【OK・NG例】産後クライシスの乗り越え方|妻・夫の言えない本音




「産後、パートナーにイライラしてしまう…」

「自分の負担ばかり増えている気がする…」

出産後に夫婦の関係が悪化することを「産後クライシス」といいます。

産後クライシスは病気ではありませんが、放置すると家庭不和や離婚につながるため早めの対策が必要です。

今回は、産後クライシスの原因母親・父親それぞれの思いなどを解説します。

産後クライシスでとくに重要なのは、産後2年間の過ごし方です。記事の後半にある産後クライシスの乗り越え方を参考に、産後を夫婦の絆を深め育児を楽しめる時間にしてくださいね。

産後クライシスとは

産後クライシスとは、夫婦ふたりの生活から子どもを持つ「家族」へと変化する過程で、価値観の違いにより夫婦関係が悪化している状態です。[1]

産後クライシスでは、以下のような状態がみられます。

母親側
・パートナーの言動にいらだつ
・パートナーに愛情を感じなくなる
・夫婦ふたりでいることに違和感を覚える
父親側
・ひとりぼっちだと感じる
・パートナーの言動にいらだつ
・子どもを育てていけるか不安になる

産後クライシスでとくに重要なのは、産後2年間です。

第一子の妊娠中に「配偶者といると本当に愛していると実感する」と答える妻と夫は、どちらも74.3%です。

子どもが2歳になるときに「妻を愛している」と答える夫は51.7%ですが「夫を愛している」と答える妻はたった34.0%しかいません。[2]

引用:「産後クライシス(危機)」で夫婦に何がおこる?! ~初めての出産後、夫婦の愛情低下を防ぐカギとは~|ベネッセ総合教育研究所 (benesse.jp)

夫婦間の愛情は子どもが生まれて3年経つと、下がったレベルのまま安定することがわかっています。[3]

将来的な夫婦関係を良好に保つためには、産後2年間でお互いを思いやる言動をして、愛情レベルを下げないことがポイントになるのです。

産後クライシスの原因

産後クライシスの原因は以下2つです。[4]

それぞれ解説します。

育児の負担が偏る

1つ目の原因は、育児の偏りです。

母親は出産直後から寝ずに授乳し、子どもの泣きに対応する日々が続きます。

生活の変化により気力・体力ともに消耗するため、自分の時間を取る余裕はありません。

子どものお腹を満たす「おっぱい」は母親にしかないことや「子育ては母親の仕事」という風潮から、育児の負担が母親に偏りがちになるのです。

一方で父親には、以下ふたつの選択肢が用意されています。

  • 子どものいる生活に合わせる
  • 仕事や飲み会など以前と変わらないリズムで生活を送る

父親が仕事をするのは家庭のためだとわかっていても、ゆっくり昼休みが取れたり自分で立てたスケジュールを邪魔されたりしないことに不公平さを感じ、夫婦関係が悪化していくのです。

こころちゃん
こころちゃん

「自分ばっかり~」って思っちゃいますよね💦

子どもに対してできることが違う

2つ目の原因は、子どもに対してできることの違いです。

母親は出産直後から子どもとの生活が始まりますが、父親が子どもと過ごすのは「母親の退院後」または「里帰り後」です。

できることが増えている母親に対し、父親は子どもを抱っこするのにも緊張してしまいます。

父親は自分なりに頑張って育児をしますが「母親にはかなわない」という思いから疎外感や無力感を感じやすくなるのです。

母親から育児のやり方を指摘される機会も多いため、次第にやる気をなくしてしまい夫婦間に距離が生じてしまいます。

産後クライシス時の母親・父親の思い

産後クライシスでは、お互いを責め合ったりパートナーの何気ない言動が気になったりするものです。

産後クライシスのときに感じた気持ちを、母親・父親にわけて見てみましょう。[5]

母親の思い

母親は子育ての役割が大きいことを自覚しているからこそ、父親の言動に熱くなったり大きなダメージを受けたりします。

具体例として挙げられるのは以下4つです。

①攻撃的な気分になる

  • イライラがこみ上げて泣けてきた
  • あなたはどうなの?と言い返したくなる
  • 何もしないのに口出しだけしないでほしい

②落ち込む

  • 全否定された
  • 理解されずさみしい、つらい
  • 自信がなくなり消えてなくなりたい

③自分を振り返る

  • 自分の言動を反省した
  • 足りないところに気づかされた
  • 相手の気持ちを知り改善しようと思った

④感謝している

  • サポートがあってありがたい
  • 家族のことを思ってくれて嬉しい
  • 自信がないから相談できてありがたい

夫の思い

夫の思いの特徴は「気にしない」という受け止めがある点です。

夫は妻に比べて育児に関わらないため、冷静な見方が残りやすくなります。

具体例として挙げられるのは以下5つです。

①落ち込む

  • やる気がなくなる
  • 子育てしていけるのか不安になる
  • そう言われてもうまくできないと思う

②攻撃的な気分になる

  • 腹が立つが我慢している
  • 「そんなことないだろ」と思う
  • 素直に受け止められず反発してしまう

③気にしない

  • 何も感じない
  • 「どうでもいいじゃん」と思う
  • イライラしている妻に言ってもムリと諦める

④自分を振り返る

  • 自分も反省するところがある
  • 納得できることであれば反省し直す
  • 子どものため直さないといけないと思う

⑤感謝している

  • そのまま素直に受け止める
  • 子どもをいちばん理解している妻に従う

産後クライシスの乗り越え方

産後クライシスの乗り越え方として、以下3つを紹介します。

それぞれ解説します。

母親の負担を軽くする

母親の負担を軽くするポイントは、以下の5つです。

  • 話をよく聞く
  • 言葉をかける
  • 作業を減らす
  • 様子を気にかける
  • 気分転換を支える

男性は状況を解決するためのアドバイスをしがちですが、女性が求めるのは「ただ話を聞いてもらうこと」です。

以下のOK対応とNG対応を見てみましょう。

OK対応
・「今日はどうだった?」「寝られた?」と様子を気にかける
・母親がひとりで過ごせるように子どもと父親だけの時間を作る
・解決を急がず「大変だったね」「ありがとうね」と聞き役に徹する
NG対応
・産後の妻のことは実家や病院に任せる
・「自分も疲れてるから」と愚痴を聞かない
・「大変ならミルクにしなよ」と何気ない一言で傷つける

母親が「こうして欲しい」と父親に伝えることも大切です。

父親があまり協力的でないときは「今から5分だけ、ただ話を聞いてくれない?」「アドバイスとかじゃなくて、話を聞いてほしいだけなんだけど」と事前に言ってから話し始めるのもよいでしょう。

父親が協力しやすい状況をつくる

父親が協力しやすい状況を作るポイントは、以下3つです。

  • やる気を引き出す
  • 子どもの接点を作る
  • ぎこちなさを大目に見る

積極的に夫を育児に引き入れて、父親である自覚や自信をもてるようにしましょう。

OK対応
・感謝を伝え余計な手や口を出さない
・夫がひとりで子どもの世話をする時間を作る
・「さすが!」「すごい!」の2語でよいので、とにかく褒める
NG対応
・「なんで○○してくれないの?」と責める
・「自分でやった方が早い」と夫に頼まない
・感謝を伝えず夫のやり方にダメ出しをする

夫は子どもと遅れて過ごし始め、仕事で家を空ける時間も多いため、できないことが多くても大目に見るしかありません。

今は「自分でやった方が早い」と考えがちですが、未来の自分を助けるつもりで夫に育児方法を伝えていきましょう。

今はそういう時期だと割り切る

今はそういう時期だと割り切ることも必要です。

産後で心と身体がしんどいときに産後クライシスを解決しようとしても、よい考えが浮かばないことがあります。

しんどさから感情的になり、状況が悪化してしまうこともあるでしょう。

産後クライシスを今すぐ解決しようとせず「誰にでも起きること」「長い目で見てよい夫婦関係になればいい」と気楽に構えることも大切です。

お互いにストレスを抱えている状況で、子どもの世話と自分を癒す役割をすべて相手に求めるのは難しいかもしれません。

心がつらいときは、おおかみこころのクリニックにご相談ください。お子さんの世話で外出が難しいときは、オンライン診療がおすすめです。

Q1:産後クライシスと産後うつの違いは?

産後クライシスは病気ではなく、メディアによって使われ始めた「夫婦トラブルの通称」です。

医師が医学的に診断したり、お薬を処方したりするものではありません。

一方で産後うつは病気であり、診断やお薬を処方する対象になります。

産後うつについて詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

Q2:産後クライシスはいつまで続く?

個人差はありますが、産後クライシスの期間は産後すぐから長くて数年です。

夫婦ともに産後2年までパートナーへの愛情は下がり続け、3年目以降は下がったレベルで安定することがわかっています。

お互いのサポートや声かけによって愛情の低下を防げるため、お互いを思いやるコミュニケーションを大切にしましょう。

産後クライシスの乗り越え方をもう一度確認したい方は、こちらからご覧ください。

まとめ

産後クライシスとは、子育てに関する価値観の違いにより夫婦関係が悪化している状態です。[1]

夫婦は産後2年までお互いの愛情レベルが下がり続け、産後3年が経つと愛情レベルは低下したまま安定してしまいます。

産後2年の過ごし方が夫婦関係の分かれ道になるため、パートナーのストレスを軽減しお互いに協力して育児することが大切です。

産後クライシスは誰にでもあるもの」「今はそういう時期だから仕方ない」と割り切る視点を持つことも、心をラクにするポイントになります。

パートナーとの関係が悪化してつらい方、育児に集中できなくて困っている方は、おおかみこころのクリニックにご相談ください。

育児で外出が難しい方は、オンライン診療がおすすめです。おおかみこころのクリニックで気楽に話をして、頑張っているあなたの心をほっと休ませてあげてくださいね。

【参考文献】
[1]産後クライシス予防に向けて父親のコンピテンシー強化に着目した育児支援システム構築
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K12113/

[2]ベネッセ教育総合研究所
https://benesse.jp/berd/jisedai/topics/index_4398.html

[3]親になることにともなう夫婦関係の変化
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjdp/16/1/16_KJ00003367809/_pdf/-char/ja

[4]特集 助産師は父親をどう支えるか 産後クライシスのからくりと予防方法https://researchmap.jp/129/published_papers/19420312/attachment_file.pdf

[5]育児期にある夫婦ペアレンティング―互いの育児の批判をめぐって―
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjam/advpub/0/advpub_JJAM-2019-0009/_pdf

この記事の執筆者
とだ ゆず
メンタルヘルスの記事を中心に執筆する看護師・保健師ライター。 精神科勤務での患者さんとの関わりや自身のうつ病経験から「人の心についてもっと知りたい」と思い、上級心理カウンセラーの資格を取得。 エビデンスに基づいた読者の心に寄り添う記事を心がけている。
執筆者:浅田 愼太郎

監修者:浅田 愼太郎

新宿にあるおおかみこころのクリニックの診療部長です。心の悩みを気軽に相談できる環境を提供し、早期対応を重視しています。また、夜間診療にも力を入れており、患者の日常生活が快適になるようサポートしています。




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