ノイローゼとうつ病の違いとは|症状や治療法「甘えなのか」という問いにわかりやすく回答







こころちゃん
こころちゃん

ノイローゼってよく聞くけれど、うつ病となにが違うの?

浅田先生
浅田先生

たしかにノイローゼとうつ病を同じ意味で使う人もいるけど、全く違う病気なんだよ!

「ノイローゼ」という言葉は、気分が落ち込む状態が続くときによく使われます。

抑うつ症状によく似ていることから、ノイローゼとうつ病はなにが違うのか疑問に思う方もいるでしょう。

それぞれの原因や症状を中心に、ノイローゼとうつ病の違いやその関係性について解説します。

2つの病気について理解を深め、適切な診断と治療につなげる手助けとなれば幸いです。

記事の最後では「ノイローゼが甘えなのか」という質問にも答えています。必ず終わりまで読んでくださいね!すぐに読みたい方はこちらへどうぞ。

ノイローゼとうつ病は異なる病気

ノイローゼとうつ病は異なる病気

ノイローゼとうつ病は、どちらも「憂うつな気分」「気分の落ち込み」といった症状を表す言葉として使われています。ただ、2つの病気は医学的には全く異なる疾患として分類されているのです。

ノイローゼは日本語で「神経症」と訳されますが、正式な病名ではありません。

神経症は不安障害に含まれるとされ、うつ病は気分障害に分類されています。1)2)

ノイローゼとうつ病では、症状は似ていても異なる病気なのです。

ノイローゼとうつ病の違い

ノイローゼとうつ病の違い

ノイローゼとうつ病は、一体どこに違いがあるのでしょうか。

ここでは、両者の違いを症状と原因に注目して見ていきましょう。

原因による違い

ノイローゼとうつ病の原因には、以下のような違いがあります。

ノイローゼ(不安障害)うつ病
発症の原因となりうるもの・ストレス
・遺伝
・薬の作用 など4)
・ストレス
・遺伝
・環境の変化
・脳内物質の変化 など3)

ノイローゼの発症には、「精神的なストレス」や「不安」が深く関わっているといわれています。

一方、うつ病は、脳内の神経伝達物質である「セロトニン」や「ノルアドレナリン」のバランスの乱れによって引き起こされるとされています。これらの物質には精神の安定や活動意欲を支える役割があり、そのバランスが崩れることによって気分の落ち込みや無気力といった症状が表れるのです。3)

どちらの疾患も、発症原因ははっきりしないことが多いといわれています。ただし、ノイローゼは主に心理的な要因で発症しうつ病の場合は脳内物質の変化が原因となることが多い、といえるでしょう。

症状による違い

ノイローゼとうつ病の症状は、表面的には似ていることが多いかもしれません。ただ、症状が起こる背景や、意味合いには違いがあります。

それぞれの疾患の症状を、以下の表にまとめました。

ノイローゼ(不安障害)うつ病
症状・動悸
・呼吸困難
・眠れない
・イライラする など6)
・憂鬱な気分が続く
・物事に興味が持てない
・眠れない
・イライラする
・自分に価値が無いように思う など5)

ノイローゼは主に「漠然とした恐れ」うつ病は「抑うつ」が症状として表れます。

症状に共通する部分もありますが、その中でみられる「不安」と「抑うつ」の位置づけは対照的です。

ノイローゼの「不安」は、迫りくる危険や失うものへの恐れといった防御反応として引き起こされるものであり、未来の出来事に向けての反応だといえます。

一方、「抑うつ」の症状は、現実での喪失やトラウマを経験した後に起こることが多いのです。そのため、うつ病は過去の出来事に対する反応といえるでしょう。7)

このように、ノイローゼとうつ病で表れる症状自体は似ていますが、背景にある心理的な要因は異なるのです。

ノイローゼとうつ病は併発する?不安障害とうつ病の関係

ノイローゼとうつ病は併発する?不安障害とうつ病の関係

原因や症状で共通点が多いノイローゼとうつ病ですが、この2つの病気は密接に関係しています。

実は、ノイローゼ(不安障害)にうつ病が合併するケースがあるのです。そして、その確率は約70%と高い確率であることが報告されています。8)

不安障害からうつ病になるケースもあれば、うつ病の治療中に不安障害の症状が表れることもあるのです。

これらの疾患を併発すると、症状は重く治療効果が得られにくいため長期化する傾向があります。9)

不安障害やうつ病が良くならないという方は、両者を併発していることも考えられるため注意が必要です。

ノイローゼ(不安障害)に含まれる代表的な疾患

ノイローゼ(不安障害)に含まれる代表的な疾患

分類上、不安障害のなかには、さまざまな病気が含まれます。

ここでは、不安障害に含まれる疾患について解説します。

それぞれどんな症状や特徴があるのか、詳しく見ていきましょう。

パニック障害

パニック障害では、突然理由もなく動悸やめまいなどの症状が表れます。

このような突発的な不安からくる身体の異常な反応は「パニック発作」と呼ばれており、この発作が繰り返される病気がパニック障害です。

「発作が起きたらどうしよう」といった将来に対する不安(予期不安)も特徴のひとつです。

パニック障害の約50~60%はうつ病を併発しているといわれています。8)

パニック障害とうつ病を疑う症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

社会不安障害

社会不安障害とは、人と関わる状況で強い不安を感じ、日常生活に支障をきたす病気のことです。

たとえば、症状として「他人からの視線が気になる」「人前に出ることに恐怖を感じる」といった症状があります。怖さのあまり、パニック発作を起こしてしまうことも少なくありません。

社会不安障害の方は、このような症状が起きるのを恐れて、外出や人との交流を避けるようになってしまうのです。

強迫性障害

強迫性障害とは、つまらないことだと分かっていても、特定の行為をやめられず、それを繰り返してしまう病気です。

具体的な症状として「手を洗いすぎる」「物を整理しすぎる」「同じ言葉を繰り返す」などの症状があります。

不安や恐怖を和らげるためにこのような行為をしてしまうのが、この病気の特徴です。

強迫性障害は、学校や日常生活に支障をきたし、人間関係にも悪影響を及ぼすことがあります。

また、強迫性障害の人の約67%がうつ病を併発しているといわれています。8) 強迫性障害とうつ病は、互いに影響し合い症状を悪化させてしまうこともあるのです。

全般性不安障害

全般性不安障害とは、学校や恋愛、日常生活などに対して極度に不安を感じてしまう状態が続く病気です。不安の原因がはっきりしないことも多く、何か悪いことが起こるのではないかと常に心配になってしまいます。

このような不安は、日常生活に支障をきたすほど強くなることもあります。

全般性不安障害の人は、不安だけでなく、イライラや疲れやすいといった症状もあり、頭痛や胃痛、動悸や息切れなどの身体的な不調も起こりやすいといわれています。

ノイローゼとうつ病の治療法

ノイローゼとうつ病の治療法

ノイローゼ、うつ病の治療法は以下の3つが基本となります。4)6)

  • 休養
  • 薬物療法
  • 認知行動療法

注意すべきなのは「休養」はうつ病の治療の基本ではあるものの、ノイローゼの治療にはならないことです。ただし、ノイローゼはうつ病を併発することも多いとされているため、症状を悪化させないためにも休養は必要だといえるでしょう。

十分な睡眠や休息をとることはもちろん、疾患の原因となるストレスや人間関係などの刺激から離れることも大切です。

また抗不安薬や抗うつ薬などの薬を服用することで、不安や抑うつの症状を軽減できることがあります。

薬はすぐに効果が出るわけではなく、長期的な服用により効果が期待できることが多いといわれています。医師の指示に従って、根気よく治療を続けましょう。

認知行動療法は、自分の思考や感情を客観的に分析し、より現実的でポジティブに考えられるようにするための治療法です。

不安や抑うつの症状を引き起こす行動パターンを見直し、不安やストレスとうまく付き合えるようにしていきます。

いずれの疾患も医師と相談しながら、長期的な治療を進めていくことが大切です。

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「ノイローゼ」は甘え?言葉の意味とは

「ノイローゼ」は甘え?言葉の意味とは

「ノイローゼ」は医学的に正式な病名ではありません。この言葉の由来は、ドイツ語のNeurose(神経症)であり、戦後の「神経衰弱」という言葉が、戦後「ノイローゼ」として使われるようになったのです。

戦後の日本では、気にしすぎる、心配しすぎる傾向があると「ノイローゼ気味だ」といわれることもありました。これは、戦後の日本社会が高度経済成長や社会変動に伴ってストレスを抱える人が増えたことや、メディアや文化の影響で言葉として流行した背景があるのです。

この言葉の流行により、現在でもノイローゼが心身の不調を示す言葉として定着したと考えられます。現在ノイローゼは、意味的には不安障害に分類されています。

メンタルヘルスの問題が注目されるようになり、不安障害について知る人も多くなってきました。ノイローゼは気の持ちようでなんとかなる「甘え」ではなく、病気であることを理解しておくことが大切なのです。

まとめ

ノイローゼとうつ病の症状は似ているものの、それぞれは全く異なる病気です。またノイローゼは正式な病名ではなく、症状的には不安障害に分類されます。

ノイローゼとうつ病は密接に関係していることが知られており、両者を併発することも多いのです。

ノイローゼとうつ病を併発した場合、症状が長期化することもあります。早めに医師の診察を受け、適切な診断と治療を受けることが大切です。

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参考文献

1)ICD-10(国際疾病分類)第5章 精神および行動の障害|厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000011ncr-att/2r98520000011nq2.pdf

2)不安神経症|こころの耳
https://kokoro.mhlw.go.jp/glossaries/word-1680/

3)うつ病とはどんな病気?うつ病の原因、症状とサイン、見分け方を解説|NHK

https://www.nhk.or.jp/kenko/atc_203.html

4)不安症/不安障害|e-ヘルスネット

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-055.html

5)体の不調はうつ病でも現れます。かかりつけ医へ相談してみましょう|e-ヘルスネット

体の不調はうつ病でも現れます。かかりつけ医へ相談してみましょう | e-ヘルスネット(厚生労働省) (mhlw.go.jp)

6)不安障害|こころもメンテしよう 厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/stress/know/know_02.html

7)うつ病と不安性障害|精神保健研究通巻36号_47-55

https://www.ncnp.go.jp/mental-health/docs/nimh36_47-55.pdf

8)「うつ状態」を知る・診る、P4|日本維持新報社

https://www.jmedj.co.jp/files/item/ebook/485.pdf

9)P1「②不安障害が併発した精神障害(とりわけうつ病)は重症かつ治療抵抗性で社会的障害度が高い。」不安障害研究鳥瞰―最近の知見と展望―

https://www.jstage.jst.go.jp/article/adr/4/1/4_20/_pdf

10)<論文>二つの「時代病」 : 神経衰弱とノイローゼの流行にみる人間観の変容|京都大学学術情報リポジトリ 紅 P5

https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/192574/1/kjs_007_193.pdf

この記事の執筆者
原田瑞季
臨床検査技師。保健学修士。在宅で医療検査の業務に関わりながら、フリーライターとして医療を中心に幅広いジャンルで執筆中。
執筆者:浅田 愼太郎

監修者:浅田 愼太郎

新宿にあるおおかみこころのクリニックの診療部長です。心の悩みを気軽に相談できる環境を提供し、早期対応を重視しています。また、夜間診療にも力を入れており、患者の日常生活が快適になるようサポートしています。




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