそこねたくない」という気持ちが人より強くなっている可能性があります。[3]
あなたが何度も確認してしまうのは、相手を困らせようとしているのではなく「離れてほしくない」と必死に頑張っているからこその行動といえます。
まずは、今日までひとりで不安と戦ってきた自分を「よく頑張ってきたね」と褒めてあげてください。
「嫌われたかも」とすぐに不安になる
相手から拒否されることへの不安が強いと、なにげない行動でも「嫌われたかも」と感じることがあるでしょう。[4]
たとえば、相手のちょっとした一言やLINEの返信が遅いだけで「嫌われたかも」と感じてしまうことです。
拒否されることへの不安は「拒絶過敏性」と呼ばれます。
拒絶過敏性は、以下の原因で生じる特性だとされています。[5]
- 親からの遺伝
- いじめ・仲間外れ
- 一貫性のない育て方・ネグレクト
家庭や学校などで拒否された経験から、ささいなことでも「嫌われた」と反応しやすくなってしまうのです。

相手がどう思っているのか気になりますよね💦
「自信を持つのは偉そう」と思い込んでいる
日本では、昔から「控えめでいること」を大切にする文化があります。
ただし、謙虚さを守りすぎるあまり、自信を持つことが「威張っている」「偉そうだ」と思い込みを持ってしまうときがあります。
日本で謙虚さが重視されるのは、付き合う相手がいつも同じになりやすく、あなたの評判がすぐに周りに広まりやすいからです。
狭いグループの中で信頼して付き合っていくためには、「自分はまだまだです」と控えめに振る舞うことが大切だと考えられてきました。[6]
ただ、謙虚すぎてしまうと、かえって「めんどくさい人」と思われてしまう可能性があります。
適度な自信を持つことは、相手に安心感を与えることにもつながるのです。
「めんどくさい」と思われないための対処法
すぐに自信をつけることは難しいかもしれません。ただし、使う言葉や行動を少しだけ変えることで、周りの人に与える印象は変えられます。
周りの人から「めんどくさい」と思われないための対処法は以下の3つです。
ふだんの会話の中で使えるコツを理解して、安心できる人間関係をつくるために役立てましょう。
不安なときこそ確認せず待ってみる
「嫌われていないかな」という不安がわいたとき、すぐに相手に聞かずに待ってみましょう。
不安なときに確認してムリに落ち着こうとすると、かえって不安が大きくなってしまうことがあるからです。[7]
たとえば、返信がなく不安なときは、以下のように気持ちをそらしてみてください。
- 机の上だけを掃除をする
- 10分だけ身体を動かしてみる
- 「単に忙しいだけかもしれない」と考える
あなたが何もしないで待つことで「あなたのことを信用している」というメッセージとして相手に伝わります。
待つことは勇気がいりますが、信頼を深めるためには必要です。
「事実」と「感情」をセットで話す
「わたしにはムリです」と自分を下げるのではなく、「今の状況(事実)」と「自分の気持ち(感情)」をセットで伝えてみましょう。
たとえば、新しい仕事を頼まれたとき、以下のように言い換えてみてください。
- NG例
- 「わたしにはムリです。たぶん失敗して迷惑をかけてしまいます」
→相手が受ける印象:「そんなことないよ」となだめる苦労がかかる
- OK例
- 「初めてのことなので(事実)、少しドキドキしています(感情)。困ったらサポートしてもらえますか?」
→相手が受ける印象:「緊張するのは当たり前だね。手伝うよ」と協力しやすくなる
不安から逃げるのではなく、「不安はあるけれどやってみたい」という前向きな意志を伝えましょう。
伝え方によって、相手に「めんどくさい」と思われずにすみます。
「すみません」を「ありがとう」に変える
自分に自信がない人がよく使ってしまうのが「すみません」という表現です。
謝ってばかりいると、徐々に「自分はダメな人なんだ」と思い込んでしまい、余計にあなた自身を責めて苦しくなってしまいます。
たとえば、以下のように言い換えてください。
【ほめられたとき】
✖「いえいえ、全然ダメなんです」
○「ありがとうございます!そう言ってもらえるとうれしいです」
【手伝ってもらったとき】
✖「すみません、お手数かけて……」
○「助かりました!ありがとうございます」
【アドバイスをくれたとき】
✖「すみません、わたしダメで……」
○「教えてくれてありがとうございます。勉強になります」
【話を聞いてもらったとき】
✖「わたしなんかの話ですみません」
○「お話を聞いてもらえてうれしかったです。時間を作ってくれてありがとうございます」
謝罪だけで終わると相手に「なだめる苦労」をかけてしまいますが、感謝を伝えると相手は「役に立ててよかった」と思えるでしょう。
まとめ
自信がないこと自体は、決してはずかしいことではありません。
あなたが、ほかの人よりも慎重で周りに配慮をしようとするこころを持っているからです。
周りの人が「めんどくさい」と感じるのは、あなたの性格そのものではなく、不安からくる確認や自分を下げる行動に対してです。
まずは、口癖になっている「すみません」を「ありがとう」に変えることから始めてみましょう。
言葉が変われば、あなたと周りの人との関係性も変わり、安心できる体験が増えていきます。小さな安心感の積み重ねが、やがてあなたの自信につながるはずです。
どうしても不安が強く、日常生活や人間関係に支障が出ているときは、ひとりで抱え込まずに相談してみることもよいでしょう。
おおかみこころのクリニックでは、オンラインでのご相談も可能です。あなたが周りの人と安心して関れるためのサポートをしていますので、お気軽にご相談ください。
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【参考文献】
[1]宇野 千咲香・宮本 正一,成人愛着スタイルが再確認傾向に及ぼす影響,東海心理学会第 54 回大会発表論文集, 2005/05/21, p.68
https://www1.gifu-u.ac.jp/~gupsycho/miyamoto/05521uno.pdf
[2]Reed, A. E., Mikels, J. A., & Löckenhoff, C. E. (2012). Choosing with confidence: Self-efficacy and preferences for choice. Judgment and Decision Making, 7(2), 173–180.
https://www.cambridge.org/core/services/aop-cambridge-core/content/view/CBA48FB720C1BB8582C0A4FE0C9445BC/S1930297500003004a.pdf/choosing_with_confidence_selfefficacy_and_preferences_for_choice.pdf
[3]吉田琢哉(2016)愛着スタイルが関係目標および葛藤対処方略に及ぼす影響,東海心理学研究 2016 年 第 10 巻 pp.1-9
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tjp/10/0/10_1/_pdf/-char/ja
[4]Downey G, Feldman SI. Implications of rejection sensitivity for intimate relationships. J Pers Soc Psychol. 1996 Jun;70(6):1327-43.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/8667172
[5]Rejection Sensitivity: Causes, Symptoms, Impact and Treatment│LA Outpatient Center
https://laopcenter.com/mental-health/symptoms/rejection-sensitivity
[6]日本人の自己卑下的自己呈示に関するネットワークモデルの構築(針原 素子)│東京大学大学院人文社会系研究科・文学部
https://www.l.u-tokyo.ac.jp/postgraduate/database/2008/575.html
[7]野田昇太・冨山蒼太・金子響介・大川翔・城月健太郎,不安と抑うつにおける共通要因とその介入 : 体験の回避と反すうに着目して,武蔵野大学心理臨床センター紀要,1882-6792,武蔵野大学心理臨床センター紀要編集委員会,2019-12,,19,35-43
https://cir.nii.ac.jp/crid/1050285299955895936
- この記事の執筆者
- 片桐 はじめ
公認心理師、臨床心理士として精神科病院・クリニックで精神疾患を抱える方のカウンセリングや心理検査に従事。臨床経験をもとに、身近な例からわかりやすく説明する文章を心がけています。









