森田療法「あるがまま」は怪しい治療?やり方をわかりやすく解説

森田療法は不安症に対する前向きな治療法

不安に縛られない生活を送りたいなあ……

森田療法なら自力で不安障害を治せる?

こんな風に悩んでいませんか?

不安障害の治療法のひとつに「森田療法」があります。

森田療法とは、不安や恐怖を受け入れながら、自分らしい生き生きとした生活を目指す治療法のことです。

今回の記事では、森田療法の概要や治療の内容についてくわしく解説します。

記事の最後では、自力での取り組みについても解説しているので参考にしてくださいね!

森田療法の対象疾患と「とらわれ」

森田療法の対象疾患と「とらわれ」

森田療法の治療対象は、対人恐怖症や強迫性障害、パニック障害などの「とらわれ」がある精神疾患です。

  • 対人恐怖症
  • 強迫性障害
  • パニック障害

「とらわれ」の例として、「電車内の人が自分の悪口を言っているのではないか」という不安を抱いているAさんのケースを見ていきましょう。

このとき、Aさんは「悪口を言われているかもしれない」という不安に意識が注意が集中し、その不安は徐々に膨れ上がっていきます。

その結果、「不安で電車に乗れない」という症状を自分で作り出す悪循環に陥ってしまうのです。

感覚に注意を集中する

感覚がより過敏になる

自分で症状を作り出す

このような悪循環のことを、森田療法では「とらわれ」と呼んでいます。

また、この「とらわれ」に苦しめられている人こそが森田療法の治療対象です。

森田療法の「あるがまま」とは

森田療法の「あるがまま」とは

「あるがまま」は、森田療法を象徴する言葉です。

不安や恐怖を感じながら、目的に向かって行動する姿勢のことを指します。

「今日は不安が強いから布団に入っていよう」といった「行動回避」は選択されません。

たとえば、

こころちゃん
こころちゃん

電車に乗るのが不安だけど
行きたい場所があるから電車に乗る

このように、不安を感じながらも、目標のための行動を積み重ねていくのです。

すると、

  1. 最初は不安で苦しかった
  2. 少しずつ不安が軽くなった
  3. 目的地に到達できた
  4. やっぱり外出は楽しい
  5. もっと遠くまで行ってみたい

行動と時間の経過により、不安が軽くなるにつれて新たな希望を見つけられるようになるでしょう。

森田療法では、症状と付き合いながら自分らしく生きていく「あるがまま」の姿勢を目指しているのです。

森田療法の入院治療外来治療

森田療法は、入院治療外来治療に分けられます。

ただし、入院施設の減少に伴い、現在では外来での治療が主流になっています。

以下では、それぞれの治療法についてみていきましょう。

入院での森田療法

入院での森田療法

本来の森田療法は、入院で行われる治療法です。

およそ3ヶ月の入院期間を通して、4つの段階に分けて治療を進めます。

入院期間は医師や看護師、カウンセラーと面談を行い、さまざまな方法で症状と向き合っていきます。

第1段階:臥褥期(がじょくき)

臥褥期は、ひたすら横になって心身を休ませる期間です。

ここでは、自分の「とらわれ」や症状から逃げず、まっすぐに向き合うことを目指していきます。

第2段階:軽作業期

軽作業期では、敷地内に出たり病棟内を観察することに加え、部屋の片づけなどの簡単な作業をします。

一人で作業を行い、他の人とふれ合う準備をする期間です。

第3段階:作業期

作業期では、目の前のものごとに積極的に関わり、やり遂げることを目的にします。

毎日の取り組みや自分の役割をグループミーティングで決定し、集団の中で過ごす体験を重ねていきます。

不安や症状を抱えながらも、グループの目的をやり遂げることで「あるがまま生きる」という気づきを得る期間です。

第4段階:社会復帰期

最後の社会復帰期には、外出や外泊を通して社会復帰の準備をします。

ここまでの経験を仕事や日常生活に活かしていく期間です。

外来での森田療法

外来での森田療法

一方、外来における森田療法では日記を使用した治療が行われます。

この治療の目的は、自分の傾向を客観的に把握しながら日常生活に森田療法の考えを取り入れることです。

外来治療は以下のような流れで進められます。

これらをひとつずつ解説していきます。

悪循環を明らかにする

まずはじめに、症状を作り出している悪循環についての振り返りをします。

どのような場面で

どのような感情が生まれ

どのような対応をしているのか

その結果、どんな反応が起きるのか

この悪循環を明らかにしていきましょう。

森田療法では、不安や恐怖は「よりよく生きたい」という欲望の裏返しである、とされています。

自らを取りまく悪循環を振り返りながら、恐怖の裏に隠れている気持ちを探っていきます。

症状を受け入れる

症状を生み出している悪循環を理解したら、症状への向き合い方を変化させていきます。

ここで大切なのは、「症状は排除すべきものではなく、ともに生きるものである」という考え方です。

「いつか自然になくなるもの」という考えを持っておくとよいでしょう。

この過程で「不安や恐怖はコントロールすべき」という考えをなくしていきます。

「自分なりの方法で症状と付き合っていこう」という前向きな意欲に変化させていくのです。

こういった考え方の変化のおかげで「自分は病気を克服できない」という絶望感を払拭できるのです。

「無理せずマイペースに症状と付き合っていこう」という現実的かつ前向きな治療姿勢が整ったところで、実践的な治療を開始していきます。

自分らしく生きる

症状を受け入れ、不安や恐怖の裏側にある欲望に気づくことで「本当はこうしたい」という自分らしさを自覚し始めます。

この段階になると、不安を感じながらも、自分の目的や希望のためい自発的に行動できるようになっているでしょう。

とりあえず行動してみること(※)で、本来の自分の欲求に気づいていくのです。

※「恐怖突入」という

森田療法ではこのような流れに沿って、自分らしく「あるがまま」に生きられる状態を目指していきます。

森田療法と他の不安治療法の違い

森田療法と他の不安治療法の違い

森田療法と他の治療法(認知行動療法やトラウマ治療など)の違いは、不安に対する考え方です。

認知行動療法やトラウマ治療は、不安をコントロールすることを前提としています。

これらの方法は、考え方のクセを修正することで不安をコントロールしていく治療法です。

一方、森田療法の前提にあるのは、不安を受け入れ、ともに生きていくという考え方です。

新しい考え方を身につけるのではなく、不安だけど「とりあえず」動いてみることで、不安の軽減を図っていきます。

また、他の治療法は症状の軽減を目的とする一方で、症状という枠組みを超え、自分らしく生きることを目指すのが森田療法なのです。

森田療法は自力でもできるのか

森田療法は自力でもできるのか

結論からすると、森田療法には医療者の指導のもとで取り組むのがよいでしょう。

森田療法においては、不安の悪循環に直面したり、あえて症状に向き合う必要があります。

時には不安な場面に飛び込むことも強いられるかもしれません。

ふだん避けている問題に直面するため、自己判断で進めると思いがけないような反応が出現し、症状が悪化する恐れがあるのです。

そのため、森田療法や精神医学について体系的に学んだ医療者による指導を受けることが望ましいでしょう。

まとめ

森田療法は、不安を抱きながらも行動を繰り返し、自分らしく生きていく状態を目指す治療法です。

治療では、症状にまっすぐに直面し、ときには不安の対象に飛び込む必要があります。

予期せぬ反応や症状の悪化を避けるために、信頼できる医療者の指導のもとでの治療を検討してください。

執筆者:浅田 愼太郎

監修者:浅田 愼太郎

新宿にあるおおかみこころのクリニックの診療部長です。心の悩みを気軽に相談できる環境を提供し、早期対応を重視しています。また、夜間診療にも力を入れており、患者の日常生活が快適になるようサポートしています。

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