PMSに効く漢方薬7選|ピルとの比較や保険適用されるのかについても解説

「生理(月経)前になると、イライラして家族や恋人にあたってしまう」

「PMS(premenstrual syndrome : 月経前症候群)に効く漢方薬にはどのようなものがあるの?」

このようなお悩みや疑問をかかえていないでしょうか?

PMSの不調で仕事や家事が思うように進まず、つらい思いをしている方も多いでしょう。

この記事では、PMSに効く漢方薬の種類や、PMSの治療に漢方薬を用いるメリットなどについて解説します。ピルと漢方薬との比較や、漢方薬の費用についても紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。

PMS(月経前症候群)とは

PMS(月経前症候群)とは、月経がはじまる3~10日ぐらい前から起こるさまざまな症状のことです。PMSは女性の70~80%が経験するとされており、非常に身近な疾患だといえるでしょう。[1]

もし、月経がはじまってもPMSの症状が続く場合は、下記の記事もご覧ください。

症状

PMSの症状には次のようにさまざまなものがあり、身体的な症状と精神的な症状に大きく分けられます。

身体的な症状
・腹痛
・お腹の張り
・便秘
・頭痛
・むくみ
・頭痛
・肩こり など
精神的な症状
・気分の落ち込み
・イライラ
・不安感
・無気力
・疲労感
・集中力の低下 など

PMSの症状は、月経開始と同時に自然と軽くなったり治まったりする点が特徴です。

原因

PMSが起こる原因には、いまだ解明されていない部分もありますが、月経周期における女性ホルモンの変動が関連しているとされています。

女性ホルモンの急激な変動により、脳内のホルモンや神経伝達物質の異常を引き起こすことで、PMSにつながると考えられているのです。[2]

治療

西洋医学における治療では、おもにPMSの多様な症状に合わせた薬が処方されます。たとえば、腹痛や頭痛などの痛みに対しては鎮痛剤、精神症状に対しては抗不安薬や抗うつ薬など、症状に応じた薬を使用します。

東洋医学で考えるPMS

東洋医学では、PMSの原因を「気・血・水(き・けつ・すい)」の乱れだと考えます。「気(き)」はからだのエネルギー、「血(けつ)」はからだの栄養、「水(すい)」はからだの水分を意味しています。

漢方薬には「気・血・水」の異常やバランスの乱れを整えるはたらきがあるため、PMSの不調を改善できるのです。

PMSに効く漢方薬7選【ツムラの番号も記載】

ここでは、PMSに対して処方されることのある漢方薬を7つ解説します。漢方薬は一剤でさまざまな症状に効果を示すことがあるため、PMSのように、多様な症状が一度に出る病気の治療に向いているでしょう。

加味逍遙散(かみしょうようさん)|24番

加味逍遙散は、更年期障害やPMSなどによる精神症状でお悩みの方によく処方される漢方薬です。体力があまりなくて疲れやすく、イライラしがちで、のぼせやほてりがある方に向いています。

加味逍遙散の精神症状に対する効果について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)|23番

当帰芍薬散は、血流を促して水分代謝を改善する漢方薬です。体力があまりなく、貧血傾向で疲れやすい方に向いています。また、手足の冷えやむくみなどが気になる方にもおすすめです。

桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)|25番

桂枝茯苓丸には血流をよくする効果があり、手足の冷えや肩こり、のぼせ、にきびなどの改善に役立ちます。比較的体力があり、のぼせや赤ら顔の傾向がある方におすすめです。

桃核承気湯(とうかくじょうきとう)|61番

桃核承気湯は、月経不順や月経痛による精神不安や、腰痛などの改善に役立つ漢方薬です。比較的体力があり、のぼせて便秘しがちな方に向いています。

抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)|83番

抑肝散加陳皮半夏は、神経の高ぶりによるイライラや怒りやすさなどの精神症状に対して使われることが多い漢方薬です。体力があまりなく、胃腸が弱い方に向いています。

補中益気湯(ほちゅうえっきとう)|41番

補中益気湯は、疲れやすさや気力の低下などの改善に役立つ漢方薬です。体力が低下しており、だるくて食欲がない方に向いています。

補中益気湯の効果について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

五苓散(ごれいさん)|17番

五苓散は、からだの水分代謝をよくすることで、むくみや頭痛、めまいなどの改善に役立つ漢方薬です。顔や手足のむくみ、胃のチャプチャプ音、口の乾きなどが気になる方に向いています。

PMSの治療に漢方薬が向いている理由

漢方薬は、病気の前段階である「未病」や原因不明の不調への対応を得意としています。そのため、西洋医学における原因が明確でないPMSの治療に適しているのです。

また、一剤で複数の症状への効果が期待できる点も、漢方薬がPMSの治療に向いている理由のひとつです。

PMSの治療にはピルと漢方薬のどっちがいいのか

PMSの治療に対してピルと漢方薬のどちらが適しているかは、副作用のリスクや個人の体質などによって異なるでしょう。

ピルは、女性ホルモンである「エストロゲン」と「プロゲステロン」が配合された薬です。ピルの服用によってホルモンバランスが一定に保たれることで、PMSの改善が期待できます。

ただし、不正出血や吐き気などの副作用や血栓症のリスクがあることから、ピルが合わない方もいます。また、妊娠を望む場合は使用しにくいという問題もあるでしょう。

ピルの服用に対して抵抗がある方や、ピルでの治療が適していないと医師が判断した場合は、漢方薬を処方されることがあります。

漢方薬の効果が出るまでには時間がかかる傾向があるので、それぞれの特徴を踏まえたうえで、医師と相談するようにしましょう。

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Q1. PMSの漢方薬はいつから飲めばいいですか?

PMSの症状があらわれる生理(月経)前後だけでなく、症状が落ち着くまで継続的に服用するといいでしょう。治療効果を高めたり、副作用のリスクを減らすためにも、医師の服用指示に従うようにしましょう。

Q2. PMSの治療で使う漢方薬は保険適用されますか?

医師の処方による漢方薬は、保険適用で手に入れられます。

市販品の漢方薬はドラッグストアでも購入できますが、保険が適用されないため高額になりがちです。また漢方薬を選ぶ際は、症状だけでなく体質を考慮して選ぶ必要があるので、医療機関の受診が望ましいでしょう。

Q3. PMSの漢方薬はいくらくらいしますか?

健康保険で3割負担の方の場合、医療用の漢方薬にかかる費用は1ヶ月分で1,000~2,000円程度(※)が目安です。[10]「漢方薬は保険が効かない」というイメージをもつ方もいるかもしれませんが、多くの場合は保険適用で処方されます。[11]

ただし、漢方薬局で販売されている煎じ薬には保険が効かない場合が多いので、漢方薬での治療を受ける前に、医療施設に確認すると安心でしょう。

※参考

ツムラの加味逍遙散を1回1包、1日3回、1ヶ月間服用する場合、費用(3割負担時)は1,086円。(2.5g/包×16.1円/g×3包/日×30日)×0.3(3割負担)のため。[10]

PMSの治療には漢方薬も効果的|まとめ

この記事では、PMSに効く漢方薬の種類や、PMSの治療に漢方薬を用いるメリットなどについて解説しました。

漢方薬は、病気の前段階である「未病」への対処を得意としていたり、一剤で複数の症状に効いたりすることがあるため、PMSの治療に向いているといえるでしょう。

自身に適した漢方薬を選ぶには、症状だけでなく個人の体質を考慮する必要があります。PMSのつらい症状を漢方薬で治したい方は、ぜひ一度おおかみこころのクリニックへご相談ください。

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参考文献

[1] 月経前症候群(PMS)月経前不快気分障害(PMDD)と漢方|近畿大学 東洋医学研究所

https://www.med.kindai.ac.jp/toyo/medicine/pms.html

[2] 原因はなんですか?|月経前症候群(PMS)とは?|月経前症候群(premenstrual syndrome : PMS)|公益社団法人 日本産科婦人科学会

https://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=13

[3] 加味逍遙散の添付文書|ツムラ

https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/460026_5200017D1083_1_12

[4] 当帰芍薬散の添付文書|ツムラ

https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/460026_5200111D1076_1_11

[5] 桂枝茯苓丸の添付文書|ツムラ

https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/460026_5200038D1093_1_11

[6] 桃核承気湯の添付文書|ツムラ

https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/460026_5200106D1059_1_09

[7]抑肝散加陳皮半夏の添付文書|ツムラ

https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/460026_5200140D1021_1_08

[8]補中益気湯の添付文書|ツムラ

https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/460026_5200131D1065_1_16

[9]五苓散の添付文書|ツムラ

https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/460026_5200048D1070_1_10

[10] 加味逍遙散の薬価|日経メディカル

https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/drugdic/prd/52/5200017D1083.html

[11] Q4 漢方治療(漢方薬)は保険がきかないのでしょうか?|漢方Q&A|慶應義塾大学医学部漢方医学センター

この記事の編集者
稲嶺 千春
薬剤師。心療内科の門前薬局での勤務経験あり。フリーライターとして医療・健康分野を専門に執筆活動中。
執筆者:浅田 愼太郎

監修者:浅田 愼太郎

新宿にあるおおかみこころのクリニックの診療部長です。心の悩みを気軽に相談できる環境を提供し、早期対応を重視しています。また、夜間診療にも力を入れており、患者の日常生活が快適になるようサポートしています。

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