「パートナーに強い嫉妬を抱いてしまう」
「最近恋人の束縛が激しい」
と感じている方はいませんか?もしかするとそれは、オセロ症候群かもしれません。
オセロ症候群は嫉妬妄想とも呼ばれ、配偶者や恋人などパートナーに対して、強い嫉妬や不安を抱いてしまう状態を指します。
オセロ症候群の治し方としては、精神療法や薬物療法がありますが、治療を進めるにはいくつかの点に配慮が必要です。そこで今回は、オセロ症候群について確認しながら、治療法や受診の目安、関わる際の注意点などを解説します。
「オセロ症候群を治したい!」と考えている方は、ぜひ参考にしてください。
この記事の内容
オセロ症候群(嫉妬妄想)は妄想性障害のなかのひとつ
オセロ症候群は嫉妬妄想とも呼び、妄想性障害という精神疾患のなかのひとつです。妄想性障害とは、ひとつまたは複数の間違った認識(妄想)を抱いてしまう精神疾患であり、妄想による影響が少なくとも1ヵ月続くのが特徴です。
妄想性障害の症状は、以下の5つのパターンに分けられます。
- 被愛型
- 誇大型
- 嫉妬型
- 被害型
- 身体型
上記のなかの「嫉妬型」が、一般的にオセロ症候群と呼ばれています。
オセロ症候群の特徴と症状
オセロ症候群とは、配偶者や恋人などのパートナーに対して、不貞行為を妄想して強い嫉妬を抱く状態です。
「浮気をしているのではないか」「自分は捨てられるのではないか」と妄想が膨らみ、次第に不安が大きくなり相手を過剰に束縛してしまうなどの行動が見られます。
過剰な束縛行為は、自分だけでなく相手にとってもストレスとなり、トラブルの原因になることも少なくありません。
不安が大きくなると攻撃的な言動が見られ、暴力や暴言などの他害行為に発展するおそれもあります。
オセロ症候群の原因
オセロ症候群を発症するには、いくつかの原因が考えられます。主な原因は以下の通りです。
- 過去のトラウマ(パートナーに裏切られた経験)
- 養育環境(不安定な親子関係や複雑な家庭など)
過去に恋人に浮気された経験があると、それがトラウマとなり疑い深くなる原因となります。
精神的負担を受けたときには、同じ思いをしたくないと考えるのは当然です。しかしその後の恋愛でも、根拠がないのに「浮気されている」と思い込んでしまうのは、過去に裏切られたことによる認知の歪み(妄想)です。
ほかにも、親に十分な愛情を受けて育てられなかった、複雑な家庭環境で育ったなどの環境で暮らしていた場合は、他人を信じられず嫉妬妄想が起こる原因となるケースもあります。
適切な治療を開始するには、オセロ症候群を引き起こした原因を正しく理解することが大切です。本人のなかに大きな問題がある場合には、その問題を解決することで治療がスムーズに進むでしょう。
オセロ症候群の背景となる精神疾患
オセロ症候群(嫉妬妄想)は、妄想性障害だけでなく、以下のようなさまざまな疾患に起因して発症することもあります。
- 妄想性パーソナリティ障害
- 認知症
- 統合失調症
- アルコール依存症
症状や状態を確認しながら、それぞれの疾患ごとに区別されます。ほかの精神疾患が原因と診断された場合には、もとの疾患の治療が開始されることで、妄想の改善が期待できるでしょう。
オセロ症候群(嫉妬妄想)の治し方は主に精神療法
オセロ症候群の治療としては、カウンセリングや認知行動療法などといった精神療法が選択されることが多いとされています。
しかし妄想による思考に支配されている場合、治療が難航し長期化することも珍しくありません。
配偶者や恋人などのパートナーに対して他害行為が見られる場合、一時的に入院措置を取る可能性もあります。状況に応じて適切な対応が求められるため、医師や専門のカウンセラーと共同して、本人に合った治療を検討することが大切です。
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精神療法のほかにも、薬物療法として抗精神病薬や抗うつ薬が使われることもあります。しかし服用を拒否したり、治療への協力が得られなかったりすることも多く、十分な効果が期待できないのが事実です。
オセロ症候群の方が抱える問題点
オセロ症候群で問題となるのは、妄想だと本人が認識しづらく、精神疾患だと認めにくいことです。治療を進められないだけでなく、受診すらも拒否が見られる恐れがあります。
治療の最終的な目標は妄想から離れて、固定概念や考え方を変えていくことです。そのためには、疾患について正しく理解して、治療を受け入れることが大切です。しかし妄想であるとの自覚が乏しい場合、早期介入が難しくなり、人間関係でのトラブルや妄想によるストレスから、ほかの精神疾患を発症するリスクが高まります。
治療や回復までに長い期間を要することを念頭に、少しずつ介入していく必要があるといえるでしょう。
オセロ症候群を治療するには病院の受診が必要
オセロ症候群を治すには、精神科や心療内科などの医療機関を受診して、適切な治療を開始する必要があります。
オセロ症候群を含めた妄想性障害は、1ヵ月ほど妄想による影響が見られることが特徴的です。そのため、1ヵ月以上症状が続いている場合や、日常生活に支障をきたしている場合には、医療機関を受診することをおすすめします。
なかには本人が妄想と自覚しておらず、受診のタイミングが遅れる可能性もあります。
その場合には、配偶者や恋人など周囲の人が、以前と異なる様子に気づいた時点で受診を勧めるのがよいでしょう。とくに暴力や人間関係でのトラブルなど、他害行為もしくは自傷行為が見られ危険な状態と判断した際には、早めの受診が必要です。
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オセロ症候群の方と治療を進めるうえで大切な4つのこと
オセロ症候群は、自分や相手を苦しめているものが妄想であるとの認識が乏しいことが多く、関わる際にはいくつかの点に配慮が必要です。
ここでは、オセロ症候群の方と治療を進めるうえで大切な、4つのポイントについてご紹介します。
自分たちだけで解決しようとしない
オセロ症候群による問題を、自分たちだけで解決するのは得策ではありません。夫婦や恋人同士で解決しようとすることもあるかもしれませんが、オセロ症候群の場合は根本的な解決に至らないケースも考えられます。
オセロ症候群を治すには、専門家による治療を受けることが大切です。
妄想を否定しない
妄想自体を否定することは避けましょう。周囲からしたら妄想とわかることでも、本人にとっては事実であることに違いはありません。
嘘をついているわけではなく、妄想という思い込みであるため、妄想自体を否定したり、本人の考えを受け入れなかったりすることは適切ではありません。
本人の苦痛やストレスに共感して、心配していることを伝えてあげましょう。
精神的・身体的不調の変化に注意する
オセロ症候群の症状(過剰な妄想)が長く続くことで、大きなストレスを感じ、精神的・身体的不調を引き起こすことがあります。抑うつ気分や意欲の低下、睡眠障害などの不調が見られたら、早めに主治医へ相談しましょう。
そのままにしていると、症状の悪化や長期化、ほかの精神疾患の発症につながるおそれがあるため注意が必要です。
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信頼関係を築くことが最優先である
一方的に治療を押しつけるのではなく、まずは患者と医療従事者が良好な関係性を築き、治療への参加を促す介入が必要です。焦らず治療を進めましょう。
オセロ症候群の方と関わる場合には、疾患について正しく理解して、本人の意思や思いに共感することが大切です。
オセロ症候群の治し方は「精神療法」と「薬物療法」
オセロ症候群とは「嫉妬妄想」のことを指し、妄想性障害に見られる症状のひとつです。主な治療法としては「精神療法」が選択され、状況に応じて「薬物療法」も併用するケースもあります。
オセロ症候群の方と接する際には、今回ご紹介した4つのポイントに配慮して、本人の意思を尊重した関わりを意識しましょう。
「オセロ症候群かもしれない」「日常生活を送るうえで困りごとがある」といった方は、医療機関を受診することをおすすめします。
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参考文献
・精神神経疾患ビジュアルブック
https://d.kuku.lu/epxgzy77w
・妄想性障害 – 10. 心の健康問題 – MSDマニュアル家庭版 (msdmanuals.com)
・統合失調症・妄想性障害・緊張病 | COMHBO地域精神保健福祉機構
・みたかこころの健康ハンドブック|厚生労働省
seikabutsu29-1-02.pdf (mhlw.go.jp)
- この記事の編集者
- Yusa
大学病院にて約10年間病棟看護師として勤務。耳鼻科(周手術期管理)、腎臓外科(腎移植)、循環器小児科、脳神経外科・SCUの現場で培った経験と知識を活かし、現在は看護師ライターとして活動中。