理想の自分を作り上げるために、成功を誇張したり、非を認めづらかったりする自己愛性パーソナリティ障害。患者本人よりも、周囲の人が困る傾向がある病気です。
とくに会社や同じコミュニティの中にそのような方がいると、対応に困ってしまう方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、自己愛性パーソナリティ障害の方への適切な対応方法について解説します。相手を刺激せず自分を守る方法について知り、お互いの心を守る結果につながれば幸いです。
この記事の内容
自己愛性人格障害(自己愛性パーソナリティ障害)の方への4つの対処法
自己愛性パーソナリティ障害に困っている場合の対応方法は以下の4つです。
ひとつずつ解説していきます。
求める成果を明確にする
「自分の非を認められない」という症状に周囲が困っている場合は、求める成果を明確にしましょう。
これは、仕事のミスを認めなかったり言い訳が多かったりする場合に有効です。
・具体的にどのような仕事が必要なのか
・どのレベルのものをいつまでに提出してほしいのか
これらを明確化し、事前に共有しておきましょう。
言い訳や責任転嫁などのトラブルを防ぐため、文書化して残しておくと安心です。
複数人で対応する
仕事など責任が伴う話をするときは、なるべく1対1の状況を避けましょう。
都合が悪くなったときに責任転嫁されたり、執拗に責められたりしてあなたが辛い思いをする可能性があるからです。
複数人で対応すれば、話がこじれたときに自分を守るための「証人」が増えます。
問題への距離感も保てるため、納得できる解決策が見つかりやすいでしょう。
お互いの精神的な負担の軽減のため、複数人での対応を心がけてください。
特別扱いしない
権力者との繋がりをアピールされたり、手柄を強調されたりするときもあるでしょう。
相手の「誉めて」という気持ちを察すると思いますが、特別な反応を返す必要はありません。
注意点は「特別扱いしない」を意識しすぎて、自己愛性パーソナリティ障害の方だけに冷たくなったり、素っ気なくなったりしないことです。
あくまでも、みんなと平等に対応することを心がけましょう。
第三者に相談する
自己愛性パーソナリティー障害の方は、自分を守るために高圧的な態度を取ることがあります。
そのような症状がハラスメント問題となっている場合は、第三者に相談しましょう。
まずは社内の相談窓口を利用してください。
対応窓口がない場合や社内で対応してくれない場合は、労働基準監督署の総合労働相談コーナーがよいでしょう。労働基準監督署は全国に設置されているため、最寄りの窓口に相談してください。
自己愛性人格障害(自己愛性パーソナリティ障害)の方への対応における4つの注意点
自己愛性パーソナリティ障害の方に対応するときは、以下の4点に注意しましょう。
ひとつずつ解説します♪
また、自己愛性人格障害の方に対応するためには、行動パターンを知っておくことも大切です。下記の記事も参考にしてください。
急に現実に直面させない
自己愛性パーソナリティ障害の方は、理想とする世界を守るために、失敗や実力不足と向き合わない傾向があります。
そのような状態の方に急に現実を突きつけると、混乱して激昂したりうつ状態になったりする危険性があります。
あなたを攻撃対象として見なす可能性もあるでしょう。
本人を現実に向き合わせるのは、専門の知識を有した医療者の仕事です。
不要なトラブルの原因になるため、唐突に現実に向き合わせるのは避けてください。
対応を統一する
職場やコミュニティ内で対応を統一するのも重要です。
特定の人が「悪者」と見なされ攻撃対象になる事態を回避できるからです。
・自己愛性パーソナリティ障害の方の主張ではなく、会社の規則を優先する
・仕事に求める成果は文書化して明示する
このように対応方法を共有しておくことで、「〇〇さんはこう言った」などの混乱を避けられ、スムーズに事を進められるでしょう。
本人を責めない
目にあまる言動があったとしても、相手の「人格」を非難しないでください。
問題となる言動の背景には、病気の苦しみや自信のなさ、複雑な生い立ちが潜んでいます。
自己愛性パーソナリティ障害は、本人よりも周囲が苦労するため、相手を責めたくなる気持ちが生じると思います。
しかし、どうか上記を念頭に置き冷静に対応してください。
関係がこじれた場合には、会社などの第三者を入れてお互いがクールダウンできる距離感を保ちましょう。
肩入れしすぎない
自己愛性パーソナリティ障害の方は、プライドが高く弱みを見せない傾向がありますが、相談を受けたり苦しむ様子を見たりすることもあるでしょう。
そのようなときは、肩入れしすぎたりその場限りの約束をしたりしないことが大切です。
依存的になったり、上下関係ができて要求がエスカレートしたりして、お互いが傷つくリスクがあります。
相談内容には理解を示しつつ、程よくドライな関係性を保ちましょう。
自己愛性人格障害(自己愛性パーソナリティ障害)の方への対応で自分が辛くならないための2つの工夫
自己愛性パーソナリティ障害の方と向き合うには大きなエネルギーが必要です。
自分が辛くならないために、以下の2点を意識してください。
ひとつずつ解説します。
まずは会社に相談する
自分たちで対応しようと決める前に、まずは会社の相談窓口を利用しましょう。
「第三者に相談する」で紹介した労働相談コーナーもよいかもしれません。
精神疾患との対峙は、本来であれば医師に任せるべきことです。
しかし、自己愛性パーソナリティ障害という病気の特性上、受診が難しかったり周囲が被害を受けたりして、自分たちで対応せざるを得ない状況もあるでしょう。
そのようなときは、まずは会社などの第三者に相談して適切な対応をしていきましょう。
事前に避難先を決め共有しておく
攻撃対象にされるなどして、精神的に辛くなることがあるかもしれません。
そのような事態に備え、業務変更や配置転換などの対策を考えておく必要があります。
社内に産業医がいる場合は、事前にアドバイスを求めるのがよいでしょう。
自己愛性パーソナリティ障害の方は、心の中に「完璧な自分」と「取り柄のない自分」という両極端なイメージしかなく、非常に脆い状態です。
相手の弱みに触れてしまったとき、自分を守ろうと攻撃的になる可能性が十分にあります。
お互いの心を守るために、事前に対応を協議しておきましょう。
自己愛性人格障害(自己愛性パーソナリティ障害)をもつ本人の態度に変化があったときの対応
自己愛性パーソナリティ障害の方が落ち込んでいたり、態度を軟化させたりする様子があったときは、次のように対応しましょう。
ひとつずつ解説します。
自己愛性人格障害の方が女性の場合は、下記の記事もご覧くださいんね。
安易な共感は避けあたたかく見守る
落ち込む様子がみられても、安易な共感は避けましょう。
自己愛性パーソナリティ障害の方にとって失敗は「恥」の経験です。
「こんなミスよくあるよ。そんなに落ち込まないで」
と共感や労いのつもりで声をかけると、恥を再体験する気持ちになる傾向があります。
相手の気分を損ねたり、激昂したりする可能性があるため注意が必要です。
労いたい気持ちを抑えてあたたかく見守り、相手からの開示を待つのがよいでしょう。
医療機関の受診を勧める
元気のない様子がみられたら、医療機関の受診を勧めてください。
メンタル面の変化を指摘されると、弱点を指摘されたように感じるかもしれません。
そのため、身体症状に着目する方がよいでしょう。
「最近眠れてる?」
「食事は摂れてる?」
そんな切り口から医療機関に繋げるよう試みてください。
精神科を勧めづらい場合は、まずは産業医への相談もよいでしょう。
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まとめ
この記事では、自己愛性パーソナリティ障害への適切な対応について解説しました。
責任を伴う話の時には内容を文書化したり、複数人で対応したりするのが有効です。
ハラスメント問題に発展している場合は、会社や行政の相談窓口を利用するのもよいでしょう。
対応中に気をつけるのは、自己愛性パーソナリティ障害の方の「人格」を否定しないことです。
問題となる言動の背景には、病気の苦しみや自信のなさが潜んでいることに留意し、お互いが冷静になれる距離感を保つようにしてください。
自己愛性パーソナリティー障害の方と向き合うのは、大きなエネルギーが必要です。
会社や産業医などの第三者に相談しながら、1人で抱え込まないようにしてくださいね。
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