適応障害は誰でも診断される?診断書は簡単に書いてもらえるのか 




病院を受診したら適応障害と診断されたんですが適応障害って誰でも診断されるんですか?わたしだけじゃないですよね?

浅田先生
浅田先生

適応障害の人は増えているけど、誰でも診断されるわけじゃないんだ!記事の中で詳しく解説するね!

適応障害と診断される人が増えていることから「クリニックを受診したら、誰でも適応障害と診断されるのでは?」と感じることもあるでしょう。

適応障害と診断される方は年々増え、2017年には約10万人という調査結果があります。[1]

この記事では、適応障害は誰でも診断されるのかうつ病との違い治療法について解説します。後半には、適応障害の診断書は簡単にもらえるのか薬物療法は不向きなのかなどの疑問にもお答えします。

適応障害と向き合い、こころ穏やかに治療に専念できるようになりますと幸いです。 

適応障害は誰でも診断されるわけではない

適応障害は日常のストレスが原因となるため、多くの人が「自分も当てはまるかもしれない」と感じやすい病気です。実際に適応障害の患者数は10年で約2.5倍になり、身近な病気となっています。[1]

今の社会は職場や日常生活の中でストレスが多いため、適応障害になる可能性は誰にでもありまが、受診したら誰でも適応障害と診断されるわけではありません。

こころちゃん
こころちゃん

誰でも風邪をひく可能性があるのと同じです。

医師は、症状の程度や持続期間、生活に与える影響などのストレス因子を、ICD-10(国際疾病分類)やDSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル)の診断基準と照らし合わせながら慎重に診断します。

診断基準には以下のようなことが記載されています。[2]

  • ストレスが原因で症状が出ていること
  • 原因となるストレスによりすぐに発症している(ICD-10では1か月、DSM-5では3か月以内)
  • 原因のストレスがなくなって6か月以内に症状が軽くなる

芸能人が適応障害になったと発表したり、職場で診断された話を聞いたりするため「誰でもなる病気じゃん」と思われがちですが、受診をしたら誰でも診断されるわけではありません。

適応障害は、職場や日常生活の抱えきれないストレスにより身体から出るSOSサインです。軽視せずに、自分と向き合うことから始めましょう。

適応障害になりやすい人については、下記の記事で詳しく解説しています。参考にしてくださいね。

適応障害とうつ病の違い

適応障害と診断されても「本当に適応障害なのかな?」「うつ病とどう違うのかな?」と思うでしょう。その理由は、憂うつな気分や不眠などの症状が似ているためです。

適応障害とうつ病の違いは、明確なストレス因子があるかどうかです。

適応障害の方はストレス因子から離れると元気に過ごすことができます。

たとえば、仕事がストレスの場合、職場に行くと抑うつ気分や不安などの症状が出ますが、自宅や外出先では今までどおり元気に過ごせます。

うつ病の場合は、どこにいても抑うつ気分が続いたり今まで好きだったことが楽しめなくなったりします。

適応障害とうつ病の判定は、初期の段階では難しいこともあり「適応障害と診断されていたけどうつ病だった」というケースも少なくありません。[3]

適応障害とうつ病の違いは下記の記事で詳しく解説していますので、ご覧ください。

病気のことや薬のことで不安になったら、そのままの気持ちを医師に相談しましょう。おおかみこころのクリニックはオンライン診療も行っています。お気軽に相談してくださいね。

 適応障害の治療法

適応障害のおもな治療法は以下の2つが挙げられます。

それぞれ詳しく解説します。

心理療法

適応障害の治療はストレス因子から離れることが大切です。

ただし、何にどのようにストレスを感じるのかは一人ひとり違います。[2]

たとえば、同じように上司に注意されてもストレスに感じる人と感じない人がいます。その日の体調や気分によってストレスを感じることもあるでしょう。

適応障害の原因を紐解いていくには、自分と向き合い原因を探すことが大切なのです。

そこで、カウンセリングや認知行動療法が役立ちます。

カウンセリングでカウンセラーとともに「なぜその出来事をストレスと感じたのか」「今の症状の原因は何なのか」などを考え、自己理解を深めていくことができます。[4]

認知行動療法では、物事の受け取り方や考え方のクセを修正してストレスの少ない考え方を育てるのです。[5]

たとえば「わたしが挑戦したって、どうせ失敗する」と考えていると、新しいことに挑戦するストレスは大きくなります。

前回はどこで失敗したのか、どこを工夫すると改善できるのかを考えることで「今回はできるかもしれない」と前向きな考えを持てるようになるのです。

認知行動療法については、下記の記事で詳しく解説します。

セルフケア

適応障害の治療には、セルフケアが大切です。

大きなストレスにより心身ともに疲れているため、あなた自身を癒してあげましょう。

セルフケアには、以下のような方法があります。[6][7]

  • 趣味を楽しむ
  • 今の気持ちを書き出す
  • 三食きちんとん食べる
  • 腹式呼吸をくり返し自分の呼吸を感じる
  • 1日20分ほどのウォーキングやストレッチをする

あなたが「これならできそう」と思うものから始めてください。

抑うつ気分や動悸などの症状が続くと、こころはとても疲れてしまいます。趣味を楽しみ、三食きちんと食べることで健康的なこころを取り戻していきましょう。
適応障害で疲れたこころを癒すためには、ムリをしないことが大切です。

Q:適応障害の診断書は簡単に書いてもらえる?

診察した医師は、正当な理由なく診断書の発行を拒むことはできません。[8]

医師が診断書の発行を拒むことのできる正当な4つの理由は以下のとおりです。[9]

  • 患者に病名を知られることが好ましくない
  • 診断書が恐喝や詐欺などの不正に利用される可能性がある
  • 本人ではない第三者が診断書の発行を要求してきたとき
  • 医学判断が難しいとき

診断書を発行してもらえなかった場合、その理由を医師に確認しましょう。

診断書は、仕事や学校の対応を柔軟にするための重要な書類です。

診察時に「休職するために会社で必要で…」「職場で診断書が必要だと言われたので…」と診断書が必要な理由を伝えましょう。

こころちゃん
こころちゃん

必要なときに診断書はもらえるので、まずが主治医に相談しましょう。

Q:適応障害に薬物療法は不向き?

適応障害そのものに薬物療法の有効性を示した研究はほとんどありません。[2]

しかし、以下のような症状に対して補助的な役割として薬物療法が用いられます。[7]

  • 抑うつ
  • 不眠
  • 不安

たとえば、夜間眠れていないときは睡眠薬、抑うつ気分が続いてつらいときには抗うつ薬のように、症状を改善するために薬を使用するケースはあります。

医師は診察時に症状を聞き、今のあなたに適した薬を処方してくれます。診察時は、今困っている症状や出来事を素直に話してくださいね。

ストレスと上手く付き合うことからはじめよう

適応障害になる可能性は誰にでもありますが、受診したら誰でも適応障害と診断されるわけではありません。

医師が症状の程度や持続期間、生活に与える影響などのストレス要因を問診し、適応障害の診断基準と照らし合わせながら慎重に診断します。

適応障害と診断されたら、ストレス因子から離れることが大切です。しかし、職場がストレスでも仕事を休めないこともあるでしょう。

そんなときは、セルフケアから始めてください。あなたのこころを癒すきっかけにもなります。

仕事や日常の中でストレスが溜まりすぎる前に、おおかみこころのクリニックへ相談に来てくださいね。なかなか時間が取れない場合は、オンライン診療もありますのでご活用ください。

【参考文献】
[1]日本における「適応障害」患者数の増加―メンバーシップ型雇用からの考察|池田 朝彦
https://www.jstage.jst.go.jp/article/spls/12/2/12_101/_pdf

[2]適応障害の診断と治療|平島 奈津子
https://journal.jspn.or.jp/jspn/openpdf/1200060514.pdf

[3]内科医が知っておくべき 精神科疾患|坂元‌薫
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/110/12/110_2540/_pdf

[4]Q5:カウンセリング効果の実際は?|こころの耳
https://kokoro.mhlw.go.jp/mental-health-pro-qa/mh-pro-qa005/

[5]認知行動療法とは|認知行動療法センター
https://cbt.ncnp.go.jp/contents/about.php

[6]こころもメンテしよう 若者のためのメンタルヘルスブック|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/docs/book.pdf

[7]適応障害|MSD家庭版 マニュアル

[8]診断書を発行してくれない。|横浜市
https://www.city.yokohama.lg.jp/kenko-iryo-fukushi/kenko-iryo/iryo/anzenshien/iryoanzen/qa.html#Q7

[9]診断書発行の義務と勤務医の過重労働|栃木県医師会勤務医部会長 福田  健
https://www.med.or.jp/nichinews/n201220p.html

この記事の執筆者
柚木ハル
作業療法士。精神科16年の臨床経験を生かして執筆を担当。現在は訪問リハビリに従事しながら幅広いジャンルにて執筆中。
執筆者:浅田 愼太郎

監修者:浅田 愼太郎

新宿にあるおおかみこころのクリニックの診療部長です。心の悩みを気軽に相談できる環境を提供し、早期対応を重視しています。また、夜間診療にも力を入れており、患者の日常生活が快適になるようサポートしています。




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