妄想性パーソナリティ障害とは、他者に対して強い不信感や不安を抱く精神疾患です。症状が強く長期化すると対人関係に影響を与え、社会生活に困難を生じることも少なくありません。
この記事では、妄想性パーソナリティ障害について解説しています。記事内にある「診断テスト」をチェックすることで、妄想性パーソナリティ障害の特徴や症状を確認できます。
「人間関係でのトラブルが起きやすい」「身近な人に攻撃的な言動が見られて困っている」という場合には、まず診断テストをチェックしてみましょう。
そして、今発生している問題を解決するには、専門の医療機関で正しい診断を受けることが大切です。
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【診断テスト】妄想性パーソナリティ障害とは?
妄想性パーソナリティ障害は、数ある「パーソナリティ障害」のひとつです。
この章では、妄想性パーソナリティ障害について解説します。
症状をまとめた診断テストを用意しているので、気になる症状がある方や「妄想性パーソナリティ障害かも」と感じている方は、ぜひチェックしてみてください。
パーソナリティ障害について詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧くださいね。
妄想性パーソナリティ障害とは「パーソナリティ障害」のひとつ
妄想性パーソナリティ障害は「パーソナリティ障害」のうちのひとつです。パーソナリティ障害は人格障害とも呼ばれ、考え方や感情のバランスが偏り、日常生活や人間関係に影響を及ぼすこともある精神疾患です。パーソナリティ障害は以下の10種類かつ3つの群に分類されます。
A群(奇妙で風変わり) | ・妄想性(猜疑性)・シゾイド・統合失調型 |
B群(感情的で移り気) | ・反社会性・境界性・演技性・自己愛性 |
C群(不安で内向的) | ・回避性・依存性・強迫性 |
上記の分類ごとに特徴や症状、適切な治療法が異なるため、医師による正しい診断と鑑別が必要です。
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診断テスト|妄想性パーソナリティ障害の症状と診断基準
妄想性パーソナリティ障害の主な症状は、他者に対しての強い不信感や猜疑心(さいぎしん)を持続的に抱くことです。実際には不信感を抱く理由はなく、妄想による偏った認識が原因となります。
さらにそれを妄想と認識していないことも多く、自分を正当化しようとする言動が見られることもあります。
妄想性パーソナリティ障害の診断には、米国精神医学会のDSM-5や世界保健機関WHOが定めたICD-10などが用いられることが多いです。今回はDSM-5の診断基準をもとに、診断テストを作成したので、当てはまるかチェックしてみましょう。
【妄想性パーソナリティ障害の診断テスト】[1][3]
✔ 他者の言動には「悪意がある」といった不信感を抱く
✔ 他者が「自分を利用している」「危害を加える」と感じる
✔ 友人や仲間を信頼できない
✔ 仲がよい相手でも秘密を打ち明けるのが苦手である
✔ 悪意のない言葉や冗談に対しても、自分をけなしたり脅したりされていると感じる
✔ 他者に対して恨みや敵対感情を抱いてしまう
✔ 自分の性格や評価を非難されたと感じ、反撃したり怒ったりするときがある
✔ 配偶者や恋人が不貞行為をしていると疑いやすい
妄想性パーソナリティ障害の場合、上記の症状が成人期(早期)までに見られることがあります。
これらの状態が続くことで、日常生活上でのトラブルや不自由を認め、抑うつや不安、睡眠障害などの精神症状をともなうケースも少なくありません。
診断テストに複数当てはまる場合や辛い症状が見られる場合、日常生活や社会活動に支障を期待している場合には、早めに精神科や心療内科などの医療機関を受診しましょう。
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妄想性パーソナリティ障害の原因
妄想性パーソナリティ障害は、家族内での発症率が高いとのデータがあることから、幼少期の養育環境(情緒的・身体的虐待や犯罪被害など)が関係しているのではとの見解もあります。
さらに、妄想性パーソナリティ障害が単独で診断されることは少なく、多くの場合以下の精神疾患に起因しているともいわれています。[1][4]
- 統合失調症
- 不安症
- 心的外傷後ストレス障害
- アルコール依存症
- パーソナリティ障害(ほかの分類)
妄想性パーソナリティ障害を診断する際は、ほかの精神疾患との鑑別も大切であるが、今までに精神疾患の既往がないかも重要な要素といえるでしょう。
妄想性パーソナリティ障害によって生じる影響
妄想性パーソナリティ障害の症状が続くことで、日常生活や対人関係に大きな影響を与える可能性も考えられます。他者への強い不信感から、人と親密な関係性を築くことを避ける傾向があります。[1]
たとえ親しい関係性の友人や家族がいたとしても、「裏切られるのではないか」といった妄想に支配され、相手の行動をこまかく調べたり、強い嫉妬心を抱いたりすることも。
これらの行動を正当化するために、他者の行動や活動に対して問いただしたり、責め立てたりする様子が見られ、人間関係でのトラブルに発展するおそれがあります。
また、周囲になかなか相談できず、ひとりで悩みを抱え込んでしまうケースも少なくありません。徐々に他者との関わりを避け、引きこもりや抑うつ状態に陥ることもあり、結果として、妄想性障害や統合失調症などほかの精神疾患を発症するリスクが高まります。
ひとりで悩むなら、気軽にクリニックを頼ってくださいね♪
妄想性パーソナリティ障害の治し方
妄想性パーソナリティ障害の治療法は、パーソナリティ障害と同じで「精神療法(心理療法)」と「薬物療法」が主に選択されます。[2]
ここでは、それぞれの治療法に関して解説します。
精神療法(心理療法)
精神療法では、本人の希望や症状に合わせて以下の治療法が行われます。
- 個人精神療法
- 集団療法
- 認知療法
- 認知行動療法
- 家族介入
精神療法の目的は、他者への不信感に対しての思考や思い込みを修正して、対人関係に支障をきたしていることを認知することです。友人や家族など、周囲の人間が「自分に害を与えようとはしていない」との認識を持てるよう、治療を通じて考え方を変えていきます。
ほかにも、社会技能訓練や行動リハーサルを実施することもありますが、人によっては大きな負担や苦痛に感じてしまうこともあります。信頼関係を築きながら、少しずつ様子を見ながら介入することが大切です。
心理療法には治療者との信頼関係が大切になります♪
薬物療法
他者に抱く強い不信感から、大きな不安や動揺など精神的症状が見られる場合、抗不安薬や抗精神薬などの服用が効果を発揮するケースもあります。
しかし薬自体で妄想性パーソナリティ障害が治るわけではないため、あくまで症状の緩和が目的です。うまく症状をコントロールすることで、治療をスムーズに進められ、症状の悪化や長期化、ほかの精神疾患の発症を防ぐ効果が期待できます。
妄想性パーソナリティ障害における治療での4つの目標
妄想性パーソナリティ障害を含むパーソナリティ障害の治療では、大きく以下の4つの目標を掲げています。[2]
- 苦痛やストレスを緩和する
- 妄想や生じている問題を認識する
- 社会生活を送るうえで不適切な言動を減らす
- 問題の原因となっているパーソナリティ特性を修正する
まずは、出現している症状やストレスを軽減することが最優先です。そして、上記の目標に向かって治療を進めていくには、本人が疾患を認識して、治療を受け入れる必要があります。カウンセリングや精神療法で偏った認知や行動を変えることで、徐々に不適切な言動がおさえられ、現在抱えている問題の解決につながるでしょう。
しかしパーソナリティ特性(他者への不信感や不安など)を修正するには時間がかかるため、治療が長期化する可能性があることを理解する必要があります。
焦らずに、それぞれのペースを大切にして治療していきましょう!
妄想性パーソナリティ障害かもと感じたら診断テストを実施してみよう
「人間関係がうまくいかない」「他者を信頼できない」といった悩みをお持ちの方は、妄想性パーソナリティ障害かもしれません。
症状が長期化すると、周囲への攻撃的な言動や関わりを避けるなどの様子が見られ、人間関係のトラブルに発展するおそれがあります。
気になる症状がある方は、今回ご紹介した診断テストでチェックしてみましょう。診断テストに当てはまる、日常生活に支障をきたしているといった方は、精神科や心療内科などの医療機関を受診することをおすすめします。
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参考文献
[1]妄想性パーソナリティ障害 – 10. 心の健康問題 – MSDマニュアル家庭版
[2]パーソナリティ障害の概要 – 10. 心の健康問題 – MSDマニュアル家庭版
[3]精神神経疾患ビジュアルブックP291
[4]岡田裕子|消費生活相談における難しい相談者の理解と対応ーパーソナリティ障害の観点から|「国民生活研究」第 62 巻第 1 号(2022 年 7 月)[報 告]
- この記事の編集者
- Yusa
大学病院にて約10年間病棟看護師として勤務。耳鼻科(周手術期管理)、腎臓外科(腎移植)、循環器小児科、脳神経外科・SCUの現場で培った経験と知識を活かし、現在は看護師ライターとして活動中。