自己愛性パーソナリティ障害は、患者本人よりも周囲の人が困ることが多い病気かもしれません。
自己愛性パーソナリティ障害の人が周りの人を振り回す様子を見て「自滅を待つしかない」と途方に暮れてしまったこともあるでしょう。
そこで今回の記事では
「自己愛性パーソナリティ障害の症状」
「人間関係が上手くいかない理由」
「自己愛性人格障害を持つ人との付き合い方」
などについて解説します。
記事の後半では、他人との関わり方や受診のタイミングについても解説しているので、ぜひ参考にして下さい。
当事者と家族の症状に悩んでいる方のどちらの悩みも解決する記事になっています!
また、同じ内容の動画も用意しています。動画の方が分かりやすい方は下記からご覧ください。
自己愛性パーソナリティ障害とは【どんな症状がある?】
自己愛性パーソナリティ障害(Narcissistic personality disorder:NPD)とは、考え方や感情に偏りがあり生きづらさに難しさを感じてしまう「パーソナリティ障害」のことです。
「自分は賞賛されるべき人物だ」というような過大な自己評価や特権意識を持っています。
何かに成功した時は過度に自分の手柄を強調し、それを賞賛されないと強い不満を抱くのが特徴です。
一方、失敗した時には「優秀な自分を理解しない周りが悪い」と責任転嫁したり、ミスを指摘されると激昂したりするため、安定した人間関係を築けません。
共感性が欠如していることも多く、自分の利益のために他者を利用することもあります。
また精神的に不安定で感情の起伏が激しいため、集団から孤立しやすいのも特徴です。
ただ、自己愛性パーソナリティ障害を持つ人は、心の奥底では自分の無力さを感じています。
その無力さを隠すために、自分を着飾り優位な立場に立とうとするのです。
その結果、無力な自分に直面する恐怖を感じると、パニックやかんしゃくを起こし感情を爆発させてしまうところが問題になります。
自己愛性パーソナリティ障害の行動パターンと特徴については、下記の記事でも詳しく解説していますので、気になる方はご覧ください。
自己愛性パーソナリティ障害を持つ人が人間関係上手くいかない理由
自己愛性パーソナリティ障害は、安定した人間関係を築くのが難しく、社会から孤立しやすいという特徴があります。
その理由として、
「等身大の自分がいない」
「地道な努力ができない」
という2点が挙げられます。
わかりやすく教えてー!
もちろん!
等身大の自分がいない
自己愛性パーソナリティ障害を持つ人は、
「理想の自分」
「何もできない自分」
という両極端のイメージしかありません。
等身大(ありのまま)の自分が欠如しているのです。
理想の自分でいるために、
「自分の手柄を強調する」
「権力者とのつながりをアピールする」
といったあらゆる方法を使います。
この背景には
「結果を出さないと受け入れてもらえない」
「弱い自分は嫌われる」
という不安が隠れているのです。
そのため「何もできない自分」に直面したときは、落ち込んだり引きこもったりしてしまいます。
成功した時には周囲を困らせ、失敗すると自分が絶望することで、社会からの孤立につながっていくのです。
地道な努力ができない
自己愛性パーソナリティ障害の人は、地道な努力ができません。
「努力は凡人がするもの」
「努力しない=有能さの証明」
と考える傾向があるためです。
これでは当然結果は伴わないでしょう。
それどころか、周囲の反感を買ったり「何もできない自分」に直面して、感情を爆発させてしまうのです。
「努力は凡人がするもの」という偏った考え方を諭す(さとす)のは難しく、努力しない姿勢はなかなか変化しません。
そのため、仕事や地域での役割を任されなくなり、社会から孤立していきます。
社会から孤立してしまうと「人生なんだかつまんないな…」と思えてくることもあるでしょう。下記の記事では、病気の治療以外の対処法も紹介しています。気になる方は参考にしてくださいね。
自己愛性パーソナリティ障害の二次障害
自己愛性パーソナリティ障害を持つ人は、人間関係や仕事でうまくいかない場面が多く、ストレスを感じやすいに傾向あります。
その結果、二次的に以下のような病気を併発することがあるため、注意が必要です。
うつ病・不安障害
自己愛性パーソナリティ障害の方は「何もできない自分」や「否定された感覚」に激しく落ち込み、うつ病や不安障害を発症することがあります。
気分が落ち込んだときに効く食べ物について知りたい方は、下記の記事も参考にされて下さいね。
アルコール依存症・ギャンブル依存症
ストレスを解消したり「何もできない自分」を回避するために、アルコールやギャンブルに頼り、依存症になることがあります。
これらの二次障害では薬物治療を行うものの、薬だけで症状が改善しないこともあるでしょう。
自分自身がパーソナリティの問題と向き合い、考えの偏りを修正しながら治療する必要があります。
自己愛性パーソナリティ障害との付き合い方
ここまでの記事を読んで、
「自分も自己愛性パーソナリティ障害かもしれない」
「あの人は自己愛性パーソナリティ障害なのでは?」
と感じた方もいるかもしれません。
ここでは、自分もしくは近くにいる人が自己愛性パーソナリティ障害を持っている場合の他人との付き合い方について解説します。
自己愛性パーソナリティ障害の特徴を理解して関わっていくことも大切です。気になる方は下記の記事もご覧ください。
自分が自己愛性パーソナリティ障害の場合
自己愛性パーソナリティ障害の特徴に心あたりがあり、社会生活に影響を及ぼしている場合は病院を受診しましょう。
自己愛性パーソナリティ障害を受診する方のほとんどは、二次障害である抑うつ感や不安をきっかけに来院されます。
自分の問題を自覚して受診するのは難しいものですよね。
ふだんの生活の中で、人間関係の難しさや抑うつ感を感じたとき、それは心のSOSかもしれません。
早めに専門のクリニック・医療機関を受診しましょう。
カウンセリングを通して「等身大の自分」を育て、成功・失敗といった結果だけではなく、過程を重視できるようになると日常生活がグッと楽になりますよ。
近くに自己愛性パーソナリティ障害の人がいる場合
本人に治療意欲がある場合は手助けしすぎず、経過を見守っていきましょう。
パーソナリティ障害は相手の課題でもあると考える必要があります。
もし抑うつ感や不安で悩んでいる様子があれば、周りを困らせる症状ではなく、本人の困り感に目を向けて精神科受診をすすめてあげてください。
また、治療意欲がない限りは、外からの働きかけで本人を変えるのは不可能です。
このときに周囲の人ができるのは、自分の心身の健康を守ることのみです。
無理に何もできない部分に直面させたり、相手の言うことを真に受けて傷ついたりしないように注意してください。
ひとりで抱え込まず、第三者に相談するなどして距離を取っていきましょう。自己愛性パーソナリティ障害を持つ方との関わり方で悩んでいるならば、おおかみこころのクリニックにお気軽にご相談ください。専門家に相談することで、悩み解決の糸口が見つかるかもしれませんよ。
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自己愛性パーソナリティ障害の治療
自己愛性パーソナリティ障害の二次障害であるうつ病や不安障害などの薬物治療はできますが、自己愛性パーソナリティ障害そのものに効く薬はありません。
ここで、最も大切なのは「本人の治療意欲」です。
本人が治療の必要性を感じていないと、治療をすすめてくる人の関わりを攻撃とみなし、心を閉ざしてしまいます。
自分自身が問題に気づき、向き合う覚悟を持たないと治療は進まないのです。
- 「理想の自分」に見合うほどの実績を出していない
- 人を傷つけるような言動や人間関係の破綻をくり返している
本人がこれらの現実を受け入れ、治療意欲を持っている場合に限り、カウンセリングのような精神療法を通して「等身大の自分」を育てていきます。
時間をかけて考えの偏りを少しずつ修正し、社会に適応できるように治療していきましょう。
まとめ
自己愛性パーソナリティ障害を持っている人は、感情の起伏が激しく言葉に一貫性がないために社会から孤立しやすい病気です。
当事者だけでなく周囲の人が困ることも多いため、周りに自己愛性パーソナリティ障害患者がいるなら、まずは自分の心身を守ることを最優先しましょう。
パーソナリティ障害の症状によって
「社会生活に支障をきたしている方」
「二次障害による苦しみを感じている方」
は早めに検査や治療がえきる専門のクリニックを受診するようにしてください。
自分の中にある不安と向き合い「等身大の自分」で楽に生きられる状態を目指していきましょう。
おおかみこころのクリニックは、あなたの心が楽になるようにサポートします。お気軽にご相談ください。
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