近年、PMS(月経前症候群)の悩みを持つ女性が多くいます。
生理前に身体的・精神的不快症状が見られ、社会生活にまで支障をきたすことがあり、深刻な問題です。
また、生理前だけでなく、生理が始まってもこの症状が続き、苦しんでいる女性も多くいます。
できることなら、生理中でも不快症状なく過ごしたいものですよね。
この記事では、PMSは生理中も続くのか、もしくは、他の疾患の可能性があるのかを解説し、症状の治療法・対処法を紹介します。
生理中もPMSの症状が続くときに疑う病気
PMS(月経前症候群)とは、生理前の3~10日間続く精神的・身体的症状のことで、生理の開始4日以内に軽快ないし消失するのが特徴といわれています。
PMSには身体症状と精神症状が見られます。
身体的な症状
・下腹部痛
・腰痛
・頭痛
・むくみ
・乳房の張り
精神的な症状
・情緒不安定
・イライラ
・抑うつ
・不安
・眠気
・集中力の低下
・睡眠障害
・食欲不振
・めまい
・倦怠感
生理が始まってもこれらの症状があって辛い思いをしている女性がいます。
PMSは生理が始まってからは症状が軽快するものです。生理中も症状が強く見られる場合は、他の疾患を疑う必要があります。
月経困難症の可能性
月経困難症は、生理の直前または生理の開始とともに不快症状が出現し、生理の終了とともに消失します。
症状は下腹部痛、腰痛、腹部膨満感、吐き気、疲労、食欲不振、イライラ、下痢、抑うつなど。
月経困難症には2つのタイプがあります。
機能性月経困難症
子宮内膜で作られる痛みの物質(プロスタグランジン)が多くなり、子宮の筋肉が過度に収縮して血行が悪くなることで、下腹部痛や腰痛などの症状が生じます。
ストレスで症状が悪化しやすく、思春期に多く見られるのが特徴です。
器質性月経困難症
子宮に何らかの病気が潜んでいる事が原因。子宮内膜症や子宮筋腫、子宮腺筋症といった病気を原因とします。
鎮痛成分が効かないほど痛みが強い場合、日常生活に影響が出る場合は器質性月経困難症の可能性があります。
月経困難症とPMSは何が違うの? 生理前や生理中に感じるイライラなどの原因を解説 | メディカルノート
PEMS(周経期症候群)の可能性
PMSと似た症候群に周経期症候群(PEMS)があります。
PEMSの定義は、月経前期から月経期にかけて起こり、月経中に最も強くなる精神的、社会的症状で、月経痛症に起因する症状です。
PMSは生理1週間前から症状が出始めて、生理が始まると症状が軽快、消失します。
一方PEMSは生理1週間前から症状が出始めて、生理中に症状のピークを迎えます。
PEMSの症状は、だるくなる、イライラする、無気力になる、人付き合いが面倒になり1人でいたくなる、物事が面倒になるなど。
生理前から生理中にかけてこれらの症状が出ている場合はPEMSが疑われます。
PMSは「月経前」月経困難症は「月経中」PEMSは「月経前と月経中、両方」
PMS(月経前症候群)の原因、症状、治療、予防可能性|アスクドクターズトピックス
PMS・月経困難症・PESMを発症しやすい人
PMS、月経困難症、PESMを発症しやすい人には、以下の特徴があります。
- 几帳面で真面目な性格
- 仕事量が多い
- 不規則な生活を送っている
- タバコを吸う
- お酒、カフェインを多くとっている
- 自律神経症状を感じている(倦怠感、頭痛、めまい、動悸)
脳内ホルモンや神経伝達物質は、ストレスの影響を大きく受けています。
日常でストレスを感じたり、真面目で物事をうまくこなせずストレスを感じやすい人が発症しやすいと言われています。
PMS・PEMS・月経困難症の治療法
PMS、PEMSの治療法と月経困難症の治療法では内容が変わるので、それぞれについて以下に解説します。
PMS・PEMSの治療
PMS・PEMSいずれも治療は以下の通りです。
経口避妊薬(OC)、低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)
OC、LEPは排卵を抑制するので、PMSやPMDDが出現しません。
血栓の副作用でまれに心筋梗塞や脳卒中・脳梗塞が起きる可能性があり、35歳以上の喫煙者や乳がんの既往のある方、予兆のある片頭痛のある方には使用できません。
漢方薬、その他対症療法
うつ症状や冷え・のぼせの場合は、加味逍遙散。
イライラが強い・のぼせや便秘がある場合は、桃核承気湯。
むくみや冷えがあり体力がない場合は、当帰芍薬散。
頭痛・肩こり・不眠・生理痛がある場合は、桂枝茯苓丸。
対症療法として不眠があれば、睡眠薬や入眠剤、精神安定剤など。むくみには利尿剤を用いることがあります。
偽閉経療法(性腺刺激ホルモン放出ホルモン作動薬)
閉経するとPMSやPMDDの症状が消失するので、ホルモンレベルを閉経の状態にする治療法。他の薬剤で治療効果が認められない場合の最終手段として使用します。
抗うつ薬(選択的セロトニン再取り込み阻害薬:SSRI)
現在、うつ病の治療薬として広く使用されています。
PMDDに効果はありますが、重症になると精神科での治療が必要です。
鎮痛剤
下腹部痛や腰痛、頭痛などの痛みの軽減に使います。
その他、むくみに対しては利尿剤、精神症状に対しては精神安定剤など症状に応じた薬によって症状の緩和を図ります。
月経困難症
機能性月経困難症では、生理に伴って増えるプロスタグランジンという物質が通常よりも多く産生されることが原因と言われています。そのため、鎮痛剤やピル、漢方薬などを内服して、プロスタグランジンを減らし、症状の改善を図ります。
鎮痛剤
一般的には鎮痛剤が第一選択となります。
ピル
ピルは避妊薬として知られていますが、ホルモンを調整して子宮内膜の増殖を抑制し、内膜を薄くしてプロスタグランジンの量を減らす作用を持っています。
上記の作用を活用し、月経困難症の治療にも有効性が認められているのです。
また、月経困難症の治療薬としてのピルは、ホルモンの配合量が少ない低用量または超低用量のもので、鎮痛剤で症状が改善しない場合や症状が重い場合に用いられています。
漢方薬
月経困難症で用いる主な漢方薬は、当帰芍薬散、桂皮茯苓丸、加味逍遥散などです。
ピルの代わりに用いられることも多く、症状の緩和に有効なことがあります。
病気が原因で起こる器質性月経困難症では、病気に対する治療が原則です。
原因となる病気として、子宮内膜症や子宮筋腫、子宮腺筋症が挙げられます。
薬で症状をコントロール出来ない場合に手術が検討されます。
日常生活でできるPMS・PEMSの対処法
これまで、治療法を解説してきました。
日常生活において、自分自身で意識して対処することができたらストレスも軽減するので、対処法を以下で解説します。
日常でできるPMS・PEMSの対処法
症状日記をつけてみる
月経の周期、日付、症状を記録しましょう。
記録を続けてみると、月経周期の何日目くらいにどのような症状が起こりやすいかわかってきます。症状が分かれば、それに対する対処法を講じることができます。
身体を動かしてみる
負担のない程度の軽い運動がおすすめ。
体を動かすことで、血流が良くなる、リフレッシュできる、自律神経が整うなどの効果があります。
ウォーキングやヨガなどがおすすめです。
睡眠をしっかりとる
心身に不調があると、いつもより疲労感を感じることも。
睡眠不足が続くと、自律神経が乱れやすくなり、生理前・生理中の不調が起こりやすくなります。毎日6~8時間程度の睡眠時間を確保しましょう。
身体をあたためる
冷えは血行の滞りの原因になります。子宮筋の硬直や骨盤内のうっ血を招く場合もあるので、体を冷やさないようにしましょう。
半身浴を行うことで血管が広がって血流がよくなり、体が温まります。
また、副交感神経が優位に働き、リラックス効果が期待できます。
栄養バランスのとれた食事をとる
生理前は、血糖値の変動が激しく上下します。血糖値を緩やかに上昇させる食事の取り方を心がけましょう。糖を多く含む食材は血糖値を急上昇させるので注意。豆類や穀物・イモ類は血糖値の上昇を緩やかにします。
カフェインやアルコールは普段よりも控えましょう。
こまめにストレスを発散する
ストレスは、脳や中枢神経に影響して、症状を悪化させる恐れがあります。
こまめにストレスを発散して、溜め込まないようにしましょう。
まとめ
PMSの症状が長く続くときには、他に月経困難症やPEMSの可能性があります。
記事の中では、それぞれの治療法だけでなく、日常生活でできる対処法もわかりやすく解説しました。
記事の内容を参考にして、少しでも症状を和らげることができれば幸いです。
それでもイライラや気持ちの落ち込みが激しい場合にはうつ病を併発している可能性もあるため、一度専門のクリニックを受診してみてください。おおかみこころのクリニックはどんな相談でも受け付けています。お気軽にお越しください。
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