過去の歯科治療への恐怖心や嫌悪感といった精神的な理由から、歯科医院に行けないという人は日本には約500万人いるとされています。[1]
実際に、歯科医院でパニック発作を起こした方や歯科医師を想像しただけで恐怖が強くなる方もいるでしょう。
この記事では、パニック障害で歯科医院に行けない理由と5つの対策を解説します。
最後に、パニック障害の方が通いやすい歯科医院の特徴をご紹介します。パニック障害の方で少しでも安心して歯科医院で治療をしたいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
「パニック障害を治したい!」と思う方は、下記の記事も合せてご覧ください。
パニック障害で歯医者に行けない理由
ここでは、パニック障害の方が歯科医院に行けない理由を解説します。
- 治療中に座るイスから動けなくなりそう
- イスを倒されると息が苦しくなりそう
- 目にタオルをかけられるのが怖そう
- 治療が痛そう
- 歯科医師に怒られそう
このような状況に不安や恐怖を感じる方は、歯科恐怖症とも呼ばれます。[1]
過去に歯科医院でパニック発作を起こした方は、トラウマとなり、とくに不安や恐怖が強くなるでしょう。
虫歯や歯周病などといった歯のトラブルは、放っておくと悪化します。実際に、パニック障害で歯科医院に行けず、ほとんどの歯が虫歯になっていたケースもあります。
パニック障害で歯医者に行けない際の5つの対策
「治療中にまたパニック発作が起きないか」と不安を感じている方もいるでしょう。
ここでは、パニック障害で歯科医院に行けない際の対策を5つ解説します。それぞれの対策を具体的に解説するため、ぜひ参考にしてください。
もし歯科医院で息苦しさを感じたときは、下記の記事の対処法を参考にしてください。
医療機関でデパスの服用を相談する
医療機関でデパスの服用を相談するのも一手です。
というのも、デパスはパニック障害の方が強く不安を感じた際の頓服薬だからです。[2]
不安や緊張を和らげ、気持ちを落ち着かせる効果が期待できます。
そのため、歯科医院に通院する前にデパスを飲むと、不安が軽くなってから治療を受けられるかもしれません。
ただし、デパスには副作用があるため、事前に医療機関に相談しましょう。
歯医者に「パニック障害」であると伝える
「パニック障害である」ことを歯科医院に伝えるのは、勇気がいることかもしれません。
ただし、歯科医院に伝えると、パニック障害の症状に配慮しながら治療してくれるでしょう。
たとえば、簡単な治療から始めたり、目元にタオルをかけないようにしたりなど、我慢できるところからゆっくり治療を始められます。
ある歯科医院では、イスに背中をつけるとパニック発作があらわれる方に、イスの背もたれに向かって正座して、按頭台におでこをつける姿勢で治療したケースもあります。[3]
パニック障害であることを伝えると、パニック障害の方に合った方法で治療を進められるかもしれません。
伝える際には、以下のポイントを押さえましょう。
- 緊急連絡先
- 頓服薬の有無
- 過去に歯科医院でパニック発作が起こった状況
パニック障害の方の対応が難しいといわれた場合は、その歯科医院は控えてください。
###空いている時間帯に通院する
パニック障害の方は、空いている時間帯に通院する方が良いでしょう。
歯科医院のスタッフがバタバタしている様子やほかの患者さんの声、治療の音などにより、不安な気持ちがあらわれる可能性があるためです。
一般的に、混みやすい休日や夕方以降の時間帯は避けましょう。歯科医院が空いている時間帯を確認してください。
空いてる時間帯だと待たずにすみますしね♪
治療内容についてよく説明を受ける
歯科医院で納得するまで説明を受け、治療内容をよく理解しておきましょう。
「何をするのかわからない」といった状況が、パニック障害の方の不安を強くするためです。
歯科医師のなかには、あまり説明せずに治療をはじめるところがあるかもしれません。十分に説明をしてもらうと不安や恐怖が軽くなるでしょう。
終わりの時間をあらかじめ聞いておくのも良いでしょう
###訪問歯科を検討する
パニック障害の方は、訪問歯科を受けることもひとつの方法です。
自宅で歯科治療を受けられると、不安が軽くなる可能性があるためです。
パニック障害の症状により歯科医院への通うのが難しい場合は、訪問歯科の対象となる可能性があります。実際に、訪問歯科を利用した1.4%は、精神障害者福祉手帳を持った方です。[4]
まずは、あなた自身が訪問歯科の対象であるか、自治体に確認しましょう。
ただし、訪問するエリアは歯科医院により異なります。訪問歯科に対応していない歯科医院もあります。自治体や近隣の歯科医院などに問い合わせると、悩みの解決につながるでしょう。
パニック障害の方が通いやすい歯医者の特徴
パニック障害の方が通いやすい歯科医院には、3つの特徴があります。
通いやすい歯科医院の特徴を知っておきましょう。
パニック障害の方の通院歴
パニック障害の方の通院歴がある歯科医院は、パニック発作が起こった際にスムーズに対応できる可能性があります。
パニック障害の方の治療歴は、ホームページもしくは、電話で確認してみてください。
ただし、パニック障害の方の治療歴があっても、自身の症状に合うかはわかりません。そのため、あくまでも目安としてください。
笑気麻酔や静脈麻酔の使用
歯科医院によっては、笑気麻酔や静脈麻酔が使える場合があります。
どうしても歯科医院が怖い場合は、麻酔を使うのもひとつの方法です。麻酔により、パニック障害の症状を和らげられるでしょう。
ですが、すべての歯科医院で麻酔を使って治療できるわけではありません。
ほかにも、保険診療もしくは、自費診療といった費用の問題もあります。そのため、歯科医師とよく相談しましょう。
歯医者の先生と相談することが大切ですね
パニック障害の症状に対処しやすい総合病院
総合病院では、精神科や心療内科のほかに、さまざまな診療科があります。
パニック障害の症状が重度である方には、全身麻酔を使用することがあります。総合病院であれば、全身麻酔での歯科治療にも対応できるでしょう。
一度「歯科治療を受けられた」といった経験をすると、次回から歯科医院に行きやすくなるかもしれません。
まとめ
パニック障害の方は、過去の歯科治療での経験から歯科医院に行けない場合があります。
精神的な要因が大きく、強い不安や恐怖を軽くすることが大切です。具体的には、歯科医院に行く前にデパスを飲んだり、パニック障害であることを事前に歯科医院に伝えたりする方法があります。
パニック障害の方の通院歴があり、麻酔が使える歯科医院では安心して通えるかもしれません。自身の症状に合った歯科医院を選び、適切な治療を受けましょう。
歯科医院に行くことに悩みがある方は、精神科や心療内科などの医療機関で相談するのも方法のひとつです。
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参考サイト・文献
[1]歯科恐怖 症学会
https://shikakyoufushogakkai.com/
[2]パニック障害の治療ガイドライン|厚生労働省
http://hikumano.umin.ac.jp/PD_guideline.pdf
[3]日歯麻誌 2008,36(2)、186-18
https://gyazo.com/e4202a610441d299077522d89e261406
https://gyazo.com/91899b3b9920d95af3a002978d7201f5
[4]在宅歯科医療及び障害者歯科医療の実施状況調査 報告書|厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002djkw-att/2r9852000002djvj.pdf
- この記事の編集者
- 西川正太
看護師、保健師、保育士。 2009年大学を卒業後、大学病院や総合病院で勤務経験あり。現在はフリーライターとして医療を中心に執筆中。