「子どものテストの点で一喜一憂してしまう」
「中学受験のサポートで心身ともに余裕がない」
こんなお悩みをお持ちではありませんか?
子どもが中学受験を決意してから始まった忙しい日々。サポートの負担やストレスで、心が安定しないという方は多いのではないでしょうか。
ストレスを抱えたまま過ごすと、精神状態の悪化やその後の長期的なメンタル不調が懸念されます。そして何よりも避けたいのは、子どもの受験結果への影響ですよね。
ノイローゼは、早めに対処・治療することで悪化を防ぐことができます。
この記事では、中学受験による母親のノイローゼの対処法やセルフケア法を解説します。母親のメンタル安定を目指し、万全な体制で子どもの受験をサポートしましょう。
中学受験で母親がノイローゼになり得る5つの原因
ノイローゼとは「神経症」のことで、不安やストレスなどにより心と体のバランスを崩すことをいいます。[1]医学的には「不安障害」に分類される症状です。
ノイローゼについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
ここでは、母親がノイローゼになる原因として以下の項目について解説します。
親子関係の悪化
母親のノイローゼの原因で多いのは、親子関係の悪化です。
中学受験の年齢は、ちょうど思春期のはじまり。この頃は反抗期が始まる子も多く、親がコントロールすることに対して葛藤が生じることがあります。[2]
これまでずっと「いい子」だった子どもでも、自主性を獲得する過程で親に強く反発するようになるのです。
子どもにとって大切な成長発達の過程ですが、それが中学受験と重なるとお互いのストレスは増強し、ノイローゼの原因となってしまいます。
経済的な負担
経済的な負担も、母親のノイローゼの一因になり得ます。
モデル百貨が運営するメディア「MoneyGeek」が実施した調査では、中学受験の通塾期間(平均2.5年間)においてかかる塾代の総額は平均178万4,000円。費用は高額です。
実際、ベネッセ教育総合研究所の調査(2021)によると「受験準備(塾など)にお金がかかるか」について「とても感じる」「まあ感じる」と回答したのは合わせて91.4%。[3]
9割以上の家庭が、中学受験の費用を負担に感じているのです。
日々の授業料や長期休みのたびにかかる高額な講習代に、ストレスや不安を感じてノイローゼになってしまうのです。
合格後の入学金や授業料もあるので不安です💦
多忙なスケジュール
中学受験を目指す子どもとその親は、平日や土日を問わず多忙な毎日を送っています。
その忙しさを「ダブルワークする社会人並みの忙しさ」と表現する人も。
塾は平日学校終わりから21時までで、学年が進むにつれ土日も授業が増えていきます。
さらに、集団授業についていくために個別指導塾や家庭教師を頼むケースもあります。
そのスケジュールをこなす子どもはもちろん大変ですが、それを支える母親の苦労も相当なものです。送り迎えや弁当作り、勉強のサポートなど、毎日やることに追われているのではないでしょうか。
そうした環境が続くことで、自分自身の心身のケアをする余裕がなくなっていき、ノイローゼとなってしまうことがあるのです。
受験することへの葛藤
中学受験の準備が本格化してくると、受験すること自体に悩むケースがあります。
ベネッセ教育総合研究所の調査(2021)によると、中学受験をやめさせようと思ったことについて39.2%の人が「何度もあった」「時々あった」と回答しています。[3]
その理由の上位には「受験勉強が大変だから」「子どもらしいゆとりある生活を送れないから」「遊びや運動などの時間が取れないから」などが上がっています。
遊ぶ時間なく勉強する我が子を見ると「本当に子どもは受験をしたいと思っているのか」「でも今ここであきらめていいのか」と悩み、母親のストレスの原因となるのです。
悩んでいるうちに時間もお金もかかっていくため、決断を急がされている感覚もストレスを増強させる一因といえるでしょう。
サポート体制が不十分
母親がノイローゼになる原因のひとつに、サポート体制の不十分さもあります。
たとえば、父親の協力が得られないケースです。母親は子どもの勉強だけではなく、家事や仕事との両立も求められ、心身ともに疲弊します。
また、世代間の中学受験への考え方の違いもあり、祖父母の理解が得られない人もいます。このような状況では、母親ひとりが身の回りのサポートや受験に関する決断をしていかなければならず、ノイローゼにつながることがあります。
母親のノイローゼが及ぼす影響
母親の不安が及ぼす影響は、家庭全体に広がるといわれています。[4]
とくに、以下のようなことが考えられます。
- 子どものメンタル悪化
- 夫婦関係の悪化
- 受験の結果への影響
まず、子どものメンタルに悪影響を及ぼします。母親がストレスを抱えていると、その不安や焦りが子どもにも伝わり、勉強に集中できなくなったり、精神的に不安定になったりすることがあるのです。
さらに、夫婦関係の悪化にもつながります。母親がノイローゼになると、家庭内のコミュニケーションが減少し、夫婦間の信頼や協力が失われていく傾向に。このような状態が家族全員にストレスを与え、受験に向けた団結力を弱めるのです。
最終的に、これらの問題は受験の結果にも影響してしまうかもしれません。夫婦関係の不安定さは、子どもの大きな心理的ストレスとなります。[5]その結果、子どもが勉強に集中できず、成績が低下する可能性が考えられるからです。
母親の心の健康を保つことは、家族の幸せと受験の成功に関係する大切な要素といえるでしょう。
母親の受験ノイローゼの対処法3選
中学受験による母親のノイローゼの対処法を以下の項目について解説します。
家族で話し合う
母親の受験ノイローゼを防ぐためには、家族で話し合うことが大切です。
たとえば、以下のようなことを話し合うとよいでしょう。
- 現状の問題点
- 母親の負担になっていること
- 役割分担の見直し
- 目標の再確認
受験について家族で意見を出し合うことで母親は孤独を感じにくくなり、ノイローゼにかかるリスクを下げられます。
過度な期待をやめる
母親が子どもに対する過度な期待をやめることも、ノイローゼの対策につながります。
子どもへの愛情や「幸せになって欲しい」という願いの強さにより、熱心に関わり過ぎてしまうこともあるでしょう。
ただ、子どもに期待をかけ過ぎると「テストの点に一喜一憂する」「受験のことしか考えられなくなる」など、ストレスも増えていきます。
中学受験はあくまでも子どもの人生の一部であり、親ができるのはサポートです。過度な期待は子どものストレスにもつながるため、ときには一歩引いた関わりも必要です。
専門家のサポートを求める
また、専門家のサポートを求めることも大切です。
もし動悸や息苦しさを感じているならば、まずは内科のクリニックを受診しましょう。自分ではストレスが原因と思っていても、別の病気が隠れている可能性があるからです。[6]
メンタルケアが必要なときは、精神科のクリニックを受診しましょう。精神科では、医師やカウンセラーに相談することで、心の負担を軽減する方法を学ぶことができます。必要であれば、精神療法や薬物療法を受けることも可能です。[6]
心のプロからストレスマネジメントや気持ちの整理の仕方を学ぶことは、受験期間だけではなく今後の人生において大きなメリットとなるでしょう。
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心を安定させるセルフケア3選
さまざまな対策をしても、ストレスや不安をゼロにすることはできません。過酷な中学受験の最中であれば尚更です。
そのため、心を安定させるセルフケアを身に付け、適宜心を休ませましょう。
気持ちを紙に書き出す
心の安定を保つために、気持ちを紙に書き出すことが有効です。[7]
今感じている不安やストレス、悩みを紙に書き出すことで、頭の中が整理され、気持ちが軽くなります。
書くことで自分の感情を客観的に見つめることができ、ストレスの原因や対処法が見えてくることもあります。
きれいに書こうとせず、ありのままの気持ちを書き出しましょう。毎日の習慣にすると、心の健康を保ちやすくなりますよ。
リラックス法を取り入れる
リラックス法を取り入れるのも効果的です。
不安や緊張が強いとき、「ハアハア」と息が速くなった経験があるでしょうか。心と体は密接に関係しています。
そのため、心が落ち着かないときはゆっくりと深呼吸をしたり、体をほぐす体操などをすると次第に心もリラックスしてくるでしょう。
深呼吸をする
① 3秒間、鼻から息を吸う
② 2秒間、息を止める
③ 5秒かけて、口からゆっくり息を吐く
④ 5~10分続ける
これは深い呼吸をすることで、体をリラックスさせる方法です。[7][8]
深呼吸は、いつでもどこでも簡単にできるので、気分が落ち着かないときに試してみてください。
体を動かす
運動には、ネガティブな気分を発散させたり、心と体をリラックスさせる効果があります。[7]
ランニングや散歩、ヨガやラジオ体操など1日20分を目安に体を動かしましょう。
お風呂につかる
ゆっくり湯船に浸かって体を温めましょう。
入浴には、「疲労回復」「快眠」などたくさんの健康効果があります。
リラックスやストレス解消の面から最も効果があるのは、「温度は40℃くらい」、「お湯の量は肩まで浸かるくらい(全身浴)」といわれています。[9]
好きな香りの入浴剤を使うと、よりリラックス効果を高めることができますよ。[8]
母親自身の息抜きの時間をつくる
ときには思い切り、母親自身が息抜きをすることも大切です。
子どもが頑張っていると、つい自分の時間をもつことを忘れがちになりますが、毎日たくさんの役割をこなしている母親だからこそ、息抜きは必要。
趣味の時間を持ったり、友達とおしゃべりをしたり、好きな本を読むなど、自分が楽しめる時間を意識的に作りましょう。
受験のことばかり考えず、自分自身をリフレッシュする時間を持つことで、ストレスを軽減し、心の安定を保つことができます。
合格に向けて親ができること
中学受験において、子どもが自分の意見を主張して反抗的になり、親子関係が難しくなることはめずらしくありません。今はつらいこともたくさんあると思いますが、家族の関係を見直す機会ととらえることもできます。
親ができることは、サポートと励ましをすることです。勉強しやすい環境を作ったり、「頑張ってるね」と努力を認めることで、子どもは安心して取り組むことができるのです。
また、「志望校に合格すること」だけを目標にしないことも大切です。定期テストの結果に一喜一憂せず、なぜ中学受験をするのか、合格したらどんな良いことがあるのかを一緒に考えるとよいでしょう。
以下の記事では、受験生の親がしてはいけないこと、できることを詳しく解説しています。合わせてご覧ください。
まとめ
受験サポートの負担やストレスは、母親のノイローゼの原因となることがあります。
また母親のノイローゼは、家族関係や受験結果に影響することもあるため、早めの対策が必要です。
そのために、この記事で紹介した内容をもとに「家族との話し合い」や、「セルフケア」を行うとよいでしょう。
受験という大きな挑戦を通じて親子の絆を深め、家族全員で一緒に成長していきましょう。
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【参考文献・サイト】
[1]ノイローゼとは|高崎経済大学
http://www1.tcue.ac.jp/home1/takamatsu/104529/070727.htm
[2]<論文>中学受験の心理と課題,Theannual Report of Educational Psychology in Japan 2022,Vol.61,267-278
https://www.jstage.jst.go.jp/article/arepj/61/0/61_267/_pdf
[3]中学受験に関する調査 [2012年]|ベネッセ教育総合研究所
https://berd.benesse.jp/shotouchutou/research/detail1.php?id=3275
[4]<論文>母親の不安と子どもの言語に対する母親の受容性との関連,枝川千鶴子|小児保健研究,p746-751
https://www.jschild.med-all.net/Contents/private/cx3child/2006/006506/005/0746-0751.pdf
[5]夫婦関係と児童期の子どもの抑うつ傾向との関連|教育心理学研究,2002,50,129-140
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjep1953/50/2/50_129/_pdf
[6]不安症|こころの情報サイト 厚生労働省
https://kokoro.ncnp.go.jp/disease.php?@uid=BLA9JV0KhiWPIMzX
[7]こころと体のセルフケア|ストレスとこころ|こころもメンテしよう ~若者を支えるメンタルヘルスサイト~|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/stress/self/index.html
[8]体をリラックスさせる|国立大学法人 東京医科歯科大学
https://www.tmd.ac.jp/med/psyc/topics/covid-19/stress.pdf
[9]ええことづくめ!お風呂の健康効果とおすすめの入浴法|大阪市
https://www.city.osaka.lg.jp/suido/page/0000488972.html
- この記事の編集者
- 宮川 しおり
メンタル心理カウンセラー・看護師・養護教諭。公立病院や学校での勤務経験あり。現在は医療・健康分野のフリーライターとして活動中。