適応障害になりやすい人となりにくい人がいるって本当?
性格や周りの環境など、適応障害になりやすい人には特徴があります!
日常生活を送る中で、誰しもさまざまなストレスに直面します。ただし、同じストレス状況に置かれていても適応障害を発症してしまう人もいれば、うまく適応できる人もいるのが現実です。
この記事では、適応障害になりやすい人となりにくい人の違いについて解説します。
適応障害になりやすい人の特徴を知り、ならないための予防法を実践していきましょう。
また、同じ内容の動画も用意しています。動画の方が分かりやすい方は下記からご覧ください。
適応障害になりやすい人の特徴
適応障害になりやすい人の特徴を「性格」と「周りの環境」の2つの側面からみていきましょう。
性格
適応障害になりやすい人には、以下のような性格的特徴があります。[1]
- 不安を強く感じやすい傾向がある
- 自分に自信がない
- 几帳面で細かいことにこだわる
- 完璧主義的な考えを持つ
- 失敗を過度に恐れる
- 人に頼ることが苦手で、一人で抱え込んでしまう
適応障害では、その人の性格によってストレスや環境の変化に柔軟に対応することが難しくなります。
その結果、ストレスに対処しきれなくなり、適応障害の症状があらわれるのです。
環境
適応障害のなりやすさはその人の性格だけでなく、周囲の環境によっても大きく左右されます。
以下のような環境では、適応障害になるリスクが高いといえるでしょう。[1][2]
- 過剰なストレス要因が存在する職場環境
- 長時間労働を強いられる職場
- 対人関係のトラブル(職場、親子、兄弟など)
- 周囲に相談相手がいない環境
職場や家庭など、日常的に過ごす環境が過酷でストレスを溜め込みやすい状況にあると、適応障害のリスクが高まります。とくに、周囲の理解が得られず、一人で抱え込まざるを得ない環境は注意が必要です。
適応障害は個人の問題だけでなく、周りの環境の影響を受けやすいのです。
適応障害のきっかけとなり得るストレス
適応障害の原因となるストレスはさまざまで、個人差があります。
ここでは、適応障害のきっかけとなり得るストレスについて具体的に解説します。
人生の大きな転機(ライフイベント)
人生には進学、就職、結婚、出産など、さまざまなライフイベントがあります。こうした大きな環境の変化は、ストレスの原因となり得るのです。[1]
〈進学・就職(転職)〉
新しい環境への不安から強いストレスを感じることがあります。
〈結婚・出産〉
生活スタイルの変化に対して、柔軟な対応が求められるようになります。
また、生活が自分の思い通りにいかないことに対してストレスを感じやすくなるでしょう。
〈離婚・死別〉
深い喪失体験によるショックが大きく、心理的なストレスが増大します。
〈転勤・海外赴任〉
生活環境の変化に加え、言語や文化の違いにも直面し、ストレスを抱えやすくなります。
〈退職・引退〉
経済的な不安や今後の生活に対する不安、アイデンティティの喪失に苦しむことがあります。
人生の大きな節目ではさまざまなストレス要因があり、環境の変化にうまく適応することが求められるでしょう。こうした時期には心身の不調をきたしやすく、適応障害になりやすいのです。
新学期はいつも学校に行くのドキドキしてた~💦
仕事や学業に対するストレス
仕事や学業は生活の中心となるものであり、ストレスを抱えやすい部分でもあります。[1]
- 長時間労働や過度な仕事量
- 就職や進路選択に関する不安
- 成績へのこだわりや執着
仕事や学業は自己実現の場でもあり、適度なストレスはやる気の源となってスキルアップにもつながることもあります。ただし、ストレスがその人の許容量を超えてしまうと、心身の不調を引き起こす可能性があるのです。
とくに長時間労働によって休息が十分に取れないまま、常に高いパフォーマンスを求められる環境では、ストレスが蓄積されてしまいます。
学業においても同様に、進路選択や成績へのプレッシャーによって受験期間は、とくに心身の不調があらわれやすくなるでしょう。
対人関係のストレス
対人関係は、適応障害発症の大きな要因となります。[1]
- 家族間のトラブル(親子、夫婦、兄弟など)
- 介護による心理的・肉体的負担
- いじめや嫌がらせなどの職場での対人トラブル
対人関係のトラブルは精神的なダメージを受けやすく、心の不調に陥りやすくなります。とくに、最も身近な人間関係の中で引き起こる家族内トラブルは、心にダメージを受けやすいでしょう。
また、長期的にいじめや嫌がらせなどを受けると自尊心が傷つき、深い心の傷を負うことも少なくありません。
人間関係のストレスはドドド~っと疲れちゃいます💦
健康問題に対するストレス
重大な病気や慢性的な健康問題は、適応障害のリスクを高める要因となります。
- 重大な病気(がん、心疾患、脳血管障害など)
- 慢性的な病気や障害
健康問題は身体的な苦痛だけでなく、治療への不安も伴います。治療の見通しが立たない場合には、精神的にも不安を感じるでしょう。
実際、日本での末期がん患者における適応障害の有病率は16.3%と報告されており、決して珍しいものではありません。[1]がんをはじめとする重大な疾患は、死との向き合いを余儀なくされ、その状況に適応するのは簡単なことではないのです。
慢性疾患や障害の場合も、長期に渡る治療や日常生活への制約から大きなストレスを伴います。
このように、健康問題は身体面だけでなく精神面にも深刻な影響を及ぼすのです。
経済的なストレス
生活に関わる経済的な問題は、適応障害の原因となります。[3]
- 失業や収入減により生活費の確保が困難になる
- 失業によりプライドを傷つけられる
- 多重債務や借金による返済への大きなプレッシャーがかかる
経済的に困窮した状態が続けば、それ自体がストレス源となるだけでなく、家族関係の悪化や健康問題を引き起こし悪循環に陥る可能性があります。失業や収入減は、生活費の捻出に直結する深刻な問題です。将来への大きな不安を抱えることにもなるでしょう。
こうした生活の基盤がおびやかされる経済的な問題は、精神的なダメージも大きく、適応障害発症の大きなリスクとなるでしょう。
適応障害になりにくい人の特徴
同じようなストレス環境に身を置いていても、適応障害にならない人もいます。
一般的に、適応障害になりにくい人は以下のような特徴を持っています。[4]
- 楽観的で前向きな性格である
- ストレスの多い状況でも肯定的に捉えられる
- 感情の起伏が穏やかで安定している
- ストレスを上手く発散できる
- 周囲から適切なサポートが得られている
- 職場の人間関係がよく、働きやすい環境にある
適応障害になりにくい人は、物事を柔軟に捉え、ストレス状況においても前向きに対処する能力が高いことが特徴的です。感情のコントロールもうまくできるため、ストレスに振り回されにくいと考えられます。
また、趣味や運動、交友関係など、自分に合ったストレス発散方法があるのも特徴といえるでしょう。
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適応障害のセルフチェック
適応障害かどうかを自分で確認するために、以下のようなチェックリストを作成しました。[1][5]
▢ 不安を感じることが多い
▢ 憂鬱な気分が続く
▢ 涙もろくなった
▢ 繊細なことを過剰に心配する
▢ なかなか眠れない
▢ 食欲がない
▢ イライラしやすくなった
▢ いつも疲れを感じ、身体がだるい
▢ めまいや頭痛がする
▢ 動悸や息苦しさを感じる
▢ 過呼吸になる
▢ 死にたいと思うことがある
▢ 暴飲暴食をするようになった
チェック項目に当てはまるものが多ければ多いほど、適応障害の可能性が高くなります。
適応障害では、必ずしも全ての症状があらわれるわけではありません。ただし、気分の落ち込みや不安感、身体的な不調などに加え、食欲の低下や睡眠障害など、さまざまな症状があらわれます。通常、ストレス要因が生じてから1カ月以内に症状があらわれることが多いといわれています。[1]
当てはまる症状が多い場合には、早めに医療機関を受診しましょう。
おおかみこころのクリニックでは、いつでも相談を受け付けております。
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適応障害を防ぐための方法
適応障害を防ぐためには「ストレスを軽減する」「ストレスに対してうまく適応できるようにする」ことが必要です。
ここでは、適応障害を防ぐための具体的な方法について解説します。
ストレスを軽減する
適応障害を防ぐためには、発症の要因となっているストレスを正確に把握し、一時的にでもそこから離れることが重要です。[1]
ストレスから離れる方法には、以下のようなものがあります。
- 休職や職務内容の変更を検討する(仕事がストレス要因である場合)
- 苦手な人とは一定期間の距離を置く(人間関係がストレス要因である場合)
ストレス要因となっている物事から離れることで、症状の軽減が期待できます。適応障害の場合は、ストレス要因がなくなれば症状が改善することがほとんどなのです。
ストレス要因を完全に取り除くことはできなくても、一時的に離れることが適応障害の予防や対処法の基本となります。
適応障害なのに元気にみえることもあります。それには下記のような理由があります。
詳しくは下記に記事をご覧ください。
ストレスに適応できるようにする
誰しも少なからずストレスを感じており、同じストレスを受けていても受け取り方によって適応障害になる人とならない人がいます。つまり、ストレスそのものよりも、ストレスに対する考え方や対処法が重要なのです。
適応障害には、セルフケアと認知行動療法が有効です。認知行動療法では、ストレスへの否定的な思考パターンや行動を理解し、より適切な考え方と行動に修正することで、症状の改善や再発防止を図ります。[1]
認知のゆがみは自分でも治すことができます。詳しくは下記の記事をご覧ください。
自分ではストレスの受け止め方や対処法が分からない場合は、心療内科や精神科などの医療機関で相談しましょう。「適応障害かも…」と感じたら、早めに医療機関を受診し、必要に応じて適切な治療を受けることが大切です。
ストレスにうまく適応できるよう考え方や行動を改善することが、適応障害の予防にもつながります。
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まとめ
適応障害は、強いストレスが原因で日常生活に支障をきたす状態です。性格的に不安を強く感じやすい人や、環境的にストレスが蓄積しやすい状況下にある人は、適応障害になりやすい傾向があります。
一方で、適応障害になりにくい人は前向きで柔軟な考え方ができ、自分なりのストレス発散方法を知っていることが特徴です。
適応障害を防ぐためには、ストレスを軽減し、一時的にでもストレス源から離れることが大切です。自分ではストレスにどう対処したらよいのか分からない方は、専門家に相談してみるのもよいでしょう。自分に合ったストレス解消方法を見つけ、うまく付き合っていくことが適応障害を乗り越えるカギなのです。
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参考文献
[1]適応障害/統合失調症|厚生労働省
https://kenkoukyouikusidousyakousyuukai.com/img/file214.pdf
[2](適応障害)事例紹介|こころの耳
https://kokoro.mhlw.go.jp/case/case-result/?filter2%5B%5D=%E9%81%A9%E5%BF%9C%E9%9A%9C%E5%AE%B3&keyword=
[3]適応障害|MSDマニュアル
[4]第2章 心のケア 各論|文部科学省
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/clarinet/002/003/010/004.htm
[5]日本における「適応障害」患者数の増加|社会政策学会誌『社会政策』第12巻第2号
https://www.jstage.jst.go.jp/article/spls/12/2/12_101/_pdf
- この記事の執筆者
- 原田瑞季
臨床検査技師。保健学修士。在宅で医療検査の業務に関わりながら、フリーライターとして医療を中心に幅広いジャンルで執筆中。