なぜ双極性障害(躁うつ)は勉強できないのか|3つのタイプと対処法




双極性障害になると勉強できなくなりますか?

浅田先生
浅田先生

認知機能が低下すると勉強できないと感じることがあるよ。記事の中で説明するね

双極性障害になると学習や記憶、問題の解決などに必要な力(=認知機能)が低下することがあります。

しかし、双極性障害だからといって勉強や進路をあきらめる必要はありません。

今回は「勉強できない」と感じやすい3つのタイプ症状について解説するので、当てはまるかどうかチェックしてくださいね。

記事の後半で紹介する「勉強に集中するための方法」を参考に双極性障害でも無理せず勉強する方法を見つけてくださいね。

双極性障害が「勉強できない」と感じるのは認知機能が低下するから

双極性障害の方が「勉強できない」と感じるのは、認知機能(学習や記憶、問題の解決などに必要な力)が低下するためです。

認知機能の低下をうつ状態や躁状態のときに感じる方もいれば、病気が寛解(症状が落ち着いた状態)した後も感じ続ける方もいます。

認知機能が低下すると、以下のようなことが難しくなります。

  • 読書する
  • 予定を覚える
  • 長い会話をする

働くことや学校に行くこと、勉強することなどが困難になり、日常生活に不便が生じるようになるのです。

認知機能の低下に気づいていないと「勉強できない」「本が読めない」などの感覚だけを強く感じ、正しい対処法を見つけられません。

勉強が手につかないときは「認知機能が低下しているかもしれない」という可能性を考え、主治医に相談して自分に合った対策を考えましょう。[1]

この記事の後半には対処法も紹介しています。先に知りたい方はこちらからご覧ください。

こころちゃん
こころちゃん

「勉強できない」には理由があります

「双極性障害だから…」と立ち止まりやすい3つのタイプ

「双極性障害だから勉強ができない」と立ち止まったりあきらめたりしやすいのは、以下3つのタイプです。[2]

心当たりがないかチェックしてみましょう。

それぞれ解説します。

決めつけタイプ

決めつけタイプとは、自分の調子の悪さを「すべて病気のせいだ」と決めつけてしまう方です。

例として、集中力が続かないことや勉強へのモチベーションが上がらないことを「双極性障害だから」と片づけるケースが挙げられます。

双極性障害における気分の上下と付き合うのは大変ですが、すべてを病気のせいだと思ってしまうと次のステップへ進めません。

主治医や臨床心理士などと相談しながら「意識的に休息をとる」「目標を小さくしてひとつずつクリアする」などの対策を立て、少しずつ前に進みましょう。

思い込みタイプ

思い込みタイプとは、軽躁状態に入ると「ようやく本来の自分に戻れた」とハイペースで突き進んでしまう方です。

以下のような行動に心当たりがないかチェックしましょう。

  • 高すぎる目標を設定する
  • スケジュールを詰め込みすぎる
  • 睡眠時間を大幅に削って勉強する

ハイペースで行動してしまうときは本来の自分に戻れたのではなく、軽躁状態をコントロールできていない可能性を考えましょう。

休まず勉強を続けると知らないうちに体に負担がかかり、再びうつ状態に入るリスクがあります。

「軽躁状態がちょうどよい」と思ってペースを上げず、意識的に休養を取ることが大切です。

こころちゃん
こころちゃん

自分が今どこの状態なのかを慎重に判断しましょう

ネガティブタイプ

ネガティブタイプとは、病気が一生治らないと思い生きる気力を失ってしまうタイプです。

とくにうつ状態のときは「勉強してもムダ」と悲観的になりやすいですが、双極性障害をコントロールしながら人生を楽しんでいる方はたくさんいます。

病気のときは視野が狭くなり、すべてを悪い方向にしか考えられなくなるものです。

暗い気持ちになってしまうときは「まだ回復の途中なんだ」「この状態が一生続くわけではない」と考え、焦らず治療に取り組みましょう。

双極性障害が勉強できないと感じる3つの症状

双極性障害の方が「勉強できない」と感じるのは、以下の3つの症状が関係しています。[1]

それぞれ解説します。

記憶を保つことができない

双極性障害では記憶を保ちにくくなるケースがあります。

例として挙げられるのは、以下のような場面です。

  • 物忘れが増える
  • 以前に学んだことを忘れる
  • 新しいことを覚えにくくなる

学んだことや体験したことを忘れてしまうため「いくら勉強しても頭に入らない」という感覚になります。

学習時間を増やして勉強への不安を解消しようとしますが、心身の負担が増えるため余計に記憶を保ちづらくなってしまうのです。

双極性障害の記憶力について、下記の記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

計画どおりに行動できない

計画どおりに行動できないことにより「勉強できない」と感じやすくなります。

例として挙げられるのは、以下のような場面です。

  • 計画自体を忘れてしまう
  • 予定を詰め込みすぎてパンクする
  • 何度も同じ部分を勉強してしまう

なぜこのような計画を立てたか分からなくなったり、現実的に不可能な計画を立てたりして勉強に進めなくなることがあります。

集中力や記憶力の低下もあるため、何度も同じ部分を勉強して計画通りに進まないこともあるでしょう。

努力しても結果が伴わないことがあるため「自分は勉強ができない」と思ってしまうのです。

こころちゃん
こころちゃん

スケジュールを立てて紙に書いておくのも良いですね!

注意力・集中力を維持できない

注意力や集中力の低下も「勉強ができない」という感覚に関係します。

例として挙げられるのは、以下のような場面です。

  • 長い説明や文章を理解できない
  • すぐに集中力が途切れてしまう
  • 一度に複数のことに取り組めない

注意力や集中力が低下するため、何度も同じ文章を読んだり次々と新しいことに手を出したりして、効率よく勉強を進めることができません。

目の前のことに集中できずに苦痛を感じやすく、勉強から遠ざかってしまうこともあるでしょう。

双極性障害で「勉強できない」と悩んでいるときの3つの対処法

「勉強できない」と悩んでいるときの対処法として、以下の3つが挙げられます。

それぞれ解説します。

お助けアイテムを使う

思うように勉強できないときは、お助けアイテムの力を借りましょう。

中でも手軽に使いやすいのはスマートフォンです。

以下のような方法を試してください。

  • 学習内容をボイスメモに録音して繰り返し聞く
  • アプリを使ってクイズ形式や朗読形式で復習する
  • 勉強した内容の関連画像を調べて視覚的に記憶する

集中力の低下が気になる方は耳栓やイヤーマフを使って周囲の音を遮断したり、パーテーションを使って目に入る情報を減らしたりするのも効果的です。

お助けアイテムを上手に使って記憶のサポートをしたり集中しやすい環境を整えたりして、勉強への負担を軽減しましょう。

きちんと身体を休ませる

勉強するためには、きちんと身体を休ませることが大切です。

睡眠は記憶を定着させたり、疲労を回復して勉強の効率を上げたりする働きがあります。

軽躁状態のときは疲れを感じにくいですが、自分が思っているよりも身体は疲れているものです。

適度な休憩をはさんだり7時間を目安とした睡眠をとったりしながら、頭と心を休ませるようにしましょう。[3]

こころちゃん
こころちゃん

焦るときこそ休みましょう!

自分に合う記憶法を見つける

学んだことを忘れやすい場合は、自分に合った記憶法を身につけましょう。

記憶を助ける方法として、以下のようなものが挙げられます。[3]

■関連付け:新しいことを何かと関連付けて覚える方法
(有名人の○○さんと同じ苗字だ・クイズ番組で紹介されていた…など)

■繰り返し:何度も繰り返して覚える方法
(何度も口に出して言う・スマートフォンにメモして何度も見返す…など)

■精緻化:情報を深く知ることで覚える方法
(織田信長って実はスイーツ男子だったんだ・武田信玄って虫嫌いだったんだ…など)

ひとりで勉強するのが苦手な方は家の人や塾の先生などと一緒に勉強し、相手とのやり取りを通して記憶するのもよいでしょう。

色々な方法を試しながら自分に合った方法を見つけ、勉強の負担を軽減してください。

まとめ

双極性障害では、認知機能(学習や記憶、問題の解決などに必要な力)が低下し、勉強できないと感じやすくなります。

集中力や記憶力、計画を行動に移す力も低下するため、勉強に手がつかなくなってしまうのです。

ただ、双極性障害だからといって勉強を諦める必要はありません。

スマートフォンを使ったり自分にあった記憶法を見つけたりすることで、集中力や記憶力を補助することができます。

勉強に集中するためには、適度な休息や睡眠も不可欠です。

無理のない範囲で自分に合った勉強スタイルを見つけていきましょう。

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【参考資料】
[1]住吉太幹, 長谷川由美, 末吉一貴:双極性障害における認知機能 -当事者のための小冊子; 国際双極性障害学会編, 2020
ISBD_Cognition_Booklet_Japanese.pdf

[2]もっと知りたい双極性障害 加藤忠史 翔泳社

[3]独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター職業センター 記憶障害に対する学習カリキュラムの紹介
practice38_.pdf (jeed.go.jp)

この記事の執筆者
とだ ゆず
メンタルヘルスの記事を中心に執筆する看護師・保健師ライター。 精神科勤務での患者さんとの関わりや自身のうつ病経験から「人の心についてもっと知りたい」と思い、上級心理カウンセラーの資格を取得。 エビデンスに基づいた読者の心に寄り添う記事を心がけている。
執筆者:浅田 愼太郎

監修者:浅田 愼太郎

新宿にあるおおかみこころのクリニックの診療部長です。心の悩みを気軽に相談できる環境を提供し、早期対応を重視しています。また、夜間診療にも力を入れており、患者の日常生活が快適になるようサポートしています。




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